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2009年6月

6月30日の日本民話 ものを言うネコ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 6月の日本民話

6月30日の日本民話

ものを言うネコ

ものを言うネコ
京都府の民話京都府情報

♪朗読再生

 むかしむかし、山城の国(やましろのくに→京都府の南部)に清養院(せいよういん)という、お寺がありました。
 ある夏の夜の事、お腹をこわした和尚(おしょう)さんが便所に入っていると、庭の木戸(きど→庭や通路の入口などにもうけた、屋根のない開き戸の門)から、
「これ、これこれ」
と、呼ぶ者がいます。
(はて? いまごろ、だれがたずねてきたのか?)
 不思議に思った和尚さんが窓から外を見てみると、部屋の中から和尚さんの飼っているネコがかけだしてきて、庭へと飛び降りました。
 そしてネコはあわてて木戸のところへ行くと、カギをはずします。
 すると、一匹の大きなネコが現れて、
「こんばんは」
と、人間の言葉でしゃべったのです。
(ネコがしゃべるなんて!)
 和尚さんがびっくりしていると、大ネコはお寺のネコの案内で部屋に入っていきました。
 和尚さんが便所の中で、じっと耳をすましていると、大ネコがいいました。
「今夜、町で踊りがあるから、一緒に行かないか?」
「うん、そいつはおもしろそうだ。・・・でも、うちの和尚さんの具合が悪いので、今夜は行けないよ」
「うーん。そいつは残念だな。では、すまないが手ぬぐいを一本貸してくれないか」
「ごめん。その手ぬぐいも、和尚さんがひまなく使っているので、持ち出すわけにはいかないよ」
「そうか。・・・それじゃ、今夜はあきらめるとするか。おじゃましたな」
「ごめんね。せっかくさそってくれたのに」
 お寺のネコは大ネコを庭の木戸まで送っていくと、再び部屋に戻っていきました。
(わしの病気を心配して遊びにも行かないとは、なんてやさしいネコなんだ)
 和尚さんはうれしくなって、便所を出るとすぐに部屋へ戻りました。
 ネコは和尚さんの布団の横で、じっとうずくまっています。
 和尚さんは、ネコの頭をなでながら言いました。
「わしの事なら、もう大丈夫。気にしないでお前も踊りに行ってこい。この手ぬぐいをあげるから」
 和尚さんは、手ぬぐいをネコの頭にのせてあげました。
 するとネコは何も言わずに、外へ走っていきました。
 そして二度と、戻っては来ませんでした。
 ネコがいなくなって、和尚さんはがっかりです。
 そして、この事を物知りな老人に話したら、
「それは、ネコがしゃべるのを和尚さんに聞かれてしまったからですよ。ネコはしゃべるようになると、飼い主をかみ殺すと言いますからね。でもそのネコは、よっぽど和尚さんを大切に思っていたので、だまって出ていったのですよ」
と、教えてくれたそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → みその日
きょうの誕生花 → びようやなぎ(ヒペリカム)
きょうの誕生日 → 1975年 ラルフ・シューマッハー(F1レーサー)


きょうの日本昔話 → 野ギツネ
きょうの世界昔話 → バラ色の泉の水
きょうの日本民話 → ものを言うネコ
きょうのイソップ童話 → 人間とセミ
きょうの江戸小話 → ちかづきのしるし

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6月29日の日本民話 コウノトリの恩返し

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 6月の日本民話

6月29日の日本民話

コウノトリの恩がえし

コウノトリの恩返し
鹿児島県の民話鹿児島県情報

♪ 朗読再生

 むかしむかし、ある村の橋の下に、ほったて小屋で暮らしている母と息子がいました。
 息子は毎日、少しばかりの塩を仕入れては、それを売り歩いていました。
 ある年の暮れの事です。
 息子が塩を仕入れて町からもどってくると、田んぼで殿さまが仕掛けたかすみアミにコウノトリがかかっていました。
「なんと、コウノトリじゃないか。年の暮れだというのに、かわいそうに」
 息子は、コウノトリをはなしてやりました。
 そして橋のところまで帰ってきたとき、土手(どて)の石につまずいて、塩をばらまいてしまったのです。
 橋の下からそれを見ていた母親は、
「また、けつまずいたのか。ああ、塩がもったいない。あの石はあぶないから足元に気をつけろって、何度もいっておったのに」
と、あきれ顔でいいました。
 これで、今日は仕事に行けません。
 仕事に行けないので食べる物が買えず、母と息子はだまって、お湯ばかり飲んでいました。
 ところがしばらくすると、ほったて小屋へ美しい娘がたずねてきたのです。
「おや? あんたみたいな美しい娘さんが、わしら貧乏人(びんぼうにん)に何の用だね?」
 母親がたずねると、娘はまじめな顔で、
「はい。嫁にしてもらおうと思ってきました」
と、いうのです。
「な、なにをいう。うちには金も食う物もねえ。だから、お前のような娘を嫁にはもらえねえ。わるいが、帰っておくれ」
 母親は断りましたが、
「お金なら、少しは持っております。お願いですから、嫁にしてください」
と、美しい娘は、ふところからお金を出しました。
「・・・しかし」
「お願いです。嫁にしてください」
「・・・だけれど」
「お願いです。嫁にしてください」
「・・・・・・」
 母親は断り切れなくなって、娘を息子の嫁にしました。
 すると次の日の朝早く、いかめしい(さむらい)たちがやってきました。
 そして、殿さまが捕らえようとしていたコウノトリを逃がした罪として、十両(じゅうりょう→約七十万円)の罰金(ばっきん)を払わなければ息子の命はないと、きびしく言ってきたのです。
「お前がコウノトリを逃がしたなんて、知らんかった。なんという事をしたんじゃ。十両もの大金は、一生かかっても出来んぞ。ああ、どうしたらいいんじゃ」
 嫁さんは泣き崩れる母親をなぐさめると、夫にむかっていいました。
「あなたが何度もつまずいて塩をばらまいた石を、どけてみなされ」
 息子はすぐに土手の石のところへ走っていくと、土をほって石をどけてみました。
 すると大きな石はふたになっていて、その下には大判小判がいっぱいうまっていたのです。
 そのお金で、息子はすぐに罰金を払いました。
 ところが晴れて息子の命がすくわれると、嫁さんは町へ買い物に行くといったまま、姿を消してしまったのです。
「あの娘は、お前が助けたコウノトリだったんだな。恩を返しに嫁にきたんだな」
 母と息子は、うなずきあいました。
 こうして大金持ちになったこの親子が、のちに大阪へ出てきて、
『難波(なにわ)の大長者(だいちょうじゃ)』
と、いわれた大商人、鴻池(こうのいけ)のはじまりになったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 星の王子様の日
きょうの誕生花 → あじさい
きょうの誕生日 → 1959年 引田天功(2代目・奇術師)

きょうの新作昔話 → 食わずの梨 弘法大師
きょうの日本昔話 → かじかびょうぶ
きょうの世界昔話 → 白いウマ
きょうの日本民話 → コウノトリの恩がえし
きょうのイソップ童話 → シカとブドウの木
きょうの江戸小話 → いれ目

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6月28日の日本民話 お花とごんべえ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 6月の日本民話

6月28日の日本民話

お花とごんべえ

お花とごんべえ
福島県の民話福井県情報

 むかしむかし、ある村にお花というキツネと、こんベえというタヌキが住んでいました。
 二匹とも、化けるのがとても上手です。
 ある日の事、お花とごんベえが道でバッタリと出会いました。
 ごんべえは、わざとていねいに言いました。
「お花さんは化けるのがとても上手だそうだけど、おいらとどっちが上手かな?」
「さあ? どっちが上手か、化け比べをしてみないとわかんないわ」
 それを聞いたとたん、ごんベえがはらを立てました。
「よし、そんならどっちが上手か、化け比べをしよう」
「いいわよ。明日の晩、お宮さんの境内(けいだい)へきてちょうだい」
 お花はそれだけ言うと、帰っていきました。
(女のくせに、なんてなまいきなキツネだ。見ていろ。かならず負かしてやる。・・・だが、何に化けたらいいのだろう?)
 ごんべえは何に化けたらお花に勝つか、いっしょうけんめい考えました。
 なにしろお花の化ける花嫁姿ときたら、ごんべえもほれぼれするぐらいきれいで、いつも人間の娘さんとまちがえてしまいます。
 それに化けるのが上手なごんべえでも、男なので花嫁姿にだけは化けることができません。
 さて、キツネのお花はというと、
「ごんべえったら、どうせわたしに勝てっこないのに。まあいいわ。もう二度と化け比べをしようなんか言い出せないようにしてやる」
と、言って、何度も何度も花嫁姿に化ける練習をしました。
 さて、いよいよ化け比べの夜がきました。
 お花はさっと、花嫁姿に化けました。
 練習をしただけあって、とても美しい花嫁姿です。
 そしてお花は、本物の花嫁みたいにはずかしそうにうつむきながら、お宮さんへ行きました。
 ところが鳥居(とりい)をくぐろうとして、ふと下を見ると、ホカホカとゆげのたっているまんじゅうが落ちているではありませんか。
 お花は、思わずつばを飲みました。
 あたりを見回してみましたが、ごんべえはまだきていないようすです。
(今のうちだわ)
 お花は急いでまんじゅうをひろって、口の中へ入れようとしました。
 そのとたん、まんじゅうがパッとタヌキに変わったのです。
「あははははは。なんだ、いくら美しい花嫁に化けても、やっぱりくいしんぼうのキツネだなあ」
 はずかしくなったお花は花嫁姿に化けているのもわすれて、しっぽを出したまま逃げてしまいました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ニワトリの日
きょうの誕生花 → ざくろ
きょうの誕生日 → 1971年 藤原紀香(女優)


きょうの日本昔話 → イモころがし
きょうの世界昔話 → ビンの中のお化け
きょうの日本民話 → お花とごんべえ
きょうのイソップ童話 → 漁師とマグロ
きょうの江戸小話 → 急病

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6月27日の日本民話 身投げ石

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6月27日の日本民話

身投げ石

身投げ石
大分県の民話大分県情報

 むかしむかし、豊後の国(ぶんごのくに→大分県)に、岡の殿(おかのとの)という豪族(ごうぞく)が住んでいました。
 岡の殿には大変美しい姫がいましたが、姫は重い病にかかってしまったのです。
「姫が不憫(ふびん→かわいそう)でならぬ、何としてもなおせ」
 岡の殿は家来たちに命令しましたが、しかし、どんな薬をあたえても、姫の病気には効かないのです。
 姫の病気は、日に日に悪くなるばかりでした。
 そんな、ある日の事。
 どこからか一人のお坊さんがやって来て、岡の殿に言いました。
「不治(ふじ)の病には 黒い花の咲(さ)くユリの根を煎(せん)じて飲ますとよいと、聞きおよびます。しかし、そのようなユリの花がどこにあるのやら」
 岡の殿は、あちこちにおふれを出しました。
《黒い花の咲くユリの花を探し出した者には、姫を嫁にとらす。一刻(いっこく)も早く探し出せ》
 それを読んだ人々は、山も川も海も、草の根を分けるようにして探しましたが、けれども、黒い花の咲くユリを見つけることは出来ませんでした。
「ええい、どこを探しておる。もっとよく探せ!」
 しかし、やっぱりどこにも見つかりません。
 屋敷の人々があきらめかけたとき、岡の殿がかわいがっていた栗毛(くりげ)のウマが、激しくいなないて屋敷にかけ込んできたのです。
 そのウマの口には、なんと黒いユリの花が一本くわえられています。
 岡の殿は夢中で栗毛にまたがると、栗毛は矢のようにかけ出しました。
 そしていくつもの山をこえた栗毛は、やがて深い谷で止まりました。
 そこの岩間には、黒いユリの花が何本も咲いていたのです。
 それからほどなくして、ユリの根を煎じて飲んだ姫は、元気になっていきました。
 さて、黒い花の咲くユリを見つけてきた物には、姫を嫁にやるという約束でしたが、相手がウマではどうしようもありません。
 ところが、あの栗毛はその約束を知っているのか、いつも姫に寄りそっていて、姫の側を離れようとしないのです。
 岡の殿も姫も気味悪くなり、栗毛をウマ小屋に閉じ込めてしまいました。
 しばらくたち、姫は病気全快のお礼参りに、八幡宮(はちまんぐう→八幡神を祭神とする神社の総称)へ詣(もう)でました。
 ところが、カゴにのって帰る途中、ウマ小屋から逃げだした栗毛が、狂ったように姫の行列めがけて走ってきたのです。
「あっ、あぶない!」
「姫のお身を守れ!」
 お供の者たちが姫を守ろうとしましたが、栗毛はお供の者たちを蹴散(けち)らすと、とうとう姫を、川に突き出た大きな岩の上に追いつめてしまったのです。
 岩の下では川の濁流(だくりゅう)が、ゴウゴウ音をたてて流れています。
 栗毛の目は怒りに燃えており、姫に一歩一歩近づいていきます。
「いやじゃあ!」
 姫は叫び声をあげましたが、栗毛は姫を道連れに、川へ身を投げたのです。
 いつのころからか、身投げ石と呼ばれるようになったその大岩は、栗毛のひづめのあとを今も残しているという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 日照権の日
きょうの誕生花 → びわ
きょうの誕生日 → 1980年 優香(タレント)


きょうの日本昔話 → カッパのねんぐ
きょうの世界昔話 → 世界のはじまり
きょうの日本民話 → 身投げ石
きょうのイソップ童話 → 父親と2人の娘
きょうの江戸小話 → 病人がへた

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6月26日の日本民話 村をおおった大木

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6月26日の日本民話

村をおおった大木

村をおおった大木
滋賀県の民話滋賀県情報

 むかしむかし、ある殿さまのところに、ある村から手紙にそえられて、たくさんのくさった木の枝や葉っぱが届けられました。
 手紙には、こう書かれています。
《村の土をほったところ、このような、くさった木の枝や葉がいくつもの層になってでてきました。ためしに村のあちこちや川むこうの土もほってみましたが、どこからも同じものがでてきます。あまりにもおかしなことですので、現物(げんぶつ)をそえておとどけいたします》
「はて、これはどういう事だろうか?」
 殿さまも、不思議に思いました。
 ひろい村のあちこちから、同じような物が出てくるのはおかしなことです。
 殿さまは家来たちに、あれこれと書物を調べさせました。
 するとある古い書物に、世にも不思議な事が書いてあったのです。
 そのむかし、天皇(てんのう)が重い病気になったので、御所(ごしょ→天皇の住むところ)の人たちはこまっていました。
 えらい占い師を呼んで、占ってもらうと、
「東のほうに一本の大きな木があります。その木が天皇にうらみをいだいているのです。木をきってしまえば、ご病気はたちどころに治るでしょう」
と、いうのでした。
 大きな木は、琵琶湖(びわこ)の近くの村にありました。
 御所ではたくさんの木こりにたのんで、すぐにその大木をきりたおす事にしました。
 ところがその大木は、幹(みき)のまわりが百メートルもあるという、信じられないほどの太さの木だったのです。
 村中を木かげにして天高くのびるその大木は、きってもきっても次の日の朝には、また元どおりの姿になっているのでした。
 御所ではまた、占い師を呼んでたずねました。
 すると占い師は、
「きった木のくずをまわりに残しておくと、木が元どおりになってしまうのです。天皇をよく思わない者が、それほど強いのろいをその木にこめたのでしょう。きった木のくずを毎日残らず焼いて、灰にしてしまわなければだめです」
と、いいました。
 そこで毎日、きった木のくずを焼きすてていると、七十日目にようやく、大木は山がくずれるようにたおれて、枝や木の葉が村じゅうにとびちって土にうまったのです。
 この木がたおれてから天皇の病気は一度はよくなりましたが、すぐにまた病にかかって、とうとう亡くなってしまいました。
 御所でほかの占い師にたずねたところ、こんどは、
「古い大きな木をきったことがわるい。どうしてそんなことをしたのだ」
と、いわれたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 雷記念日
きょうの誕生花 → グロリオーサ
きょうの誕生日 → 1928年 中松義郎(Dr.中松・発明家)

きょうの新作昔話 → 文珠の知恵(ジャータカ物語)
きょうの日本昔話 → 船ゆうれい
きょうの世界昔話 → おやゆび小僧
きょうの日本民話 → 村をおおった大木
きょうのイソップ童話 → ロバのかげ
きょうの江戸小話 → 川の字

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6月25日の日本民話 一つおぼえ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 6月の日本民話

6月25日の日本民話

一つおぼえ

一つおぼえ
長崎県の民話長崎県情報

 むかしむかし、ある山の村に、ぐつという男が母親と兄と三人でくらしていました。
 兄はワナをかけて、けものなどをとる仕事をしていました。
 ある日の事、兄がぐつに言いつけました。
「ぐつ、何かかかっているだろうから、ちょっとワナを見て来てくれ」
「ほいきた」
 ぐつはそう言ってワナを見に山の奥に入って行きましたが、間もなく帰って来ました。
「どうだい、何かかかっていたろう」
 兄が聞くと、ぐつは、
「ああ、となりのニワトリのやつがかかっていたから、放してやったよ」
と、答えました。
 となりの家のニワトリが山奥へ出かけるのは、とてもめずらしいことですから、
「えっ? そいつは放してやったとき、なんと言ったかい?」
と、兄がけげんに思って、聞きました。
 すると、ぐつは、
「うん、そいつはケンケンと鳴いて、いそいで逃げて行ったよ」
と、答えるので、
「バカ! それはニワトリににているが、キジというもんだ」
と、兄はぐつに教えてやりました。
 その次の日、
「おい、ぐつ、またワナを見て来てくれ。なんでもかかっていたら、よく見て、とって来るんだよ」
 兄は、ぐつに言いつけました。
「ほいきた」
 ぐつは出かけて行きましたが、すぐに帰って来て、
「今日はね、となりのウシの子がかかっていたから、はなしてやったよ」
と、言いました。
 それもめずらしいことですから、兄が、
「そいつは放してやったとき、なんと言ったかい?」
と、聞くと、ぐつは、
「うん、そいつは、オツン、オツンと鼻を鳴らして、いそいで逃げて行ったよ」
と、答えましたので、それはウシの子ではなく、イノシシであることが兄にはわかりました。
「このバカ! せっかくかかっていたイノシシを逃がすやつがあるか。これからは何がかかっていても、逃がさないで引きずって来るんだぞ」
 兄はおこって、ぐつにそう言いつけました。
 その次の日も、ぐつがワナを見に行きました。
 するとたきぎを取りに行った母親が、あやまってワナにかかっていました。
 母親はぐつの顔を見ると、ホッとして、
「ああ、ぐつ、早くワナをはずしておくれ」
と、たのみました。
 ところが、ぐつは、
「いや、はずして逃がすと、兄にしかられるからだめだよ」
と、言って、ワナをはずさないで、そのまま母親をズルズルと引きずって来ました。
「ぐつや、ワナをはずしておくれ」
 母親がいくらたのんでも、ぐつは聞きません。
「なにがかかっていても、逃がさないで引きずって来いと、兄にきつく言われているから」
 ぐつはそう言って、とうとう家まで母親を引きずって来ました。
 谷川の水の中でも、ゴツゴツとした岩の上でもおかまいなしに、とにかくむりやりに引きずって来たので、そのために母親はケガをして、間もなく死んでしまいました。
 兄はまっ青になって、さんざんぐつをしかりつけましたが、死んでしまった人は生き返りません。
 仕方がなく、兄は母親のおとむらいのしたくを始めました。
「おい、ぐつ、お経を読んでもらわにゃならんから、お坊さんを呼んで来てくれ」
 兄は、ぐつに言いつけました。
 すると、ぐつは、
「ほいきた、でも、お坊さんてなんだい?」
と、聞きましたので、
「お坊さんというのはな、黒い着物を着て、おがむ者だよ」
と、兄は教えました。
 ぐつはウシ小屋に行って、黒いウシを見つけると、
「母親が死んだからおがみに来てくれと、兄がよんでる。さあ、来てくれ」
と、たのみました。
 するとウシは、
「モウー」
と、ないて、そっぽを向いてしまいました。
 それでぐつはもどって、兄に知らせました。
「お坊さんは、もう、いやだと言っていた」
「そのお坊さんは、どこにいたんだ?」
と、兄が聞くと、
「そのお坊さんは、ウシ小屋にいたよ」
と、ぐつが答えましたので、
「バカ! お坊さんは寺にいるんだ。寺は高い大きな家だ。早く行ってこい」
 兄はおこって、そう言いつけました。
 ぐつが出かけて行くと、高い木の上に黒いものがとまっていました。
 そこで、
「おーい、母親が死んだからおがみに来てくれと、兄がよんでる。早く来てくれ」
  ぐつがたのむと、黒いものは、
「カアー」
と、鳴いて、飛んで行ってしまいました。
  それでぐつは、そのことを兄に知らせました。
  兄はぐつを使いにやっても役に立たないので、ぐつに、
「お前は、めしをたいておれ」
と、言って、自分でお坊さんを呼びに出かけて行きました。
 ぐつがめしをたいていると、なべがグツグツと音を立て始めました。
(このなべは、おらの名まえを知っていて呼ぶんだな)
 ぐつはそう思って、
「ほい、ほい」
と、返事をしていました。
 ですが、そのうちなべは、グツクッタ(ぐつ食った)、グツクッタ(ぐつ食った)と、音を立てました。
 それでぐつは、
「おらは、食ってないよ」
と、答えていましたが、いつまでも、グツクッタ、グツクッタと、なべが言っているので、ぐつはおこってなべを庭に持ち出すと、石の上にたたきつけてやりました。
 そしたらなべは、
「クワン」
と、言って、われました。
 そしてそれきり、なにも言わなくなりました。
(早くそう言えば、わられないですんだのに)
 ぐつがそう思っていると、兄が帰って来てまたしかられました。
 兄はお坊さんをふろに入れようと思って、ぐつにふろをわかさせました。
 そして、わいたと言うのでお坊さんが入ると、底のほうはまだ水でした。
「こりゃ、冷たくてかなわん、かぜを引くから、早くなんでもくべて、わかしてくれ」
 お坊さんがブルブルふるえながらそう言ったので、ぐつは近くにあったお坊さんのゲタや衣を、ぜんぶ燃やしてしまいました。
 お坊さんがあたたまってふろから出ると、持ち物が何もなかったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 住宅デー
きょうの誕生花 → ゆり
きょうの誕生日 → 1986年 松浦亜弥(歌手)


きょうの日本昔話 → 幸運をまねくネコ
きょうの世界昔話 → 十三匹のハエ
きょうの日本民話 → 一つおぼえ
きょうのイソップ童話 → ノミと人間
きょうの江戸小話 → 昼寝

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6月24日の日本民話 竜宮へ行った海女

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 6月の日本民話

6月24日の日本民話

竜宮へ行った海女

竜宮へ行った海女
三重県の民話三重県情報

 むかしむかし、安乗村(あのりむら)の瓦屋(かわらや)のおばあさんが、海女(あま)に行ったままなかなかもどってこないので、村人たちは死んだと思って葬式(そうしき)を出しました。
 それからしばらくたった頃、村の者が魚釣りをしていると、海の中から、
「ホーイ、ホーイ」
と、声がして来ました。
 しばらくすると、今度は大きな声で、
「助けてくれー、助けてくれー」
と、いう声とともに、海女の磯桶(いそおけ)がういてきたのです。
 その磯桶は、瓦屋のおばあさんのものでした。
 村の若者は急いで海へもぐり、海の中にいたおばあさんを助けあげると、おばあさんは手に小さな桐(きり)の箱を持っています。
 やっとのことでおばあさんを家に連れて帰ると、おばあさんはこんな事を言いました。
「大グラ島から四十間(約70メートル)ほど海の底にもぐったところに、石の鳥居(とりい)があったので、さらにもぐるとイソコ大神があったのじゃ。お参りをしたら、イソコさんがこの小さな桐の箱をくれたのじゃ、そして『人の前ではけして開けるでないぞ、開けずにおけば家が繁昌(はんじょう)するが、開けると七代のあいだ、盲目(もうもく→目の見えない人)の子が生まれてくる』といわれたのじゃ」
と、いいました。
 聞いていた村人たちは桐の箱の中を見たくなり、おばあさんに見せてくれと何べんもたのみましたが、おばあさんは決して見せようとはしません。
 そうしているうちに、庄屋(しょうや)さんがこのことを知り、庄屋さんは瓦屋のおばあさんのところにやってきていいました。
「ばあさんが海の中に行ったまま、もう帰って来ないかと思っていたのに、よくぶじで上ってきて喜ばしいことじゃ、なんでもばあさんは、小さな桐の箱を持って来たそうじゃが、いったい何が入っているのじゃ?」
「それがなあ、イソコ大神さんが、『開けるじゃないぞ、開けたら大変な目に会うぞ』といわれたので」
「ほう、それはどんな目にあうのだ」
「それがなあ、ちょっと開けただけでも、七代のあいだ盲目の子が生まれるというのだ」
「へえ、それではみんなの前で開けたらどうじゃ? そうすれば、責任はみんなにあるのだから、大丈夫でねえか?」
「うん、まあ、しかしなあ・・・」
 庄屋さんと押し問答(もんどう)のすえ、瓦屋のおばあさんはとうとう小さな桐の箱をあける事になりました。
 そしておばあさんがふたを開けると、あの小さな桐の箱の中から大きな蚊帳(かや)が出てきて、みるみるうちに八畳の間いっぱいに広がりました。
 村人たちがおどろいて見とれていると、おばあさんがいません。
「おい、おい、ばあさんや?」
 みんながよんでみても、返事がありません。
 そこで、みんなでおばあさんをさがしまわると、おばあさんはふとんの中へもぐって体を丸くしていたのです。
「ばあさんよ、あの蚊帳はじゃまだから、なんとかもとどうりにならんのかなあ」
「ほれ、わしが箱を開けたらあかんといったやないか!」
「まさか、あの小さな桐の箱から、こんなに大きな蚊帳が出てくるとは思わんかったから」
「まあ、たしかにな。しかし庄屋さん、これをどうしたらいいのかのう?」
と、聞くと、庄屋さんはうでをくんで考えこんでいます。
 村人たちみんなも、困った顔をしていました。
 そこでおばあさんは、
「海の底のイソコ大神に行くのはもうごめんだから、陸の磯部(いそべ)さんにいってお頼みしてこよう」
と、いいました。
 それには庄屋さんをはじめ、村人たちみんなも賛成したので、おばあさんは磯部さんへ行くことになりました。
 すると、磯部さんが、
「桐の小箱と蚊帳を持って来い」
と、いうので、さっそく婆が持って行きますと、
「海の底のイソコさんのいわれることを聞かないから、こんな事になったのじゃ。今回は何とかするが、よく反省せいよ」
と、磯部さんは、おばあさんをしかりつけたのです。
 それから後、瓦屋では家訓(かくん→家の決まり)として、
《約束は、絶対に守ること》」
と、言い伝え、家業(かぎょう)にはげみましたので、商売は大変繁昌(はんじょう)したという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → UFOの日
きょうの誕生花 → すいせんのう
きょうの誕生日 → 1964年 野々村真(タレント)

きょうの新作昔話 → 雨の夜のかさ 豊臣秀吉
きょうの日本昔話 → じょうるり半七
きょうの世界昔話 → お百姓と悪魔
きょうの日本民話 → 竜宮へ行った海女
きょうのイソップ童話 → 旅人とオノ
きょうの江戸小話 → 早業

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6月23日の日本民話 キツネの毒キノコ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 6月の日本民話

6月23日の日本民話

キツネの毒キノコ

キツネの毒キノコ
青森県の民話青森県情報

 むかしむかし、山のふもとのある村に、娘が一人いるおじいさんとおばあさんがいました。
 娘のお春(はる)はとても美人で、おじいさんはむこさん選びにたいへんです。
 ある日の事、とてもいい話がまいこんできたので、娘の嫁入りが決まりました。
 おじいさんは喜んで、嫁入り道具を買いに町へでかけていきました。
 峠(とうげ)の道をのぼっていくと、林の中にキツネが集まって、たのしそうに歌いながらおどっています。
 立ちどまって見ていると、キツネたちは、
♪美人のお春
♪嫁にもらって
♪楽しみだ
♪早くこねえかな
と、歌っているのです。
 それを聞いたおじいさんは、ビックリ。
「キツネたちめ、よくもだましよったな!」
 おじいさんはいそいで家にもどると、おばあさんに話をしました。
 それを聞いたおばあさんも、すっかり腹をたてて、
「じいさま。キツネに豆酒(まめざけ)のませると、動けなくなるといいます。キツネたちが嫁をもらいにきたら、のましてやりましょう」
と、いって、さっそく豆酒をつくりました。
 さて約束の日になると、嫁むかえのキツネたちは男前の若者に化けて、ウマまでひきつれてやってきました。
 おじいさんは、
「やあやあ、遠いところをごくろうさんです。まだ娘の準備が終わっていないので、しばらく休んでくだされや」
と、あいさつをして、豆酒をのませました。
 ウマには、豆酒のしぼりかすの煮豆をあたえました。
 いい気持ちになって横になった男たちはいびきをかきはじめ、そしていつのまにやら、しっぽを出したり、とがった耳を出したりと、キツネの正体をあらわしはじめたのです。
「それっ、やってしまえ!」
 おじいさんとおばあさんは、ねむっているキツネたちを手あたりしだいになぐりつけました。
 そして家の裏につないだウマたちも、キツネの正体をあらわしていたので、これも次々にたたきのめしてしまいました。
 そのとき、一匹のキツネが息をふきかえして逃げ出しました。
 おじいさんがあとをつけていくと、キツネは山の巣穴(すあな)へ逃げこんで、留守番(るすばん)をしていた古ギツネに言いました。
「みんな殺されてしもうたんじゃ。おら、かたきうちをする。じじいの家の庭の木の下に生える毒キノコに化けて、娘のお春も一緒にみな殺しにしてやるわ」
 それをきいた、留守番の古ギツネは、
「毒キノコに化けるというが、人間はかしこいからな。毒キノコの毒はイワシの煮干しを入れて煮たら、消えてしまうのを、知ってるかもしれんぞ」
と、いいましたが、若いキツネはききません。
(そうか、毒キノコの毒は、イワシの煮干しをいれて煮たら消えてしまうのか)
 話をきいたおじいさんは、喜んで家に帰っていきました。
 庭でまっていると、やがて大きなキノコが生えてきました。
 おじいさんはそのキノコをとって、イワシの煮干しを入れて煮てみると、キツネが化けたキノコの毒が消えて、とてもおいしいキノコ汁になったのです。
 おじいさんとおばあさんは近所の人たちをよんで、キツネのキノコ汁でたのしい宴会(えんかい)をひらいたという事です。

※ イワシの煮干しで毒が消えるのは、キツネが化けたキノコの毒だけで、本当の毒キノコの毒はイワシの煮干しを入れても消えません。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 踏切の日
きょうの誕生花 → みやこわすれ
きょうの誕生日 → 1967年 南野陽子(女優)


きょうの日本昔話 → なぞかけあねさま
きょうの世界昔話 → 大きな家と小さな家
きょうの日本民話 → キツネの毒キノコ
きょうのイソップ童話 → ライオンとプロメテウスとゾウ
きょうの江戸小話 → でき心

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6月22日の日本民話 大火事を知らせた男

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 6月の日本民話

6月22日の日本民話

大火事を知らせた男

大火事を知らせた男
愛知県の民話愛知県情報

 むかしむかし、ある町で、お金をとって碁(ご)をうたせる碁会所(ごかいしょ)をやっている老人がいました。
 この碁会所に、山のむこうの関ヶ原(せきがはら)にすむ男がやってきました。
 碁をおえると、男がいそいで帰ろうとするので、老人が、
「関ヶ原までは、十五里(約六十キロメートル)もある。いまからでは、とても今日中には帰れないぞ。一晩ここに泊まって、あしたの朝早く帰ったらどうだ?」
と、いいました。
 ところが男は、
「いやいや、そうもしておられん。なにしろ今月中に、関ヶ原で大火事があるんですわ。今夜かもしれんし、明日かもしれん。いやいや、もうすでに燃えているかもしれんのです。ですから、一刻も早く帰らなければならないのです」
と、いうのです。
 老人をはじめ、碁を打っている人たちは、おたがいに顔を見あわせました。
「ほほう。今月中に大火事があると。そんなことが、どうしてわかるのですか?」
 碁会所のお客さんの一人が、たずねました。
「それは三年前のこと。村の若い男が山へ木を切りにいって、そのまま行方知れずになってしまったんですわ。いくらさがしても、何一つ手がかりになるものは見つかりませんでしたが、ある日、山へ入った者が行方知れずの男とバッタリと出会ったのです。そして『これはおどろいた。お前、まさか幽霊(ゆうれい)ではあるまいな。みんな心配してさがしておったんだ。どこで何をしておった?』と、たずねると、男はこんな事をいったのです。『おら、いまテングにつかえてくらしておる。テングはな、おらを人間界に帰してくれんのじゃ。何年あとかはいわぬが、二月の月のうちに関ヶ原に大火事がおこって焼けてしまう。あんただけに知らせておくから、よくよく心得ておけよ』と、それで毎年二月になると、わしらは火の心配をしておるんじゃ」
 そういうと関ヶ原から来た男は、あわただしく帰っていきました。
 そして、二月の最後の日の夕方のことです。
「あの男がいったことなど信じてはおらなんだが、二月も今日で終わりじゃ。やっぱり何もおこらんかったな」
 碁会所の前に立って、老人が西の山に沈む夕日をながめていたときです。
 山をこえた関ヶ原の西のはしにある家から火がでて、はげしくふく西風にあおられて燃えひろがりました。
 そして、たった一夜のうちに、関ヶ原のほとんどの家が灰になってしまったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ボウリングの日
きょうの誕生花 → かんぞう(やぶかんぞう)
きょうの誕生日 → 1964年 阿部寛(俳優)

きょうの新作昔話 → アルキメデスの最後
きょうの日本昔話 → こんにゃくえんま
きょうの世界昔話 → 3匹のクマ
きょうの日本民話 → 大火事を知らせた男
きょうのイソップ童話 → ライオンとクマとキツネ
きょうの江戸小話 → おたばこいれ

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6月21日の日本民話 ナマズを食べない村

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 6月の日本民話

6月21日の日本民話

ナマズを食べない村

ナマズを食べない村
佐賀県の民話佐賀県情報

 むかしむかし、川上川(かわかみがわ)というところは、たくさん魚がとれる川でしたが、いつのころからか、この川にカナウという魔物がすむようになりました。
 ある夏の夜、漁(りょう)をしていた一人の男が突然姿を消してしまったので、村の人たちはおそろしくなって、昼間でも川で魚をとる者はいなくなってしまいました。
 カナウは、夜の川面(かわも)を火の玉のように飛びまわるといいます。
 何百年も生きつづけたヘビのマムシが、魔物になったものだともいわれます。
 ある夜の事、近くの村から川へ魚をとりにやってきた親子がいました。
 川にアミを入れると、いくらでも魚がとれます。
 親子はとった魚をかます(→ワラむしろを二つ折りにして作った袋)の中に入れてひと休みしていると、暗やみの中に青白い二つの火の玉が現れて、川面すれすれに動きながら、川原にいる二人に向かってきたのです。
「おい。なんじゃ、あれは?」
 父親が声をあげると大きな水音がして、火の玉は目の前で突然消えてしまいました。
 親子はおそろしくなって、かますに入れた魚も持たずに、そのまま逃げ出してしまいました。
 次の日の朝早く、親子はかます取りに、川原にやってきました。
 魚はそのままになっていましたが、中には自分たちがとったおぼえのない、大きなおなかをしたナマズが入っていたのです。
 あまりにも大きなおなかをしているので、親子はその場でナマズのおなかをさいてみました。
 すると、これまで見たこともない、奇妙な生きものの死体がでてきました。
 村のお百姓(ひゃくしょう)が近くの畑にいたので、たずねてみると、それはカナウという、人間を食うおそろしい魔物だと教えてくれました。
「カナウはな、あんたたちを食おうとして川面を走ってきたんだ。それを淀姫(よどひめ)さまの使者(ししゃ)のこのナマズがやっつけて、あんたたちを救ってくれたんじゃろう」
と、いうのでした。
 むかし、この村に淀姫さまという姫がいました。
 ある時、淀姫さまは嵐(あらし)をよぶことができる、不思議な宝の玉をもらいに竜宮城(りゅうぐうじょう)へいきました。
 その淀姫さまを背中にのせて遠くの海の底にある竜宮城まで運んだのが、川上川の大ナマズでした。
 淀姫さまが竜宮にいった年に、川辺に淀姫さまの神社がたてられました。
 このときから村の人たちは、川上川や村を守ってくれる淀姫さまの使者であるナマズを、決して食べないことにしました。
 もし食べたりしたら淀姫さまの怒りにふれて、たちまちはげしい腹痛をおこして苦しみだすという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → スナックの日
きょうの誕生花 → さつき
きょうの誕生日 → 1963年 青山剛昌 (漫画家)


きょうの日本昔話 → 百目
きょうの世界昔話 → ほらふき男爵 ワニとライオン退治
きょうの日本民話 → ナマズを食べない村
きょうのイソップ童話 → 黒イタチ
きょうの江戸小話 → おいはぎかご

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6月20日の日本民話 ウサギを追っ払ったキツネ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 6月の日本民話

6月20日の日本民話

ウサギを追っ払ったキツネん

ウサギを追っ払ったキツネ
岐阜県の民話岐阜県情報

 むかしむかし、あるところに、とてもりこうなおじいさんが住んでいました。
 ある日の事、畑にきてみるとウサギがたくさんいて、せっかくうえたなっぱのめを食べていました。
「こら、何をする!」
 おじいさんはあわててウサギを追っぱらいましたが、おじいさんの姿が見えなくなるとウサギはすぐにとびだしてきて、なっぱのめを食べはじめるのです。
(何とか、ウサギをやっつける工夫はないものか?)
 おじいさんは、いっしょうけんめい考えました。
「そうだ、いいことがあるぞ」
 次の日、おじいさんは畑に立てふだを立てました。
 するとそこへキツネがやってきて、立てふだを読みました。
「なになに、『キツネのくせになっぱのめを食べるな。これはわしの物だ』だと。わしがいつなっぱのめを食べたというのだ。人のせいにするなんてとんでもないやつだ。とっちめてやる」
 はらをたてたキツネは草むらにかくれて、立てふだを書いた犯人が来るのを待ちました。
 するとウサギたちがやってきて、なっぱのめを食べはじめたのです。
 キツネは、草むらからとびだして言いました。
「やい、よくもわしを悪者にしてくれたな。そんなやつは殺してやるから、かくごしろ!」
 ウサギたちは、何のことかわかりません。
 でも、キツネに殺されては大変ですので、大あわてで逃げていきました。
 それでもキツネは、くやしくてなりません。
「ばかにするな!」
と、言って立てふだをひきぬくと、メチャクチャにたたきこわして山へもどっていきました。
(しめしめ、うまくいったぞ)
 さっきからこのようすをかくれて見ていたおじいさんは、また畑になっぱのタネをまきました。
 そんなことがあってから、ウサギたちはもう二度と、畑へやってこなかったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 健康住宅の日
きょうの誕生花 → ちがや(べにちがや)
きょうの誕生日 → 1967年 ニコール・キッドマン (俳優)


きょうの日本昔話 → 十七毛ネコ
きょうの世界昔話 → ギルガメシュのぼうけん
きょうの日本民話 → ウサギを追っ払ったキツネ
きょうのイソップ童話 → 2匹のイヌ
きょうの江戸小話 → どうでも、しやぁがれ

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6月19日の日本民話 ものをいうじぞうさん

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 6月の日本民話

6月19日の日本民話

ものをいうじぞうさん

ものをいうじぞうさん
高知県の民話高知県情報

 むかしむかし、あるところに、つきたてのぬくぬくのおもちが大好物なおじいさんがいました。
 けれど、おじいさんは村一番の貧乏なので、正月がきても、もちなど食べることが出来ません。
 ある日の事、おじいさんは仕事の帰りに、山道のおじぞうさんの前で腰を下ろしました。
 そして、
「ああ、ぬくぬくのもちが食べたい」
と、ためいきをついたのです。
 すると、だれかがおじいさんの言葉をまねして言いました。
「ああ、ぬくぬくのもちが食べたい」
「だれだ?」
 おじいさんがふりむくと、そこにはおじぞうさんしかいません。
「なんと、おじぞうさまがしゃべったのか? ・・・いや、そんなバカなことは。まさか石のおじぞうさまが、『ああ、ぬくぬくのもちが食べたい』などというわけが」
と、言ったとき、ふたたびおじぞうさんが言ったのです。
「ああ、ぬくぬくのもちが食べたい」
 ビックリしたおじいさんは、おじぞうさんを持って帰ると、村のみんなにその話をしました。
 しかし、村の人たちは、
「なにをバカなことを。石のじぞうさんが、ものいうてたまるか」
と、だれも本気にしてくれません。
「ようし、それなら見せてやる」
と、おじいさんはみんなの前で、おじぞうさんに向かって言いました。
「ああ、ぬくぬくのもちが食べたい」
 するとおじぞうさんも、さっきと同じようにおじいさんのまねをして、
「ああ、ぬくぬくのもちが食べたい」
と、いったのです。
 この話を耳にした庄屋(しょうや)さんが、大金でこのおじぞうさんを買ってくれたので、おじいさんはぬくぬくのおもちをいつでも食べられるようになったと言う事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ベースボール記念日
きょうの誕生花 → イキシア
きょうの誕生日 → 1053年 白河天皇 (天皇(72代)

きょうの新作昔話 → 左甚五郎(ひだりじんごろう)の竜
きょうの日本昔話 → たけのこのおとむらい
きょうの世界昔話 → 大きなカブ
きょうの日本民話 → ものをいうじぞうさん
きょうのイソップ童話 → オオカミと少年
きょうの江戸小話 → ネコのまねしたお嫁さん

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6月18日の日本民話 貧乏長者

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 6月の日本民話

6月18日の日本民話

貧乏長者

貧乏長者
山形県の民話山形県情報

 むかしむかし、あるところに、一人の貧乏(びんぼう)な漁師(りょうし)のおじいさんが住んでいました。
 おじいさんには子どもが大勢いたので、働いても働いても貧乏でした。
 村にはまた、大金持ちの長者(ちょうじゃ)がいて、ある日、長者がおじいさんをよんで、
「わしも、じいさまの幸せにあやかりたいもんだ」
と、おじいさんにごちそうをしたのです。
 おじいさんは、首をかしげて
「わしなんかよりも、長者さまこそ、金持ちで幸せではありませんか?」
と、いうと長者は、
「いやいや、じいさまこそ村一番のしあわせもんだ。人間にとって一番目の宝である健康と、二番目の宝である子宝(こだから→子ども)が大勢いるんだからな。・・・じゃが、わしなぞは三番目の宝である、お金しかないじゃ。やっぱり村一番の宝持ちは、じいさまだよ」
「なるほど、そいつはうれしいな」
 おじいさんは大喜びで家に帰ると、おばあさんにその事を話しました。
 そして、おじいさんとおばあさんはさっそく、一番目の宝と二番目の宝のお礼をするために、お宮参り(おみやまいり)に出かけました。
 さて次の日の事、海に出かけたおじいさんの舟は大漁でした。
 おまけに海辺でひろったたき木をわったら、なんと中から大判小判がざくざくと出てきたではありませんか。
 ですが、おじいさんとおばあとんは、
「わしらは、一番目の宝と二番目の宝のある幸せ者じゃ。この上、三番目の宝まで手に入れたら、バチが当たってしまうわい」
と、とれた魚を村人たちにごちそうして、おみやげに、大判小判を一人一人に手渡したのです。
 それからおじいさんとおばあさんは、貧乏長者と呼ばれるようになったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 海外移住の日
きょうの誕生花 → おもだか
きょうの誕生日 → 1942年 ポール・マッカートニー (ビートルズ)


きょうの日本昔話 → 百物語
きょうの世界昔話 → むすびこぶ
きょうの日本民話 → 貧乏長者
きょうのイソップ童話 → ヤギとロバ
きょうの江戸小話 → れんこんのあな

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6月17日の日本民話 まめになれないとうふ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 6月の日本民話

6月17日の日本民話

まめになれないとうふ

まめになれないとうふ
愛媛県の民話愛媛県情報

 むかしむかし、おとうふが病気になりました。
 それを聞いたダイコンが、お見まいに出かけることにしました。
 でも、一人で行くのははずかしいので、ゴボウをさそいに行きました。
「おとうふさんが病気だそうです。二人でお見まいに行きませんか?」
 すると、ゴボウが言いました。
「わたしはぜんぜん風呂に入らず、体中があかだらけで汚いので、色の白いダイコンさんと一緒に行くことはできません。おとうふさんには、どうかよろしくお伝えください」
 そこでダイコンは、ニンジンのところへ行きました。
「おとうふさんが病気だそうです。二人でお見まいに行きませんか?」
 すると、赤い顔のニンジンが、いよいよ顔を赤くして言いました。
「じつは今、お酒を飲んだばかりです。こんな赤い顔をしてお見まいには行けません。だれかほかの人をさそってください。おとうふさんには、よろしく」
 ダイコンはその足で、サトイモのところへ行きました。
「おとうふさんが病気だそうです。二人でお見まいに行きませんか?」
 すると、小イモたちの世話をしていたサトイモが言いました。
「それはお気の毒。一緒に行きたいのですが、このとおりたくさんの子どもがいますので、出かけることは出来ません」
「それじゃ、子どもさんも一緒にどうですか? にぎやかな方が、おとうふさんもよろこぶと思いますよ」
「とんでもない。子どもたちがさわいだら、おとうふさんの病気にさわります。すみませんが、よろしくお伝えください」
「それじゃ、しかたがありません。一人で出かけることにしましょう」
 そこでダイコンは、一人でとうふのところへお見まいに行きました。
「おとうふさん、具合はいかがですか? ゴボウさんも、ニンジンさんも、サトイモさんも心配していました。早く元気になってくださいね」
 すると、とうふが言いました。
「ありがとうございます。おかげさまでだいぶよくなりました。でも、もう元の体にはもどれません」
「どうしてですか? そんな気の弱いことを言ってないで、早くまめになってくださいね」
 ダイコンがはげましましたが、とうふはこまった顔で言いました。
「わたしはとうふですから、まめになることはできません」
(ああ、なるほど、それはお気の毒に)
 ダイコンは、心の中で言いました。
 『まめになる』というのは、『元気になる』という意味です。
 まめはとうふになれても、とうふはまめにはなれないのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → おまわりさんの日
きょうの誕生花 → リアトリス
きょうの誕生日 → 1947年 今くるよ(漫才師)

きょうの新作昔話 → アルキメデスの新兵器
きょうの日本昔話 → ちょうふく山のやまんば
きょうの世界昔話 → 小ウサギのしょうばい
きょうの日本民話 → まめになれないとうふ
きょうのイソップ童話 → ウシと車軸
きょうの江戸小話 → つみなひとだま

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6月16日の日本民話 金を拾ったら

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 6月の日本民話

6月16日の日本民話

金を拾ったら

金を拾ったら
山梨県の民話山梨県情報

 むかしむかし、あるところに、とても貧乏な男が二人いました。
 いくら働いても人に借りたお金も返せないで、ある暗い晩に、二人はそろって夜逃げをしたのです。
 夜逃げをしてどこかへ行ってしまえば、借金を返さなくても大目にみてもらえるような時代でした。
 二人はまっ暗な夜道をどんどん逃げて、夜が明ける頃には、だいぶ遠くまで来ました。
「このあたりまで来ればもう大丈夫。追いかけられてつかまることもないだろう」
と、二人は、いくらか気持ちが楽になってきました。
 それでいろいろと、お金に苦労した話などをしながら歩いて行きました。
「おれたちはお金で苦労したが、金は天下の回りものと言うからな。ここらで、そろそろ回ってきてもいいもんだか。・・・おい、もしおれがここでお金を拾ったら、どうすると思う?」
 一人が聞くと、もう一人が言いました。
「決まっているじゃないか。おれにも半分くれるだろ」
「とんでもない! 拾ったらおれの物だ。お前なんぞにやるもんか!」
「なんだと。友だちだというのに、お金を一人じめしようというのか。お前がそんな欲張りとは知らなかったぞ。おまえはまるで、イヌやネコと同じだ!」
 すると相手は、かんかんに怒り出しました。
「イヌやネコとはなんだ! もう一度言ってみろ!」
「ああ、何度でも言ってやる。人間の心を忘れたやつは、イヌやネコと同じだ」
「もう、がまんできねえ!」
「おう、かかってこい!」
 二人は道のまん中で、とっくみあいのけんかをはじめました。
 そのとき、向こうから一人の旅人がやってきました。
「やめろやめろ、やめないか!」
 旅人が、なんとか二人を引き離すと、二人とも着物が破けてボロボロです。
「いったい、どうしたというんだ?」
 すると、一人の男の人が言いました。
「友だちというのに、こいつはお金を拾っても、おれに少しもよこさないんだ!」
「何をいいやがる。いくら友だちでも、おれの拾った物はおれの物だ。お前になんかやるものか!」
「だからお前みたいな奴は、イヌやネコと同じだというんだ」
「おれがイヌやネコなら、お前はイヌやネコにたかるノミだ」
「なんだと!」
「やるか!」
 二人はまた、つかみあいをはじめようとしました。
「待て待て! あわてるんじゃない。わしがけんかをしないようにしてやるから、まず、拾った金をここへ出してみろ」
 すると二人は、あわてて言いました。
「いや、まだお金なんか拾っていない」
「そうだ。もし拾ったら、という話じゃ」
「はあ?」
 それを聞いて、旅人は腹をかかえて大笑いしました。
「お前たちは、なんという欲張りだ。拾いもしないお金のことで、けんかをするなんて」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
 二人の男の人は、なんの役にも立たないけんかをしたことがわかり、きまり悪そうに頭をかきました。
 そして、おたがいに貧乏のために心まで貧しくなっていたことに気がつき、それからは仲良く二人で旅をして行ったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ケーブルテレビの日
きょうの誕生花 → まつばぎく
きょうの誕生日 → 1966年 上杉和也・達也 『タッチ』


きょうの日本昔話 → 光る玉
きょうの世界昔話 → くさったリンゴ
きょうの日本民話 → 金を拾ったら
きょうのイソップ童話 → 天文学者
きょうの江戸小話 → タイのおかわり

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6月15日の日本民話 子守り娘のお伊勢参り

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 6月の日本民話

6月15日の日本民話

子守り娘のお伊勢参り

子守り娘のお伊勢参り
徳島県の民話徳島県情報

 むかしむかし、ある村の油屋に、十三才になる子守り娘(こもりむすめ)がいました。
 ある日の事、この子守り娘は自分が子守りをしている油屋の三才の息子を背負って、こっそり伊勢神宮(いせじんぐう)へお参(まい)りにでようとしたのです。
 けれど、家の奥さんに見つかって、取り押さえられてしまいました。
「この子はまだ、わたしのお乳をのんでいるんだよ。どうしてもお伊勢さんにお参りしたいというなら、お前一人でいっておいで!」
 奥さんはそういって、背負われていた息子を取り戻すと、子守り娘だけをお伊勢参りにいかせました。
 ところが子守り娘が出かけてすぐ、どうしたことか、元気だったその油屋の息子が急に死んでしまったのです。
 突然の事に、油屋の家の者たちは悲しみに沈んでいました。
 ある日の事です。
「ただいま、もどりました」
 元気な声がして、お伊勢参りにいっていたあの子守り娘が帰ってきました。
 家の中に入ってきた子守り娘は、いつものように背中に子どもを背負っています。
 のぞきこむと、その子はなんと、このあいだ亡くなった三才の息子ではありませんか。
「こ、こ、これは、どういうことじゃ?」
 家の者たちは、あまりの事に言葉もありません。
 騒ぎをきいて、近所の人たちもやってきました。
 子守り娘は背中の子どもをたたみの上におろして、手ぎわよくぬれたおしめをとりかえました。
 そして、
「ここはお家よ。さあ、ゆっくりおねんねしなさいね」
 そういって、子どもをふとんに寝かしつけたのです。
 油屋の主人は、これが夢やまぼろしでないことに気づくと、村のお寺へ走っていきました。
 そして、この不思議な出来事を和尚(おしょう)さんに話しました。
「よし、では墓を調べてみよう」
と、和尚さんがさっそく油屋の息子のお墓を調べてみると、なんとお墓は空っぽで、中には伊勢神宮のおはらいのお札が一枚入っていたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 暑中見舞いの日
きょうの誕生花 → たちあおい
きょうの誕生日 → 1937年 伊東四朗(タレント)

きょうの新作昔話 → 川場温泉
きょうの日本昔話 → ネズミ経
きょうの世界昔話 → ハメルンの笛吹
きょうの日本民話 → 子守り娘のお伊勢参り
きょうのイソップ童話 → アリとコガネ厶シ
きょうの江戸小話 → おしょうの約束

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6月14日の日本民話 宝のどんぶり

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 6月の日本民話

6月14日の日本民話

宝のどんぶり

宝のどんぶり
福井県の民話福井県情報

 むかしむかし、鯖江(さばえ)の城下町(じょうかまち)に、五郎兵衛(ごろべえ)という男が住んでいました。
 五郎兵衛はなまけ者で、少しも働こうとはせず、家にある品々を売って毎日を食いつないでいました。
 そんなある日、とうとう家の中はふとん一枚が残るだけになりました。
 さすがの五郎兵衛も、ふとんにあおむけになりながら考え込んでしまいました。
「もうこれ以上、売る物がない。どうしようか?」
 その時ふと、天井からぶらさがっている小箱が目に止まりました。
「あった! あの箱を売ればいい。・・・いや、まてよ」
 その箱は先祖代々(せんぞだいだい)、貧乏になって家をなくす時まで開けてはならないと伝えられている事を思い出しました。
 しばらくの間、五郎兵衛は箱をにらんでいましたが、
「ええい、こんな時だ。ご先祖さまだって文句はいうまい」
と、さっさと箱を開けてしまいました。
 すると箱の中には、薄汚れたどんぶりが一つ入っているだけです。
「ちぇっ、こんな物、何にもならないや。・・・まてまて、人のいい長者(ちょうじゃ)の源(げん)さんなら『家宝(かほう)だ』といえば、少しぐらいのお金をくれるだろう」
 五郎兵衛はさっそく、長者のところへ持っていきました。
 長者は家宝まで売りにくる五郎兵衛をあわれに思い、薄汚れたどんぶりと米五俵(ひょう)をかえてくれました。
 さて、その年の秋祭りの日に、長者がたくさんのお客を家に呼びました。
 そしてなにげなく五郎兵衛のどんぶりを、みんなに見せました。
「長者さん、これが家宝だって? どんぶりの底にコイの染付(そめつけ)があるだけじゃないか。水でも入れたら、何か変わった事でもおきるのですかい? たとえば、染付のコイが泳ぎだすとか?」
と、客に冗談半分にいわれた長者は、
「そうだな。そうかもしれないぞ」
と、どんぶりに水を入れてみました。
 すると不思議な事に、コイの染付がむくむくと動きだして、ピシャンと空中に飛びはねたのです。
「なんと、これは!」
 一同は、ビックリです。
 長者はその不思議などんぶりを、五郎兵衛に返しました。
 五郎兵衛は何度も水を入れてみましたが、ただのどんぶりでした。
 でも長者が水を入れると、コイがちゃんと泳ぎ出すのです。
 それをみた五郎兵衛は、これはご先祖さまのいましめにちがいないと思い、それからはまじめに働いたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 日記の日
きょうの誕生花 → しもつけ
きょうの誕生日 → 1944年 椎名誠(小説家)


きょうの日本昔話 → 山寺の菩薩
きょうの世界昔話 → イリーサのおまんじゅう
きょうの日本民話 → 宝のどんぶり
きょうのイソップ童話 → カとウシ
きょうの江戸小話 → 商売なかま

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6月13日の日本民話 宝箱をとりもりどしたネコ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 6月の日本民話

6月13日の日本民話

宝箱をとりもりどしたネコ

宝箱をとりもりどしたネコ
北海道の民話北海道情報

 むかしむかし、あるところに、まずしい男が住んでいました。
 毎日毎日、山へ出かけてはシカやクマをとってくらしていますが、もとは村一番の長者(ちょうじゃ)で、だれからも尊敬(そんけい)されていました。
 ところが長者の家に代だい伝えられていた、神さまの宝箱を海の魔神(まじん)にぬすまれてからというもの、男はすっかり落ちぶれてしまい、今ではそまつな小屋に、一匹のネコとイヌがいるだけなのです。
 猟(りょう)に出かけるといっても、まったく獲物(えもの)のない日があり、そんな時はネコやイヌにさえエサをあげることができません。
 そしてここ何日も獲物が見つからず、ウサギ一匹手にすることができないので、男は山へ行くのをあきらめて、朝から晩まで寝てばかりいました。
 ネコもイヌもこまってしまい、男のまくら元へいって相談しました。
「なあ、このままでは、あなたもわしらもうえ死にしてしまうよ。何とか食べ物を手に入れる方法はないのですか?」
 すると男は、
「いや、もうわしはだめだ。すまないがこんな家は出て、お前たちだけで生きてくれ」
と、言ったのです。
 しかし、今までかわいがってもらった恩(おん)をわすれて、男を見捨てることはできません。
 ネコが男に、はげますように言いました。
「そんな気の弱いことでどうするの。さあ、一緒に山へ行きましょう」
「・・・いいや、神さまの宝箱がなくてはどうにもならない。いくらがんばっても、むだな事だ」
 男は宝箱を海の魔神に盗まれてから、ひどい暮らしになったことを正直にうちあけました。
 するとネコが、
「なんだ、そうだったの。では、あたいらが宝箱をとりもどしてあげるよ」
 そしてイヌも、
「そうさ。わしらがもどってくるまで、どんなことがあっても待っていておくれよ」
と、言ったのです。
 二匹はすぐに家を出て、海の魔神の住む島へと向かいました。
 島までは遠くて、二匹は海の中をかわるがわる相手を背中にのせて泳ぎ、ようやく島へ着いた時には、寒さと空腹で一歩も動けない状態でした。
 それでも魚を食べて、ようやく元気になった二匹が立ちあがろうとした時、おびただしい数のネズミが山の方から海辺へと押しよせてきたのです。
 ネコは、そのネズミたちにさけびました。
「魔神のいるほら穴へつれていきなさい! さもなくば、このツメで一匹残らずひっとらえて、やつざきにしてやるよ!」
 イヌも負けじと、大声でさけびました。
「いうことを聞かないと、このキバで一匹残らず、かみくだいてやるぞ!」
 その声にネズミたちは驚き、急いで向きをかえると、二匹を案内して山へと登っていったのです。
 さて、山の中腹に大きな岩屋(いわや→岩のどうくつ)があり、入口には石の戸が閉まっていました。
 ここが魔神のいるほら穴のようですが、どうやら魔神は留守のようです。
「よし、今のうちよ。お前たち、早くこの石の戸に穴を開けなさい!」
 ネコが手をふりあげて命令すると、ネズミたちは石の戸をかじり、石の戸にポッカリと穴を開けました。
「それっ!」
 二匹が岩屋にとびこむと、男の言ったとおりの宝箱がありました。
 ネコがその箱をかかえて、イヌの背中にのせました。
 二匹が岩屋から出てきた時、ネズミたちの姿がありません。
「もしかすると、魔神のところへ知らせに行ったのかもしれない。はやくもどろう」
 二匹は、海辺に急ぎました。
 ネコがふり返ると、ネズミを引きつれた魔神が、ものすごい勢いで山をくだってくるのが見えます。
 二匹はあわてて海へ飛び込み、箱を押さえながら必死に泳ぎました。
 ようやく村の海辺へたどりつくと、今度はネコが背中に箱をのせて、男の待つ家へともどっていきました。
 二匹が宝箱を取り返してきたのを知った男は、ビックリです。
「おおっ、まさか本当にとり返えしてくるなんて。ありがとう。もう二度と、盗まれるようなことはしないぞ」
 男が神さまの宝箱を開けると、中から金と銀の玉が出てきました。
 不思議なことに、その玉を米びつに入れると、空っぽだった米びつがたちまち米であふれて、空の袋に入れると、袋は砂金でいっぱいになりました。
 宝箱のおかげで男はまた長者となり、りっぱな屋敷をかまえました。
 男が長者になったのを知って、以前に長者の屋敷で働いていた者たちも、次々ともどってきました。
 長者はネコとイヌのためにりっぱな部屋をつくり、いつまでも大切にかわいがりました。
 そして魔神がふたたび宝箱を盗まないように、ネコとイヌは死ぬまで、神さまの宝箱を守ったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → FMの日
きょうの誕生花 → ツンベルギア
きょうの誕生日 → 1960年 山田邦子(タレント)


きょうの日本昔話 → どろぼうたいじのへ
きょうの世界昔話 → ズルタンじいさん
きょうの日本民話 → 宝箱をとりもりどしたネコ
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6月12日の日本民話 立山の浦島物語

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 6月の日本民話

6月12日の日本民話

立山の浦島物語

立山の浦島物語
富山県の民話富山県情報

 むかしむかし、立山(たてやま→富山県の南東部)のふもとに住んでいた木こりが山に入り、木の株(かぶ)に腰をおろしてナシを食べ始めました。
 するとどこからきたのか、たくさんのアリが手にはい上がってきました。
 木こりはアリをはらい落としましたが、はらってもはらってもはい上がってくるので、もうナシを食べる気がしなくなって谷底に投げすてました。
 それから三年がたって、その日も山で仕事をしていた木こりは、なにげなく谷間(たにま)を見みおろして目をみはりました。
 谷一面が、黄金色(こがねいろ)にかがやいているのです。
 あまりの美しさに、木こりが谷へおりていくと、目の前にキラキラしたご殿(てん)があらわれました。
 みると山門の上に、《蟻王殿(ありおうでん)》と書いた額(がく)がかかげられています。
 あまりの事におどろいていると、門の中から美しい女の人が出てきて、
「ようこそ。さあどうぞ、お入りください」
と、笑顔で声をかけました。
 木こりがためらっていると、
「大王さまがお待ちかねなのですよ。さあ、どうぞこちらへ」
と、手を取らんばかりにさそうので、木こりは女の人の後についていきました。
 ご殿の中に入ると、りっぱな姿をした男の人が近づいてきました。
「おほん。私はアリの国の王です。三年前、アリの国が食べ物不足でこまっていたとき、あなたがナシを投げてくださいました。おかげでみんなの命が助かりました。あなたは私たちの大恩人(だいおんじん)なのです。さあ、ゆっくりとおくつろぎください」
と、いうと、木こりが口にしたこともないごちそうを、つぎつぎに運ばせました。
 それから木こりは楽しい日々を過ごしていましたが、やがて家に帰ることにしました。
 大王にお礼をいい、おみやげにもらった金銀の宝物を背負って家に戻ると、十日ばかりと思っていたのに、なんと五十年もたっていたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 恋人の日
きょうの誕生花 → ユッカ
きょうの誕生日 → 1978年 釈由美子(タレント)

きょうの新作昔話 → アルキメデス 宇宙にある砂粒の数
きょうの日本昔話 → ふたりになった孫
きょうの世界昔話 → アトリの鐘
きょうの日本民話 → 立山の浦島物語
きょうのイソップ童話 → イヌとウサギ
きょうの江戸小話 → どろぼうのおてほん

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6月11日の日本民話 旅のどろぼう

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6月11日の日本民話

旅のどろぼう

旅のどろぼう
山口県の民話山口県情報

 むかしむかし、お金を持っている旅人について歩いて、すきを見てお金をぬすむドロボウを、『ゴマのハエ』と呼んでいました。
 さて、ある日の事、ある(さむらい)が大切なお金をある場所にかくし持って、江戸から旅に出ました。
 すると、見知らぬ男がやってきて、気やすく話しかけてきました。
 人のよさそうな男で、とても悪人には見えません。
 男がどこまで行くのかと聞くので、侍が答えました。
「せっしゃは、下関(しものせき)までじゃ」
「おお、そいつはよかった。実は私も下関までまいりますゆえ、どうかお供させてくだされ」
 そこで二人は同じ宿にとまって、一緒にふろへ入ったり、一緒に食事をとったりしました。
 最初は何ともなかったのですが、大阪をすぎ、姫路をすぎ、岡山をすぎるころ、男の様子(ようす)が少し変わってきたので、侍はあやしいと思い、思い切って男に、ドロボウではないのかとたずねました。
 すると男は、地面に頭をこすり付けるようにして言いました。
「ははーっ、言い訳はいたしません。実はわたしは、ゴマのハエなのでございます。お侍さまが大金をもっていなさるとにらんで、ついてまいりましたが、どうやっても、どこに隠しておいでかわかりませぬ。わたしの負けでございます。もしお見逃しいただけるのでしたら、このまま退散(たいさん)いたします」
 そういって頭を下げる男に、侍は言いました。
「やはりそうであったか。本来なら役人(やくにん)に引き渡すところだが、何も盗(ぬす)んではおらぬことだし、正直に白状(はくじょう)したので見逃してやろう」
「ありがとうございます。では、これにて」
と、いって立ち去る男を、侍は引き止めました。
「まあ待て。あと一晩とまれば、次の日には下関に着く。宿代はせっしゃが出すゆえ、もう一晩ともに過ごそうではないか」
「これは重ね重ね、ありがとうございます」
 その晩、侍は宿につくと、今までずっと宿の人にあずけていた雨がさを、部屋の床の間へおいて寝ました。
 あくる朝おきてみると、ゴマのハエの男がいなくなっていました。
「さすがに、気まずくなって逃げ出したか。まあよい、お主との旅は楽しかったぞ」
 そして旅支度(たびじたく)をおえた侍が、ふと雨がさに手をやると、雨がさが軽くなっていたのです。
「しまった。やられた」
 侍は、かさのえにかくしていた大金を、まんまと抜き取られてしまったのでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 雨漏り点検の日
きょうの誕生花 → べにばな(すえつむはな)
きょうの誕生日 → 1965年 沢口靖子(俳優)


きょうの日本昔話 → 黒雲
きょうの世界昔話 → ガリバーのぼうけん
きょうの日本民話 → 旅のどろぼう
きょうのイソップ童話 → ウシとガマ
きょうの江戸小話 → かまどろぼう

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6月10日の日本民話 おじいさんとカニ

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6月10日の日本民話

おじいさんとカニ

おじいさんとカニ
新潟県の民話新潟県情報

 むかしむかし、ある村に、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
 ある日、おじいさんが川へ行ったとき、一匹のカニをつかまえて来ました。
 そしてカニをえんの下でかって、とてもかわいがっていました。
 おじいさんはおいしいものがあると、まっ先にカニに分けてやりました。
 町へ行ったときには、いつもカニの好きな焼きイモを買って来て食べさせるのです。
 それでカニは、すっかりおじいさんになつきました。
 おじいさんが、えんの下をのぞいて、
「ほら、じじ来たぞい。カニたろ出ろやい」
と、呼ぶと、カニははい出して来てごちそうをもらい、喜んで食べるのです。
 ところがおじいさんがあまりカニをかわいがるものだから、おばあさんはだんだんカニをにくらしく思うようになりました。
(カニのやつが来てから、おじいさんときたら、おいしいものをカニにばかりやっておる。本当ににくたらしいカニだ。おじいさんのいないときに、うんといじめてやろう)
と、考えました。
 そんなある日、おじいさんは町へ行って、なかなか帰って来ませんでした。
(よし、今日こそ、カニのやつをぶってやろう)
 おばあさんはまきをかくし持って、カニのいるえんの下をのぞき、おじいさんの口まねをして、
「ほら、じじ来たぞい。カニたろ、出ろやい」
と、呼びました。
 カニはおじいさんが帰って来て、いつものように何かおいしいものを持って来てくれたのだろうと思い、喜んでえんの下から出て来ました。
 ところが立っていたのは大好きなおじいさんではなく、こわい顔をしたおばあさんだったのです。
 カニはあわてて穴の中に逃げ込もうとしましたが、間に合いませんでした。
 おばあさんがかくし持っていたまきで、ガツンとカニをたたいたのです。
 おばあさんは殺すつもりではなかったのですが、当たりどころが悪かったのでしよう。
 カニはもがき苦しんで、死んでしまいました。
「おお、これはたいへんなことをしてしまった!」
 おばあさんはオロオロしましたが、じきに、
(まあ、死んでしまったものはどうにもならんから)
と、なんとおじいさんが帰って来ないうちに、さっさとカニをにて食べてしまったのです。
 そしてカニのからをうらの竹やぶにうめて、おじいさんが町から帰って来ても知らん顔をしていました。
 おじいさんはいつものように、カニの好きな焼きイモを持ってえんの下をのぞき、
「ほら、じじ来たぞい。カニたろ出ろやい」
と、カニを呼びました。
 けれども、おじいさんが呼べばいつもすぐ出て来たカニは、いくら呼んでも出て来ません。
(おかしいな、どうしたんだろう? うらの畑にでも遊びに行ったのかな?)
 おじいさんはそう思って、家のうらへさがしに行き、あちこち歩き回って何度も呼んでみましたが、カニは出て来ません。
(おらのカニたろは、どこへ行ってしまったんだ?)
 おじいさんは悲しい気持ちがこみあげてきて、ただボンヤリと立っていました。
 すると竹やぶの方からきれいな小鳥が一羽飛んで来て、おじいさんが立っているすぐそばの木の枝にとまって、
「ピイヨ、ピイヨ」
と、悲しそうに鳴きました。
 そしてしばらくしてから、また竹やぶのほうへ飛んで行きました。
(めずらしい小鳥じゃ。こんなきれいな小鳥は、ここらにゃおらんはずじゃが)
 おじいさんが見とれていると、その小鳥は何度も竹やぶの方からもどって来ては、おじいさんに呼びかけるように鳴くので、
(これはきっと、おらに何か知らせたがっているんだな)
 おじいさんはそう思って、小鳥の飛んで行く方へついて行きました。
 竹やぶの中にはだれがほったのか、土をほり返した跡がありました。
 小鳥はそこを、足でしきりにかいていました。
 おじいさんがそばに行って見てみると、なんとカニのこうらやちぎれた足が土の中から出かかっているではありませんか。
「だ、だれが、こんなひどいことを! ・・・ひょっとしたら、おらのばあさまでは?」
 おじいさんはおこって、家にもどりました。
 そしておばあさんに、
「よくもあんなかわいそうなことをしてくれたな!」
と、言うと、あまりのも悲しみに、そのまま倒れてしまいました。
 おばあさんも少しは、自分のしたことを悪いと思っていましたが、これほどおじいさんが悲しむとは思っていなかったのです。
「おじいさん、おじいさん、おらが悪かった。どうかかんべんしてください。おどかすつもりでたたいたら、力が入りすぎたのか、死んでしまったので。初めから殺すつもりでやったのじゃなかったのに。悪かったね、かんべんしてください」
と、おばあさんは泣きながら、おじいさんにあやまりました。
 おじいさんはおばあさんが心からあやまっているとわかると、そろそろと起きあがって、
「いいよ、いいよ」
と、言って、おばあさんをゆるしてやりました。
 そして二人で、竹やぶの中にカニのお墓を建ててやりました。
 それからというもの、きれいな小鳥が飛んで来ては、竹やぶの中で美しい声で鳴いたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 路面電車の日
きょうの誕生花 → アカンサス(はあざみ)
きょうの誕生日 → 1977年 松たか子(俳優)

きょうの新作昔話 → 忠犬ハチ公
きょうの日本昔話 → テングの隠れみの
きょうの世界昔話 → ヘビの魔法
きょうの日本民話 → おじいさんとカニ
きょうのイソップ童話 → ワシのまねをしたカラス
きょうの江戸小話 → るすばんめがね

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6月9日の日本民話 殿さまはもの知らず

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6月9日の日本民話

殿さまはもの知らず

殿さまはもの知らず
岡山県の民話岡山県情報

 むかしむかし、ある殿さまが、ほんのわずかなけらいをつれて、自分の領地(りょうち)の見回りにいきました。
 お百姓(ひゃくしょう)たちは、殿さまが見回りに来ているなんて知りませんので、あちこちの畑で、こえだめから下ごえをくみ出して、それを作物の間にかけていました。
 そのにおいがあまりにもくさく、殿さまは鼻をつまんでたずねました。
「なんじゃ、このにおいは? あれは、何をしておるんじゃ?」
「はっ、おそれながらあれは、下ごえともうしまして、人の小便や大便をこえだめで腐らせて、畑にかけているのでございます。そうすると、野菜がおいしゅう食べられるのでござります」
「それでは、わしが食べる野菜も、そうしておるのか?」
「はっ、まことにおそれながら」
「きたないのう。この先、わしが食べる物には、あのような物を決してかけるでないぞ」
 それからしばらくして、こやしをかけずに作った野菜を殿さまにさしだしたところ、
「おや? どうも、いつものようなうまさがないが?」
と、言うのです。
 家来がわけを話すと、殿さまは家来に野菜の入ったうつわを突き出して、
「こうもまずいのなら、これへ、下ごえとやらをかけてきてくれ」
と、いったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ネッシーの日
きょうの誕生花 → きょうがのこ(しもつけそう)
きょうの誕生日 → 1934年 ドナルドダック (漫画キャラ)


きょうの日本昔話 → 雄ジカの目
きょうの世界昔話 → 黒ウシの助け
きょうの日本民話 → 殿さまはもの知らず
きょうのイソップ童話 → 2匹のコガネ厶シ
きょうの江戸小話 → ダイコンが白いわけ

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6月8日の日本民話 ツバメを愛した娘

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 6月の日本民話

6月8日の日本民話

ツバメを愛した娘

ツバメを愛した娘
千葉県の民話千葉県情報

 むかしむかし、あるところに、なかなか子どもにめぐまれない夫婦がいました。
 でもようやく、女の子がうまれました。
 とても美人でかしこい、心のやさしい娘です。
 この娘が、十三歳になった春のことです。
 遠い南からツバメがやってきて、家の軒下(のきした)に巣(す)をつくって三羽のヒナをうみました。
 かわいいヒナや親鳥たちを、娘は毎日たのしみに見ていました。
 ところがある日、親鳥が二羽とも近所のネコに食べられてしまったのです。
 娘はとても悲しみましたが、三羽の子ツバメをカゴにいれて、育てることにしました。
 一羽は死んでしまいましたが、残った二羽はぶじに育って、やがて飛ぶようになりました。
 朝に娘がカゴの口をあけてやると、二羽のツバメは元気に空へ飛びたっていきます。
 そして夕方になると、ちゃんと帰ってきて、カゴの中に入るのでした。
 秋になってツバメたちが南へ帰るときになると、娘は二羽のツバメの足に、
「春になったら、また帰ってきてね」
と、目印(めじるし)の赤い糸をくくりつけました。
 二羽のツバメは秋の空へ高く飛びあがって、娘のもとを去っていきました。
 それからまもなくして、娘はかぜをこじらせて病気になってしまいました。
 両親はいろいろな医師を連れてきましたが、そのかいもなく、娘は静かに息をひきとりました。
 やがて、また春がやってきました。
 ある日のこと、二羽のツバメが元気に鳴きながら、家へやってきました。
 ツバメは娘の姿をさがしているのか、家の中を飛びまわっています。
 母親がふとツバメを見ると、娘が足にむすんだ赤い糸が見えました。
 母親はこみあげてくるものをおさえながら、ツバメたちにいいました。
「あんたたちをかわいがって育ててくれた娘はね、このお正月に病気で死んでしまったのよ。もう、ここにはいないの。娘に会いたいなら、お寺の裏にあるお墓へ行きなさい。左のすみに新しいお墓があるから」
 母親の言葉がわかったのか、ツバメはかなしそうに鳴くと、外へ飛びたっていきました。
 ツバメが家にきた三日後は、娘の月の命日です。
 両親は春の花を持って、娘のお墓へお参りにいきました。
「おや? あれはなんだろう?」
 見ると、お墓の前に、足に赤い糸をつけた二羽のツバメが死んでいたのです。
「ツバメさえ、こんなにしたっていた娘なのに」
 両親は二羽のツバメのなきがらを小箱にいれて、娘のお墓に一緒にうめてやったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → バイキングの日
きょうの誕生花 → でいこ(アメリカでいこ)
きょうの誕生日 → 1955年 金子修介(映画監督)

きょうの新作昔話 → アルキメデス 金の冠の重さ
きょうの日本昔話 → みそさざいは鳥の大将
きょうの世界昔話 → お見あい
きょうの日本民話 → ツバメを愛した娘
きょうのイソップ童話 → アリに刺された男とヘルメス
きょうの江戸小話 → いうにいわれず

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6月7日の日本民話 サルの一文銭

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6月7日の日本民話

サルの一文銭

サルの一文銭
鳥取県の民話鳥取県情報

 むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
 おばあさんが機織(はたお)りで木綿(もめん)をつくり、おじいさんがそれを町へ売りに行ってくらしていました。
 ある日、おじいさんが木綿を町へ売りに行っての帰り道、どこからともなく、
「ウキー、ウキー」
と、サルの鳴き声がしてきました。
 あたりを見まわしてみると、向こうの木の枝に母ザルがいて、猟師(りょうし)が鉄砲(てっぽう)でねらっているところでした。
 母ザルは、猟師に手を合わせて、
(助けてください)
と、いうようにおがんでいます。
 でも、猟師はそんなことはおかまいなしに、今にも鉄砲の引き金を引こうとしたとき、おじいさんは母ザルを助けようと、
「ハックション!」
と、大きなクシャミをしたのです。
 すると、そのクシャミにおどろいた猟師の鉄砲がそれて、鉄砲の玉がおじいさんの肩に当たったのです。
「わあ、わあ、おらが悪いんじゃないぞ! いきなりクシャミをしたお前が悪いんだ!」
 ビックリした猟師はそう言うと、あわてて逃げていきました。
 さて、鉄砲にうたれたおじいさんが、肩を押さえながらうずくまっていると、どこからともなく子ザルたちが現れてきて、おじいさんの傷口をなめたり、薬草をもんではりつけたりして、おじいさんをかいほうしてくれました。
 そして手車(てぐるま)をくんでおじいさんを乗せると、そのままサルの家へ連れて行ったのです。
「先ほどは危ないところを助けていただき、ありがとうございました」
 母ザルはそういって、サル酒(さるざけ)や果物(くだもの)など、次から次へとごちそうを出してくれました。
 すっかりごちそうになったおじいさんが、
「親切にしてくれてありがとう。じゃが、おばあさんが心配しているから、もう帰るよ」
と、いうと、母ザルは一文銭を一つさしだしました。
「これはサルの一文銭といって、世にも大切な宝物ですが、命(いのち)を助けてくださったお礼にさしあげます。これをまつっておくと、金持ちになれます」
 そしてサルたちは、おじいさんを手車に乗せて、家まで送ってくれたのです。
 さて、それからおじいさんは母ザルに言われたように、一文銭を神棚(かみだな)にまつってみますと、不思議な事におばあさんの機織りはどんどんはかどりますし、それをおじいさんが売りに行くと、高い値段でどんどん売れるのです。
 やがて、おじいさんとおばあさんは大金持ちになりましたが、ある日の事、大切なサルの一文銭がなくなってしまったのです。
 おじいさんとおばあさんは、サルの一文銭を探しましたが見つかりません。
 そこでおばあさんは、家で飼っているタマという名のネコを呼んでいいました。
「タマよ、サルの一文銭を三日のうちにさがしておいで。さがして来てくれたら、おいしいごはんをたんと食べさせてやろう。でも、さがし出せなかったら、これだよ」
と、をぬいて見せたのです。
 ビックリしたタマはあわてて家を走り出て、すぐに一匹のネズミをつかまえました。
 そして、ネズミにむかって言ったのです。
「ネズミよ、うちの宝物が無くなった。三日のうちに見つけて来い。見つけて来たら助けてやる。もし見つけて来ないと尻尾まで食ってしまうぞ」
 ビックリしたネズミは食べられては大変と、家のあちらこちらをさがし回って、ついにサルの一文銭をさがし出しました。
そうして、やっと隣の家のタンスの中にあるのを見つけて、それを取り出して来てタマに渡したのです。
 タマは喜んで、それをくわえておじいさんに渡しました。
 おじいさんも、おばあさんも、タマも、ネズミも、みんな大喜びです。
 そしておじいさんとおばあさんの家は、いつまでも栄えたと言うことです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 母親大会記念日
きょうの誕生花 → くちなし
きょうの誕生日 → 1949年 岸部四郎(俳優)


きょうの日本昔話 → 夕やけナスビ
きょうの世界昔話 → ローザとジバル
きょうの日本民話 → サルの一文銭
きょうのイソップ童話 → カとライオン
きょうの江戸小話 → ひとりかご

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6月6日の日本民話 安珍清姫

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6月6日の日本民話

安珍清姫

安珍清姫
和歌山県の民話和歌山県情報

 むかしむかし、安珍(あんちん)という名の若い旅のお坊さんが、紀州(きしゅう→和歌山県)の熊野大社(くまのたいしゃ)へおまいりするとちゅうで、とっぷりと日がくれて困っていました。
「今夜の宿を、どこかにさがさねば」
安珍は庄屋(しょうや)の家にとめてもらうことにしましたが、この家には清姫(きよひめ)という一人娘がいて、つかれた安珍をやさしくもてなしました。
そうこうするうちに、清姫と安珍は、つよく心がひかれるようになりました。
しかし、修行中のお坊さんが、女の人に心をうばわれるのはゆるされないことです。
でも安珍は、清姫に、
「熊野からの帰りには、かならずここによります。・・・あなたにあうために」
と、かたい約束をしてしまいました。
さて次の日、安珍はぶじに熊野大社につきましたが、熊野の僧侶(そうりょ)たちに安珍の心のまよいを見抜かれて、早くまよいからさめるようにと、教えさとされました。
「たしかに、わたしは修行中の身、女に心をうばわれるなど」
そこで安珍は清姫と会わないために、帰り道は、来るときとはちがう道をいくことにしました。
ところが清姫は、そんな事とはつゆしらず、いまかいまかと安珍の帰りを待ちわびています。
「安珍さま。安珍さまは、どうなされたのじゃろう?」
待ちきれなくなった清姫は、家を飛び出すと、見知らぬ旅人に声をかけました。
「あの、もし、熊野もうでの若い旅のお坊さまに、お会いになりはしませんでしたか?」
「ああ、その方なら、たぶん別の道をいかれたと思うが」
「別の道を! あんなにかたい約束をしたのに、まさか。そんなはずが」
清姫は、夢中でかいどうを走りだしました。
それはもう、くるったように走って走って、走りつづけます。
そして日高川のわたし場まできたとき、やっと安珍のすがたを見つけることができました。
「安珍さまー。安珍さまー」
走ってくる清姫に気づいた安珍は、清姫には二度と会ってはならないのだと、自分にそういいきかせ、
「船頭(せんどう)さん、は、早く船を出してくだされ。は、早く!」
と、船頭をせきたてます。
「安珍さまーっ、安珍さま。なぜ、どうして、安珍さまー」
清姫は自分から逃げていこうとする安珍におどろき悲しみ、やがて、そのおもいは、はげしい憎しみへとかわっていったのです。
「これほど、これほどおもっているのに、なぜ逃げるのです。なぜ、なぜ逃げるのじゃ!」
清姫は安珍ののった船を追って、そのまま日高川の水の中へ飛び込みました。
そしていつのまにか、清姫はおそろしい大蛇の姿になって、川をわたっていったのです。
「にっくき、安珍め!」
船をおりると、安珍はむちゅうで走り出しました。
そしてそれを追う、大蛇。
街道(かいどう)のそばに、道成寺というお寺がありました。
安珍は必死の思いで、このお寺に逃げ込むと、
「どうか、わたしをお助けください。追われております。どうか、この寺へおかくまいください」
「それならば」
寺の人たちはつりがねをおろして、その中に安珍をかくまってくれました。
安珍はそのつりがねの中に身をかくし、しずかにお経をとなえつづけます。
清姫の大蛇は道成寺の石段をうねうねとのぼると、山門をくぐって安珍をさがしもとめました。
そうしてついに、大蛇は安珍の隠れるつりがねを見つけたのです。
「見つけたぞ、いとしい人。もうはなさない」
大蛇はそのつりがねの上から体をグルグルとまきつけると、大きな口からまっ赤なほのおをはきつづけたのです。
安珍は、まっ赤にそまるかねの中で、一心にお経をとなえつづけます。
でも、ほのおでまっ赤になったかねの中で、とうとう安珍は、やけ死んでしまったのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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6月5日の日本民話 イノシシのようなネコ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 6月の日本民話

6月5日の日本民話

イノシシのようなネコ

イノシシのようなネコ
和歌山県の民話和歌山県情報

 むかしむかし、紀州の国(きしゅうのくに→和歌山県)の熊野(くまの)の山に、大きなほら穴がありました。
 いつのころからか、このほら穴には、トラに似たけだものが住みつくようになりました。
 そのけだものは野に出てキツネやタヌキをつかまえていましたが、ときには村へやってきて、村の人が飼っているイヌをおそうこともあります。
 けだものは人間を見ても逃げようとはせず、反対に人間を追いかけてくるしまつです。
 村の人たちもこまってしまい、なんとかしようと猟師(りょうし)たちを集めました。
 ところが、けだものの足は大変早く、猟師が鉄砲をかまえたとたん逃げだし、いつのまにか姿をくらましてしまうのです。
 そこで思いきって、すみかのほら穴へ行って、退治しようという事になりました。
 しかし、鉄砲をうちそこなって大あばれされたら、みんな殺されてしまうかもしれません。
 さんざん知恵をしぼった結果、猟師たちはワナをしかける事にしました。
 竹で大きな串(くし)と輪(わ)をたくさんこしらえると、それに鳥もち(→トリモチなどの樹液からとった、ネバネバのもの)をぬって、ほら穴の前に置きました。
 そして万が一のために、鉄砲を持った猟師たちがほら穴を取り囲んでいます。
 人のけはいに気づいたのか、けだものはなかなか出て来ません。
 それでも夕方近くになって、お腹をすかせたけだものがようやく顔を出しました。
「よし、出てきたぞ」
 みんなは小声で言いあうと、ゆっくりと鉄砲をかまえます。
 さすがのけだものも、ワナが仕掛けてあるとは気がつかずに、ワナの輪に入りました。
 そのとたん輪がしまり、けだものが倒れました。
 けだものは輪をはずそうともがきますが、そこらじゅうにさしてある竹串の鳥もちが体にくっつき、いよいよ動けなくなりました。
「ギャーオーーッ!!」
 けだものは、たまらず悲鳴をあげます。
「それっ! やっつけろ!」
 待ちかまえていた猟師たちがいっせいに飛び出し、ワナにかかったけだものを力いっぱいなぐりつけました。
「フギャーーッ! ギャーオーーッ!!」
 すさまじい声が山にひびきわたり、けだものは死にものぐるいであばれます。
 しかし、さすがのけだもの、こうなってはどうする事も出来ません。
 やがて頭から血を流して、動かなくなりました。
「やったぞ!」
 みんながホッとして、倒したけだものをながめると、なんとそれは、イノシシほど(イノシシの体長は、大きいもので一メートル以上)の大きさのあるネコだったのです。
「こんな大きなネコなんて、見たことがない」
「それにしても、どうしてこんなにでっかくなったのか」
 猟師たちがほら穴の中を調べててみると、タヌキやキツネの骨にまじって、人間の骨もいくつか出てきたという事です。

おしまい

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6月4日の日本民話 ヒヒ

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6月4日の日本民話

ヒヒ

ヒヒ
宮城県の民話宮城県情報

 むかしむかし、ある山里に、浅右衛門(あさえもん)という元気な木こりのおじいさんがいました。
 ある日の夕方、浅右衛門じいさんが仕事をおえて山から村へもどってくるとちゅう、突然谷間の方から、髪の毛が背中までたれさがっている、二メートルもある大きなサルが現れたのです。
 そのサルの手には、引きちぎった人間の片腕がにぎられています。
 そして浅右衛門じいさんと目があうと、こちらへ走りよってきたのです。
 おどろいた浅右衛門じいさんは、すぐに肩にかついでいたオノをふりあげました。
 するとサルの顔のくぼんだ目からあやしい光のようなものが出て、それを見た浅右衛門じいさんはその光に目がくらみ、ふりあげたオノをその場にほうりだすと、目をとじて両手をあわせて大声で神さまに祈りだしたのです。
 浅右衛門じいさんはそのとき、フーッと気が遠くなりました。
 すぐに気がついたのですが、もうサルの姿はありませんでした。
 それからしばらくたった、ある夜ふけの事です。
 となり村で寝ている娘さんが、何者かにほっぺたをかみつかれるという事件がおこりました。
 娘さんの話では、おそってきたのは浅右衛門じいさんが出会った大きなサルとよく似ていたそうです。
 夜ふけに寝ている人間までおそうようでは、ほうっておくことはできません。
 そいつを見つけだして退治しようと、二つの村では鉄砲を持った猟師たちを集めて、山の中や谷間をくまなくさがしまわりました。
 そして五日目の事、山二つを入った岩のかげで、やっと大ザルを見つけたのです。
 腕のいい猟師がねらいをつけて、鉄砲の引き金をひきました。
 大ザルはとびあがりましたがよけきれずに、足をうたれました。
 大ザルは足をひきずりながら、やぶの中へ姿を消しました。
 猟師たちはすぐに血のあとをつけて谷間の奥までいきましたが、大ザルは発見できませんでした。
「たしかに人間のようじゃったし、からだ中が毛でおおわれて、サルのようでもあったな」
「あれはヒヒというものにちがいない。ヒヒは何百年も生きている大きなサルで、人をおそって食うというぞ」
 しばらくのあいだ山へ入る者はいませんでしたが、その後、ヒヒを見たという者はいませんでした。

おしまい

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6月3日の日本民話 びんぼうになりたいお金持ち

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6月3日の日本民話

びんぼうになりたいお金持ち

びんぼうになりたいお金持ち
兵庫県の民話兵庫県情報

♪朗読を再生

 むかしむかし、あるところに、とてもお金持ちの家がありました。
「もう、お金なんかいらない」
と、いつも言っているのに、どうしたことか、お金はどんどんたまるばかりです。
 そこでまずしい人たちに、お金をかしてあげることにしました。
 そのとたん、お金持ちの家に大勢の人がおしかけてきて、ごはんを食べるひまもありません。
 しばらくたつと、今度はかりたお金を返しにくる人もふえてきて、もうたいへんないそがしさです。
(弱ったなあ。このままじゃゆっくりねむることもできん。どうしたものか?)
 お金持ちは、いろいろと考えて、
(そうか、お金がたまりすぎるからこんな事になってしまったのだ。のんびりくらすには、貧乏(びんぼう)になればいいんだ)
と、気がつきました。
 さっそくお金持ちは家の表に大きなはり紙をして、つぎのように書きました。
《おかげさまで、お金はほとんどなくなりました。だから今日かぎりでお金をかすのをやめることにします。お金をかりた人は、もう返さなくてもけっこうです》
 はり紙のおかげで家へ来る人もいなくなり、やっとしずかになりました。
(さあ、これで貧乏になれるぞ)
 ところがもともとお金持ちの家だったので、立派(りっぱ)な道具やこっとう品がたくさんあり、売ればたちまちお金がたまってしまいます。
 そこで、これも近所の人にただでやり、屋敷の庭にはえているみごとな植木もぜんぶ切りたおして、たき木にしてしまいました。
 ついでに庭のあちこちにある、大きな石までとりのぞくことにしました。
「なにも、そこまでしなくても」
 近所の人がいいましたが、お金持ちは、
「いや、なんとしても貧乏になり、これからはのんびりくらすのだ」
と、言って、大勢の人を呼んで石を運び出しました。
 すると、取り除いた石のあとから、大きなつぼがいくつも出てきました。
「おや? なんだろう?」
 おどろいてふたをとると、どのつぼにも金ぴかの小判がつまっています。
 どうやらこの家の先祖(せんぞ)がうめておいたものらしく、つぼのふたのうらには、
《これを、子孫(しそん)にのこす。大切に使ってくれ》
と、書いてありました。
 これには、さすがのお金持ちもまいりました。
「なんて事だ。ご先祖さまが大切に使ってくれと書いてあるので、人にやるわけにもいかないし、・・・まったく、貧乏したいと思っているのに、こんな大金が出てくるなんて、わしはよっぽど運の悪い人間だ」
と、何度もためいきをついたという事です。

おしまい

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6月2日の日本民話 テングに手を貸した和尚

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6月2日の日本民話

テングに手を貸した和尚

テングに手を貸した和尚
栃木県の民話栃木県情報

 むかしむかし、盛高寺(せいこうじ)という寺に、とても字の上手な和尚(おしょう)さんがいました。
 ある時、この寺にテングがやってきて、
「すまぬが、しばらく和尚の手を貸していただきたい」
と、いったのです。
 和尚さんは、ビックリして、
「テングどのに手を引きぬかれては、何も出来なくなってしまう。そればかりはかんべんしていただきたい」
と、ことわりました。
 するとテングは、大笑いし、
「いやいや。なにも手を引きぬいて持っていこうというのではない。和尚の字を書く力を貸してほしいだけだ。一言(ひとこと)、『貸す』といってくれればいい」
と、いいました。
 それを聞いてホッとした和尚さんは、
「それなら安心。よし、手を貸そう」
「うむ。では拝借(はいしゃく)する」
 テングはていねいに頭をさげると、そのまま寺を出ていきました。
 ところがテングの帰ったあと、和尚さんの手は思うように動かなくなってしまいました。
《これでは、手を引きぬかれたのと同じだ》
 和尚さんはガッカリして、テングに手を貸したことを後悔(こうかい)しました。
 そこで、近所の人たちには、
「手の骨を痛めたので、とうぶん字は書けない」
と、いって、テングが来るのを待っていました。
 それからひと月ほどして、ようやくテングがやって来たのです。
「不自由をかけてすまなかった。この前借りた手を返しにきた」
「それはそれは」
 和尚さんが思わず手をあげたら、手は思い通りに動くようになっていました。
「やれやれ、助かった」
 和尚さんがためしに字を書いてみると、前よりもすばらしい字が書けました。
 和尚さんは、すっかり喜んで、
「テングどのに手を貸したおかげで、書の腕が一段とあがったようだ」
と、お礼を言いました。
「いやいや、和尚の手は評判(ひょうばん)どおりたいしたものだった。その見事な筆には、仲間たちもおどろいていたぞ。お礼のしるしに火よけの銅印(どういん→銅製の印かん)を一つ置いていく」
 テングは和尚さんに銅印を渡すと、いつのまにか姿を消していました。
 それからというもの、和尚さんに書いてもらった字を家に張っておくと、その家では火事がおきないというので、和尚さんの書いた掛け軸は名僧(めいそう)の書として評判になりました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 横浜港・長崎港開港記念日
きょうの誕生花 → ささゆり
きょうの誕生日 → 1949年 鷲尾真知子(声優)


きょうの日本昔話 → 一人になった鬼の親分
きょうの世界昔話 → ギアッコ少年とマメ
きょうの日本民話 → テングに手を貸した和尚
きょうのイソップ童話 → 小ガラスと大ガラス①
きょうの江戸小話 → あみがさのわすれもの

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6月1日の日本民話 なわ

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6月1日の日本民話

なわ

なわ
東京都の民話東京都情報

 むかしむかし、江戸(えど→東京都)に、池城新左衛門(いけしろしんざえもん)という(さむらい)がすんでいました。
 ある晩、友だちをたずねていってのかえり道、新左衛門が、ちょうど墓場(はかば)にさしかかったとき、
「あっ」
と、思わず声をあげました。
 黒い物が、道の上にころがっているのです。
 よく見ると、どうやら人間のようです。
「何者だ?」
 声かけて近よって見ると、それは手も足もなわでしばられた女の人でした。
「このようなところで、なにをいたしておる?」
 女はかすれた声で、苦しそうにこたえました。
「わたくしは、この世の者ではござりませぬ」
「なに、すると死人か?」
「はい、夫を殺した罪(つみ)で、手足をしばられたまま土の中にうめられた者でございます。このようにしばられたままでは、地獄へもまいれませぬ。どうぞ、わたくしのこのなわをほどいてくださりませ」
「・・・・・・」
 思いもよらないたのまれごとに、新左衛門がためらっていると、女はなみだ声で、
「わたくしが毎晩ここに現れて、いくらお願いもうしても、どなたさまも逃げてしまわれます。それでいまだに、なわのままで苦しんでおります。お侍さま、どうぞ、このなわをほどいてくださりませ」
 話しを聞くうちに、新左衛門はこの女の人があわれに思えてきました。
「刑(けい)をすましたからには、そなたに罪はないはずじゃ。そなたの望みをかなえてやろう」
 新左衛門が女の人のなわをほどいてやると、女の人は、
「ありがとうございます。ご恩はけっして忘れませぬ」
と、言って、かき消すように消えてしまいました。
 それから、数年後のこと。
 新左衛門はお家騒動(おいえそうどう→けんりょくあらそい)にまきこまれて、責任を取って手足をなわでしばられたまま、うち首になってしまったのです。
 するとそこへ、どこからともなく女のすがたが現れて、首のない新左衛門の死体のなわをほどくと、そのままスーッと消えてしまったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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きょうの誕生花 → てんなんしょう
きょうの誕生日 → 1955年 千代の富士貢(相撲)

きょうの新作昔話 → 二宮金次郎(尊徳)
きょうの日本昔話 → 金太郎
きょうの世界昔話 → コルニーユじいさんの秘密
きょうの日本民話 → なわ
きょうのイソップ童話 → やぶ医者
きょうの江戸小話 → お祭りが、うんこ

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