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2009年5月

5月31日の日本民話 家宝の皿

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 5月の日本民話

5月31日の日本民話

家宝の皿

家宝の皿
大阪府の民話大阪府情報

 むかしむかし、大阪に、ある大金持ちがいました。
 この大金持ちの屋敷(やしき)には、先祖代々の宝として一枚の皿が伝えられています。
 この皿は青磁(せいじ)といって、青みがかったみどり色の、とてもめずらしいものでした。
  家の主はこの皿をなによりの自慢にし、桐(きり)の箱におさめてふくさで包んで、それはそれは大切にしています。
 ある時の事、この大金持のだんなは、友だちを二、三人つれて大阪でも有名な料理屋へいきました。
「さあ、食ってくれ。たんと食ってくれ」
 山のような料理が目の前にならべられましたが、その出された皿の中に、自分が宝としている青磁の皿とそっくりの皿がありました。
 だんなはその皿を手にとって、つくづくとながめていましたが、
(なんと不思議な。わしの物と少しもかわらんではないか)
 一緒にいた友だちもなかなかの目利きで、次々とその皿を手にとっては、
「いやあ、まことに見事なものよ」
「これは天下に二つとない、立派な皿じゃ」
 などと、ほめたのです。
 そのようすをだまって見ていただんなは、料理屋の主人を呼びました。
「主人、この皿をぜひゆずってもらいたい」
 これを聞いた料理屋の主人は、ビックリです。
「そ、それだけは。この皿は大切なお客さまがいらした時だけ、もちいております家宝の皿ゆえ、なにとぞお許しくださいませ」
 それを聞くと、金持ちのだんなは、
「それならなおのこと、ゆずってもらいたい。三十両(さんじゅうりょう→約二百十万円)で買い受けましょう」
 金持ちのだんなは大判三枚をほうり出すと、その皿を手にとって粉々に打ちくだいてしまったのです。
「ああっ・・・」
 店の主人は、くだけた皿を見つめていましたが、やがて座を立っていってしまいました。
 このなりゆきを見ていた友人たちが、
「どうしてまた、そのようなもったいないことを」
と、たずねると、大金持のだんなは、
「わしの持っておる青磁の皿は家の宝。世間にそれと同じ物が二つあっては、家の名がすたるわ」
と、答えたのです。
 その夜の事、いつものようにだんなは、青磁の皿をながめて楽しもうと桐箱のふたをしずかに開けました。
「あーっ!」
 さけぶと一緒に、その場にのけぞるように倒れました。
 なんとその中にあった青磁の皿は、粉々に打ちくだかれているではありませんか。
 しかもかけらの下には、大判が三枚、ちゃんと入っていたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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5月30日の日本民話 六助いなり

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5月30日の日本民話

六助いなり

六助いなり
京都府の民話京都府情報

 むかしむかし、京都の峰山(みねやま)の近くに、六助(ろくすけ)という、かやをかるのを仕事にしている働き者の男がおりました。
 六助は奥さんのおいちと二人で、山のかやをかってきては、それを売ってわずかなお金をもらってくらしています。
 この六助は働き者の上に、とても親切な男です。
 ある日の事。
「おや? こんなところに、キツネの巣穴(すあな)があるわい」
 それを聞いた、奥さんのおいちは、
「さわらない方がええよ。たたりがあるかもしれねえから」
と、いうと、六助は笑いながらいいました。
「なに、たたりなんかあるもんか。見ろ、こんなにかやがおいしげっておるじゃろう。これじゃ中は暗いし、お月さまもおがむことができめえ。いまおれがそうじしてやるからな」
 そういって六助は、キツネの巣穴のまわりのかやをきれいにかりとってあげました。
「ほれ、これでさっぱりしたじゃろ。さて、はらもへったで帰るとしよう」
 その日の、夜の事です。
 ねむっている六助とおいちのところに、キツネがやってきて言いました。
「今日はご親切に、そうじをしてくれてありがとう。おかげで、お月さまをながめながらねむれるようになりました。お礼に、いいことを教えましょう。あと十日もすると、京の伏見(ふしみ)のおいなりさんに富くじがあります。それを買うといいですよ。きっと大当たりしますから」
 キツネはこういうと、帰っていきました。
 とてもいい話ですが、それを聞いた二人は、それを信じようとはしませんでした。
「富くじなど、なかなか当たるもんでねえ。第一、そんな物を買う金がどこにもねえ」
「本当にねえ。おほほほほほほほ」
 でも次の日も、そのまた次の日も、キツネはやってきていうのです。
「富くじを買え、本当に当たるぞ」
 何回もそういわれると、二人はだんだんとその気になってきました。
「もしも富くじが当たれば、金や米がぎょうさん手に入るな」
「でもあんた、伏見までいくお金がないよ」
 するとその夜、またキツネが出てきていいました。
「伏見までのお金は、戸やしょうじを売ってつくればええ」
 それを聞いた二人はなるほどと思い、さっそく家の戸やしょうじを売ってお金を作ると、伏見へと向かいました。
「よしよし、金がぎょうさん手に入ったらどうするかな? まずは立派な家をたてて、ええ着物きて、おいちにもいっぱい着物を買うてやろう。それからそれから・・・」
 六助は七日かかって、やっと伏見につきました。
 だけど、町の中はシーンとしています。
 六助は、通りかかったおじいさんにきいてみました。
「あの、おたずねしますが、富くじはどこで売ってるんで?」
「へえ? 富くじ? それは来年の二月二日の午の日のことかいな。その日に市がたち、富くじが売られるんじゃが、まだ一年も先のことだよ」
「・・・はあ?」
 六助はしかたなく、家にもどっておいちにわけを話しました。
 それを聞いたおいちは、まっ赤になって怒りました。
「わたしは、お前さんがお金をたくさん持ってくると思って楽しみにしておったのに。戸もしょうじもないこの家で、寒いのをがまんして待っておったんよ。どうしてくれるの!」
「そんな事いうなら、お前がいってこい!」
 二人はたちまち大げんかです。
 そのようすを見て、天井のはりの上からキツネが顔を出していいました。
「やーい、六助。よーく聞け! お前はわしらの巣穴の大切なかやをかったじゃろ。おかげで、わしの家には風がスースー入り込んで、おちおちねむることも出来なくなったんだ! お前たちも戸やしょうじがなきゃ、わしらとおなじ気持ちだろう。どうだい、ねながらお月さまを見る気持ちは。けっけけけけけけけけ」
 それを聞いた六助は、おいちに言いました。
「ああ、こっちは親切のつもりでやったんじゃがのう、キツネにとっちゃあ、ありがためいわくだったんだなあ。悪いことをした。明日、キツネの巣穴の前に戸を立ててこよう」
 次の日、六助はキツネの巣穴の前に、大きな石をおいて帰りました。
 その石を道ゆく人は「六助いなり」といって、おがんでいくようになったという事です。

おしまい

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5月29日の日本民話 わらしべの王子

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5月29日の日本民話

わらしべの王子

わらしべの王子
鹿児島県の民話鹿児島県情報

 むかしむかし、琉球(りゅうきゅう→沖縄)の那覇(なは)に、長栄(ちょうえい)という男の子と母親が二人でくらしていました。
 長栄が七才になったとき、母親は病気で死にましたが、死ぬ少し前に、
「長栄、これからわたしが言うことをよく聞いて、かならずやりなさい。いいですか、ほかに何もありませんが、天井にワラが三たばあります。わたしが死んで七日たったら、それをみそ屋に持って行って、みそと取りかえなさい。わたしは王さまの妃(きさき)でしたが、ある時、わずかのあやまちのために追い出されたのです。城を出るときに、王さまの父に当たるおかたからいただいたのが、そのワラなのですよ」
と、長栄に言い残しました。
 たった一人になった長栄は、三日間、泣き続けましたが、四日目にはなみだをぬぐって、
(もう、泣かないようにしよう)
と、自分にいいきかせました。
 そして母親が言いのこしたとおり、母親が死んで七日たったらワラを三たば持って、みそ屋へ行きましたが、
「ワラとみそを交換しろだと? ふざけるな!」
と、相手にされませんでした。
 ですが、長栄がしんぼう強く二日も三日も座り込んだので、みそ屋はとうとう、
「お前には負けた、そのワラを買ってやろう」
と、言って、ワラと引きかえにみそを三つくれました。
 長栄はそのみそを持って、今度はいかけ屋に行きました。
 そして、一日中座り込んでいると、いかけ屋は、
「お前の持っているみそを、売ってくれないか?」
と、言ったのです。
「このみそは売れない。でも、そこにあるカマと取りかえるのならいいけど」
と、長栄が答えると、
「そうかい。それならどれでも、自分で好きなのを取りなさい」
 いかけ屋はそう言ったので、長栄はみそをわたして、ふちのかけ落ちたカマを選びました。
 そしてそのカマを持って、かじ屋へ行きました。
 何も言わずに座り続ける長栄を、かじ屋は無視していましたが、座り込んで二日目に、かじ屋は言いました。
「いつまでそこにいられてもこまる。そのカマを買ってやるから、どこかへ行きな」
 そこで長栄は、
「売ることはできない。でも、と取りかえるのならいいけど」
と、答えて、刃の部分だけで持つ部分のない刀をカマと引き替えにもらいました。
 その次の日、長栄はその刀を布にくるんで、唐船(からぶね)をつないである浜へ行きました。
 そして昼寝をしていると、ドロボウがしのび寄って来て、そばにおいてあった刀を取ろうとしました。
 ところがドロボウが刀を取ろうとして手をのばすと、不思議な事に刀はヘビに変わってしまうので、どうしてもぬすむことができません。
 このようすをジッと見ていた、唐船の船頭(せんどう)が、
「おーい、そこで寝ているわらべ(→子ども)よ、その刀を持って船まで来てくれや」
と、大声で呼びました。
 長栄が刀を持って、船に行くと、
「ヘビに変わるとはめずらしい刀だな。その刀をわしにぜひ売ってくれ。お金はたっぷり出すぞ」
 船頭は目を光らせて、そう言いました。
「売ることはできない。でも、びょうぶと取りかえるのならいいけど」
 長栄はそう答えて、びょうぶをもらいました。
 さて、長栄は船頭からもらったびょうぶを持って、王さまの城に行きました。
 そしてけらいに、
「今からおもしろいものを、ごらんにいれます」
と、言って、中庭に入り込むと、びょうぶを立ててそのかげで昼寝を始めました。
 すると間もなく、びょうぶにかいてあったウグイスがよい声でさえずりました。
 その声につられたのか、たくさんの小鳥たちも集まって来て、ウグイスの声に合わせてさかんにさえずります。
 けらいたちはみんなおどろいて、目を見張りました。
 小鳥たちの声を聞きつけて出て来た王さまは、これを見て長栄に、
「これ、そのびょうぶをわしに売ってはくれまいか」
と、言いました。
「このびょうぶは売ることはできませんが、二つの物となら、すぐにでも取りかえます」
 長栄がそう答えると、王さまは、
「その二つの物とは、いったいなにか?」
と、たずねました。
 そこで長栄は、ニッコリ笑うと、
「はい、その二つのものとは、海の塩をぜんぶと、陸の水をぜんぶです」
と、答えました。
 王さまは長栄の答えを聞くと、バカな子どももいるものだなと思って、
「そうか、よろしい。海の塩と陸の水をやるから、そのびょうぶをもらうぞ」
 そう言って、その場で海の塩と陸の水とをぜんぶ長栄のものとするという書き付けをけらいにつくらせて、長栄にわたしました。
 長栄は海の塩と陸の水が自分のものとなったので、ふれを出して、井戸の水をくむ人からは、一おけにつき十銭(じゅっせん)をもらい、塩水をくむ人からは、同じように五銭もらうことにしました。
 井戸水をくんだり、塩水をくんだりするたびに、いちいち十銭、五銭とお金を取られるのて、人びとはすっかりこまってしまいました。
「なんとか、もとのようにお金などはらわないで、自由にくませてもらえないものだろうか」
 人びとはそう言って、王さまに願い出ました。
 けれども王さまは、びょうぶと引きかえに長栄のものとしてしまったものですから、どうにもなりません。
(これは、わしとしたことがまずいことをいたした。なんとか取り返さねば)
 王さまはそう思って、長栄を呼び、
「お金はじゅうぶんにあたえるから、水と塩を返すように」
と、言いました。
「いやです。水と塩は返しません!」
 長栄がことわると、王さまはこまりきって、
「それでは、やむをえぬ。戦をいたしても取りもどすが、よいな」
と、おどかしました。
 けれども長栄はビクビクしないで、王さまの顔をにらみながら、
「わたしは戦だっておそれません。ですが、これだけは王さまにおたずねしたいと思います。それは、わたしの母親をわずかのあやまちで追い出したのは、いったい、どこのどなただったかということです」
と、言いました。
 そう言われて、王さまは長栄が自分の子であることを知ったのです。
 それで王さまは王の位を長栄にゆずって、水と塩とを返してもらったという事です。

おしまい

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5月28日の日本民話 うそ五ろうとはねおうぎ

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5月28日の日本民話

うそ五ろうとはねおうぎ

うそ五ろうとはねおうぎ
福島県の民話福井県情報

 むかしむかし、岩代の国(いわしろのくに→福島県)のあるところに、なまけものでうそつきの、「うそたれうそ五ろう」という男が住んでいました。
 あまりひどいうそをつくので、ある日、怒った村人たちにつかまえられて、山の高い木の枝に、さかさづりにされてしまいました。
 するとそこにテングが、テングの宝物の「はねおうぎ」をパタパタとあおぎながら空を飛んできて、
「いったい、何をしておるんじゃ?」
と、たずねたのです。
「さかさまになって見るけしきはいいぞ。どうじゃ、テングさまもやってみんかね?」
「おもしろそうじゃな。しかし、どうやってぶらさがるんじゃ?」
「おらが教えてやるから、ちょっと、おろしてくだされ」
 うそ五ろうはテングをうまくだましてテングを木のえだにさかさづりにすると、とりあげた「はねおうぎ」をパタパタとあおいで、京の都まで飛んでいきました。
 都を歩いていると、りっぱな屋敷の前に、
《娘の病気をなおしたものは、むこにむかえる》
と、立て札がありました。
 うそ五ろうは屋敷の人に、
「娘さんは、どんな病気だね?」
と、たずねました。
 すると屋敷の人は、声をひそめながら答えました。
「それがな、おならの止まらない『尻なり病』です」
「よしきた。おらがなおしてやる」
 うそ五ろうは娘の座敷に入ると、はねおうぎで、娘のおしりをあおぎました。
 するとおならはピタリとやんで、娘も屋敷の人たちも大喜びです。
 そして、家の主人に、
「ありがとうござしました。ぜひとも、娘のむこになってください」
と、たのまれました。
「それは願ってもない話しだが、ちょっくら待ってください」
 うそ五ろうははねおうぎをパタパタとあおいで、テングをさかさづりにしている山へ飛んでかえり、
「テングさま、すまなかった。おわびのしるしに都の酒を持ってきた。たんと飲んでください」
と、テングを木のえだからおろしました。
 うそ五ろうはそれからあらためて都にのぼって、とてもよいむこになったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 花火の日
きょうの誕生花 → スズラン
きょうの誕生日 → 1955年 村上ショージ (タレント)


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5月27日の日本民話 海にしずんだ島

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5月27日の日本民話

海にしずんだ島

海にしずんだ島
大分県の民話大分県情報

 むかしむかし、大分県には瓜生島(うりうじま)という島がありました。
 島にはいくつかの村があって、豊漁(ほうりょう)をもたらしてくれる恵比寿(えびす)さまがまつられていました。
 島には古くから、こんな言い伝えがあります。
「恵比寿さまの像(ぞう)が赤くなると、島が沈む」
 それを知っただれかが、恵比寿さまの顔にベンガラ(→酸化鉄の塗料)という赤い顔料をぬったのです。
 するとその夜、島がグラグラとゆれ動き、たった一夜のうちに島の人もろとも島は海に沈んでしまったのです。
 この日は、慶長元年(けいちょうがんねん→一五九六年)七月十二日だと言われています。
 さて、このとき近くにあったもう一つの島の久光島(ひさみつじま)は、海に沈むのをまぬかれましたが、この久光島にも、
地蔵(じぞう)さんの顔が赤くなったら、島が沈む」
と、いう、古くからの言い伝えがありました。
 瓜生島が海に沈むのを見た、久光島の人たちは、
「瓜生島に伝わる言い伝えは、本当だったんじゃ。それにしても、言い伝えをためしてみるなど、バカな事をしたものじゃ」
と、自分たちの島が沈まなかった事に、胸をなでおろしていました。
 ところが、それから二年後のことです。
 地蔵さんへのお参りにきた島の人が、地蔵さんの顔に赤いものがぬられているのを見つけて、大さわぎになりました。
「だれがあんなイタズラをしたんじゃ! 瓜生島でもバカなイタズラをして、島が沈んでしまったのじゃ」
「イタズラでもなんでも、今のうちに逃げた方がいい」
 そういって、久光島から逃げだした人もいましたが、
「まさか、そんなことがおこるわけがない」
と、大勢の人が、島から逃げだす人たちを見て笑っていました。
 するとその日のうちに、鶴見岳(つるみだけ)が大噴火(だいふんか)をして大津波(おおつなみ)が発生し、久光島は大津波にのみこまれて、瓜生島と同じように海にしずんでしまったという事です。

おしまい

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5月26日の日本民話 人間のことばを話したウマ

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5月26日の日本民話

人間のことばを話したウマ

人間のことばを話したウマ
滋賀県の民話滋賀県情報

 むかしむかし、ある明け方の事、合戦(かっせん)のために出陣(しゅつじん)していたある殿さまが、陣中(じんちゅう)で病気になって死んでしまいました。
 その前の日の夜ふけ、殿さまがかわいがっていた二頭のウマが、なぜか落ちつかないようにごそごそしていました。
 そのうちに一頭が、
「ああ、今度はだめだ」
と、はっきりと人間の言葉でいったのです。
 すると、となりにつながれているもう一頭のウマが、
「そうだな。まったく、悲しいことだ」
と、ため息をつくように長い息をはきました。
 ウマ屋のとなりの部屋で病気の殿さまのことを心配して起きていた家来の者たちは、ウマの話を耳にして、身の毛がよだつほどビックリしました。
 そして、すぐにウマ屋へとんでいきました。
 でもウマはそれっきりなにもいわずに、おとなしくしていました。
 ですが、大きな目にいっぱいなみだを浮かべていたのです。
 やがて夜が明けると、ウマが話をしていたように、殿さまは静かに息をひきとったという事です。

おしまい

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きょうの誕生日 → 1959年 健 (トミーズ)


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5月25日の日本民話 言い負かされたタヌキ

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5月25日の日本民話

言い負かされたタヌキ

言い負かされたタヌキ
長崎県の民話長崎県情報

 むかしむかし、あるところに、やそべえというおじいさんが住んでいました。
 とてもゆかいなおじいさんで、
「やそべえさん、こんにちは」
と、声をかけたら、いつだって、
「はい、はい、こんにちは」
と、元気よく返事をします。
 小さい子どもが、
「やそべえさん、こんにちは」
と、言っても、
「はい、はい、ぽんぽここんにちは」
と、おもしろい返事をしてくれます。
 さて、やそべえさんの家の近くに、一匹のイタズラダヌキがすんでいました。
「おもしろいじじいだ。一つからかってやろう」
 そこである晩、タヌキはおじいさんの家に出かけていきました。
 おじいさんが寝ていると、
 トントントン。
 だれか、表の戸をたたくものがあります。
「はて、いまじぶんだれが来たのかな?」
 不思議に思って起きていくと、だれやら戸をたたきながら言いました。
「やそべえさん、こんばんは。ぽんぽこ、ぽんぽこ、こんばんは」
(ははん。さてはタヌキのやつだな。よし、負けるものか。タヌキがだまるまで返事をしてやるぞ)
「はい、はい、ぽんぽこ、ぽんぽこ、こんばんは」
 タヌキも、それに負けじと、
「やそべえさん、こんばんは。ぽんぽこ、ぽんぽこ、こんばんは」
と、くりかえします。
 そのたびに、やそべえも、
「はい、はい、ぽんぽこ、ぽんぽこ、こんばんは」
と、言いかえします。
 言い合いは何時間も続きましたが、でも、ここで負けたらおしまいです。
 タヌキのよびかけに答えているうちに、だんだん夜が明けてきました。
 ところがタヌキのほうも大よわり。やそべえがどこまでも返事をするのでクタクタになり、とうとうだまりこんでしまいました。
「やれやれ、しずかになった」
 やそべえさんがホッとして表の戸を開けたら、なんとイタズラダヌキが、口をおさえて死んでいたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 広辞苑記念日
きょうの誕生花 → ラナンキュラク
きょうの誕生日 → 1976年 シェイン・コスギ (俳優)

きょうの新作昔話 → ライオン王子の先生
きょうの日本昔話 → ネコの大芝居
きょうの世界昔話 → 美女と野獣
きょうの日本民話 → 言い負かされたタヌキ
きょうのイソップ童話 → 金のオノ、銀のオノ
きょうの江戸小話 → にくまれぐち

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5月24日の日本民話 テングのねごと

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5月24日の日本民話

テングのねごと

テングのねごと
三重県の民話三重県情報

 むかしむかし、太夫(たゆう)という村に、大きな大きな杉の木がありました。
 その杉の木にはテングが住んでいて、毎晩、村から娘を一人、二人とつれて行くので、この村にはとうとう娘がいなくなってしまいました。
 村の人々はなんとかして、テングをこらしめる方法はないものかと考えました。
 ある日の事、一人の村人が
「テングは鼻が高くて赤ら顔だから、テングよりももっと顔の赤い獅子頭(ししがしら)をつくって、テングをおどかしてやってはどうだ?」
と、いいました。
 そこでさっそく村人たちは獅子頭を作り、村の十字路におきました。
 夜になり、テングは娘を探しに村の十字路にやって来ました。
 村人たちは獅子頭をかぶると、
「それっ!」
と、テングにとびかかりました。
「なんと! この村に、わしよりも顔が赤くて強い者がいるとは」
と、テングは杉の木の中へ姿を消してしまいました。
 そしてテングは杉の木のてっぺんから、村にむかって大きな声で、
「今まで食べた娘を全部はきだすから、許してくれ!」
と、さけび、テングは一人ずつ口から娘をはきだしたのです。
 それからというものは、村の杉の大木から、
「許してくれ、許してくれ」
と、いうような、テングのねごとが聞こえてくるようになったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ゴルフ場記念日
きょうの誕生花 → きらんそう
きょうの誕生日 → 1961年 哀川翔 (俳優)


きょうの日本昔話 → ゆうれいのしかえし
きょうの世界昔話 → 漁師とそのおかみさんの話
きょうの日本民話 → テングのねごと
きょうのイソップ童話 → ワシとトビ
きょうの江戸小話 → ネコの名

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5月23日の日本民話 お月さまに行ったウサギ

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5月23日の日本民話

お月さまに行ったウサギ
イラスト Smile STATION

お月さまに行ったウサギ
青森県の民話青森県情報

♪♪朗読再生

 むかしむかし、サルとキツネとウサギが、神さまのところへ行きました。
「神さま、どうかお願いです。こんど生まれてくる時は人間にしてください」
 すると、神さまが言いました。
「人間に生まれたいのなら、自分の食べ物を人間にごちそうすることだ」
 そこでサルは山へ行き、クリやカキの実をとってきました。
 キツネは川へ行って、魚をつかまえてきました。
 ところがウサギの食べ物は、やわらかい草です。
 今は冬なので、やわらかい草は一本もありません。
(こまったなあ。どうしよう?)
 ウサギはガッカリして、サルとキツネのいるところへもどってきました。
「ウサギさん、きみのごちそうはどうしたの?」
「だめだよ。草はかれているし、木のめは、まだ出ていないんだ」
 すると、サルが言いました。
「それじゃ、ウサギさんはいつまでも、ウサギのままでいるんだな」
「そうだよ。ごちそうも持ってこないで人間に生まれかわりたいなんて、ウサギさんはずるいよ」
 キツネも、おこって言いました。
「ごめん。でも、もう一日だけ待って」
 次の日、ウサギは山へ行くと、かれ木をひろい集めてきました。
 そしてサルとキツネの前に、かれ木をつみあげて言いました。
「今からごちそうを焼くから、火をつけておくれ」
 サルとキツネが火をつけると、かれ木はパッと燃え上がりました。
「ぼくのごちそうはないんだ。だから、・・・だから、ぼくを人間に食べさせておくれ」
と、言うなり、ウサギは火の中に飛び込んだのです。
 その時、空の上から神さまがおりてきて、さっとウサギをだきかかえると、また空へのぼっていきました。
 サルもキツネも、ビックリ。
 すると、神さまが言いました。
「サルもキツネも、きっと人間に生まれかわれるだろう。なにしろ、自分の大切な食べ物を人間にごちそうしようとしたからね。それは、とても素晴らしい事だよ。でもウサギは、もっと素晴らしい。自分をすててまで、人間に食べさせようとしたのだからね。ウサギをお月さまの国で、いつまでも幸せにしてあげよう」
 神さまにだきかかえられて、ウサギは空高くのぼっていきました。
 その時からウサギは、お月さまのなかで楽しくくらしているという事です。

※ インドにも、同じようなお話しがあります。 → 月の中のウサギ

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → キスの日
きょうの誕生花 → ゴデチア
きょうの誕生日 → 1959年 高橋名人 (ファミコン名人)


きょうの日本昔話 → 娘の婿選び
きょうの世界昔話 → キツネとガチョウ
きょうの日本民話 → お月さまに行ったウサギ
きょうのイソップ童話 → 借金をしたアテネの男
きょうの江戸小話 → ゆめ

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5月22日の日本民話 ギバ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 5月の日本民話

5月22日の日本民話

ギバ

ギバ
愛知県の民話愛知県情報

 むかしむかし、尾張の国(おわりのくに→愛知県)のある宿場町の河原で、街道(かいどう)ではたらく若い馬子(まご)たちが、自分たちのウマをあつめて、ウマの健康のためにおきゅうをすえていました。
 ウマがあばれないようにクイにたづなをくくりつけると、ウマの腰のあたりにもぐさをうえて、一頭一頭きゅうをすえていました。
 河原には三十頭ばかりのウマがのんびり草を食べながら、順番が来るのを待っています。
 そのうちに、一頭がきゅうに空へかけのぼるようなかっこうをして、はげしくいななきました。
 そして、つながれているクイのまわりをグルグルと回りはじめ、バッタリと倒れてしまったのです。
「どうしたんだ?」
 馬子たちはおどろいてウマにかけよりましたが、ウマは目をひらいて口をあけたまま死んでいました。
 すると今度は、大木の根もとにつないであったウマが同じようにいななくと、グルグルとまわりをはじめて、バッタリと倒れてしまったのです。
 一度ならず二度までも、目の前で不思議な事がおこりました。
「こんなことは、はじめてだ。おいらのウマは大丈夫だろうな」
 馬子たちが青い顔をしながら心配していると、またまた川辺で水をのんでいた白いウマが、はげしくいなないてグルグルまわりはじめました。
「あれ、あのウマもだ!」
 馬子たちはおどろくばかりで、どうすることもできません。
 そこへちょうど、とおりかかった旅の坊さんが、
「ギバだ! ほれ、ウマのしりの穴からギバがぬけて飛んでいくぞ!」
と、指をさしながら言ったのです。
「ギバ? どこにそんなものが飛んでいくんですか? そもそも、ギバとは何ですか?」
 馬子たちは、坊さんにたずねました。
「ギバというのは、ウマにとりつく魔物のことじゃ。しかし、どんなウマにもとりつくというわけではない。ほれ、見なされ。ギバはな、白いウマばかりにとりつくんじゃよ」
 坊さんのいうとおり倒れたウマは、みんな白いウマばかりです。
 馬子たちは、きゅうをすえるのをやめて、坊さんの話しに耳をかたむけました。
「ギバはな、玉虫色をした小さなイヌほどのウマで、その背中には頭にかんむりをつけたて美しく着飾った、おひなさまのような娘がのっているのじゃ。そして白いウマを見つけると、どこからともなくかけおりてきて、長いウマの顔に食らいつき、鼻の穴から腹の中へ入っていくのじゃ。ウマの中に入ったギバは、そのまままっすぐ走ってしりの穴からぬけていく。このあいだにウマは苦しみ、グルグルとおなじところをまわって倒れてしまうのじゃ。ギバは人間にはなかなか見えぬが、ウマにはよく見えるらしく、ギバがやってくるとウマは恐ろしくてあばれだすのじゃ」
 馬子たちは真剣な顔で、坊さんの話しをきいていました。
「でも、人間にはなかなか見えないのはこまりものだな。お坊さま、そのギバとやらにとりつかれねえようにするには、どうすればいいんだ?」
 馬子の一人が、たずねました。
「お前たちだってよく注意をしていれば、わしのように見えるようになる。だが、見えるようになってもギバは素早いからゆだんはできんぞ。ウマがおどろいてなきだしたら、自分の着物でもかまわないから、すぐに広げてウマの頭にかぶせるんじゃ。美濃(みの→岐阜県の南部)の山の中の馬子たちは、お前たちのように、着ている着物をおびやひもでとめてはいない。すぐにぬげるように、からだにひっかけているだけだ。それでも間に合わなくて、ギバが鼻の中へ入ってしまったら、ウマの背中にすばやくハリをうつ。そうすればギバはそれ以上進めずに、入ってきた鼻の穴から外へでてくるんじゃ。美濃の山奥にはよく出たが、このあたりにも出るようになったんじゃな。まあ一番よい方法は、白毛のウマをかわないことだ。それじゃあ、気をつけてな」
 坊さんはそう言うと、どこかへ去っていきました。
 なんとも不思議な話しですが、目の前に三頭のウマが倒れているのですから、信じないわけにはいきません。
 このときから、東海道の宿場にいる馬子たちは、上着をおびなしで着るようになりました。
 ギバの正体は、白いりっぱなウマにのった(さむらい)に両親をけり殺された、まずしいかじ屋の娘の生まれかわりだという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ガールスカウトの日
きょうの誕生花 → レモン
きょうの誕生日 → 1972年 ゴリ(芸人)

きょうの新作昔話 → 運のよい男
きょうの日本昔話 → おどるしかばね
きょうの世界昔話 → 空飛ぶじゅうたん
きょうの日本民話 → ギバ
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5月21日の日本民話 ヒョウのかわのやね

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5月21日の日本民話

ヒョウのかわのやね

ヒョウのかわのやね
佐賀県の民話佐賀県情報

 むかしむかし、唐津(からつ→さがけん)の町に、かんねどんとよばれている変わり者がいました。
 ある日の事、かんねどんが近くの村に出かけていくと、りっぱな家をたてているところにぶつかりました。
「柱も太いし、よい家じゃ」
「まるで、御殿(ごてん)のようだ」
 村の人たちがあつまって、みんなで家をほめています。
 かんねどんもそう思いましたが、かんねどんはへそまがりだったので、
「こんな家が御殿ようじゃと? おれの家など、ヒョウのかわで、やねをふいてあるわい」
と、いばって言いました。
「へえ、ヒョウのかわでやねがふいてあるとは豪勢(ごうせい)じゃのう。ぜひとも見せてもらいてえ」
「いいとも、いいとも。ついてくるがいい」
 かんねどんは、村の人たちを家へ連れてきました。
「これがそうだ。よくみろ」
 かんねどんは、たわらをかぶせただけの、とてもそまつな家を指さして言いました。
「おいおい、これのどこがヒョウのかわだ」
「おんぼろだわらではないか。バカにするな!」
 村の人たちがさわぐと、かんねどんがいいました。
「米のたわらをかぞえるとき、村では一俵、二俵というじゃろが。つまり、俵(たわら)とかいで、ひょうとよむ。そのひょうのかわで、やねがふいてあろうが」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
 村の人たちは、あっけにとられて何もいえませんでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 小学校開校の日
きょうの誕生花 → かすみそう
きょうの誕生日 → 1973年 梨花 (タレント)


きょうの日本昔話 → テンをたいじしたネコ
きょうの世界昔話 → ほらふき男爵 シカのサクランボウ
きょうの日本民話 → ヒョウのかわのやね
きょうのイソップ童話 → つかまえられたイタチ
きょうの江戸小話 → ぶしょうくらべ

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5月20日の日本民話 うそつき名人

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5月20日の日本民話

うそつき名人

うそつき名人
岐阜県の民話岐阜県情報

 むかしむかし、源さんという、うそつきの名人がいました。
 ある日、村の田んぼ道を走っているのを見て、村の人たちが言いました。
「そんなに急いでどこへ行くんだ。それよりも、今日も何かうまいうそをついてくれ」
 でも、源さんは知らん顔です。
「さすがのうそつき名人も、よほどあわてているとみえて、うそをつくひまもないらしい」
 みんなが大笑いしていると、源さんはこわい顔で、
「何をのんきなことを! 庄屋(しょうや)さんが死んだというのに、うそなんかついていられるか! これからとなり村へ知らせに行くところだ!」
と、言って、走っていきました。
「それはたいへんだ! 庄屋さんがなくなったぞ!」
 村の人たちはビックリして、次々と庄屋さんの家へかけつけました。
 ところが庄屋さんは元気で、楽しそうに庭の手入れをしているではありませんか。
「しまった。また源さんにやられた。さすがはうそつきの名人だ」
 村の人たちは源さんのみごとなうそに、すっかりかんしんしたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ローマ字の日
きょうの誕生花 → はなしょうぶ
きょうの誕生日 → 1940年 王貞治 (野球)

きょうの新作昔話 → ヤンニとドラゴンとお嫁さん
きょうの日本昔話 → ウシのはなぐり
きょうの世界昔話 → クルミ割りのケート
きょうの日本民話 → うそつき名人
きょうのイソップ童話 → 野ネズミと家ネズミ
きょうの江戸小話 → わらいごとではない

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5月19日の日本民話 クジラの皮の絵

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5月19日の日本民話

クジラの皮の絵

クジラの皮の絵
高知県の民話高知県情報

 むかしむかし、あるところに、とてもゆかいなお百姓(ひゃくしょう)さんがいました。
 ある日の事、町へ行って宿屋にとまると、頭の毛を長くのばした男の人と同じ部屋になりました。
(はて、この人はどんな仕事をしている人だろう? お百姓には見えないし、物売りにも見えないし)
 お百姓さんが男の人をジロジロ見ていたら、男の人がこわい顔で、
「何か! ご用か!」
と、言いました。
 そこでお百姓さんは、
「これは失礼しました。失礼ついでにおたずねしますが、お前さんはふつうの人に見えません、一体どんな仕事をしている人ですか?」
と、たずねました。
 すると男の人はおおいばりで、
「わしは、絵かきじゃ」
と、ふんぞり返りました。
 その態度に、お百姓さんはムッとして、
「なんだ絵かきか。それならわしと同じ仕事だ。大したことはない」
と、言ったのです。
「なんと、お前も絵かきか。よし、そんなら一つ絵の腕比べをしようじゃないか。わしが先にかいてみせよう」
 絵かきはふでと紙を出して、さらさらっとかきあげました。
 それは、男の人が川からあがってくる絵です。
(ほう、なかなかうまいもんだ)
 お百姓さんは感心しながらも、わざとつまらなそうな顔で言いました。
「お前さんは、本物の絵かきですか?」
「あたりまえじゃ! この絵はさっき川でおよいでいた人を見ていたので、それをかいたものじゃ」
「そうですか。でもお前さんは、まだ見かたがたりませんね。とても一人前の絵かきとは思えません」
「なんだと!」
「この絵を、よく見てごらんなさい。足の毛が、みんな立っています。人が川からあがった時、毛はぬれてピッタリとはりつくはずですよ」
「ぬぬっ、・・・そんな細かいところまで、いちいちかけるか!」
「だからまだ、一人前の絵かきじゃないと言ったのですよ」
 お百姓さんが、いばって言いました。
 絵かきは、くやしくてたまりません。
「ようし、そんならお前がかいてみろ」
「わかりました。わたしはこんなつまらない絵はかきません。絵をかくには、物の特徴(とくちょう)をしっかりとつかむことが大切なのです」
「ぬぬぬっ。・・・いいから、はやくかけ!」
「では」
 お百姓さんはふでにたっぷりすみをつけると、ペタペタペタと、紙をまっ黒にぬりはじめました。
 絵かきがビックリして、
「こりゃ、何の絵だ?」
と、言ったら、お百姓さんはすました顔で言いました。
「クジラの皮です」
「クジラの皮だと。ただまっ黒にぬりつぶしてあるだけじゃないか」
「そうです。クジラというのは、人の何十倍もある大きな生き物です。こんな小さな紙一枚では、とうていかけません。だから皮のはしっこのところだけをかきました」

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ボクシング記念日
きょうの誕生花 → しゃくやく
きょうの誕生日 → 1954年 大塚芳忠 (声優)


きょうの日本昔話 → けもののかわはたたかれる
きょうの世界昔話 → ネコがごはんのあとで顔を洗うわけ
きょうの日本民話 → クジラの皮の絵
きょうのイソップ童話 → ライオンとカエル
きょうの江戸小話 → わしにもいっぱい

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5月18日の日本民話 キツネの恩返し

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5月18日の日本民話

キツネの恩返し

キツネの恩返し
山形県の民話山形県情報

 むかしむかし、ある村に、人をだます事の上手なキツネが現れるようになりました。
 キツネは夜になると娘に化けて、酒に酔った人のみやげをぬすんだり、風呂に入れるといって、川や沼に入れたりしておもしろがっていたのです。
 ある夜の事、キツネは娘に化けて村はずれでまっていると、次助(じすけ)じいさんが通りかかりました。
 キツネは道ばたにうずくまって、
「次助じいさん、わたしはお腹が痛くて歩けないの。どうか村まで背負って下さいな」
と、たのんだのです。
 ところがこの次助じいさん、なかなかのやり手で、
「これはこれは、こんな美人の娘を背負えるのは、なんともありがたいこっちゃ」
と、キツネの娘をひもでしっかりと背中にしばり、歩きはじめたのです。
 村の入口まで来ると、キツネの娘は、
「もう、お腹は治りました。一人で歩けますので、おろしてください」
と、頼みましたが、次助じいさんはきこえないふりをして、村の者が集まっている場所まで背負い、
「キツネをつかまえたぞ! みんなでしばりあげろ!」
と、いって、村人みんなでキツネをしばりあげると、枯れ草を燃やした煙でキツネをいぶりたてました。
 キツネの娘は苦しくて、とうとう正体をあらわしてしまったのです。
「さて、このキツネをどうしてくれようか?」
 村人たちは相談して、このイタズラギツネをキツネ汁にして食べてしまおうという事になりました。
 すると、今までだまってみていた善作(ぜんさく)じいさんが、
「殺すのはかわいそうだから、放してやってくれ」
と、みんなに頼みこみ、善作じいさんはキツネに、
「もう、決して悪さをするんじゃないぞ」
と、よく教えてから逃がしてやったのです。
 それからは悪い事をするキツネはいなくなり、キツネの恩返しなのか、善作じいさんには良い事ばかりつづいて、とうとう村一番の長者になったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 国際親善デー
きょうの誕生花 → ばいかうつぎ
きょうの誕生日 → 1969年 槇原敬之 (シンガー)

きょうの新作昔話 → 宝を迎える村人たち
きょうの日本昔話 → おかみすり
きょうの世界昔話 → 星の金貨
きょうの日本民話 → キツネの恩返し
きょうのイソップ童話 → 1人息子と絵にかいたライオン
きょうの江戸小話 → ごみ

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5月17日の日本民話 金毘羅さんと子ウマ

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5月17日の日本民話

金毘羅さんと子ウマ

金毘羅さんと子ウマ
香川県の民話香川県情報

 むかしむかし、ある村のお百姓(ひゃくしょう)がかっているウマが、子どもを生むことになりました。
 これが大変な難産(なんざん)で、子ウマはなかなかうまれません。
 母ウマは荒々しい息をして、苦しんでいました。
 そこでお百姓(ひゃくしょう)の奥さんは、金毘羅(こんぴら)さんにでかけて、
「母ウマが無事に生んでくれたら、子ウマは神馬(じんめ→神社に奉納するウマ)として金毘羅さんにさしあげます」
と、いのったのです。
 そのいのりが通じたのか、やがて子ウマは無事に生まれて、母ウマも元気をとりもどしました。
 ところがお百姓の奥さんは、金毘羅さんとの約束をすっかり忘れてしまって、子ウマを他人に売りわたすことにしたのです。
 さて、子ウマが買い手にわたる前の日の夜の事です。
 子ウマはいつのまにかウマ小屋を出て山をこえ、象頭山(ぞうずさん)にのぼって、お社(やしろ)の前にたたずんでいました。
 お宮の人たちは、
「だれがこんなところへ、ウマをおいていったのじゃ。まだ子どものウマではないか」
と、近くの村々におふれをだして、飼い主をさがしました。
 それを知った飼い主のお百姓は出向いていって、自分の家まで子ウマをひいて帰りましたが、どうしてあんな所へ行ったのかわかりません。
 子ウマを売るのはしばらくやめて、母ウマと一緒にしておきました。
 ところが子ウマはまた山をこえて、金毘羅さんのお社にいってしまったのです。
 何度も同じことがくり返されるので、不思議に思った神主さんはお百姓にわけをききました。
 そのとき、奥さんがウマのお産のときにいのったことを思いだしたのです。
 そこで子ウマは、神馬として社につながれることになったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 世界電気通信記念日
きょうの誕生花 → しらん
きょうの誕生日 → 1970年 坂井真紀 (俳優)


きょうの日本昔話 → めいどからかえってきたおくさん
きょうの世界昔話 → シカになった猟師
きょうの日本民話 → 金毘羅さんと子ウマ
きょうのイソップ童話 → ロバとカエル
きょうの江戸小話 → おなら

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5月16日の日本民話 もちはこわい

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5月16日の日本民話

もちはこわい

もちはこわい
山梨県の民話山梨県情報

 むかしむかし、ある山の村のむこさんが、はじめて山をおりて嫁さんの家へ行きました。
 嫁さんの家では、むこさんにごちそうしてやろうと、おもちをつきはじめました。
 するとそこへ、近所の家の小さい子どもがやってきたので、家の人が、
「これはこわい物だ、あぶないから、あっちへいっていろ」
と、いったのです。
 それを見ていたむこさんは、おもちが本当にこわいものだと思いました。
「さ、できた。遠慮しないで、どんどん召し上がってください」
 そういって、おかみさんがお皿に乗せて持ってきたものは、おもちをあんこでくるんだぼたもちでした。
 それを見たむこさんは、
(やや、なんてまっ黒いものなんだ。これはきっとバケモノにちがいない)
と、思って、ガタガタとふるえたまま食べないでいました。
 するとおかみさんは、むこさんがお腹いっぱいなのだと思い、帰るときにそのぼたもちをふろしきにつつんで、お土産に持たしてくれました。
 むこさんはそのぼたもちをつつんだふろしきがこわくて、長い竹ざおをひろうと、その竹ざおのさきにふろしきをぶら下げてかえることにしました。
 ところが、だんだんとふろしきが下へおりてきて、むこさんの背中にペタリとぶつかったのです。
「ウヒャーーーァ! まっ黒のバケモノが背中にかみついた!」
 むこさんは竹ざおを投げ捨てて、ふろしきからこぼれだした一つをふみつけました。
 すると中から、白いおもちが出てきました。
 それを見たむこさんは、よけいにビックリして、
「バケモノが、歯をむいてきただ!」
と、言って、そのまま家まで逃げ帰ったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 旅の日
きょうの誕生花 → アリウム
きょうの誕生日 → 1975年 遠山景織子 (俳優)


きょうの日本昔話 → はかばへいくむすめ
きょうの世界昔話 → 世界一美しいバラの花
きょうの日本民話 → もちはこわい
きょうのイソップ童話 → うらない師
きょうの江戸小話 → だくだく

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5月15日の日本民話 テングになった太郎坊

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5月15日の日本民話

テングになった太郎坊

テングになった太郎坊
徳島県の民話徳島県情報

 むかしむかし、あるところに、子どものいない木こりとおかみさんがいました。
 ある日の事、木こりが山へ行ったら、大きなスギの木の下で、カゴに入れられた赤ちゃんがないていました。
「こりゃ、神さまがさずけてくださったにちがいないぞ」
 木こりは大喜びで、赤ちゃんを家につれて帰りました。
 とても元気な赤ちゃんで、何でもパクパクとたくさん食べます。
 木こりとおかみさんはこの赤んぼうに、太郎という名前をつけて、それは大切に育てました。
 太郎はスクスク育って、やがて村一番のわんぱく坊主になりました。
 この太郎、どういうわけかドングリの実が大好きで、いつもドングリを口の中に入れてははき出していました。
 ある日の事、太郎の下に弟が生まれました。
 太郎は、この赤ちゃんがお気に入りで、
「おらに、子守りさせてくれ」
と、言うので、おかみさんは太郎に赤ちゃんをおんぶさせると、太郎は赤ちゃんをおんぶしたまま、スルスルと高い木へのぼっていくのです。
 おかみさんはビックリして、
「あぶない。早くおりて!」
と、さけびました。
 すると太郎は、今度は逆さまになって、あっというまに下へおりてきました。
 おかみさんは、その素早さにあきれて、
「お前は、まるでテングさまみたいじゃ」
と、ためいきをつきました。
 するとその夜、太郎は木こりとおかみさんの前に両手をついて言いました。
「長い間、お世話になったけど、おら、もう山へ帰らなければならねえ。おっかあのいうとおり、おらは本当は、テングの子どもだ」
「・・・・・・」
 木こりもおかみさんも、ビックリして声も出ません。
「いつまでもたっしゃでいてくれ。おら、おっとうと、おっかあの事を忘れねえ」
と、言ったかと思うと、山のほうに走っていきました。
 木こりとおかみさんは、太郎のあとを追って山へのぼっていきました。
 すると、スギの木のてっぺんから太郎の声がしました。
「おら、テングの太郎坊じゃ。もう家にはもどれねえ。そのかわり、毎年、大みそかの夜には行くからな」
 そこで木こりの家では毎年、大みそかの夜になるとおせち料理を作り、座敷(ざしき)のとこの間へおきました。
 すると、お正月の朝には、すっかり料理はなくなっていました。
 それから、太郎がいつもはきだしていたドングリの実からめが出て、やがて大きなカシの木になりました。
 木こりの家のまわりには、そんなカシの木が何本もはえていて、木こりはカシの木長者といわれる村一番のお金持ちになったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ヨーグルトの日
きょうの誕生花 → カーネーション
きょうの誕生日 → 1982年 藤原竜也 (俳優)

きょうの新作昔話 → フリーデルとリーゼ
きょうの日本昔話 → 鉢かづき姫
きょうの世界昔話 → 竹になった娘
きょうの日本民話 → テングになった太郎坊
きょうのイソップ童話 → ライオンに恩返しをしたネズミ
きょうの江戸小話 → しらみ

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5月14日の日本民話 はち助いなり

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5月14日の日本民話

はち助いなり

はち助いなり
石川県の民話石川県情報

 むかしむかし、小松城(こまつじょう)の殿さまが、お忍び(おしのび→身分の高い人がひそかに外出すること)で町の見まわりに出かけたときの事です。
「ココーン! ココーン!」
と、まっ白なキツネが、殿さまの前に飛び出してきました。
 続いて、その後から男たちが追っかけてきて、
「このドロボウめ!」
「さあ捕まえた! もう、逃がさんぞ!」
と、そのキツネを捕まえると、なぐったりけったりします。
「ココーン! ココーン!」
 キツネが痛そうに泣きさけぶのを見かねた殿さまが、男たちに声をかけました。
「これ、いいかげんにかんべんしてやったらどうじゃ? かわいそうに、すっかり弱っているではないか」
 すると、男たちは言いました。
「へえ、しかし、こいつに魚の干物(ひもの)を荒らされて、店は大損しましたので」
「かといっても、キツネの命を取ったところで、魚の干物が帰ってくるわけではあるまい」
「それはたしかに。けど、このままじゃ、あっしらの気がおさまらねえです」
「それに、またやられちゃかなわねえ。ここはやっぱり、このキツネを殺してしまわないと」
と、男たちは再びキツネをなぐろうとしたので、殿さまはあわてて言いました。
「待て、待て! では、わしがその干物の代金を払おうではないか」
「はあ、まあ、それならいいですが」
 手を引っ込めた男たちに、殿さまは十分なお金を渡していいました。
「そのかわり、キツネは連れて行くぞ」
 そして殿さまは、傷ついたキツネをお城に連れて帰り、薬を塗ってやさしくかいほうしてやりました。
 何日かするうちに、傷が治ったキツネは元気を取り戻しました。
「よいか、これからは町に出て、人さまの物を取るような悪い事は決してするでないぞ。わかったな。さあ、山へ帰るがいい」
 キツネは頭を下げると、何度も何度もお城の方を振り返りながら、山へ帰って行きました。
 それから、数ヶ月がすぎたころ、お城で大変な事がおこりました。
 江戸(えど→東京都)に大切な手紙を届ける役目の飛脚(ひきゃく)の五平次(ごへいじ)が、急な病気で倒れてしまったのです。
 殿さまは、困ってしまいました。
「うーん、よわったのう。この手紙が七日以内に江戸に届かねば、お家の一大事となる。だれかほかに、足のはやい者はおらんのか?」
「・・・・・・」
 家来たちはお互いに顔を見合わせますが、五平次よりはやく走れる者など、どこを探してもいません。
「こまった。どうしたらよいのじゃ」
 頭をかかえる殿さまのところへ、家来の一人があたふたとかけつけました。
「殿! 江戸まで七日以内に走るという男がおります」
「な、なんじゃと! すぐに呼べ!」
 家来に案内されて、一人の若者がお城にやってきました。
「わたしは山向こうにすむ、はち助というものです。足のはやさには、いささかの自信があります。どうか今回の仕事、このはち助にお申しつけください」
 この申し出に、殿さまはしばらくまよってはいましたが、
「よし! 頼むぞ、はち助とやら」
と、大事な手紙を渡しました。
「はい!」
 はち助は、すぐにお城の門から出て行き、すぐに姿が見えなくなりました。
「さて、無事に届けてくれるとよいが」
 手紙を預かったはち助は、殿さまの信頼に答えようと、夜も昼も休むことなく走りつづけました。
 はち助が出発して、七日目です。
「今日で七日目か。何とか今日のうちに、江戸に着いてくれればよいが」
 殿さまが心配していると、家来たちが駆け込んできました。
「と、殿さま! はち助がもどってきました!」
「な、なに? もう、もどったと! ああっ、もうおしまいじゃあ!」
 ガックリと肩を落とす殿さまに、家来たちはニコニコしながら言いました。
「殿さま。勘違いされては困ります。はち助は、無事につとめを果たしてもどったのでございます」
「それはまことか!」
「はい、江戸からの返事も持ち帰ってございます」
「なぜ、それを早く申さぬ。すぐにはち助を呼ぶのじゃ」
 殿さまの前に呼ばれたはち助は、江戸からの返事をうやうやしく差し出しました。
 返事を確認した殿さまは、大喜びで言いました。
「はち助、ようやってくれた。それにしても、飛脚の足で往復半月はかかる道のりを、わずか七日で走るとは、まったくあっぱれな飛脚ぶり。これからはわしの家来として働いてくれないか」
「ありがたきお言葉」
 こうしてお城のおかかえ飛脚となったはち助は、それからというもの、殿さまの手紙を届けるために、何度も江戸へ行くようになりました。
 ふつうの飛脚の二倍のはやさで走るはち助は、殿さまにたいそう可愛がられ、大事にされたのです。
 ある日の事、江戸からもどったはち助に、殿さまがいいました。
「ごくろうであったな、はち助。ゆっくり休むがいいぞ」
「はっ、ありがとうぞんじます」
「ところではち助、小浜と江戸の道中(どうちゅう)で、なにかやっかいなものはないか?」
「はい、別にはございません。・・・いえ、ただ一つだけ、小田原(おだわら→神奈川県)にいる大きなむくイヌには困っております」
「ほう、小田原のむくイヌか、これはおもしろい、はち助ともあろうものが、イヌに困るとは。はははは」
と、殿さまに笑われたはち助は、てれくさそうに頭をかきました。
 それからしばらくして、はち助はまた、江戸へ手紙を届けるために旅だっていきました。
 ところが今度は、何日たっても戻ってきません。
「はち助はまだもどらんのか? いったい、どうしたというのだ?」
 はち助の身に何かあったのではないかと心配する殿さまは、ふと、はち助の言葉を思い出しました。
「そうじゃ、小田原じゃ! いそげ、はち助を探しにいくぞ!」
 殿さまはさっそく、はち助を探し出すために小田原へと向かいました。
 そして、何日も何日も、はち助の行方を探して旅を続けたのです。
 小田原まで、もう少しという山道へさしかかったとき、
「はて、あれはなんじゃろう?」
と、殿さまが、草むらの方を指さして言いました。
「さあ、なんでございましょうなあ? ちょっと見てきましょう」
 ウマからおりた家来が、草むらをのぞいて大声をあげました。
「と、殿! これをごらんください!」
 そこには、まっ白なキツネがいて、大事な手紙の入った箱を抱きかかえるようにして死んでいたのです。
 これを見た殿さまは、全ての事がわかりました。
「は、はち助、お前は」
 はち助は、殿さまが助けたキツネだったのです。
 小田原でイヌにおそわれながらも、なんとかお城にたどりつこうとして、息たえてしまったのです。
 殿さまは、そんなはち助の死をたいへん悲しんで、お城の中に立派な社(やしろ)をたてると、はち助いなりとしてまつりました。
 今でも小松城には、はち助をまつるおいなりさまが、残っているという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 温度計の日
きょうの誕生花 → われなぐさ
きょうの誕生日 → われなぐさ


きょうの日本昔話 → ゆうれいのでるやしき
きょうの世界昔話 → メスウシとライオン
きょうの日本民話 → はち助いなり
きょうのイソップ童話 → 旅人と運命の女神
きょうの江戸小話 → こじきのほこり

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5月13日の日本民話 娘の生まれかわり

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 5月の日本民話

5月13日の日本民話

娘の生まれかわり

娘の生まれかわり
東京都の民話東京都情報

 むかしむかし、江戸(えど→東京都)の神田(かんだ)の町に、善八(ぜんぱち)という旅の好きなお年寄りがいました。
 ある年の春の事、旅にでた善八が大阪から奈良にむかっていると、十六、七の娘が走ってきて、善八の前までくると、バッタリとたおれてしまったのです。
 ビックリした善八は、あわてて娘をだきおこそうとしましたが、娘はすぐに気がついて、こんな事を話しはじめたのです。
「わたしは、伊勢(いせ)の染(そ)めもの屋の娘です。おつかいの帰りにならず者たちにつかまって、大阪へ売られるところでした。すきを見て、ここまで逃げてきたのです。どうかお助けください」
 娘はなみだをふきながら、そういうのでした。
 このままでは、いつならず者たちがやってくるかわかりません。
 善八は次の宿場(しゅくば)でカゴ屋をたのむと、娘を家までおくっていきました。
 娘の両親は喜んで善八を家にとめて、たいへんなもてなしをしてくれました。
 次の日の朝、善八が旅のしたくをしていると、元気になった娘がやってきていいました。
「ご恩を忘れないためにも、ぜひ、何か身につけているものをわたしにください。それをあなたさまと思って、朝夕、感謝をこめておがみ、お礼をもうしあげたいのです」
と、いうのでした。
「そうかい。と、いっても、これぐらいしかないが」
 善八はお守りの袋に入れてある、浅草(あさくさ)の観音(かんのん)さまの紙のお札(ふだ)を娘に手わたしました。
 そして奈良へはいかずに、江戸へもどってきたのです。
 すると、るすのあいだに、息子のお嫁さんが男の子をうんでいました。
 善八が帰ってきた日は、ちょうど初孫のお七夜(しちや)でした。
 ところがどうしたことか、孫は生まれたときから左の手をにぎりしめたまま、泣きつづけているというのです。
「どれどれ。なぜ、そんなに泣くのじゃ。ほれっ、わしがおじいちゃんだよ」
 善八が泣き続ける孫をだきあげると、ふしぎなことに孫はピタリと泣くのをやめて、にぎりしめていた赤い手をひらいたのです。
「おや、なにか持っているぞ。はて。これはなんじゃな? ・・・ああっ!」
 孫が手の中ににぎっていたのは、なんと浅草の観音さまの紙のお札です。
 善八が伊勢の染めもの屋の娘に手わたした、あのお守りの紙のお札でした。
 善八が持っていたものと、はしのやぶれ方も同じです。
 善八はビックリして、旅でのできごとを家の者たちに話しました。
 あまりにも不思議な事なので、すぐに娘に手紙を書きますと、おりかえし染めもの屋から返事がきました。
 娘の両親からの手紙には、こともあろうに、善八が帰ってまもなく、娘はきゅうな病で亡くなったと書かれていました。
 後から調べてみると、娘が息をひきとった明け方の五時は、善八の初孫が生まれた時刻とピッタリ同じです。
「この子は生まれる前の世で、あの娘からこのお札を手わたされたんだ。この子は男の子だが、あの娘の生まれかわりかもしれない」
 善八はそう言うと、ジッと初孫の顔をみつめていたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 愛犬の日
きょうの誕生花 → ポロニア
きょうの誕生日 → 1965年 太田光 (爆笑問題)

きょうの新作昔話 → やさしい子どもと山の神
きょうの日本昔話 → 地獄のあばれもの
きょうの世界昔話 → 死神の名づけ親
きょうの日本民話 → 娘の生まれかわり
きょうのイソップ童話 → けちんぼう
きょうの江戸小話 → どろぼうのどろぼう

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5月12日の日本民話 テングを説きふせた男

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 5月の日本民話

5月12日の日本民話

テングを説き心せた男

テングを説きふせた男
富山県の民話富山県情報

 むかしむかし、黒部(くろべ)の山奥では、不思議なことや恐ろしいことがよく起こりました。
 木こりが木を切ろうとしてオノを打ちこむと、とたんに空がかきくもって山や谷が大きな音を立てて動きだしたり、突風がふきつけて木こりを空中に投げとばしたり、木に登っている人は地面にたたきつけられたりするのです。
 これは、テングのしわざだといわれていました。
 ある時、山林の切り倒しをまかされていた男が、大勢の木こりをやとい入れて山林を切り倒そうとしたところ、やはり空がかきくもって、山や谷が大きな音を立てて動き始めました。
 そこで男は谷に向かって、大きな声でいいました。
「我々は殿さまに、何百両ものお金をおさめなければならないのだ。谷の木を全て切りだしても足りないくらいだ。お前が神通力(じんつうりき)でもって、目の前にお金をつんでくれるならば、我々は木を切らぬぞ」
 いい終わると、ソロバンをパチパチとはじいてみせました。
 すると、大きな音がピタリとやみました。
 あくる朝からはよい天気が続き。木にオノを入れても、何も起こらなかったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 看護の日
きょうの誕生花 → アスチルベ
きょうの誕生日 → 1961年 渡辺徹 (俳優)


きょうの日本昔話 → いうな地蔵
きょうの世界昔話 → シンドバッドのぼうけん
きょうの日本民話 → テングを説きふせた男
きょうのイソップ童話 → 船旅をする人たち
きょうの江戸小話 → つもりどろぼう

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5月11日の日本民話 おじいさんはくさかった

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 5月の日本民話

5月11日の日本民話

おじいさんはくさかった

おじいさんはくさかった
広島県の民話広島県情報

 むかしむかし、ある村に、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
 おじいさんはいつものように、山へしばかりに出かけ、おばあさんもいつものように、川へせんたくに出かけました。
 すると川上から、大きなイモが、ドンブラコ、ドンブラコと流れてきました。
「こりゃあ、うまそうなイモだこと」
 おばあさんは大喜びでイモをひろうと、イモを家に持って帰り、そのイモを小さく切って、カマでむしあげました。
 むしあがったイモはとてもホクホクしていて、とってもおいしそうです。
 おばあさんはさっそく一つつまんで、口に入れてみました。
「おやおや、なんておいしいんでしょう」
 おばあさんはまた一つ、また一つと、イモをどんどん食べていきました。
 するとそのうちに、おなかがはってきて、
「プー、プー」
と、おならが出るようになりました。
 それがなんともくさいおならで、おばあさんは思わず鼻をつまみました。
「こりゃ、イモを食べすぎたかな」
 おばあさんはしょうじを開けて、おならのにおいを外へ出しました。
 そのおならのにおいは風にのって、山のほうへ流れていきました。
「おや? なんだかくさいぞ」
 山でしばかりをしていたおじいさんは、あわてて両手をふりました。
「くさい、くさい」
 あまりのくささに、しばかりどころではありません。
 そこでおじいさんは山をおりて、ウシに食べさせる草をかって帰りました。
 それを見たおばあさんが、おじいさんに言いました。
「おや? おじいさん、今日はしばかりじゃなかったのですか?」
 すると、おじいさんは鼻をつまんで言いました。
「とんでもない。今日はくさかった」

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 長良川鵜飼い開き
きょうの誕生花 → やぐるまそう
きょうの誕生日 → 1963年 浜田雅功 (芸人)

きょうの新作昔話 → 美しい顔
きょうの日本昔話 → 海ぼうず
きょうの世界昔話 → スガンさんのヤギ
きょうの日本民話 → おじいさんはくさかった
きょうのイソップ童話 → 子ヒツジを食べるヒツジ飼い
きょうの江戸小話 → なまけ者

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5月10日の日本民話 カッパのトゲぬき薬

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 5月の日本民話

5月10日の日本民話

カッパのトゲぬき薬

カッパのトゲぬき薬
茨城県の民話茨城県情報

 むかしむかし、ある屋敷の裏の井戸(いど)に、毎日のようにおかっぱ頭の男の子がやってきました。
 男の子は深い井戸の中をしばらくのぞきこんでは、スーッと、どこかへ消えていくのでした。
「なにをしているのだろう? 今度きたら、話しをしてみよう」
 屋敷の人たちはそう思いましたが、男の子は気がついてみると、もう姿がないのです。
 話をきいた屋敷の主人は、ある時、井戸のわきにひそんでまちかまえていました。
 用心のために、(かたな)を手に身がまえています。
 そこへ何も知らない男の子がやってくると、いつものように井戸の中をのぞきこみました。
 そこへ、屋敷の主人が現われました。
「お前はどこの子だ? なんで毎日のようにここへきて、井戸の中をのぞきこんでいく」
 主人の持っている刀を見た男の子は、ブルブルとふるえながら、その場ヘペタンとすわりこんでしまいました。
「どうやら、お前は人間の子ではなさそうだな」
 主人は、刀をにぎりしめました。
「あ、あやしい者ではありません。村はずれの川にすむ、ただのカッパでございます」
「カッパだと? カッパがなんで、井戸をのぞくんだ?」
「はい。深い井戸の底にあるきれいな水を見ているだけです。この井戸の水は、とてもきれいですから。きれいな水を見ると、とても気持ちがいいんです」
と、カッパはいいました。
「お前は気持ちいいかもしれんが、家の者たちは気味わるがっておるんだ」
 主人はおどすつもりで、刀をふりあげました。
「ご、ごかんべんを。命ばかりはお助けを」
「いや、ならぬ!」
主人が声をあらげると、カッパがいいました。
「命を助けてくださいましたら、カッパのトゲぬき薬のつくり方を教えます」
「トゲぬき薬? はじめて聞くが、それはどんな薬じゃ。つくり方をいってみろ」
 するとカッパは、まじめな顔をして、
「ナシの葉とカキの葉と、野山にあるマユミ(→ニシキギ科の落葉小高木)の葉を、それぞれ土用の丑の日(どようのうしのひ)にとって、こまかくちぎってよくまぜて、それから・・・」
と、トゲぬき薬のつくり方を説明したあと、
「つくり方は、お屋敷のあとつぎの方にだけ教えて、あとは秘密にしてください」
と、つけくわえました。
 屋敷の主人はカッパをゆるしてやると、夏の土用の丑の日をまって薬をつくってみました。
 そしてためしてみると、カッパがいっていたようによくきいて、どんなトゲでもトゲのほうからぬけてくるのです。
「これは、たいしたものだ」
 屋敷の主人がこのトゲぬきの薬を村の人たちに売ってみると大評判(だいひょうばん)で、つくってもつくってもすぐに売れてしまいました。
 トゲぬきの薬なんてと思うでしょうが、仕事がら、お百姓(ひゃくしょう)はトゲがささることが多いのです。
 その後、屋敷ではカッパの像(ぞう)をつくって、屋敷の裏の井戸のわきにまつったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 日本気象協会設立記念日
きょうの誕生花 → しゃくなげ
きょうの誕生日 → 1970年 トモ (芸人)


きょうの日本昔話 → あまのじゃくくらべ
きょうの世界昔話 → カムイルのぼうけん
きょうの日本民話 → カッパのトゲぬき薬
きょうのイソップ童話 → ライオンとロバとキツネ
きょうの江戸小話 → うどん

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5月9日の日本民話 うでをみがいた兄弟

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 5月の日本民話

5月9日の日本民話

うでをみがいた兄弟

うでをみがいた兄弟
岡山県の民話岡山県情報

 むかしむかし、あるところに、仲のよい三人の兄弟がいました。
 ある時、一番上の兄さんが言いました。
「わしらも、もう一人前の大人だ。これから旅へ出て、何か腕をみがいてこようではないか」
 あとの二人も賛成し、三人は旅に出ることにしました。
 しばらく行くと、道が三つにわかれています。
 そこで、一番上の兄さんが言いました。
「それじゃ、三人べつべつの道を行こう。三年たったらもどってきて、それぞれの腕前を見せっこしよう」
 一番上の兄さんは、右の道を行きました。
 二番目の兄さんは、まん中の道を行きました。
 すえっ子は、左の道を行きました。
 それから、三年がたちました。
 三人の兄弟は約束どおり、自分の家にもどってきました。
 一番上の兄さんが、すえっ子に聞きました。
「お前は、何を習ってきた?」
「おら、散髪屋(さんぱつや)で腕をみがいてきた」
「なるほど。で、お前は何を習ってきた?」
 二番目の兄さんに聞きました。
「おらはかじ屋で、ウマの金ぐつを作る腕をみがいてきた」
「なるほど、二人ともよくがんばったな」
「それで兄さんは、何を習ってきた?」
 すえっ子が聞きました。
「おらは、侍屋敷で柔術(じゅうじゅつ)を習ってきた。どんなものだって投げとばせるぞ」
「へえ、すごいなあ」
 二人の弟が感心していると、ウサギがピョンピョンとかけてきました。
「よし、おらの腕前を見せてやる」
 すえっ子は飛び出すなり、手に持ったハサミで、はねているウサギの毛をきれいにかりとってしまいました。
 もちろん、ウサギにはキズ一つありません。
「おみごと!」
 一番上の兄さんと二番目の兄さんが、手をたたきました。
 するとそこへ、ウマに乗った人が通りかかりました。
「ようし、今度はおらの番だ」
 二番目の兄さんは飛び出すなり、歩いているウマの四本の足の金ぐつを、新しいのにとりかえてしまいました。
 あまりにも素早くて、ウマも乗っている人も、金ぐつをとりかえた事に気づきません。
「おみごと!」
 今度は、一番上の兄さんとすえっ子が手をたたきました。
「二人とも大した腕前じゃ。やっぱり旅に出かけてよかった」
 一番上の兄さんがよろこんでいると、きゅうに大雨がふってきました。
 弟たちが、あわててかけだそうとすると、
「待て待て、ここはおらにまかせておけ」
 言うなり、一番上の兄さんはふりかかってくる雨つぶを、両手で素早くはねかえしました。
「おみごと、おみごと」
 言いながら弟たちは、一番上の兄さんのおかげで雨にぬれずに、家に帰っていきました。
 家にもどった三人兄弟は、それからも自分の腕をみがいて、いつまでも仲良くくらしたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → アイスクリームの日
きょうの誕生花 → クレマチス
きょうの誕生日 → 1970年 テツ (芸人)


きょうの日本昔話 → ばばいるか
きょうの世界昔話 → オオカミと3人の娘
きょうの日本民話 → うでをみがいた兄弟
きょうのイソップ童話 → 水をたたく漁師
きょうの江戸小話 → けはえぐすり

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5月8日の日本民話 ならず者と白いヘビ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 5月の日本民話

5月8日の日本民話

ならず者と白いヘビ

ならず者と白いヘビ
千葉県の民話千葉県情報

 むかしむかし、ある小さな里に、長さが一メートルほどの白いヘビが二匹でてきました。
 二匹の白いヘビは人をおそれるようなことも、人に悪さをするようなこともありませんでした。
 二匹は毎日のように、仲よく里の中をはいずっていました。
「このヘビたちは、つがい(→夫婦)かのう。とても仲がよい。二匹ともまっ白とは、ほんにめずらしい」
「白いヘビは神さまの使いだというぞ。それが一度に二匹も現れたんじゃ。この里に何かいいことがあるかもしれんな」
 里の人たちは、とつぜん現れた白いヘビを、そっとしておいてやりました。
 ところがこの里には、八郎次(はちろうじ)というならず者がいました。
 自分には何もこわいものはないと、いつも強がりをいっています。
 八郎次は白いヘビの話を耳にすると、みんなの見ている前で二匹のヘビをつかみあげて、たたき殺してしまったのです。
「ヘビが何をしたというんじゃ! 何もせんのに、殺すことはなかろう」
 お百姓(ひゃくしょう)の一人がいうと、
「ふん! 殺すのはかってだろう。目玉の赤い白いヘビなど、気持ちわるくてしょうがねえ」
「白いヘビはな、神さまのつかいだ。たたりがあったらどうする!」
「なにがたたりじゃ。そんなもんはこわくない」
 朝から酔っぱらっている八郎次は、そのまま家に帰っていきました。
 その夜の事です。
 八郎次の顔は、まるで皮をむいたトウガン(ウリの一種)のように、まっ白にふくれあがってしまったのです。
 顔ばかりではありません。
 手も足も、体中が白くなってふくれあがり、はげしい痛みにおそわれたのです。
 八郎次は家から飛び出すと、
「痛え! 痛えよう! 助けてくれー!」
と、さけびながら、里じゅうを走りまわりました。
 そして三日三晩苦しみぬいて、やぶの中で死んでしまいました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 世界赤十字デー
きょうの誕生花 → ふじ
きょうの誕生日 → 1965年 さくらももこ (漫画家)

きょうの新作昔話 → 山姥(やまんば)
きょうの日本昔話 → 牛池
きょうの世界昔話 → 三人のなまけもの
きょうの日本民話 → ならず者と白いヘビ
きょうのイソップ童話 → ネズミとカエル
きょうの江戸小話 → パッと死ぬ

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5月7日の日本民話 湖山長者

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 5月の日本民話

5月7日の日本民話

湖山長者

湖山長者
鳥取県の民話鳥取県情報

 むかしむかし、因幡の国(いなばくに→鳥取県)に、湖山長者というとても欲の深い長者がいました。
 長者の田んぼは大変広かったのですが、代々の家のしきたりで、その田んぼを一日で植えなければならないのです。
 田植えの日には夜も明けないうちから、数えきれないほどの早乙女(さおとめ→田んぼを植える女の人)たちがずらりと並んで、いっせいに田植えをはじめるのです。
 ところが、ある年の田植えの日の事。
 一匹のサルが子サルをさかさまに背負いながら、山から下りて来ました。
 それを見つけた早乙女たちが、
「あれ、サルが赤ん坊を逆さにしてるよ」
「ほんとう。今にも落っこちそう」
「あれ、落ちた」
「落ちたのに笑っているよ。可愛いいなあ」
と、口々にはやしたてます。
 すると、ほかの場所で田植えをしていた早乙女たちも、
「何? 何?」
と、田植えの手をやすめて、サルを見ようとしました。
 これに気がついた湖山長者は、
「こら! なにをしている。手を休めるな!」
と、大声でどなりました。
 ビックリした早乙女たちは、あわてて田植えをはじめましたが、サルに見とれていたため、その日の日暮れになっても田植えが終わりそうになかったのです。
 家のしきたりがくずれると、長者はしきりに早乙女をせかしましたが、どうしても日の暮れるまでに終わらない事が分かると、
「ようし、こうなればお天道(てんと)さんに戻ってもらうより方法がないわい。なあに、この湖山長者に出来んことなどない」
と、長者は金の扇(おおぎ)を開くと、お天道さんを扇であおぎかえしたのです。
 するとどうでしょう。
 西の山に沈もうとしていたお天道さんが、扇の風に押されるように、もう一度、天に戻ったのです。
「それ、この間に苗(なえ)を植えろ」
 長者が叫ぶと、早乙女たちは急いで田植えを再開しました。
 そうしてようやく田植えが終わったとき、それに合わせるようにお天道さまが沈んだのです。
 さて、この話しは遠くの国まで伝わったので、
「入り日も招きかえす勢いとは、このことだ」
と、長者は大きな盃(さかずき)をかたむけて、上機嫌です。
 ですが次の朝、長者は目を覚ますと、きのう田植えが終わったばかりの田んぼが、一面水浸しです。
 そしてその水はどんどん広がり、長者の屋敷も水の中に沈んでしまいました。
 その時に出来た湖を、湖山池と呼ぶようになったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 博士の日
きょうの誕生花 → 薔薇
きょうの誕生日 → 1979年 窪塚洋介 (俳優)


きょうの日本昔話 → あぶらとり
きょうの世界昔話 → 天の猟師オリオン
きょうの日本民話 → 湖山長者
きょうのイソップ童話 → ラクダとゾウとサル
きょうの江戸小話 → かまが大事

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5月6日の日本民話 一日おくれのショウブ売り

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 5月の日本民話

5月6日の日本民話

一日おくれのショウブ売り

一日おくれのショウブ売り
島根県の民話島根県情報

♪朗読再生

 むかしむかし、ある村に、とても美しい娘がいました。
 一人娘だったため、娘が年頃になると、となり村からむこさんをむかえました。
 二人は村でも評判の、たいへん仲のよい夫婦となりました。
 ところがむこさんは、美しい嫁さんのそばに少しでも長くいたいので、なかなか畑仕事に行きません。
 そこで町の絵師(えし→絵描き)に嫁さんの絵姿(えすがた)をかいてもらい、仕事をするときはそれを竹ざおにつけて、畑に立てておくことにしたのです。
 そんなある時、大風がふいてきて、嫁さんの絵姿がとばされてしまいました。
 絵姿は空にのぼって、見えなくなってしまいました。
 さて、この絵姿が落ちたのは、遠い京の都の殿さまの屋敷の庭先でした。
「なんと! この世にこれほど美しい女がおるとは。お前たち、この絵の女がどこにおるかさがしてまいれ」
 殿さまはそういって、絵姿の美女をさがし出すよう命じました。
 そして絵姿の美女を見つけると、殿さまはすぐに京の屋敷につれてこさせました。
 こうしてむこさんは、むりやり嫁さんと別れさせられてしまったのです。
 むこさんは、くる日もくる日も、嫁さんの事を思いつづけていました。
「ああ、もう一度だけ嫁さんに会いたい。嫁さんに会いたい。しかし、殿さまの屋敷の中じゃあ・・・」
と、苦しんでいると、都からきた商人が言いました。
「五月五日の端午(たんご)の節句(せっく)の日だけは、ショウブ売りが殿さまの屋敷の中に入れるそうだ」
 それを聞いたむこさんは喜んで、ショウブを背負うと都へのぼっていきました。
 けれども五月五日には間にあわず、翌日の五月六日に、やっと都につきました。
 一日おくれでは、もう殿さまの屋敷へ出入りすることはできません。
 むこさんはガッカリしながら、大きな屋敷のまわりを、
「ショウブー! ショウブー!」
と、大声をあげながら、歩いていました。
「はて? 節句はきのうのはず。六日のショウブ売りとはめずらしい」
 屋敷の人は一日遅れのショウブ売りを笑っていましたが、その声を聞いた嫁さんは屋敷の庭を走ると、塀(へい)の外にいるむこさんに声をかけました。
「あ、あんた。来てくれたんだね」
「おおっ、お前、お前か」
「そう、あたしだよ。今は人目があるから、夜中にむかえに来て」
「よし、わかった」
 その夜、嫁さんはむこさんと手に手をとって、ふるさとへ逃げていきました。
 苦しい旅でしたが、二人は山をいくつもこえて、やっと村が見える峠(とうげ)まで逃げてきました。
「ほれ、寺の赤い屋根が見える。もうすこしだ!」
 むこさんは嫁さんをはげましましたが、嫁さんはその一言を聞いて、はりつめていた気持ちがいっぺんにゆるんでしまったのでしょう。
 その場へ崩れるように倒れると、そのまま息をひきとってしまいました。
 亡くなった嫁さんのふるさとでは、その後、毎年五月六日に紫色のショウブの花を家にかざって、気の毒な嫁さんの霊(れい)をなぐさめるようになったという事です。

※ よく似た話しに、絵すがたよめさんがあります。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ゴムの日
きょうの誕生花 → しゃが
きょうの誕生日 → 1972年 高橋尚子 (マラソン)

きょうの新作昔話 → 娘に恩返しをした水牛
きょうの日本昔話 → 旅人ウマ
きょうの世界昔話 → コウノトリ
きょうの日本民話 → 一日おくれのショウブ売り
きょうのイソップ童話 → キツネとお面
きょうの江戸小話 → いしゃちがい

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5月5日の日本民話 食わず女房

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5月5日の日本民話

食わず女房

食わず女房
群馬県の民話群馬県情報

 むかしむかし、あるところに、とてもけちな男がすんでいて、いつもこう言っていました。
「ああ、仕事はよくするが、ごはんを食べない嫁さんが欲しいなあ」
 そんな人がいるはずないのですが、ある時、一人の女が男の家をたずねてきて、
「わたしはごはんを食べずに、仕事ばかりする女です。どうか、嫁にしてくださいな」
と、言うではありませんか。
 それを聞いた男は大喜びで、女を嫁にしました。
 男の嫁になった女は、とてもよく働きます。
 そして、ごはんをまったく食べようとしません。
「ごはんは食べないし、よく仕事をするし、本当にいい嫁じゃ」
 ところがある日、男は家の米俵(こめだわら)が少なくなっているのに気がつきました。
「おや? おかしいな。嫁はごはんを食べないはずだし」
 とりあえず、男は嫁に聞いてみましたが、
「いいえ。わたしは知りませんよ」
と、言うのです。
 あんまり変なので、次の朝、男は仕事に行くふりをして、家の天井に隠れて見張っていました。
 すると嫁は、倉(くら)から米を一俵かついできて、どこからか持ってきた大きなカマで一度にご飯をたきあげました。
 そして塩を一升(いっしょう→1.8リットル)用意すると、おにぎりを次々と作って、山の様に積み上げたのです。
(なんじゃ? お祭りじゃあるまいし、あんなにたくさんのおにぎりを作って、どうするつもりだ?)
 男が不思議そうに見ていると、嫁は頭の髪の毛をほぐしはじめ、頭のてっぺんの髪の毛をかきわけました。
 すると頭のてっぺんがザックリと割れて、大きな口が開いたのです。
 嫁はその口へ、おにぎりをポイポイ、ポイポイと投げ込んで、米一俵分のおにぎりを全部食べてしまいました。
(あわわわわ。おらの嫁は、化物だ!)
 怖くなった男はブルブルと震えましたが、嫁に気づかれないように天井から降りると、仕事から帰ったような顔をして家の戸を叩きました。
「おい。今、帰ったぞ」
 すると嫁は、急いで髪の毛をたばねて頭の口を隠すと、
「あら、おかえりなさい」
と、笑顔で男を出迎えました。
 男はしばらく無言でしたが、やがて決心していいました。
「嫁よ、実は今日、山に行ったら山の神さまからお告げがあってな、『お前の嫁はええ嫁だが、家においておくととんでもないことになる。はやく家から追い出せ』と、言うんじゃ。だからすまないけど、出て行ってくれんか?」
 それを聞いた嫁は、あっさりといいました。
「はい。出て行けと言うのなら、出て行きます。でもおみやげに、風呂おけとなわをもらいたいのです」
「おお、そんな物でいいのなら、すぐに用意しよう」
 男が言われた物を用意すると、嫁さんがいいました。
「すみませんが、この風呂おけの底に穴が開いていないか、見てもらえませんか?」
「よしよし、見てやろう」
 男が風呂おけの中に入ると、嫁は風呂おけになわをかけて、男を入れたままかつぎ上げました。
 ビックリした男が嫁の顔を見てみると、嫁はなんと、鬼婆(おにばば)にかわっていたのです。
 鬼婆は男を風呂おけごとかついだまま、ウマよりもはやくかけ出して、山へと入っていきました。
(こ、このままじゃあ、殺される! じゃが、どうしたらいい?)
 男はどうやって逃げようかと考えていると、鬼婆が木によりかかってひと休みしたのです。
(今じゃ!)
 男はその木の枝につかまって、なんとか逃げ出すことができました。
 さて、そうとは知らない鬼婆は、またすぐにかけ出して鬼たちがすむ村へ到着しました。
 そして、大きな声で仲間を集めます。
「みんな来ーい! うまそうな人間を持ってきたぞー!」
 仲間の鬼が大勢集まってきましたが、風呂おけの中をのぞいてみると、中は空っぽです。
「さては、途中で逃げよったな!」
 怒った鬼婆は山道を引き返し、すぐに男を見つけました。
「こら待てー!」
「いやじゃ! 助けてくれー!」
 鬼婆の手が男の首にかかる寸前、男は草むらへ飛び込みました。
 すると鬼婆は、男の飛び込んだ草むらが怖いらしくて、草むらの中に入ってこようとはしません。
 男はブルブルふるえながら、一生懸命に念仏をとなえます。
「なまんだぶー、なまんだぶー」
 鬼婆は草むらのまわりをウロウロしていましたが、やがてあきらめて帰って行きました。
「た、助かった。・・・しかし、なんで助かったのじゃろう?」
 実は男の飛び込んだ草むらには、菖蒲(しょうぶ→サトイモ科の多年生草本で、葉は剣状で80センチほど)がいっぱい生えていたのです。
 鬼婆は菖蒲の葉がに見えて、入ってこれなかったのです。
 その日がちょうど五月五日だったので、今でも五月五日の節句には、魔除(まよ)けとして屋根へ菖蒲をさすところがあるのです。

おしまい

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5月4日の日本民話 長生きじいさん

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 5月の日本民話

5月4日の日本民話

長生きじいさん

長生きじいさん
宮城県の民話宮城県情報

 むかしむかし、ある村に、とても不思議なおじいさんがいました。
 このおじいさんは二メートルもある大男で、たいへんな物知りでした。
 何をたずねても、すぐに答えてくれるのです。
 おじいさんは自分の家は持たずに、村の大きな家に何日か世話になると、そこを出て、またほかの家に世話になるというくらしをしていました。
 近くの村でも、同じように世話になっていました。
 おじいさんの好きなことは、白い紙に字を書くことと、源義経(みなもとのよしつね)が活躍(かつやく)した、むかしの合戦(かっせん)の話しを話して聞かせることです。
 その話し方がまた上手で、まるでそこに自分がいて、見てきたように話すのです。
 自分では年を口にしたことはありませんが、このおじいさんは、だれに対しても自分の子どもを呼ぶように、「せがれ」というのです。
 お寺の和尚(おしょう)さんなどは、百七歳まで生きたのに、やはり「せがれ」といわれて、親しくつきあっていました。
 ある時、将棋(しょうぎ)をさしていて、おじいさんはふと、
「そうそう、そういえばあの時、正左衛門(しょうざえもん)がな・・・」
と、二百年も前の人の話しを始めたのです。
 不思議なおじいさんでしたが、ある年、ポックリと死んでしまいました。
 けれども、それから二十年ほどたったある時、村の人が仕事で京の都へ出かけると、そこにはあのおじいさんがいて、いろいろと話をしたというのです。
 それからも、あちこちでこのおじいさんを見たという人が現われました。
 このおじいさん、もしかすると、まだ生きているのかもしれませんね。

※ むかしから長生きをした人の話は多く、江戸時代の書物には、鳥取県の儀左衛門(ぎざえもん)は1841年(天保12)に二百九才の誕生日をむかえたと書かれていますし、愛知県の満平(まんぺい)は、1796年(寛政8)に百九十四才になったと書かれています。

おしまい

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5月3日の日本民話 干しな経

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5月3日の日本民話

干しな経

干しな経
兵庫県の民話兵庫県情報

 むかしむかし、ある家で、法事(ほうじ→身近な人の死んだ日に、みんなで集まってお経をあげたり、お墓参りすること)をすることになりました。
 そこで、お寺へお坊さんを呼びにいきましたが、お坊さんが留守(るす)で小僧(こぞう)さんしかいません。
 でも小僧さんなら、お経ぐらいよむことができます。
「小僧さん、わたしの家へ法事にきてください」
「はいはい、わたしでよかったら、すぐまいります」
 小僧さんはさっそく、お坊さんの衣を着てやってきました。
「では、はじめさせていただきます」
 小僧さんがおじぎをして、さて、お経をよもうと思ったら、ふところにお経の本がありません。
 あわててやってきたので、持ってくるのを忘れてしまったのです。
 この小僧さんは、まだ本がなくてはお経がよめません。
(こりゃ、こまったぞ)
 そう思って窓の外を見ると、軒下(のきした)になっぱの束(たば)がほしてありました。
 小僧さんは、いかにもお経のように、その数をかぞえはじめました。
「一れん、二れん、三れん、四れん、ああ、五れん、六れん、・・・」
 一れんというのは、なっぱをつるしてある一本のナワのことで、一れん、二れんとかぞえます。
 小僧さんはなっぱの束をかぞえ終わると、またはじめから、
「一れん、二れん、三れん、四れん、・・・」
と、そればっかりです。
 窓の外でそれを聞いていた子どもが、小僧さんに言いました。
「小僧さん、それ、なんというお経じゃ」
「これは干しな経といって、とてもありがたい、お経じゃ」
「へえ、そんなら、あっちにもまだ、二、三れん、つってあるよ」
 すると小僧さん、
「いや、それはこの次に来たとき、よむつもりじゃ」
と、言ったという事です。

おしまい

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5月2日の日本民話 おばけどうろう

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5月2日の日本民話

おばけどうろう

おばけどうろう
栃木県の民話栃木県情報

 日光(にっこう→栃木県)の二荒山神社(ふたらさんじんじゃ)に、高さ六尺(ろくしゃく→約百八十センチメートル)ほどの唐金(からかね→青銅の事)のとうろうがあります。
 このとうろうは、むかし、この近くの鹿沼(かぬま)にすんでいた鹿沼権三郎入道教阿(かぬまごんざぶろうにゅうどうきょうあ)という人が寄進(きしん→社寺などに金品を寄付すること)したもので、おばけどうろうと言われて、今でもおびただしいきずがついているそうです。
 このとうろうが寄進されたころ、二荒山神社は新宮権現(しんぐうごんげん)と呼ばれて、本殿(ほんでん)の前にはたくさんのとうろうがならんでいて、夜になるといっせいに明りがつけられました。
 ところがどういうわけか、教阿(きょうあ)のとうろうだけは、明りをつけるとたちまち燃えるようにかがやきだし、あっというまに消えてしまうのです。
「油がたりないのではないのか?」
と、考え、油ざらを大きな物にとりかえて、たっぷりと油をそそいでおいても、油はまたたくまになくなってしまいます。
 そんなことがうわさになって、このとうろうをおばけどうろうとよぶようになりました。
 ありがたいはずの神社におばけどうろうがあるなんてみっともないと、僧たちはおばけどうろうをくわしく調べてみましたが、べつにあやしいところはありません。
「これはきっと、とうろうに、何かがのりうつっているのだろう」
「それなら、その何かが出て行くよう、とうろうに切りかかるよりしかたがないな」
 そこで剣の腕のたつ僧たちがえらばれ、次の晩から、とうろうに切りかかることにしました。
 一番はじめにえらばれたのは、もとさむらいの僧で、むかしは剣道の指南役(しなんやく)をしていました。
 その僧は夜になると、とうろうのうしろの大きな木にかくれて、とうろうに明りがつけられるのをジッと待っていました。
 次々ととうろうに明りがともり、おばけどうろうにも明りがつけられました。
 明りはたちまちもえるようにかがやき、あたりが昼間のように明るくなりました。
「いまだ!」
 僧は刀をぬくと、おぼけどうろうに走りより、
「えいっ!」
と、切りつけました。
 ガチーン!
 火花が飛び散って、とうろうの明りがスーッと消えました。
 すぐにとうろうを調べてみましたが、僧の切りつけた刀きずがついているだけで、特にかわったところはありません。
 それでも次の晩から、明りの燃えつきる時間が少し長くなったような気がします。
 そこで腕のたつ僧たちは、毎晩、刀でおばけどうろうにきりかかりました。
 唐金のとうろうに切りつけるのですから、刀はボロボロになり、どんな名刀も二度とつかえなくなってしまいます。
 それでも僧たちは、毎晩のようにとうろう切りを続けました。
 おばけどうろうはすっかりきずだらけになりましたが、そのおかげで、明りのともっている時間がだんだん長くなっていきます。
 やがておばけどうろうが刀きずでいっぱいになったころ、ついに油もなくならなければ明りもきえず、ほかのとうろうと同じようになったという事です。

おしまい

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5月1日の日本民話 おネズミがお死んでる

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 5月の日本民話

5月1日の日本民話

おネズミがお死んでる

おネズミがお死んでる


秋田県の民話秋田県情報

 むかしむかし、ある田舎の娘さんが、町のお金持ちの家へ働きに行きました。
 でも、田舎で育った娘さんは、ていねいな言葉をうまく使うことができません。
 お客さんにお茶を出すときも、
 「茶を飲め」
 などというので、お金持ちのおかみさんは困ってしまいました。
 そこで娘さんに、
「お客さんには、ていねいな言葉を使わなくてはいけません。何でも言葉の初めに、『お』という字をつけて言いなさい。そうすれば、ていねいな言葉になりますよ」
と、注意したのです。
(茶に『お』をつければ、お茶。なるほど、『お』という字をつければいいんだな)
 それから娘さんは、いろいろな言葉に、『お』という字をつけてみました。
 ネコは→おネコ、カラスは→おカラス、カボチャは→おカボチャ。
(これで、もう大丈夫)
 娘さんは、『お』という字をつけた言葉を、早く使いたくてたまりません。
 家の前でウロウロしていたら、ネズミがどぶに落ちて死んでいました。
 娘さんはさっそく、おかみさんの部屋にかけつけて、
「おおかみさん、おネズミがおどぶに落ちてお死んでる」
と、言いました。
 おかみさんと一緒にいたお客さんは、それを聞いて大笑いです。
 お客さんが帰ったあと、おかみさんは娘さんに言いました。
「何でもかんでも、『お』という字をつけてはいけません。役に立つときだけ、『お』の字をつけなさい」
(そうか、役に立つときだけか)
 さて、その晩のこと。
 お金持ちの家族が晩ごはんを食べているところへ、娘さんがお味噌汁を運んできました。
 ふとおかみさんを見ると、おかみさんのおでこに、おひたしのなっぱがついています。
 そこで娘さんは、大声で言いました。
「かみさん、でこにひたしのなっぱがついて、かしいだよ」
(・・・・・・・ああ、この娘には、何と言ったらわかるのだろう)
 おかみさんは、ガッカリして、
「そういう時は、『おかみさん、おでこにおひたしのなっぱがついて、おかしいですよ』と言うんですよ」
と、言い聞かせました。
 すると娘さんは、ニッコリわらって、
「おやっぱり『お』の字をおつけたほうが、おいいんだべ」
と、言ったのです。

おしまい

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きょうの日本民話 → おネズミがお死んでる
きょうのイソップ童話 → 像をこわした男
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