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2009年4月

4月30日の日本民話 牡丹灯籠(ぼたんどうろう)

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 4月の日本民話

4月30日の日本民話

ぼたんどうろう

牡丹灯籠(ぼたんどうろう)
京都府の民話京都府情報

♪ 朗読再生

 むかしむかし、京の都の五条京極(ごじょうきょうごく)に、荻原新之丞(おぎわらしんのじょう)という男がすんでいました。
 まだ若い奥さんに死なれたため、毎日がさびしくてたまらず、お経をよんだり歌をつくったりして、外へも出ないで暮らしていました。
 七月の十五夜の日の事、夜もふけて道ゆく人もいなくなったころ、二十才くらいの美しい女の人が、十才あまりの娘をつれて通りかかりました。
 その娘には、ぼたんの花の灯籠(とうろう→あかりをともす器具)を持たせています。
 新之丞(しんのじょう)は、美しい女の人に心をひかれて、
(ああ、天の乙女(おとめ)が、地におりてきたのだろうか)
と、つい家を飛び出しました。
 新之丞が声をかけると、女はいいました。
「たとえ月夜でも、かえる道はおそろしくてなりません。どうかわたくしを、送ってくださいますか?」
「ええ。でも、よろしければ、わが家へきて、ひと晩おとまりなさい。遠慮はいりませぬ。さあ、どうぞ」
 そういって新之丞は女の手をとり、家へつれてもどりました。
 新之丞が歌をよむと、女もすぐにみごとな歌でかえすので、新之丞はうれしくてたまりません。
(美しいだけでなく、教養もあるとは。実に素晴らしい)
 すっかりしたしくなって、時がたつのもわすれるうちに、東の空が明るくなりかけました。
「人目もありますので、今日はこれで」
 女はいそいそとかえっていきましたが、それからというもの、女は日がくれると必ずたずねてきました。
 ぼたんの花の灯籠を、いつも娘に持たせて。
 新之丞は、毎日、女が来るのが楽しみでなりません。
 そして、二十日あまりが過ぎました。
 たまたま家のとなりに、物知りなおじいさんが住んでいました。
「はて、新之丞のところは一人きりのはずだが、毎晩若い女の声がしておる。うむ、・・・どうもあやしい」
 おじいさんはその夜、かべのすきまから新之丞の家の中をのぞきました。
 すると新之丞があかりのそばで、頭から足の先までそろった白いガイコツと、さしむかいで座っているのです。
 新之丞が何かしゃべると、ガイコツがうなずきます。
 手やうでの骨も、ちゃんと動かします。
 そのうえガイコツは口のあたりから声を出して、しきりに話をしているのでした。
 あくる朝、おじいさんは新之丞の所へ行き、たずねました。
「そなたのところへ、夜ごとに女の客があるらしいが、いったい何者じゃ?」
「そっ、それは・・・・・・」
 新之丞は、答えません。
 それでおじいさんは、昨夜見たとおりのことを話したうえで、
「近いうち、そなたの身にきっとわざわいがおこりますぞ。死んで幽霊となりまよい歩いているものと、あのようにつきおうておったら、精(せい)をすいつくされて、悪い病気にむしばまれる」
 これには新之丞もおどろいて、今までの事をありのままにうちあけたのでした。
「さようであったか。その女が万寿寺(まんじゅじ)のそばに住んでおるというたのなら、行って探してみなされ」
「はい、わかりました」
 新之丞はさっそく五条(ごじょう)から西へ、万里小路(までのこうじ)まで行って探しました。
 しかし一人として、それらしい女を知る人がありません。
 日がしずむころ、万寿寺(まんじゅじ)の境内(けいだい)へ入って休み、北の方へ足をむけると、死者のなきがらをおさめた、たまや(→たましいをまつるお堂)が一つ、目にとまりました。
 古びたたまやで、よく見たところ、棺のふたにだれそれの息女(そくじょ→みぶんのある娘をさす言葉)なになにと、戒名(かいみょう→死者につける名前)が書きつけてありました。
 棺のわきに、おとぎぼうこ(→頭身を白い絹で小児の形に作り、黒い糸を髪として、左右に分け前方に垂らした人形)、とよばれる子どもの人形が一つ、また棺の前には、ぼたんの花の灯籠がかかっていました。
「おお、まちがいなくこれじゃ。このおとぎぼうこが娘に化けていたのだな」
 新之丞はこわくなって、走って逃げ帰りました。
 家へ戻ったものの、夜にまた来るかと思うと、おそろしくてたまりませんので、となりのおじいさんの家にとめてもらいました。
 それからおじいさんに教わって東寺(とうじ)へいき、そこの修験者(しゅげんじゃ→山で修行する人)にわけをうちあけて、
「わたくしは、どうしたらよいのですか?」
と、たずねました。
 すると、
「まちがいなく、新之丞殿は化け物に精をすいとられておられますな。あと十日も、今まで通りにしておったら、命もなくなりましょう」
 修験者はそういって、まじないのお札を書いてくれました。
 そのお札を家の門にはりつけたところ、美しい女も、灯籠を持った娘も、二度と姿を見せなくなったのです。
 それから、五十日ほどが過ぎました。
 新之丞は東寺へでかけて、今日までぶじに過ごせたお礼をしました。
 その日の夜、お供の男を一人つれていたので、東寺を出てお酒を飲みましたが、お酒を飲むと、むしょうに女に会いたくなって、お供の男が止めるのも聞かず、万寿寺(まんじゅじ)へ出かけていったのです。
 万寿寺に着くと、あの女が現れ、
「毎晩、お会いしましょうと、あれほどかたくお約束をしましたのに、あなたさまのお気持ちがかわってしまい、それに、東寺の修験者にも邪魔をされて、本当にさみしゅうございました。・・・でも、あなたさまは来てくだされました。お目にかかれて、本当にうれしゅうございます。さあ、どうぞこちらへ」
「うむ、そなたにつらい思いをさせるとは、まことにすまん事をした。そなたが何者でも構わぬ。これからは、二度と離れぬ」
「・・・うれしい」
 新之丞は女に手を取られて、そのまま奥の方へ連れて行かれました。
 後をつけてきたおともの男は、腰を抜かすほどビックリして、
「た、たっ、大変だ! 新之丞さまが、あの女にさそいこまれて、寺の墓地の方へ!」
と、となり近所にいってまわりました。
 それで大さわぎになり、みんなして万寿寺の北側の、たまやがある所へ行ってみました。
 しかし新之丞は棺の中へひきこまれて、白骨の上へ重なるようにして死んでいました。
 女に精を吸い取られて、新之丞は老人のようにやつれていましたが、その口には笑みが浮かんでいました。
 万寿寺では気味悪くおもって、そのたまやを別の場所へ移しました。
 しばらくして、雨がふる夜には新之丞と若い女が、ぼたんの花の灯籠を持った娘とともに京の町を歩く姿が見られ、それを見た者は重い病気にかかるとうわさが立ちました。
 新之丞の親類(しんるい)の人たちが手厚く供養(くよう)をしましたが、たましいがまよい歩かないようになるまでには、かなりの時間がかかったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 図書館記念日
きょうの誕生花 → ネモフィラ
きょうの誕生日 → 1972年 常盤貴子 (俳優)


きょうの日本昔話 → クジラと海のいかり
きょうの世界昔話 → カメのこうらはヒビだらけ
きょうの日本民話 → ぼたんどうろう
きょうのイソップ童話 → 医者と病人
きょうの江戸小話 → ウマのしっぽ

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4月29日の日本民話 山びこになった男の子

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4月29日の日本民話

山びこになった男の子

山びこになった男の子
鹿児島県の民話鹿児島県情報

 むかしむかし、あるところに、男の子がいました。
 男の子はお父さんとお母さんの三人でくらしていましたが、お母さんが病気になって死んでしまったのです。
 そこでお父さんは男の子のために、新しいお母さんをもらうことにしたのです。
 ところが新しいお母さんはとてもいじわるで、男の子がにくらしくてたまりません。
 毎日毎日、出来もしないほどたくさんの仕事を言いつけては、男の子をこまらせていたのです。
 ある日、お母さんは、
「山へ行って、つる草を取ってこい!」
と、言いました。
 つる草というのは、ほかの木にまきつく草のことです。
 男の子は色々なつる草を取って、家に帰りました。
 ところが、お母さんは、
「このマヌケ! わたしが取ってこいと言ったのは、こんなつる草じゃない!」
と、言って、男の子を山へ追いかえしてしまいました。
 男の子は暗くなるまで山の中を歩きまわり、前よりもたくさんのつる草を持って帰りました。
 それでもお母さんは、
「このマヌケ! わたしが取ってこいと言ったのは、こんなつる草じゃない!」
と、言って、せっかく取ってきたつる草をみんなすててしまうのです。
 それからというもの、男の子は毎日毎日、朝早くから山へ行ってつる草を取りました。
 でも、どんなつる草を持って帰ってもお母さんは、
「このマヌケ! わたしが取ってこいと言ったのは、こんなつる草じゃない!」
と、言って、男の子を山へ追いかえします。
(どうして? どうしてお母さんは、こんな仕事ばかり言いつけるの)
 悲しくなった男の子が山の中でないていると、まっ白な髪を長くたらしたおじいさんがやって来て、
「どうした? なぜないているのかね?」
と、たずねました。
 そこで男の子は、これまでの事をくわしく話しました。
 すると、おじいさんが言いました。
「よし、よし、そんなお母さんのところへなんか、もう帰らなくてもいい。今日からお前を山の神さまにしてあげよう」
と、言って、男の子を山びこにしてくれたのです。
 山びこになった男の子は、毎日、山の中を走りまわり、人の言葉をまねたり、イタズラをして遊ぶようになりました。
 山に向かって、
「ヤッホー!」
と、言ったら、
「ヤッホー!」
と、返事をする山びこです。
 山の道を歩いていて、突然バラバラと砂がふってきたりするのも、みんな山びこのしわざなのです。
 また、山で働く木こりが木を切っていると、ふいに後ろから、メシッ、メシッと、木の倒れる音もおこすのです。
(なんだ、また山びこのイタズラだな)
 そこで、山びこになった男の子を知っている木こりが言いました。
「山びこよ。イタズラをするのはおよし。せっかく山の神さまにしてもらったのに。また、あのおっかさんのところへ帰りたいか?」
 すると山びこはむかしのことを思い出して悲しくなり、すぐにイタズラをやめるのだという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 昭和の日
きょうの誕生花 → カンガルーポー
きょうの誕生日 → 1977年 一色紗英(俳優)

きょうの新作昔話 → きっちょむさんの水風呂
きょうの日本昔話 → タコとり長兵衛
きょうの世界昔話 → トラ退治
きょうの日本民話 → 山びこになった男の子
きょうのイソップ童話 → オオカミとイヌの戦争
きょうの江戸小話 → あててみな

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4月28日の日本民話 足長手長

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 4月の日本民話

4月28日の日本民話

足長手長

足長手長
福島県の民話福井県情報

 むかしむかし、山々にかこまれた会津(あいず→福島県)の盆地(ぼんち)には、小さな村がいくつもありました。
 村の人たちは毎日朝早くから畑へ向かい、いっしょうけんめい働きました。
♪大きくなあれ、ほーいやさー
♪たくさんなーれ、ほーいやさー
 秋になると、畑には作物がゆたかにみのります。
「豊作(ほうさく)じゃ、豊作じゃ!」
「今年も、たくさんとれたぞ!」
 こうして会津の人々はよく働き、ゆたかに幸せにくらしていました。
 ところが、ある年のこと。
 どこからともなく大きなおそろしい怪物(かいぶつ)が長い手足で雲をかきわけて、空の向こうから現れたのです。
 その怪物は足長手長(あしながてなが)という、夫婦の魔物(まもの)でした。
 夫の足長はその名のとおりとても足が長く、どんなに遠くても足をのばせばとどきます。
 妻の手長はおそろしく手が長く、すわったままどんな遠いところの物でもヒョイとつかむことができました。
 この足長手長の夫婦は、会津の土地をなぜか気に入ってしまったようです。
 妻の手長は磐梯山(ばんだいさん→福島県の北部、猪苗代湖の北にそびえる活火山。標高1819メートル)の頂上(ちょうじょう)にすわり、夫の足長は会津盆地をひとまたぎしています。
「手長よ、そろそろ始めるか」
「はいよ、足長」
 二人の魔物は声をかけあうと、すぐに足長の足がグングンとのびはじめて、あちらこちらにある雲をつかんでは会津盆地の上に集めます。
 雲は畑しごとをしている人たちの頭の上をおおい、みるみるうちにあたりは暗くなっていきました。
「今度はおめえだ、手長や」
 すると手長はその長い手で、猪苗代湖(いなわしろこ→福島県の中央部、湖面標高514メートル。最大深度94メートル。周囲63キロメートル。面積103平方キロメートル)の水をすくってばらまきます。
 それはものすごい大つぶの雨となって、畑仕事をする人々の上にふりかかりました。
「あっはっはっは、見てみろ、あのあわてぶり!」
 足長と手長のせいで、毎日毎日、会津は暗い雨の日がつづきました。
 村の人たちは、ほとほとこまりました。
「このままではたいへんだぞ! おてんとさまが出ないおかげで、家のダイコンがさっぱり大きくならん」
「家もだ。このまま作物がくさっちまったら、おらたちどうなるだ?」
「うえ死にじゃあ。はらをすかして死ぬしかねえ」
「なんとか、雨がやんでくれんかなあ」
 こんな村の人たちのようすを見て、足長手長は大喜びするのです。
 そしてまた、何かイタズラをを考えたようです。
 そのうちに雨はやんで、雲のすきまからお日さまが顔を出しました。
「おお、お日さまじゃ! これでたすかるぞ!」
「よかった、よかった」
 大喜びの村人たちが、空を見上げたときです。
 雲のすきまから、おそろしい怪物が顔を出していたではありませんか。
「あーっ、何じゃ、あれは!」
 足長手長は、ふるえる村人たちを見ておもしろがると、
「あはははは。こうやって、太陽をかくしてやるよ」
と、手長が手をのばして、太陽の光をかくしてしまいました。
 それだけではありません。
 次のイタズラは、首をのばして作物に大きく息をふきつけ、作物を根元からふきとばすのです。
 次から次へとイタズラをくりかえす足長手長を、村人たちはどうすることもできません。
 そんなある日の事、ボロボロの衣をまとった弘法大師(こうぼうだいし)という名のお坊さんが、この会津の村にやってきました。
「これはひどい、あまりにもひどい」
 お坊さんはあれはてた村のようすにおどろいて、村の人たちに話をききました。
「うーむ。それは聞きずてならんことじゃ。よし、わしの力でその魔物をこらしめてやろう」
 お坊さんは、すぐに磐梯山の頂上にのぼりはじめました。
 そして頂上に着くと、大声でいいました。
「足長手長! わしはここをとおりかかった旅の僧じゃ。姿を見せんか!」
 お坊さんの声に、足長と手長が現れました。
「わっはっはっは、なんともきたない坊主じゃな」
「足長手長。わしのいうことをよく聞け! お前らは、どんな事でもできると思っとるだろうが、どんなにがんばってもできん事があるぞ」
「何をいう。この世の中に、わしらにできぬことは何一つないわ」
「そうか、ならばわしのいったとおりの事をやってみろ。もしできなければ、お前たちはすぐにこの会津の土地を出ていくのだ」
「よしわかった。どんな事かいってみろ」
「うむ。それはだな」
 お坊さんは、ふところから小さなつぼをとりだしていいました。
「足長手長よ。お前らはずいぶんと大きななりをしている。二人一緒に、こんな小さなつぼに入ることはできんじゃろう? どうじゃ、まいったか。わっはっはっは!」
「なにをぬかす。できたらお前の命をもらうぞ! いいな! ではいくぞ、手長」
「あいよ、足長」
 二人は声をかけあうと、みるみるうちに小さくなってつぼの中へ入ってしまいました。
 そのとたん、お坊さんはつぼのふたをしめると、衣をちぎってしっかりとつぼをつつんでしまいました。
「こら! なんじゃあー! ここからだせ! ふたをあけろー!」
 つぼの中で足長手長が、大声をあげながらあばれます。
「バカもの! 人々を苦しめたばつとして、お前ら二人はこのままずっとこのつぼの中に入っておれ!」
 お坊さんはそのつぼを磐梯山の頂上にうめると、大きな石をのせて、二度と出てこられないようにしました。
 つぼの中で足長手長がくやしがってあばれておりましたが、お坊さんの術がかかっているのか、つぼのふたはビクともしません。
 やがて二人はあきらめたのか、しずかになりました。
「お前たちはこれからはこの山の守り神として祭ってやるから、村人たちのためにつくすがよいぞ」
 こうして、足長手長は弘法大師によって退治されたのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 二輪・自転車安全日
きょうの誕生花 → えにしだ
きょうの誕生日 → 1974年 鈴木奈穂 (タレント)


きょうの日本昔話 → 力太郎
きょうの世界昔話 → ハエとミツバチ
きょうの日本民話 → 足長手長
きょうのイソップ童話 → ヘルメスと職人たち
きょうの江戸小話 → 法力

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4月27日の日本民話 ヘビがカエルをのむわけ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 4月の日本民話

4月27日の日本民話

ヘビがカエルをのむわけ

ヘビがカエルをのむわけ
大分県の民話大分県情報

 むかしむかし、神さまが世界中の生き物をつくったのですが、どの生き物もつくったばかりで、何を食べさせるのかまだ決めていませんでした。
 生き物たちは何を食べていいのかわからないので、おなかがペコペコです。
 そこで生き物たちは、かわるがわる神さまのところへ行って、
「早く、食べ物をきめてください」
と、おねがいしました。
 すると、神さまが、
「明日の朝、食べ物をきめてやるから、みんな集まるように」
と、おふれを出しました。
 よろこんだ生き物たちは、夜の明けるのを待って、神さまのところへ出かけました。
 さて、ヘビがノロノロとはっていると、後ろからカエルがやってきました。
「なんだなんだ、地べたをノロノロとみっともない。もう少しはやく進めないのかね」
「そんなこと言っても、おなかがすいて、目がくらみそうだよ」
 ヘビが力のない声で言いました。
「ふん。そんなにノロノロしていては、昼になってしまうぞ。まあ、お前は後からやってきて、おれのおしりでもなめるんだな」
 カエルはヘビをバカにして、ピョンピョンとんでいきました。
 生き物がみんな集まると、神さまは次々に呼び出して、それぞれの食べ物をきめました。
 でも、カエルは、なかなか呼ばれません。
 怒ったカエルは、神さまの前に飛び出して言いました。
「早くわたしの食べ物をきめてください。わたしが一番先にやってきたのですよ」
 神さまは、うるさいカエルをジロリと見て言いました。
「よし、お前は虫を食べるがよい」
「えっ? わたしの食べ物は虫ですか!?」
 カエルは、ガッカリです。
 それでも食べ物がきまったので、ホッとして帰ろうとすると、神さまが言いました。
「待て。お前にはもう少し言うことがある。お前はここへ来る時、ヘビをバカにして、おしりでもなめろと言ったであろう」
「まあたしかに。だってそれは、ヘビがあまりにもノロマですから」
「いいわけはよろしい。のぞみどおりに、これからはヘビにお前のおしりをなめてもらうことにしよう」
「とっ、とんでもない!」
 カエルはビックリして反対ましたが、神さまは許してくれません。
 その時から、ヘビはカエルを見つけると、すぐにおしりから飲み込んでしまうのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 婦人警官記念日
きょうの誕生花 → しらねあおい
きょうの誕生日 → 1987年 鈴木杏 (俳優)

きょうの新作昔話 → 麦の粉
きょうの日本昔話 → おばあさんにばけた古オオカミ
きょうの世界昔話 → クマたいじのゆうしゃ
きょうの日本民話 → ヘビがカエルをのむわけ
きょうのイソップ童話 → 屋根の上の子ヤギとオオカミ
きょうの江戸小話 → 三人かご

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4月26日の日本民話 テングと旅をした男

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4月26日の日本民話

テングと旅をした男

テングと旅をした男
滋賀県の民話滋賀県情報

 むかしむかし、比叡山(ひえいざん)にあるお寺の修理(しゅうり)に立ちあっていた、木内兵左衛門(きのうちひょうざえもん)という若い(さむらい)が、とつぜん行方不明になりました。
 兵左衛門(ひょうざえもん)はお酒が好きで、遊びも好きだったので、かってに山をおりて町にでもいったのだろうと、だれもが思っていました。
 ところが、兵左衛門がはいていたぞうりが、お寺の玄関先(げんかんさき)と内庭(うちにわ)に片方ずつ落ちていたのです。
 もっとさがしてみると、へし曲げられたとひきさかれた帯が見つかったので、たいへんなさわぎになりました。
「兵左衛門は玄関からでようとして、だれかにひきずられて内庭をぬけ、山の中へつれていかれたのだろう」
「刀を曲げるなんて人間ではない。まさか、テングにさらわれたのではあるまいな」
 もう日は暮れて、あたりはまっ暗です。
 工事の仲間も一緒に火をたいて、兵左衛門の事を心配していると、大工(だいく)の若者が、
「人の声がするぞ」
と、いって、暗やみの中へ走っていきました。
 するとお堂の屋根の上で、羽のあるあやしい者が立っていて、下へおろしてくれというのでした。
 よく見るとそれは、行方不明になっていた兵左衛門で、羽に見えたのはやぶれた雨傘(あまがさ)でした。
 はしごをかけて屋根からおろされた兵左衛門は、とてもつかれたような荒い息をしています。
 兵左衛門の話によると、夕方に名前を呼ばれたので玄関まで出ていくと、黒い衣を着た若いお坊さんが立っていたというのです。
 お坊さんは顔が赤く、みだれた長い髪の毛を地面までたらしていました。
 そして、
「ちょっと、そこまできてくれぬか」
と、いうなり、兵左衛門の手を強い力でつかみ、内庭のほうへひっぱって行ったのです。
 兵左衛門は刀に手をかけましたが、すぐにうばいとられて曲げられてしまいました。
 それからあばれる兵左衛門をかつぎあげると、お堂の屋根の上へほうりあげたというのです。
 屋根の上には、赤い衣を着た鼻の高い大きなテングがいて、
「いいところへ、つれていってやる」
と、足の下にある丸いお盆のようなものにのるようにいいました。
 兵左衛門が足をかけると、そのお盆はふわりと宙にうかびあがり、兵左衛門はテングと一緒に山をこえ、海をこえて、テングの仲間たちがすむ山々をめぐりました。
 そしてたったいま、お堂の屋根の上にもどってきたというのでした。
「のどがからからじゃ。酒がのみたい」
と、兵左衛門がいうので、宿へもどってお酒をやると、どんぶりで五杯もたてつづけにのみほし、宿がゆれるほどの大いびきをかいて四日間もねむりつづけたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ふろの日
きょうの誕生花 → えびね
きょうの誕生日 → 1971年 田中直樹 (芸人)


きょうの日本昔話 → あき寺の大入道
きょうの世界昔話 → 月の見ていた話十四夜
きょうの日本民話 → テングと旅をした男
きょうのイソップ童話 → ネズミと牡ウシ
きょうの江戸小話 → 貧乏神のご開帳

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4月25日の日本民話 寿限無(長い名前の子ども)

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4月25日の日本民話

寿限無(長い名前の子ども)

寿限無(長い名前の子ども)
長崎県の民話長崎県情報

♪朗読配信

 むかしむかし、あるところに、なかなか子どもがうまれない夫婦がいました。
 でもようやく、かわいらしい男の子がうまれたのです。
 お父さんとお母さんは、大喜びです。
「よし、この子にはえらいお坊さんに頼んで、元気で長生きできる、立派な名前を付けてもらおう」
 お父さんはさっそくお寺に行くと、お坊さんに頼みました。
「うむ、引き受けよう。元気で長生きできる、立派な名前か。そうじゃなあ・・・」
 お坊さんは一生懸命考えて、ありがたい意味や長生きした人の名前をくっつけて、大変長い名前を男の子につけてくれました。
 それは、こんな名前です。
『寿限無(じゅげむ)寿限無(じゅげむ)、五劫(ごこう)のすりきれ、海砂利水魚(かいじゃりすいぎょ)の水行末(すいぎょうまつ)、雲来末(うんらいまつ)、風来末(ふうらいまつ)、食(く)う寝(ね)るところに住(す)むところ、やぶらこうじのぶらこうじ、パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命(ちょうきゅうめい)の長助(ちょうすけ)』
 さて、ある日の事です。
 その長い名前の子どもが、川へ落ちたから大変です。
 お母さんがあわてて、みんなを呼びにいきました。
「みんな助けておくれ!『寿限無(じゅげむ)寿限無(じゅげむ)、五劫(ごこう)のすりきれ、海砂利水魚(かいじゃりすいぎょ)の水行末(すいぎょうまつ)、雲来末(うんらいまつ)、風来末(ふうらいまつ)、食(く)う寝(ね)るところに住(す)むところ、やぶらこうじのぶらこうじ、パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命(ちょうきゅうめい)の長助(ちょうすけ)』が、川へ落ちたんだよ!」
 やっと名前を言い終わったときには、子どもは川下の方へ流されてしまい、おぼれ死んでしまいました。
 ところがある日、別の子どもが川へ落ちました。
 この子どもは『ちょい』というだけの、短い名前でした。
「みんな助けておくれ! ちょいが川へ落ちたんだよ!」
 お母さんのさけび声を聞いて、畑にいる人が川に飛び込んで、すぐに子どもを助けてくれました。
 そんなことがあってから、この地方では、どのお母さんも生まれた子どもには、できるだけ短い名前をつけるようになったという事です。

※寿限無・・・以下略の名前の意味。

「寿限無(じゅげむ)」とは、
 寿命に限りがなく、永遠に死なないという意味です。

「五劫(ごこう)のすりきれ」とは、
 三千年に一度、神さまの使いが天から降りてきて、地上の岩を衣でなでるのですが、その作業がすべて終わるまでの時間を一劫といい、それが五劫あるので、何万年もの時間という意味です。

「海砂利水魚(かいじゃりすいぎょ)」とは、
 海の砂利(じゃり)も、水にすむ魚も、とうてい取りつくすことができないため、それだけ数が多いという意味です。

「水行末(すいぎょうまつ)、雲来末(うんらいまつ)、風来末(ふうらいまつ)」とは、
 水の行く末、雲の行く末、風の行く末には、いずれも果てがなく、広大だという意味です。

「食う寝るところに住むところ」とは、
 衣食住を表わし、それらの全てに不自由しないようにとの、願いを込めた言葉です。

「やぶらこうじのぶらこうじ」とは、
 大変丈夫でおめでたい木の名前で、春は若葉をしげらせ、夏は花を咲かせ、秋は実を実らせ、冬は霜(しも)をふせぐと言われています。

「パイポパイポ・・・以下略」とは、
 むかし、中国にはパイポという国があって、シューリンガンという王さまとグーリンダイという王后のあいだに生まれたのが、ポンポコピーとポンポコナーという二人のお姫さまで、この二人が大変長生きをしたので、それにあやかっての言葉です。

「久命(ちょうきゅうめい)の長助(ちょうすけ)」とは、
 天長地久(てんちょうちきゅう)という言葉があり、天地が永久にかわらないように物事がいつまでもつづくと言う意味で、長久命は、それだけ命が長く続くという願いを込めて、そして最後の長助は、長く助かる、つまり、長生きできるという意味です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 国連記念日
きょうの誕生花 → フロックス
きょうの誕生日 → 1970年 鶴田真由 (俳優)


きょうの日本昔話 → ネコの恩返し
きょうの世界昔話 → キツネと獲物
きょうの日本民話 → 寿限無(長い名前の子ども)
きょうのイソップ童話 → たくはつ僧
きょうの江戸小話 → 遠めがね

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4月24日の日本民話 首なしウマの行列

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 4月の日本民話

4月24日の日本民話

首なしウマの行列

首なしウマの行列
福井県の民話福井県情報

 むかしむかし、越前の国(えちぜんのくに→福井県)の城下町(じょうかまち→城を中心に発展した町)にすむ人たちは、毎年四月二十四日になると、日がくれた後はけっして外へは出なかったといいます。
 それというのも、この日の夜の亥の刻(いのこく→午後十時ごろ)近くになると、城下を流れる川にかかった九十九(つくも)橋の上に、火の玉が現れるというのです。
 火の玉は、一つではありません。
 つぎつぎと現れては数をふやし、やがて橋の上いっぱいになって、あわただしくとびかうのです。
 この火の玉たちは、なんでも秀吉にほろぼされた城主(じょうしゅ)、柴田勝家(しばたかついえ)の家臣(かしん)たちの亡霊(ぼうれい)だということです。
 さて、橋の上にあつまった火の玉のむれは、いったんいっせいにきえると、今度はそこから亡霊たちの行列が町へくりだしていくのです。
 亡霊たちは白いもやのように、地面から一メートルばかりのところに現れます。
 そしてフワリフワリと行進をはじめるのですが、全員がよろいにかぶとをかぶった武者のいでたちで、ウマにのっています。
 そのウマも、ウマ上の武者もまっ白で、よろいも、かぶとも、ヤリも、も、全てがまっ白なのです。
 ところで、武者たちののっているウマは、なぜか首がありません。
 首のないウマにのったまっ白の軍団は、夜どおし城下の町をねり歩き、夜明けとともにきえていくのですが、この行列にであったものは、見た事を決して他人に話してはいけません。
 話しをすれば、たちまち血をはいて死んでしまうというのです。
 ある年の事です。
 一人の老婆(ろうば)が、若いころにつかえていた水野(みずの)という(さむらい)のやしきをたずねました。
 つもる話しをしているうちに、時のたつのもわすれて、いつか夕がたになってしまいました。
「ひさしぶりにたずねてきたのだから、今日はゆっくり夕食をして、とまっていったらいい」
 家の人にいわれて老婆もその気になりましたが、夜になると急に用事を思い出して、家にかえるといいだしたのです。
 城主だった柴田勝家が秀吉にほろぼされてから、もう百年いじょうもたっているのです。
 水野の家の人も老婆も、その日が四月二十四日ということに、少しも気がつきませんでした。
 家を出た老婆は、やがて、ついこの前完成したばかりの新橋のたもとまでやってきました。
 するとむこうから、道いっぱいに列をつくって、首なしウマの行列がやってきたのです。
(あっ、しまった! 今日はあれの出る四月の二十四日だった)
 老婆はあわててちょうちんの明りを消すと、後ろを向いて目をつぶりました。
 そして行列がとおりすぎていくのを、ジッと待ちました。
 老婆の背後を、亡霊たちの行列がゆっくりと通りすぎていきます。
 つめたいものが背すじにつたわって、生きた心地がしません。
「なんまんだぶ。なんまんだぶ。なんまんだぶ」
 老婆は口の中で、けんめいにお経となえつづけました。
 やがて行列がいってしまうと老婆はホッと息をつき、そして後ろをふりむかずに、走るように新橋をわたって家にかえっていきました。
 次の日の朝、いつもよりおそくおきた老婆が居間(いま)へ出ていくと、まご娘がいいました。
「おばあちゃん、顔が青いよ。どうしたの?」
 まご娘の言葉に、家の人たちも口をそろえて、どこかわるいのかとたずねました。
 はじめはあれこれいってごまかしていましたが、そのうちに老婆は、新橋のたもとで亡霊たちの行列に出会った話しを家の人たちにしました。
「そういえば、きのうは四月二十四日でしたな。でも、その亡霊たちの話しは、たしか見た者がほかの者に話すと・・・」
 老婆の息子はそこまでいって、おもわず口をとじました。
「なに、そんなものは迷信(めいしん)じゃ。もう百年以上も前のことじゃし。今さらたたりなどあるものか」
と、老婆は大笑いしました。
 それから何事もおこらずに、夏がすぎて、秋がすぎて、冬もすぎていきました。
 そしてまた春がやってきて、また四月二十四日になりました。
 たたりはありませんでしたが、老婆は一年前の事を思い出して、背筋がぞくぞくしました。
(あんな事は二度とごめんだ。今日ははやく寝よう)
と、その日の用事をはやくすませようと、朝早くから家を出て行きました。
 ところが老婆は、夜になっても家にかえってはきませんでした。
 次の日の朝、心配した家の人が近所の人たちと手わけをしてさがしたところ、老婆は新橋の橋の下で、両足を空に向けたかっこうで、川ぞこのドロの中に首をつっこんで死んでいたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 日本ダービー記念日
きょうの誕生花 → むれすずめ
きょうの誕生日 → 1962年 山咲千里 (俳優)

きょうの新作昔話 → たごかつぎ
きょうの日本昔話 → ひとをおそうキノコ
きょうの世界昔話 → 魔法のぼだいじゅ
きょうの日本民話 → 首なしウマの行列
きょうのイソップ童話 → ゼウスとサル
きょうの江戸小話 → ひろった手紙

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4月23日の日本民話 いきをふきかける亡者

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 4月の日本民話

4月23日の日本民話

いきをふきかける亡者

いきをふきかける亡者
青森県の民話青森県情報

 むかしむかし、陸奥の国(むつのくに→青森県)の真行寺(しんぎょうじ)に、まだ修行中の若い僧がいました。
 ある冬の日のこと、夜おそくまで一人で勉強していると、部屋のしょうじに人のようなかげがうつりました。
(はて、こんな夜中に何者だろう?)
 僧は、しょうじのすきまに目をあてました。
 するとそこには、まるでゆうれいのような女が、髪をふりみだしてたっていました。
 手をだらりと前にさげ、青白い顔がうらみをこめたようにひきつっています。
(これが、亡者(もうじゃ)というものだろうか?)
 わかい僧は顔をこわくなり、頭からふとんをかぶりました。
 ヒューゥ、ヒューゥ。
 なんだかすきま風のような音がするので、ふとんの中からこっそり顔を出してみると、あの女がしょうじのやぶれたところに口をつけて、部屋の中に息をふきこんでいるのです。
 その息は雪のようにつめたく、部屋の中はどんどん冷えていきます。
 若い僧は、一心(いっしん)にお経(きょう)をとなえました。
 すると女はあきらめたのか、息をふきこむのをやめて部屋の前をはなれていきました。
(ああ、こわかった)
 若い僧はホッとしてふとんからはいだすと、そっとしょうじを開けてみました。
 すでに女のすがたはなく、台所の方から火の明りがもれています。
(おや? まだだれかおきているようだ。ちょうどいい、少しあたたまらせてもらおう)
 若い僧は手をこすりながら、台所の方へいきました。
 ところが、かまどに火がもえているのにだれもいません。
(おかしいな)
と、思いながらも、かまどの火に手をかざそうとしたら、目の前にさっきの女がいて、ニヤリとわらいかけたのです。
 若い僧は、
「あっ!」
と、さけんだきり、気を失ってしまいました。
 やがて夜が明けて、朝食係りの僧たちが、かまどの前でたおれている若い僧を見つけました。
「おい、どうした? しっかりしろ!」
 やっと気がついた若い僧は、昨日の事をみんなに話した後、十日間も寝込んでしまったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → サン・ジョルディの日
きょうの誕生花 → はなみずき
きょうの誕生日 → 1976年 IZAM (ミュージシャン)


きょうの日本昔話 → みそのにおい
きょうの世界昔話 → 白雪姫
きょうの日本民話 → いきをふきかける亡者
きょうのイソップ童話 → ロバと植木屋
きょうの江戸小話 → しりから入る

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4月22日の日本民話 弥陀ケ原の弘法清水

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 4月の日本民話

4月22日の日本民話

弥陀ケ原の弘法清水

弥陀ケ原の弘法清水
富山県の民話富山県情報

 むかしむかし、弘法大師(こうぼうたいし)が立山(たてやま→富山県の南東部)にこもって修行をしていたころのことです。
 広びろとした弥陀ヶ原(みだがはら)は、行けども行けども一滴の飲み水もなく、立山に登る人たちは苦しい思いをしていました。
 これを見てかわいそうに思った弘法大師が、持っていた錫杖(しゃくじょう→修行する人が持ち歩くつえ)をトンと大地に突きさしました。
 するとそのとたん、錫杖を突きさしたところから、水がこんこんとわき出てきたのです。
 それからのち、人々はこのわき水を弘法清水(こうぼうしみず)と呼ぶようになったのです。
 今でも立山に登る人たちは、このわき水でわかしたお茶をのむと、元気になるといっているそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 清掃デー
きょうの誕生花 → こでまり
きょうの誕生日 → 1970年 篠原たえ子(タレント)

きょうの新作昔話 → 黒いつばきの花
きょうの日本昔話 → おきだした死人
きょうの世界昔話 → アラジンのランプ
きょうの日本民話 → 弥陀ケ原の弘法清水
きょうのイソップ童話 → 人殺し
きょうの江戸小話 → きいた名前

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4月21日の日本民話 イヌが鳥を殺した罰

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 4月の日本民話

4月21日の日本民話

イヌが鳥を殺した罰

イヌが鳥を殺した罰
福岡県の民話福岡県情報

 むかしむかし、中国から送られてきた二羽のガチョウを、役人(やくにん)たちが天皇(てんのう)のもとへとどけようとしていました。
 ところが、ガチョウをあずかっていた役人のイヌが、ガチョウにかみついて二羽とも殺してしまったのです。
 そのときの天皇はこわい人で、いくつものおそろしいうわさがありました。
 天皇はある時、好きな狩りにでかけて、たくさんの獲物(えもの)をとらえました。
 それに気をよくした天皇は、
「狩りの楽しみは、捕らえた獲物をすぐ料理して食べることだ」
と、したがえてきた者たちに言いましたが、だれも自分が料理をするといいだしませんでした。
 すると天皇は怒って、いきなり(かたな)をぬいて、近くにいた者をきり殺してしまったのです。
「今の天皇は勝手がすぎる。これまでにも気にいらないというだけで、何人もの人を殺していると聞く」
 そんなわけで、ガチョウを殺したイヌの飼い主の役人は、死罪(しざい→死刑)をめいじられてもしかたがないと、かくごをしました。
 そして、正直に事の次第をつたえて、おわびにと、自分が屋敷(やしき)でかっている白鳥(はくちょう)十羽を御所(ごしょ→天皇の住まい)におくりました。
 すると天皇は、かわりの白鳥がお気にめしたのか、御所からは何のおとがめもありませんでした。
 一時はどうなることかと心を痛めて心配していた人たちも、ホッと胸をなでおろしましたが、こんな事は大変めずらしい事です。
 次の年、御所で飼われていた鳥が、やはりイヌにおそわれて死んでしまいました。
 天皇は怒って、係の役人の顔にイレズミの罰(ばつ)を命じて、役職(やくしょく)もうばってしまいました。
 その役人の仲間の二人は、
「われわれが生まれ育った信濃(しなの→長野県)では鳥が多く、とればすぐ小山ほどにもなる。朝夕食べても、とても食べきれない。それなのに、たった一羽の鳥がイヌにやられたと怒り、人の顔にイレズミをなさるとは、どう考えてもおかしい。今の天皇は悪い天皇だ!」
と、話していました。
 この話が天皇の耳に届き、天皇は二人に、
「それならば、すぐに鳥をとらえて小山のようにしてみよ」
と、命じました。
 けれどもそれが出来ないとなると、その場で二人の役職をとりあげて、御所から追いだしてしまったという事です。
※ガチョウという水鳥が初めて日本にやってきたのは、今から千五百年以上も前のことで、中国から天皇(てんのう)におくられたものでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 民放の日
きょうの誕生花 → スイートピー
きょうの誕生日 → 1943年 輪島功一 (ボクシング)


きょうの日本昔話 → フクロウの染め物屋
きょうの世界昔話 → 獲物をとられたキツネ
きょうの日本民話 → イヌが鳥を殺した罰
きょうのイソップ童話 → 狩りゅうどとイヌ
きょうの江戸小話 → いじっぱり

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4月20日の日本民話 養老の滝

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 4月の日本民話

4月20日の日本民話

養老の滝

養老の滝
岐阜県の民話岐阜県情報

 むかしむかし、美濃の国(みののくに→岐阜県)の山里に、たいへん親孝行(おやこうこう)な若者がいました。
 貧乏で、毎日の食べる物にも不自由する暮らしでしたが、年取った父親のために一生懸命働いて、少しでも長生きをしてもらおうと思っていました。
 その父親は何よりもお酒が好きでしたが、しかし、米を買うお金さえろくにかせげないので、お酒などめったに手に入れる事は出来ません。
 それでも息子は、父親がお酒を飲むときの幸せそうな様子を思い浮かべると、なんとかしてあげたいと、奥山にわけ入って、たきぎを取るのでした。
 そんなある日、若者は岩から足をふみはずして、あっというまに谷底へ転がり落ちてしまいました。
 気を失ってしばらくすると、のどがかわいて目を覚ましました。
「ああ、水が飲みたい」
 体を起こしてあたりを見ると、岩かげから水の音が聞こえてきます。
「ありがたい。川があるようだ」
 若者がかけよると、そこには見上げるばかりの滝が、しぶきを立てて流れ落ちていたのです。
 若者は足元に泡立つ水を手にすくって、口にふくみました。
「むむっ。これは!」
 なんとそれはただの水ではなく、これまで飲んだこともないような、かぐわしいお酒だったのです。
「ああ、ありがたいことだ。これを持ち帰れば、おとうがどんなに喜ぶことか」
 若者は腰にさげたひょうたんにお酒をくみとると、いそいで家に帰りました。
「遅かったな。お前の身の上に何かあったかと、心配しとったよ」
 息子はニコニコしながらうなづくと、ひょうたんのお酒を父親に差し出しました。
「なんだこれは、水か? ・・・うむ! これはうまい!」
 一口飲んだ父親は、目を丸くしました。
「こんなにかぐわしい酒を、わしはこれまで飲んだことがないぞ。いったいどこで手に入れたんじゃ」
 息子は山奥で起きた不思議な出来事を話して聞かせると、父親はいいました。
「それは、お前がいつも親孝行をしてくれるので、神さまがごほうびにくださったのだよ」
 この話はまもなく、奈良の都の天皇(てんのう)の耳に伝わりました。
 天皇はたいそう感心すると、若者に山ほどのほうびをくださり、そればかりか年号を「養老(ようろう)」とあらため、滝に「養老の滝」という名をさずけたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 逓信記念日
きょうの誕生花 → かいどう
きょうの誕生日 → 1959年 片山まさゆき (漫画家)

きょうの新作昔話 → ひげの長者
きょうの日本昔話 → 病気のお見舞い
きょうの世界昔話 → 水晶のオンドリ
きょうの日本民話 → 養老の滝
きょうのイソップ童話 → オオカミとサギ
きょうの江戸小話 → しゃっくりざむらい

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4月19日の日本民話 たからものをくれたお化け

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 4月の日本民話

4月19日の日本民話

たからものをくれたお化け

たからものをくれたお化け
高知県の民話高知県情報

 むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
 おじいさんは山へ木を切りに、おばあさんは川へせんたくに出かけます。
 ある日の事、おばあさんが川へ行くと、川上のほうからピカピカと金色に光る、大きなはこが流れてきました。
 おばあさんが、
「こっちへこい、こっちへこい」
と、呼んでみると、はこは一人でに岸のほうへ流れてきて、おばあさんの前で止まったのです。
(ありがたや、ありがたや、きっと宝物が入っているにちがいない)
 おばあさんは大喜びではこをひろいあげて、家まで運びました。
(さて、何が出てくるか?)
 ドキドキしながらはこのふたを開けてみると、なんと目玉が一つに口が二つのお化けが、ニューと顔を出したのです。
「ヒェーーーッ!!」
 おばあさんはあわててふたをすると、物入れの部屋に放り込みました。
 ところがしばらくたつと、部屋の中からお化けが歌うように言うのです。
♪ここから出たい、チンチロリン
♪ここから出たい、チンチロリン
 お化けとは思えない、とてもかわいい声です。
 おばあさんはこわいのも忘れて、お化けをはこから出してやりました。
 するとお化けは、
♪げたをはきたい、チンチロリン
♪げたをはきたい、チンチロリン
と、言いました。
「げたをはきたきゃ、これでもはきな」
 おばあさんは、おじいさんの古いげたを出してやりました。
 げたをはいたお化けは、またも歌うように言いました。
♪クワを持ちたい、チンチロリン
♪クワを持ちたい、チンチロリン
「そんなら、これを持っていけ」
 おばあさんは、古くなったクワを出してやりました。
 お化けはクワをかつぐと、
♪畑へ行きたい、チンチロリン
♪畑へ行きたい、チンチロリン
と、言いました。
「ほんとに、お前はおかしなお化けだよ」
 おばあさんは、お化けをうらの畑へつれていきました。
 お化けは畑に来ると、かたからクワをおろして言いました。
♪ここをほりたい、チンチロリン
♪ここをほりたい、チンチロリン
「ほりたきゃ、ほってみな」
 おばあさんが言うと、お化けはよろこんで畑の土をほりはじめました。
 その早いこと、あっというまに深い穴をほりあげました。
「こらこら、そんなに深くほっちゃだめだ」
 おばあさんが止めようとして穴をのぞいて見ると、穴の中から大きなつぼが出てきました。
♪大判小判がどっさり、チンチロリン
♪大判小判がどっさり、チンチロリン
 お化けはそう言うと、クワとげたをおいて山の方へ歩いていきました。
「何! 大判小判とな!」
 おばあさんは穴に飛び込んで、つぼのふたをとりました。
 すると中には、金ぴかに輝く大判小判がギッシリとつまっていたのです。
 おばあさんは大喜びで、山に行っているおじいさんを呼びに行きました。
 村一番のお金持ちになったおじいさんとおばあさんは、死ぬまでしあわせにくらしたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → トークの日
きょうの誕生花 → いちりんそう
きょうの誕生日 → 1976年 坂下千里子(タレント)


きょうの日本昔話 → にせ本尊
きょうの世界昔話 → トウモロコシドロボウ
きょうの日本民話 → たからものをくれたお化け
きょうのイソップ童話 → 冬と春
きょうの江戸小話 → なりたがる

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4月18日の日本民話 弘法さまの寄り木

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 4月の日本民話

4月18日の日本民話

弘法さまの寄り木

弘法さまの寄り木
山形県の民話山形県情報

 むかしむかし、ある冬の事、一人のみすぼらしい旅のお坊さんが港町(みなとまち)にやって来ました。
 念仏(ねんぶつ)をとなえながら家いえをたずねましたが、お布施(ふせ)を出してくれる家は一軒もありません。
 お坊さんはつかれた足を引きづりながら、海岸の宮沢村(みやざわむら)にたどりつくと、村はずれの一軒の家の戸を開けて、
「旅の僧ですが、一夜の宿をお願いいたします」
と、たのみました。
 その家は夕食どきでしたが、お坊さんをこころよく家にあげてくれたうえ、自分たちの分を少しづつへらして、お坊さんの食べるごはんを用意してくれたのです。
 また、
「たき木も少なく、ろくに火も燃やす事も出来ずに申しわけありません」
と、いいながらも、ありったけの木クズを集めて燃やしてくれたので、ぬれた着物もかわき、翌日にはお坊さんはすっかり元気になったのです。
 次の朝、お坊さんは旅立つ時に言いました。
「あたたかいおもてなし感謝いたします。来年からは、この村のみなさんがたき木に不自由しないようにいたしましょう」
 それから一年近くたち、北風がふいて海があれはじめると、どこから流れて来るのか、たくさんの流れ木が海岸におし寄せて来たのです。
 次の年もその次の年も、流れ木たえる事なく海岸におし寄せて来たのです。
 まもなくその坊さんは、有名な弘法大師(こうぼうたいし)であった事を知り、冬になり流れ木が海岸に打ち寄せると村人たちは、
「ありがたい。弘法さまの寄り木だ!」
と、いって、それをひろい集めるようになったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 発明の日
きょうの誕生花 → アルストロメリア
きょうの誕生日 → 1974年 伊藤裕子(俳優)


きょうの日本昔話 → くらいふしあな
きょうの世界昔話 → 神さまのけだものと悪魔のけだもの
きょうの日本民話 → 弘法さまの寄り木
きょうのイソップ童話 → うそつき
きょうの江戸小話 → おれがいない

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4月17日の日本民話 ふるさとへ飛んだ侍

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 4月の日本民話

4月17日の日本民話

ふるさとへ飛んだ侍

ふるさとへ飛んだ侍
香川県の民話香川県情報

 むかしむかし、高松(たかまつ→香川県)生まれの若い(さむらい)が江戸つとめになって、目黒(めぐろ→東京都)にある侍屋敷で働いていました。
 ある日の事、若い侍は、近くにある不動尊(ふどうそん)へお参りにでかけました。
 江戸の暮らしに疲れて、ふるさとの事ばかり思いだしながら歩いていると、一人のお坊さんが声をかけてきたのです。
「あんたは、よっぽどふるさとへ帰りたいようじゃな。ふるさとはどこじゃ? 帰りたいならつれていってやろう。ついてきなされ」
 若い侍は喜んで、お坊さんのあとについていきました。
 お坊さんは木のかげに若い侍をつれていくと、片手をにぎって目を閉じるようにいいました。
 すると、若い侍の体がフワリと浮きあがったのです。
 まるで風をきって、空を飛んでいるような気分です。
「さあ、ついたぞ。目をあけてもいいぞ」
 そういわれて目をひらくと、お坊さんの姿はどこにもありません。
 いつのまにか、あたりは夜になっていましたが、そこはたしかに高松の自分の家の前でした。
「なんとも、不思議な事もあるものだ」
 そう思いながら、月の光にてらしだされているあたりを見まわしていると、家の中から父親が出てきました。
 父親は、若い侍に気づいてビックリです。
 江戸へいったはずのわが子が、家の前に立っているのですから。
 父親は幽霊(ゆうれい)かと思い、急いで家に逃げ込もうとしましたが、またすぐにふりむいて、ジッと若い侍をみつめました。
「やっぱりお前か。いつ江戸からもどってきたんじゃ? そんなところに立っておらずに、早く家の中に入れ」
 若い侍は、父親にうながされて家に入りました。
 そして喜ぶ家の者たちに、この不思議な出来事を話しました。
 若い侍はずっと目をつぶっていたので、どこを飛んできたのかまったくわからないと首をかしげるばかりでしたが、父親はあまりのおどろきで、三日ばかり高い熱をだして寝こんでしまったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 恐竜の日
きょうの誕生花 → ラークスパー
きょうの誕生日 → 1967年 ゴルゴ松本 (芸人)

きょうの新作昔話 → キノコ問答
きょうの日本昔話 → こわいみやげ
きょうの世界昔話 → ゴルゴーンたいじ
きょうの日本民話 → ふるさとへ飛んだ侍
きょうのイソップ童話 → 金持ちと泣き女
きょうの江戸小話 → 身内のもの

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4月16日の日本民話 頭をそられた男

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 4月の日本民話

4月16日の日本民話

頭をそられた男

頭をそられた男
山梨県の民話山梨県情報

 むかしむかし、ある村に、とても気の強い若者がいて、
「おれはキツネにだってタヌキにだって、一度もだまされたことがない。キツネやタヌキにだまされるのは、だまされる方が悪いんだ」
と、いつもいばっていました。
 ある日の事、若者が村はずれの道を歩いていると、向こうから一匹のキツネがやってきました。
(ははん。さては人をだましにきたな)
 若者は、あわてて草むらの中にかくれました。
 キツネはあたりをキョロキョロと見ていましたが、そのうちに一枚の葉っぱを取り出すと、それを頭へのせて、ドロンと美しい娘に化けたのです。
(なるほど、たいしたものだ)
 若者が感心していたら、娘に化けたキツネは道に落ちていたわらぞうりをひろいました。
 すると、そのわらぞうりはごちそうを入れる重箱(じゅうばこ)にかわったのです。
 重箱を持った娘は、なにくわぬ顔で村の方へと歩いていきます。
 若者がこっそりあとをつけていくと、娘は長者(ちょうじゃ)さんの家に入りました。
 そんな事とは知らない長者さんは、
「おう、よくきた。よくきた」
と、言って、娘をむかえたのです。
「これは、おみやげです」
 娘が、わらぞうりでできた重箱を渡すと、
「それはそれは、ごていねいに」
 長者さんの奥さんもニコニコして、その重箱を受けとりました。
 家の外からこのようすを見ていた若者は、とうとうがまんできずに家の中へとびこむなり、
「みんな、だまされちゃいかんぞ! その娘はキツネだ!」
と、言ったのです。
 でも、それを聞いた長者は、カンカンに怒りました。
「な、なんて事を言うんだ! これはとなり村の長者の娘さんで、今度わしの息子の嫁になる人だ!」
「でも、そいつはたしかにキツネだ。娘に化けるところをちゃんと見たんだ」
 すると、娘は、
「キツネだなんて、あんまりです」
と、言って、シクシクと泣き出したのです。
「わしの家の嫁になる娘をキツネだなんて、もうゆるさん!」
 長者はを抜いて、若者に切りつけようとしました。
「ひぇー、たっ、助けてくれー」
 若者はあわてて逃げましたが、長者は刀を持って追いかけてきます。
 そこへ、一人のお坊さんが現れました。
「おまちなさい」
 お坊さんは二人のあいだに飛び込むと、長者の手をおさえました。
「どんな事があっても、人を殺してはいけません。わけを話しなさい」
 そこで長者は、これまでの事をお坊さんに話しました。
「なるほどわかりました。でも、この男を殺してもしかたがないでしょう。ここは一つ、私にまかせてください」
 そう言うと、お坊さんは若者をにらんで言いました。
「本当なら、殺されてもしかたのないところです。でも、お前はまだ若い。一度死んだつもりで、今から私の弟子になりなさい」
 もう少しで殺されるところを助けてもらったので、若者はお坊さんのいうとおり、弟子になることを承知しました。
「よろしい。それではさっそく、頭をそってやろう」
 お坊さんは長者の家でカミソリを借りると、若者の頭をそりはじめました。
 ところが、その痛い事。
 まるで髪の毛を手でむしり取っているみたいです。
 あまりの痛さに、若者が思わず、
「やめてくれ!」
と、さけびました。
 そのとたん、目の前の物がみんな消えて、若者は一人で草むらの中にすわっていたのです。
(おかしいなあ? ゆめでも見たのかな?)
 そう思って、ふと頭に手をやったら、なんと髪の毛がほとんどなくなっていたのです。
 娘だけでなく、長者も、お坊さんも、みんなキツネだったのです。
 キツネにだまされないと言っていた若者は、みごとにキツネにだまされたのでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → チャップリンデー
きょうの誕生花 → スノーフレーク
きょうの誕生日 → 1867年 ウィルバー・ライト (ライト兄弟の兄)


きょうの日本昔話 → カエルになったぼたもち
きょうの世界昔話 → パンを踏んだ娘
きょうの日本民話 → 頭をそられた男
きょうのイソップ童話 → 狩りゅうどと馬にのった人
きょうの江戸小話 → 竹の刀

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4月15日の日本民話 ナメクジ土俵

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 4月の日本民話

4月15日の日本民話

ナメクジ土俵

ナメクジ土俵
愛媛県の民話愛媛県情報

 むかしむかし、ある村では日照り(ひでり→長い間、雨がふらない事)がつづいて、田畑の作物がほとんど枯れてしまいました。
 食べる物が少なくなり、働く気力もなくなったお百姓(ひゃくしょう)さんたちは、すっかりふさぎこんでいました。
 この村では毎年四月にすもう大会がひらかれていましたが、土俵(どひょう)をつくる元気もないのか、だれもすもう大会のことを口にする者はいません。
 このままでは、すもう大会は中止になるでしょう。
 ところが、ある朝の事です。
 畑仕事にいこうとしたお百姓が、お地蔵(じぞう)さんの前の原っぱで、キラキラ光っているものを見つけたのです。
「はて。なんだろう?」
 お百姓が原っぱまで行ってみると、大きな土俵(どひょう)のまわりの縁のところが、日の光にあたって丸くと光っていたのです。
「だれかが、こんなりっぱな土俵をつくってくれたぞ」
 お百姓は喜んで、ふと土俵のかたわらの草のかげに目をやると、そこには何百匹もの死んだナメクジがころがっていました。
 お百姓はビックリして、村の人たちのところへ飛んでいきました。
「そういえば、きのうの晩おそくにあそこを通ったんだ。その時、何かがボーッと光っていた。月の光が草の夜露(よつゆ)にあたっているんだろうと思って、べつに気にもかけなんだが、その時に、このナメクジたちがはいずりまわって、からだのネバネバで土俵をつくっておったんだな」
「これは、祭りにすもう大会をしろという事じゃないか。きっと神さまがナメクジたちに命じて、この土俵をつくらせたんじゃ」
「うむ、そうかもしれん」
 ナメクジは自分たちが死ぬほどの力を出して、たった一晩で見事な土俵をつくったのです。
 祭りの日、元気を取り戻したお百姓さんたちは、すもう大会をおおいに楽しみました。
 そして自分たちに元気をあたえてくれた土俵に、『ナメクジ土俵』という名前をつけたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ヘリコプターの日
きょうの誕生花 → きんぎょそう
きょうの誕生日 → 1965年 野口聡一 (宇宙飛行士)

きょうの新作昔話 → かめかつぎ
きょうの日本昔話 → カモとりごんべえ
きょうの世界昔話 → おくびょうものと大男
きょうの日本民話 → ナメクジ土俵
きょうのイソップ童話 → アリとハト
きょうの江戸小話 → こやしとおもう

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4月14日の日本民話 イモほり藤五郎

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 4月の日本民話

4月14日の日本民話

イモほり藤五郎

イモほり藤五郎
石川県の民話石川県情報

 むかしむかし、加賀山科(かがやましな)の里に、山イモをほって生活している、藤五郎(とうごろう)という若者がいました。
 とても気のいい男で、あまったイモはみんな人にやってしまうのです。
 ある日、藤五郎のところに、都からとても美しいお姫さまがきました。
 そして、ビックリしたことに、
「藤五郎さま、わたくしをあなたのお嫁さんにしてください」
と、たのんだのです。
「それはうれしいが、せっかく嫁にきてもらっても、家には二人分のお米もない」
と、いう藤五郎に、お姫さまはいいました。
「これで、お米だってお魚だってなんでも買えますよ。心配いりません」
と、いって、砂金(さきん)の入った錦(にしき)の袋を藤五郎にわたしました。
 欲のない藤五郎は、砂金の価値もわからないまま山をおりて、買い物にでかけました。
 藤五郎は山を下りる途中、二羽の鳥を見つけました。
 お姫さまにあの鳥の肉を食べさせてあげようと思い、砂金の袋を鳥めがけて投げつけました。
 ところが砂金の袋は口がひらいてバラバラになり、鳥も逃げてしまいました。
 手ぶらで帰ってきた藤五郎の話を聞いたお姫さまは、
「まあ、あなたという人は、何という事をしたのです」
と、いって、残念がりました。
 そんなお姫さまのようすをみて、藤五郎はいいました。
「それは悪い事をしたな。だけども、こんなものが欲しいのなら、山イモをほればツルにいくらでもついてくるよ」
 藤五郎はお姫さまを山につれていき、山イモをほってみせました。
 すると山イモのツルは、ピカピカに輝いています。
「まあ、これはもしかして」
 お姫さまが山イモを沢(さわ)で洗ってみると、たくさんの砂金がとれました。
 それから藤五郎は、イモほり長者と呼ばれるようになりました。
 しかし藤五郎の生活ぶりは変らずで、砂金をとっても貧しい人にわけてあげるなど、欲のないものでした。
 村の人たちはイモ洗いの沢を『金洗沢(かねあらいさわ)』と呼び、いつごろからか『金沢(かなざわ)』というようになったのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → SOSの日
きょうの誕生花 → どうだんつつじ
きょうの誕生日 → 1970年 工藤静香 (歌手)


きょうの日本昔話 → しびれのくすり
きょうの世界昔話 → 力比べ
きょうの日本民話 → イモほり藤五郎
きょうのイソップ童話 → カラスと水差し
きょうの江戸小話 → めじるしの犬

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4月13日の日本民話 お坊さんに手を貸した男

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 4月の日本民話

4月13日の日本民話

お坊さんに手を貸した男

お坊さんに手を貸した男
東京都の民話東京都情報

 むかしむかし、江戸(えど→東京都)に、右筆(ゆうひつ)をつとめる男が住んでいました。
 右筆とは、殿さまにつかえて字を書く仕事で、今でいえば書記のようなものです。
 ある朝、この男が家の門を出ると、一人の坊さんに出会いました。
 坊さんは、男のそばへ寄ってくると、
「ぶしつけな願いじゃが、あなたの手をしばらく貸していただけませぬか。これから書の会に出ねばなりませぬのでな」
 書の会とは、おたがいに字を書いて見せ合う集まりです。
 とつぜん見も知らぬ人から手を貸せといわて、男はビックリ。
「手を貸すとは、どのような事ですかな?」
と、たずねると、
「いや、ベつになんという事もござりませぬ。ほんのしばらく、あなたの手をお貸しいただければよろしいので」
 変だなと思いましたが、相手はお坊さんなので、
「まあ、いいでしょう」
と、答えてしまいました。
 ところがその日から、殿さまのご用もあるのに、紙を前にするとまったく手が動かないのです。
 右筆は、困りはてて、
「字のかけぬ右筆など、なんの役にも立たぬ」
と、いつ首になるかも知れないと思っていました。
 ところが三日目のタ方、右筆の家に、あのお坊さんがやってきて、
「あなたさまのおかげで、命びろいをしましたわい。ありがとうございました」
と、いかにもうれしそうに礼をのベて、
「これといって、大したお礼もできぬが」
と、何かを書いた紙を出すと、
「これは火をふせぐ力を持っております。もしお近くで火事がありましても、これがありますと、もらい火はまぬがれまする」
と、いって、右筆の手に紙をわたしたかと思うとさっと、すぐにどこかへいってしまいました。
 その日から右筆の手は、もと通りに字が書けるようになりました。
 右筆は殿さまにめいわくをかけたといって、おわびのしるしにお坊さんにもらった火難よけの紙をさし出しました。
 殿さまはその紙を掛け軸職人に出して立派な掛け軸にすると、いつも床の間にかけていました。
 それからあと、何度も家敷の近くに火事がありましたが、この家だけはいつも無事でした。
「これはまた、なんとありがたいものであろう。家宝にいたそう」
と、殿さまは大喜びです。
 そして万が一にもぬすまれては大変と、土蔵(どぞう)の中へ大事にしまっていました。
 ところがそれから数日後、近所に火事がおこりました。
 急いで掛け軸をとり出しにいきましたが間に合わず、屋敷は灰になってしまいました。
 でも、掛け軸がある土蔵だけが焼けずに、ポツンと一つ、広い焼けあとの中にのこっていたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ボーイスカウトの日
きょうの誕生花 → いちご
きょうの誕生日 → 1955年 西城秀樹 (歌手)

きょうの新作昔話 → とり年生まれ
きょうの日本昔話 → ニワトリのお告げ
きょうの世界昔話 → トルーデおばさん
きょうの日本民話 → お坊さんに手を貸した男
きょうのイソップ童話 → イルカとクジラとハゼ
きょうの江戸小話 → サルがにる

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4月12日の日本民話 ヒヒと力くらべをした源助

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 4月の日本民話

4月12日の日本民話

ヒヒと力くらべをした源助

ヒヒと力くらべをした源助
富山県の民話富山県情報

 むかしむかし、黒部(くろべ)の山おくでは、突風(とっぷう)が起こって木こりたちを空中に投げとばしました。
 これはこの地にすむヒヒが木を切らせないように、木こりたちを追い払おうとしているためです。
 さて、この黒部の山おくに、源助(げんすけ)という木こりの親分(おやぶん)がいました。
 たいそう力持ちで、イノシシでも素手(すで)でなぐり殺すほどです。
 ある日の事、この源助が作兵衛(さくべえ)という木こりを連れて奥山に入ったところ、すさまじい突風が吹きつけたので、ひとまず山をおりることにしました。
 ふと後ろをみると、ついてきているはずの作兵衛がいません。
 いそいで引き返してみると、ヒヒが大きな手で作兵衛の体をつかみ、からだを引きさこうとしているではありませんか。
「おのれ! お前なんぞに作兵衛を渡してなるものか!」
 源助はこういうと、とび上がって作兵衛の足をつかみ、ヒヒから引き離そうとしましたが、これがなかなか離れません。
 作兵衛の手足からしたたる血で、源助は血まみれです。
 源助とヒヒとの力くらべは、一晩じゅう続けられました。
 しかし、夜明けになるとヒヒが根負けして、作兵衛をはなして谷の向こうに消えていきました。
 源助は作兵衛を介抱(かいほう)して家にとどけると、すぐ奥山にもどって、谷一番の大木を切りました。
 あのヒヒをよびだして、勝負の決着をつけようと言うのです。
 でも源助におそれをなしたのか、それからヒヒの姿は見られませんでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 世界宇宙飛行の日
きょうの誕生花 → あんず
きょうの誕生日 → 1966年 広瀬香美 (歌手)


きょうの日本昔話 → きんぴかのやかん
きょうの世界昔話 → リップ、バン、ウィンクル
きょうの日本民話 → ヒヒと力くらべをした源助
きょうのイソップ童話 → ヘビのしっぽと胴体
きょうの江戸小話 → 気のきく男

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4月11日の日本民話 風呂のぬか団子

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 4月の日本民話

4月11日の日本民話

風呂のぬか団子

風呂のぬか団子
広島県の民話広島県情報

♪朗読再生

 むかしむかし、田舎(いなか)のお百姓(ひゃくしょう)さんが、初めて江戸(えど→東京都)へ出てきました。
「ごめんなさい。今晩、泊めてください」
 お百姓さんが、宿屋の前でそう言うと、
「はい、ただいま。さあ、どうぞどうぞ」
 宿屋の女中(じょちゅう)さんは、お百姓さんを部屋に案内しながら言いました。
「ご飯を先にしますか? それともお風呂にしますか?」
「へえ、お風呂に入れてもらいましょう」
「では、こちらへ」
 お百姓さんは女中さんに案内されて、お風呂場へいきました。
 お風呂場には、ぬかと塩がおいてありました。
 むかしは石けんも歯ブラシもなかったので、ぬかで顔を洗い、塩で歯をみがいたのです。
 でも、このお百姓さんは、そんな事は知りません。
「はあ、これはきっと、ぬかダンゴを作って食べろというんだな」
 そう思い、ぬかに塩を入れて水でねり、ダンゴを作って食べました。
「こりゃうまい。こいつは、なかなか上等なぬかじゃ」
 お百姓さんは、ぬかダンゴをすっかり食べてしまいました。
 さて、お風呂からあがって部屋にもどると、女中さんがご飯を持ってきました。
 それを見て、お百姓さんが言いました。
「おら、お風呂でぬかダンゴを食ったから、もう、お腹がいっぱいじゃ」
「えっ? ぬかダンゴ?」
「ああ、とてもうまかったよ」
 女中さんは、ビックリしました。
 でも、お百姓さんに恥(はじ)をかかせてはいけないと思って、そのままご飯をさげました。
(もしかしたら、明日の朝も顔を洗うときに、ぬかを食べてしまうかもしれない)
 親切な女中さんは、ぬかと塩のかわりに、おもちをおいてあげました。
 さて次の朝、お百姓さんがお風呂場にいってみると、どうでしょう。
 ほかのお客さんは、ぬかを手ぬぐいにつつんで顔を洗っているのです。
「なんと、ぬかは顔を洗うもんだったか。こりゃ、とんでもない恥(はじ)をかいてしまった」
 さて、お百姓さんが顔を洗おうとすると、目の前におもちがおいてあります。
「よし、今度はまちがわないぞ」
 お百姓さんはおもちを手ぬぐいにつつんで、ごしごしと顔を洗いました。
 するとおもちがとけて、顔にベタベタとつきました。
 それでもお百姓さんは、うれしそうに言いました。
「やれやれ、今日は恥をかかずにすんだわい」
 ところが顔は、おもちだらけです。
 それを見た女中さんは、とうとう腹をかかえて大笑いしました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ガッツポーズの日
きょうの誕生花 → ヒヤシンス
きょうの誕生日 → 1949年 武田鉄矢 (俳優)


きょうの日本昔話 → おとうふ下さい
きょうの世界昔話 → イワンのバカ
きょうの日本民話 → 風呂のぬか団子
きょうのイソップ童話 → 山の猟師と海の漁師
きょうの江戸小話 → 紛失の師匠

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4月10日の日本民話 げんこつのほうび

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4月10日の日本民話

げんこつのほうび

げんこつのほうび
新潟県の民話新潟県情報

 むかしむかし、ある国の殿さまが、
《めずらしいものを持ってきたら、ほうびをとらせる》
と、いうおふれを出しました。
 それを聞いた人たちは、めずらしいものを持って、次々と城へ出かけました。
 でも、殿さまはだれよりもお金持ちなので、どんなにめずらしいものでも、城にないものはありません。
「なんだこんなもの、ちっともめずらしくない」
と、言って、みんな追いかえされてしまいました。
 さて、この国にカブをつくっているお百姓(ひゃくしょう)さんがいました。
 お百姓さんは、いままで見たこともないような大きなカブをつくろうとして、長い間、苦労を重ねてきました。
 そしてその苦労が実って、大きな岩みたいなカブができたのです。
「これなら、城にはあるまい」
 お百姓さんは近所の人に手伝ってもらって、そのカブを荷車にのせると、城へ運んでいきました。
 ところが城の門番が、
「なんじゃい、このカブは。カブなんてちっともめずらしくない。さあ帰った、帰った」
と、言って、中へ入れてくれません。
「でも、おらがいっしょうけんめいつくったカブです。こんな大きなカブはほかにありません。殿さまに一目、見ていただくだけでいいのです」
 お百姓さんがあまりにもいっしょうけんめいたのむので、門番は殿さまのところへ行って、大きなカブのことを話してくれました。
 すると、殿さまはよろこんで、
「すぐ、持ってくるように」
と、言いました。
「わしのおかげで、殿さまが見てくださるそうだ。いいか、もしほうびをもらったら、わしにも半分よこせ。わかったな!」
 門番は、おどすように言いました。
「はい、しょうちしました」
 お百姓さんは、城の庭へ荷車をひいていきました。
 殿さまは荷車の上のカブを見て、目を丸くしました。
 これほど大きなカブは、見たことも聞いたこともありません。
「これはめずらしい。よくぞここまでそだてあげた。ほうびをとらすから、何でもほしいものを言うがよい」
 殿さまは、ニコニコして言いました。
 でも、お百姓さんはほうびよりも、大いばりしている門番をこらしめてやろうと思いました。
 そこで、おそるおそる殿さまにわけを話して、
「おらに、げんこつを十個ください」
と、言ったのです。
「よし、よし。のぞみとあらば、げんこつをあげよう。もっと近くへ来なさい」
 お百姓さんは、殿さまの前に進みでて頭をさげました。
 殿さまはお百姓さんの頭を、そっと十回たたいて言いました。
「お前は正直者だ。本当のほうびは、あとでけらいにとどけさせよう」
「ありがとうございます」
 お百姓さんは喜んで荷車をひき、城の庭を出ていきました。
 門のところへくると、門番が待ちかねていたように言いました。
「どうじゃ。殿さまにほうびをいただいたか?」
「はい、おかげさまで」
「それじゃ、やくそくどおり半分もらおうか」
 門番はお百姓さんの前に両手を出した、そのとたん、お百姓さんはこぶしで、門番の頭を思いきりなぐりつけました。
「な、なにをする!」
 門番は、頭をかかえてすわりこみました。
「おらが殿さまからもらったほうびは、げんこつが十個だ。半分あげるからかくごしろ!」
 お百姓さんはこぶしをにぎりなおすと、あと四回、思いっきり門番の頭をなぐりつけました。
 畑仕事できたえた力でなぐられては、さすがの門番もたまりません。
 そのままひっくりかえって、のびてしまいました。
「ざまあみろ」
 気持ちがスッキリしたお百姓さんは、家に帰っていきました。
 家に帰るとすぐに、殿さまからのほうびのお金がとどきました。
 よろこんだお百姓さんは、そのお金で村の人たちにごちそうをしたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 駅弁の日
きょうの誕生花 → チューリップ
きょうの誕生日 → 1950年 和田アキ子 (歌手)

きょうの新作昔話 → 山を持ってくる
きょうの日本昔話 → かるい帰り道
きょうの世界昔話 → ヒヨコ星
きょうの日本民話 → げんこつのほうび
きょうのイソップ童話 → 2つのつぼ
きょうの江戸小話 → ためしぎり

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4月9日の日本民話 人を食わなくなったオニ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 4月の日本民話

4月9日の日本民話

人を食わなくなったオニ

人を食わなくなったオニ
岡山県の民話岡山県情報

 むかしむかし、あるところに、とても気の強い男がいました。
 ある日の事、山で仕事をしていたら、いきなりおそろしい人食いオニが現れて、男をペロリと一口で飲み込んでしまいました。
 でも、男の人は少しもこわがりません。
「ほう、これがオニののどか」
と、言いながら下へおりていくと、赤いかべにかこまれたところへ出ました。
 ふと前を見ると、上からひものようなものが三本ぶらさがっています。
「なんだこりゃ?」
 男の人は、一本のひもを引っぱってみました。
 そのとたん、まわりが地震みたいにゆれて、オニが大きなクシャミをしたのです。
「は、は、はっ、はくしょん!」
(なるほど、これはクシャミの出るひもだな)
 男の人は、もう一本のひもを引いてみました。
 すると、オニは大きな口を開けて、
「わっはっはっは、わっはっはっは」
と、笑い出したのです。
(いよいよ、おもしろくなってきたぞ)
 男の人は、最後のひもを引っぱってみました。
 するとさっきまで笑っていたオニが、きゅうに泣き始めたのです。
「うぇーーん、うぇーーん」
(これはいいものを見つけた。もし、いっぺんにひもを引っぱったらどうなるだろう?)
 男の人は三本のひもを一つににぎりしめると、思いっきり引っぱってみました。
 さあ、たいへんです。
 はくしょん!
 わっはっはっは。
 うぇーーん、うぇーーん。
 くしゃみをしたり、笑ったり、泣いたりと、えらいさわぎです。
 ですが男の人は、ひもを引っぱるのをやめません。
 オニは苦しくて苦しくて、今にも倒れてしまいそうでした。
(さあ、そろそろ出るとするか)
 男の人は三本のひもをはなすと、クシャミのひもを力いっぱい引っぱりました。
 は、は、はっ、はくしょん!
 ものすごいクシャミと一緒に、男の人はオニの口から外ヘとびだしました。
「やい、オニよ。もう一度飲み込んでみるか?」
「ブルブルブル。とんでもない!」
 オニはあわてて首を横にふると、いちもくさんに逃げていきました。
 そんなことがあってから、オニはもう二度と、人間を食ベなくなったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 大仏の日
きょうの誕生花 → アカシア
きょうの誕生日 → 1970年 伊藤美紀 (俳優)


きょうの日本昔話 → だんまりくらべ
きょうの世界昔話 → ウサギのしっぽ
きょうの日本民話 → 人を食わなくなったオニ
きょうのイソップ童話 → 水のかれた沼のカエル
きょうの江戸小話 → 身投げ

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4月8日の日本民話 タコとしゃれこうべ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 4月の日本民話

4月8日の日本民話

タコとしゃれこうべ

タコとしゃれこうべ
千葉県の民話千葉県情報

 むかしむかし、ある漁師町(りょうしまち)に、代々漁師をしている庄五郎(しょうごろう)という男がいました。
 この日は先代の命日(めいにち)でしたが、まずしいくらしをしているので、一日も漁を休む事ができません。
 庄五郎は弟や仲間たちと、沖へ舟をだして魚をとっていました。
 今日は、ひさしぶりの大漁です。
 庄五郎の弟たちがのっている舟がアミをひきあげていると、一匹の大きなタコが、なんと人間のしゃれこうべ(→ドクロ)を頭の上にのせながら現れました。
 漁師たちはビックリして、だれもタコに手をのばす者はいません。
「おーい。どうした? なにがあったんじゃ?」
 向こうの舟でアミをひきあげていた庄五郎が、声をかけてきました。
 そのときです。
 庄五郎たちがひきあげているアミの中にも、しゃれこうべを頭にのせたタコがかかってきたのです。
「なんということじゃ。海の中から、二つもしゃれこうべがでてくるとは」
と、一人の漁師がいうと、庄五郎が、
「今日は親父の命日じゃ。これは、なにか因縁(いんねん)があるかもしれんぞ」
 そういって、水あかでよごれているしゃれこうべとタコをアミからとりあげました。
 タコはほかの魚と一緒に、すぐに売ってしまいました。
 二つのしゃれこうべは、庄五郎の父親がほうむられているお寺へ持っていって手厚く供養(くよう)してもらいました。
「それにしても、しゃれこうべをのせていたタコを売らずに海に逃がしてやれば、父親のいい供養になったものを。それにしても、どうしてタコがされこうべをのせて現れたんじゃ?」
 町の人たちは、そううわさをしました。
 タコを売ってしまった庄五郎に、その後たたりのようなことはおこりませんでしたが、しゃれこうべがあがった漁場は、その後まったく魚がとれなくなったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → タイヤの日
きょうの誕生花 → いかりそう
きょうの誕生日 → 1978年 遠藤久美子 (タレント)

きょうの新作昔話 → すす竹売り(きっちょむさん)
きょうの日本昔話 → 八つ化けずきん
きょうの世界昔話 → ジメリのお山
きょうの日本民話 → タコとしゃれこうべ
きょうのイソップ童話 → オウムとネコ
きょうの江戸小話 → 立てば出ます

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4月7日の日本民話 白いオオカミと温泉

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 4月の日本民話

4月7日の日本民話

白いオオカミと温泉

白いオオカミと温泉
鳥取県の民話鳥取県情報

 むかしむかし、都(みやこ→京都)での戦いにやぶれて逃げのびたある武将(ぶしょう)が、味方の力をふたたびもりかえすことを願って、その祈願(きがん)のために、はるばる鳥取の山奥にあるお寺をたずねていきました。
 けわしい山の中をお寺にむかっていると、むこうの林の中に白いオオカミがたたずんでいるのが見えました。
「ほほう。白いオオカミとは、めずらしい」
 武将は足を止めると、弓に矢をつがえました。
 そして白いオオカミにねらいをさだめましたが、
「・・・やめておこう」
と、弓矢をしまいました。
 これからお寺へ祈願(きがん)にいくのに、殺生(せっしょう)してはならないと思いとどまったのです。
 武将は林の中にいる白いオオカミをしばらく見つめていましたが、やがてその場をはなれて、山奥のお寺へむかいました。
 それから、何日かたった夜ふけのことです。
 武将の夢の中に仏(ほとけ)さまが現れて、こんな事を言ったのです。
「よく聞くがよい。そなたが白いオオカミに出会った林の中に、大きなクスノキの株がある。そこには万病にきく湯がわいておる。病に苦しむ人たちを、それで救うがよい」
 武将はさっそく、白いオオカミに出会った場所へ出かけていきました。
 そして林の奥へ歩いていくと、大きなクスノキの切り株のそばに湯がわきでていました。
 その湯の中には、足をケガしたあの白いオオカミが、ケガの治療に入っていたということです。
 これが有名な、三朝温泉(みあさおんせん)のはじまりだという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 世界保健デー
きょうの誕生花 → ディモルフォセカ
きょうの誕生日 → 1954年 ジャッキー・チェン) (俳優)


きょうの日本昔話 → ニワトリのおなら
きょうの世界昔話 → クモにされた女の子
きょうの日本民話 → 白いオオカミと温泉
きょうのイソップ童話 → ラクダとゼウス
きょうの江戸小話 → あごとかかと

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4月6日の日本民話 赤児の授かり小判

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4月6日の日本民話

赤児の授かり小判

赤児の授かり小判


山形県の民話山形県情報

 むかしむかし、ある山の地蔵堂(じぞうどう)の中で、旅のお坊さんが目をさました。
 お坊さんは身仕度(みじたく)をしてお堂(どう)の外へ出ると、何かで足をつまずきました。
「うん? なんじゃ?」
 お坊さんが手にとって見ると、それは小判が一枚入った財布(さいふ)で、財布の中には一枚の紙が入っており、その紙には《初息子(はつむすこ)に与える金》と書いてありました。
「なるほど、残念じゃが、これはわしがもらうものではない。ここにおいておこう」
と、お坊さんは財布をもと通りお堂の前におき、近くで用を足していると、一人のおじいさんが来て、お堂の前の枯葉(かれは)を集め、財布に気づかずに枯葉と一緒に背負ったカゴに入れて山を下りて行きました。
 お坊さんはその日はふもとの村々を歩き、夕方になると一軒の家に宿をたのみました。
 こころよく宿を引き受けたその家の主は、なんと、今朝の木の葉集めのおじいさんだったのです。
 そしておじいさんの息子の嫁さんが、今日、男の子を産んだので、おじいさんもおばあさんもニコニコしていました。
 お坊さんは、
(さては、このじいさまが地蔵堂の前をきれいにしてくれる礼に、神さまが小判をさずけたのだな)
と、思い、おじいさんに財布の事を話しました。
 おじいさんが庭に出てひろい集めた落葉の中をさがすと、やはりあの財布が出て来ました。
 でも、おじいさんは、
「ありがたい話しじゃが、これはお坊さまが先に見つけた物で、おれのものではねえ。この財布はお坊さまの物だ」
と、さし出します。
 ですが、お坊さんは書いてある通り、
「いいや、これは今日生まれた男の子のものだ。わしがもらうものではない」
と、おじいさんにおさめさせました。
 次の朝、旅立つお坊さんにおばあさんが、
「どうぞ、昼に食べてください」
と、にぎりめしを持たせてくれたのです。
 じつはそのにぎりめしには、きのうの小判が入れてありました。
 お坊さんが峠(とうげ)を下りて行く途中、荷物を背負い、腹をすかせたような若者とあったので、お坊さんはおばあさんからもらったにぎりめしをあげました。
 若者はお坊さんに何度もお礼をいい、峠をのぼって行きました。
 この若者ですが、実はお坊さんがきのう世話になった家の息子、すなわち、きのう産まれた赤ちゃんの父親だったのです。
 小判はやはり、初息子へとさずかったのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → コーンビーフの日
きょうの誕生花 → きぶし
きょうの誕生日 → 1973年 宮沢りえ (俳優)

きょうの新作昔話 → こぶとり(きっちょむさん)
きょうの日本昔話 → キツネのしかえし
きょうの世界昔話 → すずの兵隊
きょうの日本民話 → 赤児の授かり小判
きょうのイソップ童話 → ライオンを見たことのないキツネ
きょうの江戸小話 → まんじゅうのためしぎり

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4月5日の日本民話 テングのおどかし

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4月5日の日本民話

テングのおどかし

テングのおどかし
和歌山県の民話和歌山県情報

 むかしむかし、紀伊の国(きいのくに→和歌山県)にテングと仲のよい上人(しょうにん→位の高いお坊さん)がいました。
 どういうきっかけでテングと仲良しになったのかはわかりませんが、近くの山に住むテングが、ときどき上人のいる寺へやってきて世間話をしたり、上人の教えを聞いたりするというのです。
 この寺の檀家(だんか→その寺に先祖の墓がある家)に、紺屋善兵衛(こうやぜんべえ)という男がいました。
 とても好奇心(こうきしん)の強い男で、
「ぜひともテングと話してみたい」
と、いって、上人がいくらことわってもあきらめません。
 そこで上人もあきらめて、善兵衛とテングをあわせることにしました。
 ある晩、テングが寺へ来るころを見はからって、善兵衛がやってきました。
 上人と一緒にテングの現れるのを、いまかいまかと待っていると、ふいに大きな鳥のようなものが飛んできて、お堂の前に舞いおりたのです。
 まっ赤な顔に長い鼻の、まぎれもないテングです。
 テングは上人の前に立ち、いぶかしそうに善兵衛を見つめました。
 そこで、上人がいいました。
「この人は、けっして怪しい者ではない。どうしてもテングどのと話をしたいというので、同席をゆるしたのです」
「・・・まあ、上人さまのおゆるしがあるのなら、しかたあるまい」
 テングがそう言ったので、ホッとした善兵衛は思い切ってテングにたずねてみました。
「世間では、テング倒しということをよく聞くが、どうしてそうなるのか教えてほしい」
「なんだ、そんなことか」
 テングは、ニヤリと笑うと、
「よく見ているがよい」
と、いうなり、うしろの柱に背中の羽をつけて、ブルブルとふるわせたのです。
 そのとたん、大きな家鳴りがして、お堂がゆれはじめました。
 ゆれはどんどんはげしくなり、庭の木や石もくずれおちそうです。
 すっかり肝(きも)をひやした善兵衛は、あわてて仏壇(ぶつだん)の下にもぐりこむと、両手を合わせてさけびました。
「や、や、やめてくれ!」
 それでもゆれはおさまらず、仏壇の物があたりにとびちり、天井がメリメリとゆれました。
「ああ、もうだめだ」
 そしてそれっきり、善兵衛は気を失いました。
 しばらくして、ハッと気がつくと、善兵衛は上人の前に寝かされていて、もうテングの姿はありませんでした。
「どうやら、正気にもどったようだな」
 上人が善兵衛を、のぞきこむようにしていいました。
「テ、テ、テングどのは?」
「もうとっくに山へもどった。なんなら、もう一度あってみるか?」
「と、とんでもない!」
 善兵衛はいきなり立ちあがると、はうようにして本堂をぬけだし、そのまま家へ逃げ帰ったという事です。

おしまい

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4月4日の日本民話 ウシになったお坊さん

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 4月の日本民話

4月4日の日本民話

ウシになったお坊さん

ウシになったお坊さん
宮城県の民話宮城県情報

 むかしむかし、あるところに、とてもやさしいお百姓(ひゃくしょう)さんがいました。
 ある日のタ方、お百姓さんの家に、弘法大師(こうぼうたいし)という旅のお坊さんがやってきて、
「すまんが、今夜一ばんとめてください」
と、言いました。
 でもお百姓さんはひどい貧乏で、ふとんもお米もありません。
 お百姓さんは、こまってしまいました。
「とまってもらうとうれしいが、こんなきたないところにお坊さんをとめては、ばちがあたります」
 すると、お坊さんが言いました。
「きたないなんてとんでもない。どこでもいいからとめてください」
「まあ、それならどうぞ、とまってください」
 お百姓さんはさっそくおイモをむして、お坊さんに出しました。
「こんなものしかありませんが、よかったらめしあがってください」
「こいつはありがたい。わたしはおイモが大好きでな」
 お坊さんは、おいしそうにおイモを食べました。
 それからお百姓さんがしいてくれた、たった一枚のボロぶとんによこになり、すぐいびきをかきはじめました。
(こまったお坊さんだ。ごはんを食べてすぐよこになると、ウシになってしまうのに)
 お百姓さんがそう思って見ていると、お坊さんの頭からニョキニョキとツノがはえてきて、本当のウシになってしまったのです。
「お坊さん! 大変です! 起きてください!」
 お百姓さんがビックリしてお坊さんを起こすと、ウシになったお坊さんが言いました。
「わたしはもう、人間にもどれない。どうかわたしを町へつれていって、売ってください」
「お坊さんを売るなんて、とんでもない!」
 朝になると、ウシはさっさと起きあがって外へ出ました。
「さあ、一緒に行きましょう。わたしを売ったお金で、好きな物を買ってください」
「し、しかし・・・」
「さあ、早く」
 お百姓さんがしかたなくついていくと、むこうからウシ買いがやってきて、
「こんなりっぱなウシは見たことがない。ぜひ、わしに売ってくだされ」
と、言って、お金をたくさんくれました。
 ウシになったお坊さんは、お百姓を見てうなずくと、そのままひかれていきました。
 さて、このことを聞いた、となりのお金持ちが、
(おれも一つ、旅のお坊さんを家にとめて金もうけをしてみよう)
と、思い、お坊さんがくるのを、毎日待っていました。
 すると、ある日のタ方、旅のお坊さんが通りかかりました。
 お金持ちは、あわててお坊さんのそばへ行き、
「これは、お坊さま。長旅はさぞおつかれでございましょう。ささっ、わたしのところへとまってください。ぜひとも、ぜひとも」
と、言って、むりやり家につれてきて、たくさんのごちそうを食べさせると、すぐにりっぱなふとんをひいてねかせました。
 ところがいつまでたっても、お坊さんはウシになりません。
「おかしいな。早くウシになれ。ウシになれ、ウシになれ」
と、言っているうちに、何と自分の頭からツノがはえてきて、お金持ちはウシになってしまったのです。
 次の日、お坊さんはこのウシをつれて、どこかへ消えてしまったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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4月3日の日本民話 真剣勝負

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 4月の日本民話

4月3日の日本民話

真剣勝負

真剣勝負
兵庫県の民話兵庫県情報

 むかしむかし、ある剣術の道場で、二人の(さむらい)がけんかになりました。
「さっきの勝負は、おれの勝ちだ!」
「いや、おれの勝ちだ。木刀(ぼくとう→木で作った刀)だからわからないだろうが、もし本物のなら、いまごろお前は死んでいる」
「とんでもない。死んでいるのはそっちのほうだ。おれのほうが先に切ったはずだ」
「うそを言うな。お前なんぞにおれが切れるものか」
 とうとう二人は、大げんかになりました。
「よし、それなら本物の刀で真剣勝負(しんけんしょうぶ)だ!」
「おう、望むところだ。きさまのからだをぶった切ってやる!」
 道場にきていたほかの侍が、あわててとめにはいりました。
「まあ、まあ、二人とも気を静めて。もし道場で刀を抜くと破門(はもん)されるぞ」
 破門というのは、道場をやめさせられることです。
 でも二人は、そんな言葉には耳をかそうとしません。
「かまうもんか、こいつを切らんとおれの気がすまん。さあ抜け」
「ようし、覚悟(かくご)はいいな」
 二人は本物の刀を腰にさして、向き合いました。
 そこへ弟子の知らせを聞いて、道場の先生がかけつけてきました。
「二人とも、やめんか!」
 先生がどなっても、二人はやめようとしません。
 そこで先生は、二人の間に入って言いました。
「よろしい、それほど真剣勝負がしたいのなら、特別にゆるしてやる。決してとめはしないから、おたがいに死ぬまで戦え。そのかわりどっちが勝っても、勝ったほうをわたしがまっ二つに切ってやるから、その覚悟で勝負せい!」
 二人とも、この先生の言葉にビックリ。
 先生は有名な剣術使いで、自分の相手になるような人ではありません。
 すっかりこわくなった二人は、へなへなと、その場にすわりこんでしまいました。

おしまい

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4月2日の日本民話 おりょう坂

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 4月の日本民話

4月2日の日本民話

おりょう坂

おりょう坂
茨城県の民話茨城県情報

 むかしむかし、ある村に、おりょうという名の、たいへん美しい娘がいました。
 おりょうは小さいころから、糸つむぎをするのが毎日の仕事でした。
 ある日の事、買い物に出たおりょうは、夜になっても帰ってきません。
 親や近所の村人たちが探しましたが、とうとう見つける事が出来ませんでした。
 何日たっても見つからないので,おりょうはバケモノに食われてしまったんではないかと、村人たちは思いました。
 それから半年ほどすぎたある雨の夜、山の坂道でおりょうの姿を見たという村人が現れました。
「あれは、どう見てもおりょうだ。まちがいねえ。だが声をかけても何にも言わなかったし、顔色も悪かったな」
 それを聞いた、一人の若者が、
「よし、おれがたしかめてやる」
と、言って、鉄砲(てっぽう)をもってその場所に出かけました。
 次の日の朝、その若者が帰って来ないという事で、村はまた大さわぎになりました。
 村人がその場所に行ってみると、若者や女のすがたはなく、若者の鉄砲だけが落ちていました。
 その夜は、村一番の力持ちが、そして次の夜は、村一番の腕のいい猟師が出かけましたが、みんな帰ってきません。
 そこで村の若者たちは集まって、相談をしました。
「これは、一人で行くのはあぶねえ。みんなで行ったほうがよいぞ」
 そしてその夜は、若者たち数人で出かけることにしました。
 そして山の坂道に行ってみると、おりょうらしい女が、あんどんの明かりの下で糸をつむいでいるではありませんか。
 若者の一人が、
「もし、おりょうさんでは?」
と、声をかけましたが、返事がありません。
 何度声をかけても返事をしないので、女の顔を見ようと近づいた若者の一人がとつぜん、
「これは、おりょうのバケモノだ!」
と、さけぶなり、
 ズドーン!
と、鉄砲をうったのです。
 すると女の姿もあんどんの明かりも、とつぜん消えてしまったではありませんか。
 ところが、しばらくすると、
「アッハッハッハ。アッハッハッハ」
と、高笑いとともにその女が現れて、また何事もなかったように糸をつむいでいるのです。
「まちがいない! これはバケモノだ!」
「いままでの三人も、このバケモノにやられてしまったんだ」
「しかしどうすればいいんだ? 鉄砲も役にたたんでは」
「まてよ、あのあんどんの明かりがどうも変だ。もしかして、あれがバケモノの正体では?」
 そう言うと、一人の若者があんどんの明かりをねらい、
 ズドーン!
と、鉄砲をうちました。
「ギャーッ!」
 けたたましいひめいが聞こえたかと思うと,女の姿もあんどんの明かりも消えてしまいました。
 そしてよく見ると、女のいたあたりに、何やら大きな黒いかたまりがあるのです。
 若者たちがおそるおそる近付いてみると、そこにはなんと、ウシのような大きさのガマガエルが、片目をうたれて死んでいるではありませんか。
 バケモノの正体は、このガマガエルだったのです。
 その後、この村にバケモノが出ることはなくなりましたが、村ではこの山の坂道を、「おりょう坂」とよぶようになったという事です。

おしまい

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4月1日の日本民話 テッジ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 4月の日本民話

4月1日の日本民話

テッジ

テッジ
東京都の民話東京都情報

 むかしむかし、八丈島(はちじょうじま→東京都)に、菊池虎之助(きくちとらのすけ)と、いう神主(かんぬし)さんがいました。
 虎之助はある時、庭に八本柱のりっぱな蔵(くら)をつくりましたが、なん日かすると家の人が、
「夜になるとあの蔵に、何にやらえたいの知れないバケモノが出るんです」
と、いいだしたのです。
「神さまをまつっている神主の家の者が、自分の家にバケモノが出るとはなにごとだ! だいたいバケモノなど、この世にはいないんだ。しっかりしろ!」
 虎之助は、しかるようにいいました。
 それでもやはり夜になると、蔵の中でおかしな物音がすると、家の人がいうのです。
 虎之助は、
「いつまでもバカな事をいっているではない。夜になると物音がきこえるというのは、新しい蔵の方がいごこちがいいというので、家にいるネズミどもがひっこしでもしたんだろう」
と、話しを聞いてくれません。
 けれども、こんな話しがうわさとなって島中に広がりだしたら大変です。
 そこで虎之助は、島の若者たちにたのんで、しばらく蔵の中で寝てもらうことにしました。
 次の日の朝、蔵の中から出てきた若者にたずねると、若者たちはニコニコして、
「まだまだ新しい木のかおりがして、まるで極楽(ごくらく)にいるようでした。朝まで一度も目をさましませんでしたよ」
と、答えました。
「それみろ。つまらないことをいわずに、お前たちも今夜から蔵の中で寝たらどうだ? ぐっすり休めるぞ。あはははは」
 虎之助は、これで家の人も安心しただろうと思いましたが、ところが次の日の朝になると、若者たちは青い顔をして蔵の中から出てきたのです。
「何か、あったのかね?」
 虎之助が、たずねると、
「夜中に蔵がギシギシとゆれだして、昨日の夜はぜんぜんねむれませんでした。いつ蔵がつぶれるかと思いました。もう、こんなおそろしいところに寝るのはいやです!」
 若者たちは、逃げるようにして帰っていきました。
 そこで虎之助は夜になると、(かたな)を手に庭のかたすみにかくれて、自分でようすをうかがうことにしました。
 蔵のわきにある大木のてっぺんの枝に、ちょうど十三夜のかけた月がかかったときです。
 ザワザワと、うら山の木々がさわぎだしました。
 そして二メートルをこえる大きなかげのようなものが、風にのって林の中から走ってきたかとおもうと、蔵の戸口にとりついて、カギのかかった戸を無理やり開こうとゆさぶりはじめたのです。
 蔵は船のように、グラグラとゆれだしました。
 そのとき、人の気配を感じたのか、大きな黒いかげがふりむきました。
 茶わんほどもある大きな目玉が、白く光っています。
 口からはくいきはほのおのように赤くもえて、葉っぱをまとった体のむねから上ははだかです。
 そして長くたれさがった右のおっぱいを左のかたに、左のおっぱいを右のかたの上にひっかけていました。
「あいつは、テッジだな」
 虎之助は、つぶやきました。
 テッジというのは、八丈島の山の中にすんでいるというバケモノです。
 虎之助は信じていませんでしたが、そいつはいたのです。
(けれども、どうしてそのテッジが、新築したばかりのわしの家の蔵へやってきたのだろう)
 テッジは戸をあけようとして、またはげしく蔵をゆすりました。
(あんなバケモノに蔵をつぶされてなるものか。神主の家がバケモノにねらわれているなんて、大わらいではすまされぬ。よし、今だ!)
 虎之助は手にしていた刀のさやをはらいのけると、両手ににぎりしめて走っていきました。
 そして体当たりするように、テッジのからだに刀をつきさしました。
「ギャオーッ!」
 ふいをくらったテッジは大声をあげて身をひるがえすと、風のようにうら山へにげていきました。
 つぎの日の朝、虎之助は家の者と一緒に、血のあとをたどって山へ入っていきました。
 てんてんとつづく血のあとは、大きな岩の前できえています。
 しかしその血は赤ではなく、たまごのきみのように、黄色だったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → エイプリルフール
きょうの誕生花 → マーガレット
きょうの誕生日 → 1961年 高橋克実 (俳優)

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きょうの世界昔話 → クルミ割り人形とネズミの王さま
きょうの日本民話 → テッジ
きょうのイソップ童話 → ライオンにばけたロバ
きょうの江戸小話 → かわをむく

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