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2009年3月

3月31日の日本民話 花散る下の墓

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話

3月31日の日本民話

花散る下の墓

花散る下の墓
大阪府の民話大阪府情報

 むかしむかし、大阪の町に、河内屋惣兵衛(かわちやそうべえ)という人がいました。
 惣兵衛(そうべえ)の屋敷には、年を取った一匹のぶちネコがいます。
 このネコを一人娘のお千代(ちよ)は、まだ子どもの頃から大変可愛がっていました。
 お千代のそばにはいつもネコがいるので、町の人は、
「お千代のむこさんは、ネコだよ」
と、かげ口をいっていました。
 それを耳にした惣兵衛は、
「こんなことでは娘がお嫁にいけない、なんとかしないと」
と、いつも考えていました。
 さて、春も浅い、ある晩の事。
 家の者が集まって、ひそひそ話をしています。
「ネコは捨てても、必ず帰ってくるというからのう」
「かわいそうじゃが、殺すしかほかあるまい」
 この話を聞いていたのか、その日から、ぶちネコはどこかへ行ってしまいました。
 ところが、いく日かたったある晩の事。
 惣兵衛がふと、まくらもとを見ると、ぶちネコがいます。
「おお、ぶちか。なんでお前は、姿を隠しおった」
と、たずねると、ぶちネコは悲しそうにいいました。
「はい。わたくしがおりましては、お嬢さまのためにならないと申されましたので、このまま姿を消そうと思いました。ですが、そのようなわけにもまいりません。と、いうのも」
 ここまで言うと、ネコはきちんと前足をそろえて、真剣な顔で惣兵衛に言いました。
「この屋敷には、年をへた化けネズミが一匹、住みついております。そいつがお嬢さまに見いって、おそばに近づこうといたしますので、わたしがお守りしておりました」
「おお、そうか。それは、すまぬことをした。だが、お前はネコでありながら、なぜネズミが取れぬのじゃ?」
「はい、だんなさま。ネズミを取るのがネコの役目なれど。この化けネズミだけは、とうてい、わたしの力ではかないませぬ。そこでお願いがございます。島の内の市兵衛(いちべえ)さまの家にとらネコが一匹おります。とらとわたしとが力を合せれば、必ずその化けネズミを退治する事が出来ましょう」
 そういったかと思うと、ネコの姿は、かき消すように消えてしまいました。
「ああ、夢であったか」
 あくる朝、惣兵衛が夢の事を妻に話すと、妻は、
「まあ。さようでしたか。実は私も、同じ夢を見ました」
と、言うので、さっそく惣兵衛は、島の内の市兵衛さんのところへ出かけて行って話しをしますと、市兵衛はすぐにとらを貸してくれたのです。
 とらを抱いて家へ着くと、ぶちネコが玄関に座って出むかえました。
 二匹は仲良くご飯を貪べると、庭へ出て、今が盛りの桜の下で舞い落ちる花びらにじゃれあって楽しく遊んでいました。
 夜になるとネコは夫婦の夢に現れて、二人に語りかけます。
「いよいよ、明日の夜は化けネズミを退治します。日が暮れましたら、わたしたちを二階にあげてください」
 そして次の日、夫婦は二匹のネコを、日が暮れるといわれたとおり二階にあげました。
 家の者は、心配そうに夜のふけるのを待ちました。
 すると突然、二階で物音がしたかと思うと、ドシン、バタンと物を落すような音や、走りまわる音がします。
 フギャー!
 チューチュー!
 長い長い時が過ぎて、やっと二階の物音がやむと、あたりはしーんと静まりかえりました。
「それっ」
 惣兵衛が灯りを持って二階ヘかけあがると、なんとネコよりも大きなネズミが倒れていたのです。
 大ネズミは、ぶちネコにのど首をかまれたまま死んでいます。
 そしてそのぶちネコも、大ネズミに頭をかまれて死んでいました。
 島の内のとらはと見れぱ、大ネズミの腹にかみついたまま虫の息です。
 さっそく手厚い治療をすると、とらは命をとりとめることができました。
 惣兵衛はとらネコを抱いて市兵衛宅へ出かけると、あつくお礼をのべて帰ってきました。
 死んだぶちネコは、桜の木の根元に、千代が墓を立ててほうむったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → エッフェル塔の日
きょうの誕生花 → はまかんざし(アルメリア)
きょうの誕生日 → 1970年 宮迫博之 (芸人)

きょうの新作昔話 → 赤ん坊と泥棒(どろぼう)
きょうの日本昔話 → こまったむすこ
きょうの世界昔話 → シンデレラ
きょうの日本民話 → 花散る下の墓
きょうのイソップ童話 → アリとキリギリス
きょうの江戸小話 → ちょっとおかりします

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3月30日の日本民話 オオカミばあさん

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3月30日の日本民話

オオカミばあさん

オオカミばあさん
京都府の民話京都府情報

 むかしむかし、丹波(たんば→京都府)の山間の村に、スギというおばあさんがすんでいました。
 ある年、おスギおばあさんに、待望の孫が生まれたのです。
「ああ、うちにも孫がでけた。ええ男の子や。ほんに、ええ男の子や」
 ですが、そう言って喜んでいたのもつかの間で、その年の秋、息子夫婦と可愛い孫が、流行病で死んでしまったのです。
 一人生き残ったおばあさんは、生きる気力を無くしてしまい、
「たった一人、生きていてもしかたねえ、はよう、わしも死なしてくれえ」
と、ただ泣いてくらしていました。
 まもなく冬がきて、山に雪が降り始めた頃、おそろしいオオカミが里の方へおりてきました。
 そして里の子どもがオオカミに食い殺されたので、村人たちは大騒ぎです。
 おスギおばあさんが人前に姿を見せなくなったのは、その頃からでした。
と、いっても、決していなくなったわけではなく、夜になると家には明かりがつきましたし、かまどの煙もあがります。
 そのころ、村には恐ろしいうわさが広がりました。
「なあ、知っとるか? あのばあさん、オオカミを飼っとるんや」
「ああ、聞いた聞いた。何でも朝晩、オオカミにめしを食べさせているそうだ」
 うわさはうそではないらしく、夜ごとに、
「ウォーン! ウォーン!」
と、いう、オオカミの鳴き声がすぐ近くで聞こえ、月明かりの庭先を通っていく黒いけものを何人もの村人が見たのです。
 そこである晩、男たちが火なわ銃を持って、おスギおばあさんの家の近くへ行ってみました。
 ひっそりとした、おスギおばあさんの家には、あんどんの明かりが灯っていました。
 その明かりで、しょうじに大きくおばあさんとオオカミの影が写ったのです。
「あわわわわ、オオカミ、オオカミだ!」
  鉄砲を持った男たちは、みな足がすくんでしまい、
「あんなのに飛びかかられては、このくらい夜のこと、いくら鉄砲があっても殺されてしまうぞ」
と、ぞろぞろ逃げて帰りました。
 それからしばらくしたある日、おスギおばあさんは珍しく外へ出かけると、お坊さんを連れて戻って来ました。
 お坊さんは土間(どま→台所)から飛び出してきたオオカミを見てビックリしましたが、そのオオカミに向かって、おばあさんがいいました。
「わしなあ、お前が家の裏まできた日には、『はよう、わしを食べてくれ、息子や孫のところへ行かしてくれ』そう思うて戸を開けたんや。そやけどお前は、このわしを食べなんだ。それどころか、わしが炊いたごはんをうまそうに食べて、今までいてくれた。おかげで、わしは今日まで命をながらえることができた。お前には礼をいわんならん。だども、いつまでもというわけにはいかん。ありがたいお経を聞いて、山の仲間の所へ帰ってくれ。・・・では、お坊さま、頼んます」
「あっ、・・・えっ、おほん。それならオオカミや、よう聞くがええ」
 お坊さんは、あがりがまち(→家のあがり口)に立って、お経をとなえだしました。
 オオカミはキバをむいて土間を歩きまわっていましたが、しだいに落ち着いて、お坊さんの前に座り込みました。
 オオカミは、そばにいたおばあさんをチラリと見ると、眠ったように目をつむります。
 それを見たおばあさんは、ゆっくりと部屋を出て行きました。
 しばらくの間、お坊さんのお経が続いていましたが、突然、
 ズドーーン!
 耳をつんざく音が、後ろの山の方までこだましたのです。
 しょうじのかげには、鉄砲を構えたおばあさんが立っていました。
 お経を聞いていたオオカミは、血に染まって死んでいました。
 おばあさんの目から、涙があふれておちました。
「なんぼわけがあるいうても、お前は村の子どもや旅の人を襲うた。つらいけど、わしはこうするしかなかったんや。ごめんな。ほんまに、ごめんな」
 そしてお坊さんの手を借りて、オオカミのなきがらを山へ運ぶと、手厚くほうむりました。
 それからは、村ではだれ一人オオカミに襲われる者はなかったそうですが、おスギおばあさんはその日から姿を消して、二度と村には戻ってこなかったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → マフィアの日
きょうの誕生花 → カルセオラリア(きんちゃくそう)
きょうの誕生日 → 1966年 村上里佳子(タレント)

きょうの新作昔話 → 山弥長者(さんやちょうじゃ)
きょうの日本昔話 → サルの恩返し
きょうの世界昔話 → 家の精
きょうの日本民話 → オオカミばあさん
きょうのイソップ童話 → ヘビとカニ
きょうの江戸小話 → ふだん用のネコ

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3月29日の日本民話 大工の神さまと天人

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3月29日の日本民話

大工の神さまと天人

大工の神さまと天人
鹿児島県の民話鹿児島県情報

 むかしむかし、あるところに、とても腕のいい大工さんがいました。
 でも、この大工さんには、まだお嫁さんがいません。
 そこで、同じ村にきれいな娘さんがいたので、
「ぜひ、わたしの嫁になってください」
と、お願いしたのです。
 すると娘さんは、嫁になるのをことわるために、
「たたみが六十枚もある、大きな家を一日でたてる事が出来たら、あなたの嫁になりましょう」
と、出来もしない事を言ったのです。
 大工さんは、どうしても娘さんをお嫁にしたかったので、
「よろしい。一日でたてましょう」
と、言ってしまいました。
(ああは言ったものの、弱ったなあ。どうしよう?)
 大工さんはしかたなく、ワラ人形を二千個もつくって、なにやらおいのりをしました。
 そして、ワラ人形にフゥーーーッと、息をかけると、不思議な事にワラ人形はたちまち人間の 大工さんになって、あっというまにたたみが六十枚もある大きな家をたてることが出来たのです。
 大工さんは大喜びで、さっそく娘さんのところへ行くと、
「約束どおりに家をたてたから、わたしの嫁になってください」
と、言いました。
「本当に?」
 娘さんが行ってみると、そこには大きくてりっぱな家がたっています。
 約束どおりの、たたみが六十枚もある家です。
「しかたありません。あなたの嫁になりましょう」
 そういって娘さんは、大工さんのお嫁さんになりました。
 大工さんは大きな家で、お嫁さんとなかよくくらしました。
 そして二千人の大工さんたちは、あちこちの国へ出かけて、家をたてたり、橋をつくったりしました。
 ところが何年かすぎたころ、お嫁さんが大工さんに言いました。
「今までだまっていましたが、わたしは人間ではなく、天の国からやってきた天人(あめひと→天から来た人)です。そろそろ天の国へもどらなくてはなりません」
 すると、大工さんも言いました。
「じつは、わたしも人間ではありません。わたしはてんごという大工の神です。それでは、一緒に天の国へ行ってくらしましょう」
 そこで、あちこちに出かけている二千人の大工さんを呼び戻して、一人一人に息をふきかけて、もとのワラ人形にかえました。
 神さまは千個のワラ人形を海へ、のこりの千個のワラ人形を山へ行かせることにしました。
 神さまがおいのりすると、すぐに風がふいてきて、ワラ人形を海と山に運んでいきました。
 やがて神さまと天人は、天高くのぼっていったのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → マリモの日
きょうの誕生花 → アリッサム
きょうの誕生日 → 1982年 滝沢秀明 (タレント)

きょうの新作昔話 → 小盗山(こぬすみやま)と有子山(こありやま)
きょうの日本昔話 → むこのひとつおぼえ
きょうの世界昔話 → ネズミとゾウ
きょうの日本民話 → 大工の神さまと天人
きょうのイソップ童話 → ヒツジ飼いとオオカミの子
きょうの江戸小話 → 手品の種

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3月28日の日本民話 娘のお百夜まいり

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話

3月28日の日本民話

娘のお百夜まいり

娘のお百夜まいり
山形県の民話山形県情報

 むかしむかし、ある村の寺は、たいへんよくきく魔除け(まよけ)のおふだをくれる事で知られており、遠くからも多くの人がおとずれました。
  ある夏のタぐれどき、一人のきれいな女の人が寺の門をたたきました。
「魔除けのおふだをもらいにまいりました。どうぞ、一枚わけてください」
  ですが、あいにくとその晩は和尚(おしょう)さんが町に出かけていたので、寺の小僧(こぞう)は気の毒に思いましたが、明日の晩にまた来るようにと帰ってもらいました。
  さて、和尚さんが帰って来て小僧からその話をきき、
(そんなに美しい女が、この村にいたのかな?)
と、明日の晩を楽しみに、ふとんに入りました。
  その夜のこと、和尚さんの夢の中に本堂(ほんどう)の仏さまが現われて、
「おふだをもらいに来る娘は、和尚を食べに来た裏山にすむバケモノじゃ。百夜通わせて弱らせてから、おふだをくれてやるとよい」
と、言ったのです。
  タ方になると、昨日の美しい女がやって来ました。
「和尚さまのおふだを、分けて下さい」
  和尚さんが門のすきまからのぞいて見ると、今までみた事もないほど美しい娘でした。
  和尚さんはうっかり門を開けそうになりましたが、仏さまの言葉を思い出していいました。
「すまぬが、わしのふだは貴重(きちょう)な物。お前さまには百夜の願をかけねば、やるわけにはいかんぞ」
  すると娘は、悲しそうな顔をして帰って行きました。
  美しい娘はそれから毎日タ方になると、山門まで願をかけに訪ねて来ました。
  夏がすぎ、秋も終わる頃、美しい娘は和尚さんがかわいそうになるほど弱ってきました。
  さて、いよいよ百日目になりました。
  和尚さんと小僧は悪魔退散(あくまたいさん)のおふだを山門のあちこちにはると、本堂でお経を読み始めました。
  山門にやって来た娘は悪魔退散のおふだを見るとブルブルとふるえだし、たちまちまっ黒なバケモノのすがたになって山門を打ちやぶると、寺の中に入ってきたのです。
  その時、天から一条の光が境内(けいだい)の池に差し込むと、水しぶきをあげてがとび出して、バケモノと、とっくみ合いの戦いを始めたのです。
  たいへん力の強いバケモノでしたが、お百夜まいりで弱っていたので、最後には竜にたおされて池にひき込まれてしまいました。
  その事があってから、この寺を竜徳寺(りゅうとくじ)と呼ぶようになったのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → シルクロードの日
きょうの誕生花 → たつたそう
きょうの誕生日 → 1975年 神田うの (タレント)

きょうの新作昔話 → 駒が池
きょうの日本昔話 → 大工と鬼六
きょうの世界昔話 → 美しい妹と九人のにいさん
きょうの日本民話 → 娘のお百夜まいり
きょうのイソップ童話 → オオカミと仲なおりしたイヌ
きょうの江戸小話 → ちっとも変わらん

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3月27日の日本民話 早業競べ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話

3月27日の日本民話

早業競べ

早業競べ
熊本県の民話熊本県情報

 むかしむかし、長者(ちょうじゃ)が、《日本一仕事の早い者をやとう》と、お触(ふ)れを出しました。
 すると、三人の男たちが集まって来ました。
「では、お前たちの腕前を見せてもらおう」
 長者が言うと、最初の一人が進み出ました。
「では、わたしから」 
 最初の一人は、十本のウメの木からいっぺんにウメの実をたたき落として、それが地面に落ちる前に全部受け取ってしまったのです。
「これは見事、見事じゃ」
 長者が喜んでいると、次の男が進み出ました。
「いやいや、それくらいのことでおどろいていてはいけません。だいいち、ウメの実の雄梅(おうめ)と雌梅(めうめ)とをより分けていませんでした」
「ほう、ウメの実に雄(おす)と雌(めす)があるとは知らなかった。して、お主は、どういう早業を見せてくれるのか?」
 すると、二番目の男は、
ノミを一升(いっしょう)ばかり集めて下され」
と、頼みました。
 長者は大勢の村人に命令して、一升(いっしょう)ます一杯のノミを集めさせました。
 そして、
「さあ、これをどうしてくれんじゃ?」
と、聞くと、二番目の男はいきなり一升ますをひっくり返しました。
 さあ大変です。
 ノミはいっせいに飛びはねながら、逃げていきます。
「ご心配なく」
 二番目の男は、近くにいた女の人の長い髪の毛を二、三本抜くと、とびはねるノミを片っぱしからとらえて、髪の毛で一匹、一匹の鼻ぐりに通して、ノミの輪を作ってしまったのです。
 あまりの早業に、長者はビックリです。
「こりゃたまげたわい」
 三人目の男がこの様子を見て、長者に言いました。
「いやいや、これくらいでおどろいていてはいけません。今のはだいいち、ノミのオスとメスとをより分けていませんでした」
「ほう、それならお主は、何を見せてくれるのじゃ?」
 ちょうどそのとき、長者の屋敷(やしき)の屋根普請(やねぶしん)に来ていた者が一人、高い屋根から足をふみすべらせて、下へ落ちてしまったのです。
 それを見た三人目の男は、さっと裏山にかけ込んで竹をきり、その竹で大きなカゴを作り、次にウマ小屋に飛び込んでワラたばを取って来て、大きなカゴに敷き詰めると、屋根から落ちて来た男を大きなカゴで、見事受け止めたのです。
「こいつはたまげた。人が落ちてくる間に、ワラたばをつめたカゴを作って人を受け止めるとは」
 三人が三人とも、すご腕の早業だったので、長者はやとうのをやめて、三人を客人(きゃくじん)として大切にもてなしたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → さくら(桜)の日
きょうの誕生花 → しょうじょうばかま
きょうの誕生日 → 1970年 マライア・キャリー (歌手)

きょうの新作昔話 → 仙人の碁(ご)
きょうの日本昔話 → 金のナスビ
きょうの世界昔話 → 水の妖精
きょうの日本民話 → 早業競べ
きょうのイソップ童話 → ロバとキツネとライオン
きょうの江戸小話 → 故郷に錦をかざる

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3月26日の日本民話 大ムカデ退治

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話

3月26日の日本民話

大ムカデ退治

大ムカデ退治
滋賀県の民話滋賀県情報

 むかしむかし、近江の国(おうみのくに→滋賀県)に、俵藤太(たわらとうた)という弓の名人がいました。
 あるの事、琵琶湖(びわこ)にかかっている橋を渡っていると、人間の五倍もある大蛇(だいじゃ)が、橋のまん中に横たわっていました。
 二つの目をランランと光らせて、口から炎をはきだしています。
 たいていの者ならこれを見て逃げだすでしょうが、さすがは弓の名人、
「こんなところに寝そべるとは、じゃまなやつだ」
と、いいながら、藤太は大蛇の背中をゆうゆうとふみしめながらのりこえていったのです。
 すると、うしろから、
「もし、もし」
と、呼びとめる者がいます。
(さては大蛇め、背中をふまれて腹をたてたか)
 そう思ってふりむいてみると、そこには大蛇の姿はなく、美しい女が立っていました。
「なにか用か?」
「はい、あなたさまにぜひお願いしたいことがございます」
 美しい女は、ていねいに頭をさげました。
「正直に申しあげます。こんな姿に化けてはおりますが、わたくしはこの橋の下に住むでございます。あなたがとても強い(さむらい)と聞いて、大蛇に化けて橋の上に寝ておりました。うわさどおりあなたは勇気のあるおかたで、大蛇を見ても顔色一つ変えませんでした」
「なるほど、それにしても美しい女に化けたものだ」
「ありがとうございます。それで、じつはむこうに見えます三上山(みかみやま)に住む大ムカデが、ときどきこの湖に来て、わたくしどもの仲間をさらっていくのです。このままでは竜の一族はほろんでしまいます」
「なるほど、しかしあいてはたかがムカデであろう。竜ならムカデなど」
「いいえ。なにしろ相手は三上山を七巻き半も巻くという大ムカデ。とてもわたくしどもの手におよびません。お願いです。どうか大ムカデを退治してください」
 女に化けた竜は、手を合わさんばかりに頼みこみました。
 そこまで頼まれれば、藤太もあとへはひけません。
「わかった。そんなにこまっているなら、わしが助けてあげよう」
「ありがとうございます。では、こちらへ」
 女は藤太の前に立って、歩きはじめました。
 いつのまにできたのか、湖の上に道が続いていて、その上を女はどんどん進んでいきます。
 しばらく行くと、むこうに竜宮城が見えてきました。
 金銀をちりばめた御殿(ごてん)は、目のさめるような美しさです。
(ほう。これが竜宮城というものか)
 藤太がうっとりながめていると、竜王(りゅうおう)が家来をつれて迎えに出てきました。
「さあ、どうぞどうぞ」
 藤太の案内された部屋は、水晶をしきつめた大広間です。
 おぜんの上には山のようにごちそうがならべられ、金のかめには上等の酒がなみなみと入っています。
 やがて美しい女たちが現れ、笛や鐘(かね→小形の叩いて鳴らす楽器)の音にあわせて踊りはじめました。
 藤太はまるで夢の中にいるような気分で、時間のたつのも忘れていました。
 そのうちに、大広間がきゅうに暗くなりました。
「藤太さま、大ムカデがやってきました」
 藤太を竜宮城へ案内した女がふるえる声でいうと、われにかえった藤太は弓と矢を持って立ちあがりました。
「よし、みんなかくれろ」
 三上山の空がにわかに赤くなったかと思うと、何百もの火の玉が飛びかって、それがこっちへとむかってきます。
「あれは、大ムカデの目にちがいない」
 藤太は弓に矢をつがえると、いちだんと光っている二つの火の玉のまん中をめがけて矢を放ちました。
 ガチン!
 矢が岩にあたったような音をたてて、はねかえりました。
 藤太はすばやく、二本目の矢を放ちますが、
 ガチン!
 この二本目の矢も、はじきとばされてしまいました。
 矢はもう、あと一本しか残っていません。
 大ムカデはうなり声をあげながら、どんどん近づいてきます。
「これは弱った、どうしたものか」
 さすがの藤太も、少しあわてました。
「ああ、どうしたらいいのだ? なにか弱点でもあればいいまだが・・・」
 竜王は、藤太の横でおろおろするばかりです。
「弱点。・・・うむ。そうだ、忘れていた」
 藤太は三本目の矢の先を口に入れると、たっぷりと魔よけのつばをつけました。
 魔物というものは、人間のつばが大きらいなのです。
 その矢を弓につがえると、力いっぱい引きしぼり、
「これでもくらえ!」
と、放ちました。
 矢はうなりをあげて飛んでいき、大ムカデの額(ひたい)へと食い込みます。
「ウギャーーー!」
 大ムカデは地響きのような叫び声をあげました。
 それと同時に、何百という火の玉が一度に消えたかと思うと、ものすごい水しぶきがあがります。
 ふと見ると、湖の水がまっ赤で、額に矢を射られて死んだ大ムカデのからだが、ゆらゆらとゆれていました。
「ありがとうございました。これで安心して暮らせます」
 竜王は何度も頭をさげて、お礼を言いました。
 それから家来に命じて、米を一俵と絹を一反(いったん→幅二十七センチ、長さ九メートルの布)、そして釣り鐘を一つを運んでこさせて、
「これはお礼のしるしです。どうかお持ちください」
と、言いました。
 藤太は喜んで贈り物を受けとり、竜王の家来たちに運ばせながら家へ持って帰りました。
 不思議な事に、米俵の米はいくら出してもへることがなく、絹の反物(たんもの)も切れば切るほどふえていきました。
 おかげで藤太は、なに不自由なく暮らすことができました。
 そして釣り鐘は、近くの三井寺に奉納(ほうのう→寺や神社にものを納めること)したのです。
 その美しい鐘の音は、琵琶湖を渡り近江の国のすみずみまで鳴りひびくと言われています。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → カチューシャの歌の日
きょうの誕生花 → しゅんらん
きょうの誕生日 → 1975年 石塚義之 (芸人)

きょうの新作昔話 → お浪草(おなみそう)
きょうの日本昔話 → 八匹のウシ
きょうの世界昔話 → 月の見ていた話 二夜
きょうの日本民話 → 大ムカデ退治
きょうのイソップ童話 → ガチョウとまちがえられた白鳥
きょうの江戸小話 → 入りにくい

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3月25日の日本民話 昆布買い

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話

3月25日の日本民話

昆布買い

昆布買い
長崎県の民話長崎県情報

♪朗読再生

 むかしむかし、あるところに、男の子がいました。
  ある日の事、お母さんが男の子をよんで言いました。
「おみそ汁に入れるから、昆布(こんぶ)を買ってきておくれ」
「うんいいよ。昆布だね」
  男の子は忘れないように、口の中で、
「昆布、昆布」
と、言いながら、歩いていきました。
  すると、小さな溝(みぞ)がありました。
  男の子は、
「ピントコショ」
と、言って、溝をとびこえました。
  そのとたん、昆布がピントコショにかわってしまいました。
「ピントコショ、ピントコショ」
と、言いながら、男の子は昆布を売っているお店へいきました。
「ピントコショおくれ」
「なに、ピントコショだって? さて、そんなもの聞いたことがないな。いい子だから、もう一度お家に帰って聞いておいで」
  男の子は、また、
「ピントコショ、ピントコショ」
と、言いながら、うちへ帰ってきました。
「お母さん、ピントコショないよ」
「バカだね、この子は。そんなものあるわけがないだろう。ピントコショじゃなくて昆布だよ。昆布」
「そうか、昆布だったのか」
  男の子は、口の中で、
「昆布、昆布」
と、言いながら、お店のほうへ歩いていきました。
  ところがまた、溝をとびこえるとき、
「ピントコショ」
と、言ってしまいました。
「ピントコショおくれ」
  それを聞いたお店の人は、あきれた顔で言いました。
「さっきも言ったが、ピントコショじゃわからんだろう」
  男の子は、またまた、
「ピントコショ、ピントコショ」
と、言いながら、うちへ帰ってきました。
「やっぱり、ピントコショはないよ」
「ああ、本当にダメな子だねえ。昆布ぐらい言えなくてどうするの!」
  お母さんは腹を立てて、男の子の頭をげんこつでなぐりつけました。
  するとポコンと、たんこぶが出来ました。
「昆布! 昆布! 昆布! さあ、言ってみな!」
「昆布、昆布、昆布」
  男の子は、頭のこぶをおさえながら言いました。
「ちゃんと言えるじゃないの。さあ、もう一度いっておいで」
  男の子は、
「昆布、昆布」
と、言いながら、さっきの溝のところまできました。
「そうだ、ここを飛ぶときに、ピントコショと言うからいけないんだ」
  そして溝を飛ばずに、ゆっくりと渡ると、
「やったー。ピントコショと言わなかったぞ」
と、言ったとたん、またまた昆布がピントコショにかわってしまいました。
「ピントコショ、ピントコショ」
  男の子はお店にやってくると、いいました。
「ピントコショおくれ」
「ああ、やっぱりだめだ。こっちはいそがしくて、とてもお前の相手はしておれん。とっとと帰っておくれ」
  そう言って、お店の人がふと男の子の頭を見ると、大きなたんこぶができています。
「どうした、そのこぶは?」
  すると男の子は、ニッコリ笑って、
「ああ、そのこぶ(昆布)を買いにきた」
と、言いました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 電気記念日
きょうの誕生花 → おうれん
きょうの誕生日 → 1959年 嘉門達夫 (シンガー)

きょうの新作昔話 → 清水の観音さまのお告げ
きょうの日本昔話 → 酒を買いに行くネコ
きょうの世界昔話 → アイリーのかけぶとん
きょうの日本民話 → 昆布買い
きょうのイソップ童話 → 人とサチュロス
きょうの江戸小話 → 自分であがる

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3月24日の日本民話 じゃんじゃん

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話

3月24日の日本民話

じゃんじゃん

じゃんじゃん
三重県の民話三重県情報

 むかしむかし、あるところに森がありました。
 村人の年寄りたちは、
「この森の下には海が広がっていて、森をほると塩水が出てくるんじゃ」
と、いっていました。
 そこで村の若者たちは、海までほってみようということになり、長い竹筒(たけづつ)を何本も何本もつないで地面につきさしてみました。
 ところが何本つないでみても、いっこうに水が出ません。
「年寄りの話は、うそじゃったんじゃ」
 あきらめて帰ろうとしているところへ、一人の(さむらい)がやってきて、
「ここですもうをとろう。そうすれば負けたものがドスン、ドスンと尻もちをつくから、その重みで水が出るかもしれん」
と、いいました。
 そしてまた、
「それから負けたものは、を一本づつこの竹筒の中へ投げこもう、そうすると海の井戸の神さまが怒って、水を出すかもしれんぞ」
と、いったのです。
 村人はすもうをとりはじめ、負けたものが刀を竹筒の中へ落すと、竹筒の底の方から、
♪じゃんじゃん
と、何かが鳴りひびきました。
 そしてしばらくすると、底から水がふき出して、尻もちのくぼみに水がたまりはじめたのです。
 そのくぼ地は池になり、村の井戸からは水がどんどんふき出しました。
 水は今でも竹の筒から、
♪じゃんじゃん
と、つきることなくふき出しているそうです。
 これは、地面の下が海底になっているからだという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → マネキン記念日
きょうの誕生花 → かたくり
きょうの誕生日 → 1970年 原田泰造 (芸人)

きょうの新作昔話 → 杭にぎり
きょうの日本昔話 → だまされたどろぼう
きょうの世界昔話 → 銅の国、銀の国、金の国
きょうの日本民話 → じゃんじゃん
きょうのイソップ童話 → いっしょに狩りにいったライオンとロバ
きょうの江戸小話 → なりたてのどろぼう

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3月23日の日本民話 スズメとキツツキ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話

3月23日の日本民話

スズメとキツツキ

スズメとキツツキ


福井県の民話福井県情報

 むかしむかし、スズメのお母さんが重い病気になって、今にも死にそうだという知らせがありました。
「そりゃ、たいへんだ!」
 ビックリした息子のスズメは、普段着のままで、大あわてでお母さんのところへかけつけました。
 仕事の途中で来たので、顔はドロだらけです。
 でも、元気な息子の顔を見たお母さんは、
「よくきてくれたね。ありがとう」
と、言ってよろこび、死にそうだった病気までよくなったのです。
 このことを知った神さまは、
「なんて、感心なスズメだ」
と、言って、虫のほかにも、人間と同じお米を食べることを許してくれたのです。
 そればかりか、人間の住んでいる近くでも、くらせるようにしてくれました。
 さて今度は、キツツキのお母さんが重い病気になり、今にも死にそうだという知らせがありました。
 でもキツツキはとってもおしゃれな娘で、毎日毎日遊んでばかりいます。
 ですから、その知らせを聞いたのも夜になってからでした。
(ふーん、そうなの。でもまあ、まだ死んだわけではないから大丈夫ね。それよりも、きっと近所の鳥たちもお見まいに来ているから、わたしのきれいなところを見せなくちゃ)
 キツツキは、おしろいをつけたり、べにをつけたりと、いつもよりていねいにおけしょうして、一番上等の着物を着て出かけました。
 でも気の毒に、お母さんは娘が来るのが待ちきれずに、死んでしまいました。
 さて、それを知った神さまはカンカンに怒りました。
「母親よりも自分が大事だなんて、なんてひどい娘だ!」
 そしてバツとして、木の中の虫しか食べられないようにしたのです。
 そればかりか、山の中でしかくらせなくしました。
 だからスズメは今でも自由にどこへでも飛んでいき、おいしいお米まで食べられるのに、キツツキは山の中にいて、木に穴を開けなければ虫を食べることができず、夜になるとくちばしが痛いと言って、ないているという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 世界気象の日
きょうの誕生花 → ベルゲニア(ヒマラヤゆきのした)
きょうの誕生日 → 1967年 七瀬なつみ (俳優)

きょうの新作昔話 → お嫁さんになれなかったウグイス
きょうの日本昔話 → ほんとうの母親
きょうの世界昔話 → おじいさんとまご
きょうの日本民話 → スズメとキツツキ
きょうのイソップ童話 → サヨナドリとツバメ
きょうの江戸小話 → やぶ先生のぐち

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3月22日の日本民話 キツネがついた幸助

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話

3月22日の日本民話

キツネがついた幸助

キツネがついた幸助
静岡県の民話静岡県情報

 むかしむかし、東海道(とうかいどう)ぞいのある村に、幸助(こうすけ)という、まじめで働き者のお百姓(ひゃくしょう)が住んでいました。
  この幸助が五十五歳になった、ある日の事です。
  どうしたことか、幸助がきゅうにおかしくなったので、奥さんはおどろいて近所の人たちを呼んできました。
  幸助は掛け軸(かけじく)がかかった床の間(とこのま)を背にしてきちんとすわり、こんなことをいいだしたのです。
「われは、大友(おおとも)の白ギツネである。このたび豊川(とよかわ)の稲荷(いなり)さまのつかいとして、江戸までいくことになった。江戸からもどるときも、またこの家を宿(やど)にかりたい。世話(せわ)になったな」
  そういって、幸助は旅のしたくをはじめたのです。
  奥さんと近所の人たちは、幸助をあわてて引き止めると、ふとんに寝かせてしまいました。
「これは、キツネがついたんじゃ」
  みんなが心配していると、幸助はふとんから起きあがりました。
  そして、きょとんとした顔つきで、
「おや? なんで、みんなここにおるんだ?」
と、いうのでした。
  正気(しょうき)にかえった幸助にいろいろたずねると、幸助はそれまでの事を、全くおぼえていないというのです。
  何日かたつと、幸助はまたおかしなことをいいました。
「われは、さきに宿を借りた大友の白ギツネである。いま江戸からもどってきた。また世話になるぞ。われはいま、五百歳になる。ここは日本一の富士の山も近くにながめられて、とてもよいところじゃ。社(やしろ)をつくって、われをまつれ」
  しばらくして正気にもどった幸助にこの話をすると、幸助はまじめな顔つきで、
「これも何かの縁(えん)だ。その大友の白ギツネとかの頼みをきいてやろう」
と、いって、家の敷地(しきち)に小さなお稲荷(いなり)さんの社をつくり、自分は白い衣をまとって神主(かんぬし)になりました。
  神主になった幸助は、病気や大漁(たいりょう)のおいのりをたのまれると、あちこちにでかけていって一心(いっしん)にお祈りをしました。
  すると、どんな願いでもすぐにかなえられるのでした。
  けれども、つかれはてて家に帰ってくると、それまでの事はすっかり忘れてしまい、自分がどこへいって何をしてきたのかも、いっさい思い出すことが出来ないのです。
  また幸助は、これまで絵をかいたことなど一度もありませんでしたが、それなのに突然、名人がかくような見事な絵をかくようになったのです。
  特に富士山の絵はすばらしく、もらっていった人たちは、家の宝にして床の間にかけていました。
  この幸助にキツネがつくようになってから四年後、「富士景色」と名づけたりっぱな画集(がしゅう)を二冊を残して、幸助はこの世をさったとの事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 放送記念日
きょうの誕生花 → れんぎょう
きょうの誕生日 → 1977年 松本リカ (タレント)

きょうの新作昔話 → 善光寺の本柱
きょうの日本昔話 → まゆにつば
きょうの世界昔話 → オオカミになった弟
きょうの日本民話 → キツネがついた幸助
きょうのイソップ童話 → オオカミとヒツジ飼い
きょうの江戸小話 → 剣術指南

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3月21日の日本民話 ネコに技を教えるキツネ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話

3月21日の日本民話

ネコに技を教えるキツネ

ネコに技を教えるキツネ
福岡県の民話福岡県情報

 むかしむかし、ある村にすむ男が、夜ふけに便所(べんじょ→トイレ)に行って、月の光が流れこむ小窓から何気なく外をのぞきました。
 便所の前には、あれた畑がひろがっています。
 そこへ、どこからともなく一匹のネコが現れて、あたりをうかがっていました。
「はて。あのネコは、あんなところで何をしておるんじゃ? 仲間でも、待っておるのか?」
 すると、あれた畑のすみから、今度はキツネが出てきたのです。
 キツネはだまって、ネコのところに近づいていきました。
 けんかでもはじまるのかと見ていると、二匹は仲よくならんで、キツネはネコの前で前足をあげたり、背をのばしたり、おじぎでもするように頭を下げたりしました。
 それがおわると後ろ足で立って、チョコチョコと歩きだしました。
 ネコはそのかっこうをまねて、やはり後ろ足で立つと、キツネのあとについていきます。
 二匹はあれた畑の中をまっすぐ歩いていくと、むこうの垣根(かきね)のところまでいって、またもどってきました。
 キツネとネコは、十回以上も同じことをくりかえしていました。
 便所の小窓から見ていた男は、ふと、われにかえって用をたしました。
 するとキツネとネコはその音におどろいて、たちまち姿を消してしまいました。
 キツネはネコに、こうしていろいろな技(わざ)や踊り(おどり)を教えるといいます。
 このときはキツネはネコに、後ろ足で立って歩くことを教えていたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ランドセルの日
きょうの誕生花 → まんさく(満作)
きょうの誕生日 → 1973年 石井正則 (芸人)

きょうの新作昔話 → 一本のとうもろこし
きょうの日本昔話 → あかんべえおばけ
きょうの世界昔話 → タールぼうや
きょうの日本民話 → ネコに技を教えるキツネ
きょうのイソップ童話 → 病気になったシカ
きょうの江戸小話 → 文句をいいに

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3月20日の日本民話 だきついてくる白骨

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話

3月20日の日本民話

だきついてくる白骨

だきついてくる白骨
岐阜県の民話岐阜県情報

 むかしむかし、美濃の国(みののくに→岐阜県)に、長間佐太(ながまのさた)という武士(ぶし)がいました。
 将軍を守るため京の都へ行ったのですが、戦(いくさ)のおわったあと、つくづく武士がいやになりました。
(人と人が争うとは、なんとおろかな事だろう。もはや二度と武器は手にしたくない)
 そう心にきめた佐太(さた)は、国へはもどらずに武士の身分をすてると、草ぶきの小屋をたてて、たった一人で住む事にしたのです。
 だからといって、元武士が乞食(こじき)をするわけにもいかず、近くの山でしばを買い求めて、それを町へ売りに行って暮らす事にしました。
 まずしい暮らしでしたが、佐太には心の休まる毎日でした。
 わずかなお金で安物の酒を買い、心ゆくまで山をながめ、月を見ては歌をよむ。
 ときには町の寺へ行って庭を掃除し、日が暮れればお堂の下でねむり、夜が明ければしばを売って歩く。
 あまりにもひどい生活に、むかしの仲間が金と食べ物を佐太にあげようとしても、
「寝るところも食べるものもその日まかせ、何もないほうがよほど気らくだ」
と、いって、受けとろうとしません。
 そんな佐太がある晩、墓地の近くを歩いていたら、目の前の古い墓がいきなり二つにわれて、中からたいまつのような明かりがもれてきたのです。
 ビックリしましたが、佐太はもともと、すご腕の武士です。
 顔色も変えずに、
「はて、何事だ?」
と、墓の中をのぞいてみたら、白骨(はっこつ→ガイコツ)になった人間がムクリと起きあがり、佐太にだきついてきたのです。
「拙者(せっしゃに)に、何か用か?」
と、たずねてみても、白骨はだまったまま、佐太を墓の中へ引きずりこもうとします。
「いかに世捨て人とて、まだ死ぬわけにはいかぬ」
 佐太が力まかせにつきとばすと、白骨はあっけなくあおむけにたおれて、たおれたはずみに骨がバラバラになってしまいました。
 それと同時に明かりが消えて、あたりはふたたびまっくらです。
 しかたなくその場をはなれた佐太は、ゆうべの出来事が気になり、翌朝ふたたびもどってみると、墓はくずれて白骨がちらばっていました。
「拙者にまでだきつくとは、よほどくやしいことがあったにちがいない」
 佐太はちらばった白骨を拾い集めて墓にもどすと、どこへともなく歩いていったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 電卓の日
きょうの誕生花 → みつまた
きょうの誕生日 → 1956年 竹中直人 (俳優)

きょうの新作昔話 → 山鳥の恩返し
きょうの日本昔話 → 家からとおくなっても
きょうの世界昔話 → しあわせになった、のらネコ
きょうの日本民話 → だきついてくる白骨
きょうのイソップ童話 → モミの木とイバラ
きょうの江戸小話 → てつびん

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3月19日の日本民話 ブッポウソウのこえ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話

3月19日の日本民話

ブッポウソウのこえ

ブッポウソウのこえ
高知県の民話高知県情報

 むかしむかし、土佐の国(とさのくに→高知県)に、たいさくという人がいました。
 ある時、たいさくが町に出かけて、
「わしらの山にはブッポウソウというめずらしい鳥がいて、まことによい声で鳴くんだよ」
と、いいふらしました。
 すると、それがお城の殿さまの耳にも入ったのです。
「このあたりにも、ブッポウソウがいるとは知らなかった。ぜひ一度、鳴き声をきいてみたいものだ」
 殿さまが言うと、家来(けらい)たちが、
「ですが、たいさくという男がすんでいるあのあたりの山には、道らしい道がございません。山に入る事は、とうてい無理にございます」
と、言いましたが、
「道がなければ、道をつくればよいではないか。そうであろう」
「ははーっ! まことにその通りでござます」
 家来たちはさっそく、山に道を開きました。
「では、まいるとしよう」
 殿さまはカゴに乗って、大勢の家来と山に出かけました。
 ところが、鳴いているのは野バトばかりです。
「たいさくを、これによべ!」
 殿さまはカンカンに怒って、たいさくをよび出しました。
「へへーっ。およびだそうで」
「これ、たいさく。ブッポウソウの声など、聞こえんではないか」
「いいえ、ないております。ほれ、♪デデポッポゥ、♪デデポッポゥ」
「バカ者! あれは野バトじゃ!」
「そうでしたか。わしはあれがブッポウソウの声かと思いました。しかし、さすがはお殿さま。物知りですな、あははははははっ」
 たいさくはしかられましたが、殿さまが山に道をつくってくれたので、山仕事が楽になったと村のみんなから喜ばれたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → アカデミー賞設立記念日
きょうの誕生花 → ベロペロネ(こえびそう)
きょうの誕生日 → 1955年 ブルース・ウィリス (俳優)

きょうの新作昔話 → 地中で三十三年
きょうの日本昔話 → 水アメの毒
きょうの世界昔話 → ピアンとサル
きょうの日本民話 → ブッポウソウのこえ
きょうのイソップ童話 → カラスとヘルメス
きょうの江戸小話 → ぬすびとの辞世

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3月18日の日本民話 シラミの質入れ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話

3月18日の日本民話

シラミの質入れ

シラミの質入れ
山形県の民話山形県情報

 むかしむかし、米沢(よねざわ→山形県南部の市)の近くの村に、佐兵(さへい)という、冗談(じょうだん)好きな男がいました。
 佐兵はびんぼうで着ているきものはボロばかり、そしてそのきものには、いつもシラミがたかっていました。
 ある時、お金が必要になったので、家の中で一番上等のきものを質屋(しちや)へ持っていきました。
 すると、質屋の番頭(ばんとう)が、
「おい、佐兵よ。お前のきものには、シラミもいっぱいたかっているぞ」
「うん。たしかにたかっているな。だが、お前さんの店では、《何でもお受けします》と書いてあるぞ」
「まあ、それはそうだが」
「そうだろう。それじゃあ、きものと一緒にシラミもあずかったと、質札(しちふだ→あずかったことを示す紙)にかいてくれよ」
「それはいいが、シラミの数は?」
「そうだな。五升(約9リットル)のシラミあずかったと、かいてくれ」
「へいへい」
 番頭がかいてわたすと、佐兵はだまってかえりました。
 そしてそれからいく日もしないで、佐兵はお金を持ってきものを引きとりにきました。
「たしかにきものは受け取ったが、でも、返してもらうものがまだたりねえぞ」
「なにがたりねって?」
「シラミ五升だ。質札にちゃんとかいてあるものだろう。そいつを返してもらわねえとな」
 シラミの事など冗談だと思っていたのですが、たしかに質札にかいて渡したのですから、返せと言われれば返さなくてはなりません。
 でもシラミを五升なんて、どこにもありません。
 番頭は、頭をかきながら、
「まったく、佐兵にはかなわんな」
と、シラミの代わりに酒代をやって、かんベんしてもらったということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 精霊の日
きょうの誕生花 → とさみずき
きょうの誕生日 → 1962年 豊川悦司 (俳優)

きょうの新作昔話 → ヘビのうらみと老母
きょうの日本昔話 → 大工さんと大入道
きょうの世界昔話 → キツネとウマ
きょうの日本民話 → シラミの質入れ
きょうのイソップ童話 → 目の見えない人
きょうの江戸小話 → かぜのかみおくり

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3月17日の日本民話 タバコ入れの中のお守り

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話

3月17日の日本民話

山に入らない日

タバコ入れの中のお守り
香川県の民話香川県情報

 むかしむかし、ある山奥に、山仕事をしている人たちのすむ小さな村がありました。
 村のはずれにすむ吾作(ごさく)は、からだが小さいのにたいへんな力持ちです。
 ほかの者たちが五、六人かかってひきだす木も、一人で軽々(かるがる)とひきだしてしまうのです。
 そのうえ吾作は働き者で、山仕事がない日は大きなカゴを背負って山奥を歩き、山菜(さんさい)などをとっていました。
 ある日の事、今日は山仕事がないので、吾作はいつものように大きなカゴを背負って山奥へ入り、山菜をとって山道をおりてきました。
 するときゅうに日がかげり、目の前が夜のように、まっ暗になったのです。
 吾作は足を止めると、空を見あげてビックリしました。
 なんと大きな岩ほどもある大男が、吾作の前に立っていたのです。
 でも、気の強さと力じまんでは、だれにも負けない吾作は、
「そんなところにつったっていてはじゃまだ。どいてけろ!」
と、いいました。
 吾作を見おろす大男は、だまって笑っています。
「何をしている! じゃまだから、どけといっとるんだ! どかねえなら、谷底へころがしてやるぞ!」
 吾作は背負っていたカゴを置いて、すもうをとるかっこうをしました。
 すると大男は、ニヤリとわらい、
「ほほう。わしとすもうをとるというのか。こいつはおもしろい」
 大男はズシンズシンと地ひびきをたてて、しこをふんで組みあいましたが、なんと吾作にひょいとひねられて、ゴロンところがってしまったのです。
「ふん。ずうたいがでっけえだけで、なんの力もありはせん。さあ、どいた、どいた。いつまでもせまい道にひっくりかえってねえで、どいてけろ」
 吾作が背負いカゴをとろうとすると、大男はよほどくやしかったのか、
「まて。もう一度勝負しろ。今度はおいらが、お前をひねってくれるわ」
 そういって吾作にかかっていきましたが、またころがされてしまいました。
「なんと。こんなはずでは・・・」
 そのとき、大男の目玉がギロリと光りました。
「そうか、わかった、それじゃよ。腰にぶらさげたそのタバコ入れが気になって、力が入らねえんだ。それをはずして勝負しろ」
「ああ、いいだろう。何度やっても同じ事だ」
 吾作は腰からタバコ入れをはずして、道のわきになげました。
 次の日の朝、山仕事にでかけた村の人たちは、どこからころがってきたのか、山奥の道をふさいだ大岩の下じきになって、押しつぶされている吾作を見つけました。
 吾作が投げ出したタバコ入れの中を見ると、中にはたくさんのお守りが入っていました。
 吾作はこれまで、そのお守りに守られていたのでしょう。
 吾作はこのお守りを手放したばかりに、死んでしまったのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 漫画週刊誌の日
きょうの誕生花 → さんしゅゆ
きょうの誕生日 → 1946年 マギー司郎 (漫談師)

きょうの新作昔話 → のさんの賭け
きょうの日本昔話 → ステレンキョウ
きょうの世界昔話 → パンドラの箱
きょうの日本民話 → タバコ入れの中のお守り
きょうのイソップ童話 → ゼウスの裁判
きょうの江戸小話 → あわて医者

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3月16日の日本民話 娘に化けた大ウナギ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話

3月16日の日本民話

娘に化けた大ウナギ

娘に化けた大ウナギ
山梨県の民話山梨県情報

 むかしむかし、甲斐の国(かいのくに→山梨県)にウナギ沢という沢があって、そこにはたくさんのウナギがいました。
 ある年の事です。
 近くの寺でお祭りがあり、若者が集まってお酒を飲んでいたところ、話しが盛り上がって、ウナギ沢のウナギをとろうということになりました。
「しかしな、一匹や二匹をとったところでおもしろくもない。一度に何百匹もとる方法はないだろうか?」
 だれかがそう言うと、一番年上の若者が、
「あるぞ。毒まんじゅうをウナギ沢に投げこめば、ウナギはみんな浮いてくる。あとはそれをひろうだけだ」
と、言ったのです。
「なるほど、そいつはうまい手だ。よし、みんなで根こそぎウナギをとってしまおう。町へ売りに行けば、たいしたかせぎになるぞ」
 酒のいきおいも手伝って、集まっていた若者たちはみんな賛成しました。
「ではさっそく、毒まんじゅうをつくろう」
 一番年上の若者は、家にもどって毒の粉を持ってきました。
 それぞれが土で泥のダンゴを作ると、毒の粉をダンゴにまぜて毒まんじゅうの出来上がりです。
 するとそこへ、見たこともない娘がやってきて、
「お前たち、バカな事をするもんじゃない! そんな事をしたらウナギ沢のウナギばかりか、魚まで死んでしまうじゃないの!」
と、言ったのです。
「たしかに、お前さんのいうとおりだ。よしわかった。毒まんじゅうを沢に投げこむのは考えなおそう。それより今日はお祭りだ。お前さんも一緒に酒を飲んでいけ」
「おら、酒は飲めない」
「ならば、ごちそうでも食べていけや」
 若者たちは娘がきたのを喜んで、毒まんじゅう作りをやめると娘をもてなしました。
 娘は、出されるものをつぎつぎとたいらげると、
「ああ、すっかりごちそうになってしまって。そんなら、毒まんじゅうはもうつくらんでくれよ」
と、お礼をいって出ていきました。
 さて娘がいなくなると、一番年上の男がいいました。
「ふん、どこの娘か知らんが、よけいな事をいいおって。さあ、早く毒まんじゅうをつくってしまおう」
「そうとも。グズグズしていたら、日がくれてしまうぞ」
 若者たちは毒まんじゅうを袋につめると、大喜びでウナギ沢へと向かいました。
 今日は祭りの日というので、沢には魚を釣る人もおらず、シーンと静まりかえっています。
「そろそろ、始めるぞ」
 若者たちは毒まんじゅうをつかんで、沢へ投げ込みました。
 やがてしばらくすると、ウナギや魚が次々と水面に浮かんできて、よろよろと泳ぎまわったあと、白い腹を見せたまま動かなくなってしまいました。
「やったぞ!」
 若者たちは沢にとびこむと、ウナギや魚をつかんで岸へとほうり投げました。
 用意したカゴは、たちまちウナギや魚でいっぱいになりました。
「さて、ひきあげるとするか」
 若者たちがカゴをかついで立ちあがろうとしたら、太さが二寸(約六センチ)、長さが六尺(一尺は約百八十センチ)もある大ウナギが水面に浮かんできたのです。
「なんともでっかいウナギじゃ。かば焼きにすれば、あれ一匹で何十人前もあるぞ」
 喜んだ若者たちは大ウナギをつかまえて、数人がかりで岸へと運びあげました。
 そしてほかのウナギと一緒に、みんなで大ウナギをかつぐと、一番年上の若者の家へもどっていきました。
 そして、この大ウナギを料理して、みんなで食べようという事になったのです。
「よし、いくぞ」
 一番年上の若者が、包丁(ほうちょう)で大ウナギの腹をさきました。
 すると、
「なんだ、これは!」
 なんと大ウナギの腹の中から、あの娘が食べたごちそうが次々と出てきたのです。
 これには、さすがの若者たちもビックリです。
「さっきの娘は、この大ウナギが化けたものにちがいない。この大ウナギは沢の主じゃ。こんな物を食べたらばちがあたるぞ」
 若者たちはとってきたウナギや魚を投げすてて、大あわてで家にかえって行きました。
 そんな事がうわさになり、若者たちはもちろんのこと、近くの村の人たちも、だれ一人ウナギ沢へ魚を取りに行く人はいなくなったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 万国赤十字加盟記念日
きょうの誕生花 → イースターカクタス
きょうの誕生日 → 1967年 小比類巻かほる (歌手)

きょうの新作昔話 → 身代わり地蔵
きょうの日本昔話 → にげだしたまつの木
きょうの世界昔話 → 空飛ぶトランク
きょうの日本民話 → 娘に化けた大ウナギ
きょうのイソップ童話 → 川と海
きょうの江戸小話 → つけばな

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3月15日の日本民話 うごく城

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話

3月15日の日本民話

うごく城

うごく城
山口県の民話山口県情報

 むかしむかし、ある大名に、美しい姫がおりました。
 姫も年頃になり、毎晩たずねてくるりっぱな若侍(わかざむらい)に恋するようになりましたが、若侍の家も名前もわかりませんでした。
 ある日、姫がその事をうばに打ち明けると、
「その方の着物のすそに、長い糸を結んだ針をつけてごらんなさい」
と、教えてくれました。
 姫はうばの言うとおりにして、その糸をたどっていくと、中の島の池の中まで続いていました。
 姫は若侍が妖怪(ようかい)だと思って悲しみましたが、その夜、大名(だいみょう)の夢枕(ゆめまくら)にその若侍が現れて、
「わたしは池の主の大ガメです。姫に心をひかれて、毎夜かよっておりましたが、正体を見破られてはどうすることもできません。おわびのしるしに、中の島に城をおきづきください。きっと、難攻不落(なんこうふらく)の城となりましょう」
 大名が言われたとおりに城をつくると、敵が攻めてきても島ごと動いてしまうので、敵はどうすることもできませんでした。
 それもそのはずで、その城をささえていたのは、あの大ガメだったからです。
 しかしある年、城の中に井戸を作ることになりました。
 水が出てくるあたりまで掘り下げると、井戸からは水のかわりにおびただしい血が七日七晩ふきだし、とうとう城は動かなくなってしまったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 靴の記念日
きょうの誕生花 → さんたんか
きょうの誕生日 → 1962年 朝比奈マリア (歌手)

きょうの新作昔話 → 弥藤次荒神(やとうじこうじん)
きょうの日本昔話 → おむすびコロリン
きょうの世界昔話 → アザラシのお母さん
きょうの日本民話 → うごく城
きょうのイソップ童話 → オオカミと子ヒツジ
きょうの江戸小話 → おいはぎ

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3月14日の日本民話 不思議なサバ売り

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話

3月14日の日本民話

不思議なサバ売り老人

不思議なサバ売り
奈良県の民話奈良県情報

♪朗読再生

 奈良の東大寺(とうだいじ)で、「華厳経(けごんきょう)」というお経(きょう)の話しをする会が、初めてもよおされる事になったときのお話しです。
 会の日どりは決まりましたが、お経の話しをしてくれる人をだれにするか、なかなか決めかねていました。
 そのとき、天皇(てんのう)が、
「夢で告げられた事だが、朝一番先に寺の門前で出会った者を先生にするがよい」
と、お寺に伝えてきたのです。
 お寺ではそのとおりにする事にして、その日の夜明けを待ちました。
 すると、お寺の前を一番先に通りかかったのは、魚を入れた大きなザルをてんびん棒でかついだサバ売りだったのです。
(はて、この人に、お経の話ができるのだろうか?)
と、思いましたが、天皇の夢のお告げですから、だまって見送ってしまうわけにはいきません。
 サバ売りを呼びとめて、わけを話すと、
「と、とんでもねえ。わしはこうして、サバを売ってくらしておるだけの者じゃ。お経の話しだなんて、とてもとても」
「しかし、天皇のお告げが」
「天皇なんて関係ねえ。生ぐさい魚は食わねえ坊さんたちにはわかるめえが、サバという魚は、すぐに腐るんじゃ。生き腐れといって、それこそ生きているあいだにも腐るんじゃ。さあ、ひまをつぶしておるわけにはいかんから、道をあけてくだされ」
「まあまあ、そこをなんとか」
 立ち去ろうとするサバ売りをお寺の人たちはなおもひきとめて、やっとのことで本堂へ連れていきました。
「仕方ねえな」
 観念したサバ売りは、八十匹の魚を入れたままのザルを机の上に置きました。
「あんな生ぐさいものを、机の上に置くとは」
 集まった人たちが困った表情をしましたが、不思議な事に、八十匹のサバはたちまち八十巻のお経の巻物にかわったのです。
 そして口を開き始めたサバ売りの言葉を聞いて、人々はビックリしました。
 サバ売りは古いインドのお経の言葉で話しはじめ、とちゅうで話をやめると、机の前から立ちあがって本堂から出ていってしまったのです。
 不思議なサバ売りが魚をかついでいたてんびん棒は、回廊(かいろう→長くて折れ曲った廊下)の前につき立ててありました。
 その棒からはたちまち枝や葉っぱが出て、柏槙(びゃくしん→ヒノキ科の常緑高木)という木になりました。
 もしかするとサバ売りは、仏さまだったのかもしれません。
 こののち、東大寺で毎年三月十四日にひらかれるお経のお話会の先生は、このサバ売りにならって、お話しを途中でやめて、本堂からだまって外へ出ていく事になったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ホワイトデー
きょうの誕生花 → カミツレ(カモミール)
きょうの誕生日 → 1948年 五木ひろし (歌手)

きょうの新作昔話 → 三笠山
きょうの日本昔話 → にせものの汽車
きょうの世界昔話 → ロバとおじいさん
きょうの日本民話 → 不思議なサバ売り
きょうのイソップ童話 → ミツバチとゼウス
きょうの江戸小話 → 思いやり

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3月13日の日本民話 殿さまをおそったネコ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話

3月13日の日本民話

殿さまをおそったネコ

殿さまをおそったネコ
東京都の民話東京都情報

 むかしむかし、江戸(えど→東京都)に有馬(ありま)という殿さまの屋敷がありました。
 ある年の春の夜、殿さまが便所(べんじょ)へ行っての帰り、おぼろ月をながめながら渡り廊下を歩いていると、何者かが後ろからかけよってきて、いきなり肩に手をかけました。
「何者!」
 殿さまがふりむいた時、相手は両手で殿さまの首をしめつけてきたのです。
 それは屋敷では見たこともない老婆(ろうば)で、髪をふり乱し、キバをむいて首をしめつけてくるのです。
 老婆とは思えない力で、殿さまの顔はみるみる血の気がなくなっていきました。
 しかし殿さまはあわてるようすもなく、その手をはらいのけるなり、わきざしをぬいて老婆に切りつけました。
「フギャーー!」
 老婆は叫び声のかわりに、無気味なうなり声を残して走りさりました。
 それを聞きつけた見まわりの家来が、明かりを持ってかけてきました。
「殿、いかがなさいましたか?」
「何者かが、わしの首をしめようとしたので、切りつけたら逃げていきおった。わしは大丈夫だから、いたずらにさわぐでないぞ」
 殿さまはそれだけ言うと、なにごともなかったように部屋へもどっていきました。
 翌朝、殿さまは家老(かろう)を呼び出してたずねました。
「家来の中で、まだ出仕(しゅっし→つとめに出ること)していない者はないか?」
「なにか、ゆうべの事と、かかわりでもあるのでしょうか?」
と、家老は聞きかえしましたが、殿さまはそれ以上、なにも言いませんでした。
 家老が調べてみると、同じ家老仲間である角田要助(つのだようすけ)という男が、まだ出仕していないことがわかりました。
 すぐに、角田の家へ使いを出したところ、
「じつは昨夜、母親が急病で倒れて、いまもって起きることができないのです。すぐ医者をよびよせたが、どういうわけか母は部屋にひきこもり、まわりにびょうぶを立てめぐらしたまま、だれも中へ入れてくれずに、こまっています」
と、言うのです。
 家老はそのことを、すぐ殿さまに伝えました。
 すると殿さまは、ただちに要助(ようすけ)をよび出して、ゆうべの出来事を伝えました。
「では、その老婆がわたくしの母ではないかと?」
 要助が、顔色を変えてたずねると、
「いや、そうだと言っているのではない。ただ世間(せけん)のうわさでは、化け物が老人にとりつくことがあるという。そちの母も、とくと気をつけよ」
「・・・かしこまりました」
 おとなしくひきさがったものの、要助はふゆかいです。
 いくら殿さまといっても、家来の母を化け物あつかいするとはあんまりです。
 この上は母の容体(ようたい)を見きわめて、殿さまに申しひらきをしなくては気がおさまりません。
 要助は家にもどるなり、母の寝ている部屋にかけつけました。
「だれじゃ?」
 中から、母の声がします。
「どうしても、母上の容体を見とどけたくて、参りました」
「ならぬ! たとえわが子でも、中へ入ることを許さん。早くたちされ!」
「しかし、母上にもしものことがあればどうなります。ご病気なら医者にもみせなくてはなりません」
「心配はいらん。二、三日休んでいれば、きっとよくなる」
「ですが」
「ならぬと言っておるだろう!」
 要助がいくら頼んでも、母は中へ入ることを許してくれません。
(あの心優しい母が、これほどまでにこばむとは。・・・これはもしかして、殿の言う事が本当かもしれない)
 がまんできなくなった要助は、戸を開けて中へ飛び込みました。
 いくえにも立てめぐらしてあるびょうぶを押しのけ、母の寝ている枕元(まくらもと)へ立つと。
「これほど言っても、まだわからんのか!」
 母はこわい顔で、下から要助をにらみつけました。
「ごめん!」
 要助はいきなり、母の布団(ふとん)を引きはがしました。
 すると布団には、黒ぐろと血のあとがついているではありませんか。
 ハッとして母を見たら、右の肩に大きなけがをしていて、着物の上まで血がにじみ出ています。
「これは、ひどい」
 その時、要助の頭に、殿をおそう老婆の姿が浮かびました。
(しかし、まさか母上にかぎって。それにそもそも、殿をおそう理由もないではないか。だが、それにしても、なぜ大けがをかくすのだ?)
 要助には母のあやしげな態度が、どうしてもなっとくできませんでした。
「どこで、こんな大けがをしたのです」
 要助があらためて母にたずねると、母はだまったまま、要助をにらみつけます。
 目がらんらんと光り、いまにもとびかからんばかりです。
 いかに病気とはいえ、こんな恐ろしい母の顔を見たのははじめてです。
(もはやこれまでだ。もし本当に母上であったなら、自分も腹を切って母のあとを追おう)
 要助はかくごを決めると、を抜いて母に切りつけました。
「ギャオォォォー!」
 すさまじい叫び声をあげて起きあがろうとするところを、要助は胸元めがけて力いっぱい刀をつきさします。
「なんてことを」
 さけび声を聞いてかけつけてきた家の者たちは、腰をぬかさんばかりにおどろきました。
 要助は刀を持ったまま、ぼうぜんと母の死骸(しがい)を見つめていました。
 すると不思議な事に、母の体はだんだんと形がくずれてきて、やがてネコの姿が現れたのです。
 そこには、頭からしっぽの先まで三尺(約一メートル)ほどもある古ネコが、血まみれになって死んでいたのです。
「やっぱり、バケモノであったか」
 家の者たちは、あまりの出来事に声もでません。
 やがて気をとりなおした要助は、家の者たちに、
「この事は、決してよその者に言うではないぞ」
と、念を押してから、殿さまの屋敷へ出かけました。
「角田要助(かくたようすけ)、殿の眼力(がんりき)には、ほとほと感服(かんぷく)つかまつりました」
 うやうやしく頭をさげてから、これまでの事をくわしく報告しました。
 すると、殿さまは、
「やはりそうであったか。だがこの事は、決して他人にもらすでないぞ。母は病死ということにして、よきにはからえ。・・・それから、バケモノとはいえ、母の姿をしたものに刀を向けるのはつらかったであろう。すまぬ、どうかゆるしてくれ」
と、家来の要助に頭を下げたのです。
 要助はあらためて、殿さまの思いやりに感謝しました。
 ふたたび家にもどった要助は、家の者に命じてネコの死骸(しがい)をかたづけて、母の部屋の床下をほらせてみました。
 要助の思ったとおり、床下からはガイコツになった母が出てきました。
 骨のようすから見て、数年はたっています。
 うかつにも母を食い殺したネコを、今まで本当の母と思ってつくしてきたのです。
「母上、どうぞお許しください」
 要助は一つ残らず母の骨をひろって、骨(こつ)つぼにおさめました。
 要助の母が死んだというので、おくやみの客が次々とやってきました。
 せめてもの供養(くよう)にと、近くの寺で盛大(せいだい)な葬儀(そうぎ→そうしき)を行い、殿さまもわざわざ葬儀にやってきて、要助の母をねんごろにとむらったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → サンドイッチデー
きょうの誕生花 → アネモネ
きょうの誕生日 → 1966年 今田耕司 (タレント)

きょうの新作昔話 → 土仏観音(どぶつかんのん)
きょうの日本昔話 → 牛若丸
きょうの世界昔話 → 小人とクツ屋
きょうの日本民話 → 殿さまをおそったネコ
きょうのイソップ童話 → ノミとスポーツ選手
きょうの江戸小話 → 金がかたき

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3月12日の日本民話 八人浦島物語

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話

3月12日の日本民話

八人浦島物語

八人浦島物語
富山県の民話富山県情報

 むかしむかし、黒部谷(くろべだに)の山里に、とても碁(ご)のすきな八人の男がいて、毎日ひまさえあればパチリパチリと、碁石(ごいし)を打っては楽しんでいました。
 ある日のこと、いつものように碁をしていると、一人の老人がやってきて、
「わしも碁がすきでな。一つ打たせてはくださらないか?」
と、頼んだので、
「ああ、いいですよ」
と、仲間に入れると、これがなかなかの腕前で、一番強いといわれる男とやっても、まったくひけをとりません。
 老人はそれから毎日くるようになり、みんなと碁を楽しんでいました。
 一年ほどたったころ、八人の男たちは老人の家にまねかれました。
 老人の案内で谷をすぎ、崖(がけ)や淵(ふち)を渡っていくと大滝(おおだき)の前に出ました。
「この滝の中に隠れ道がある。わしに続いて滝をくぐってくだされ」
 老人がこういってヒラリと滝をくぐったので、村人たちも続いてくぐり抜けると、岩の洞穴(どうくつ)がありました。
 その中を進んでいくと、りっぱな黒門(くろもん)に囲まれたご殿(てん)が見えました。
 それが老人の家で、男たちは人びとに出迎えられて奥座敷(おくざしき)に通されると、たいへんなごちそうのもてなしを受け、そのあと碁をして遊びました。
 夜は夜で、絵のように美しい娘たちが三味線(しゃみせん)、胡弓(こきゅう)、尺八(しゃくはち)を伴奏(ばんそう)にしておどり、天にものぼる心地です。
 そのような日を過ごして二日後、村人たちは家に帰ることにしました。
 老人は、名残りをおしみ、
「それでは、世にもめずらしいごちそうをさし上げましょう」
と、いって、頭と顔が人間で、胴がタイのような人魚の料理を出しました。
 気味悪く思った村人たちは、それを食べるふりをして紙につつみ、もときた道をたどって滝の外に出ると、紙づつみの魚を川にすてました。
 さて村に帰ると、たった二日のはずが、なんと二年もの月日がたっていたのです。
 ところで、八人の中でただ一人、紙づつみを持ち帰った男がいました。
 その家の娘がそれと知らずに紙づつみの魚を食べたところ、何年たっても若わかしく、なんと三百歳まで長生きしたという事です。
 それはきっと、不老不死の薬と言われる、人魚の肉を食べたためでしょう。
 それからあの老人は、二度と村には姿を見せませんでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → サイフの日
きょうの誕生花 → れんげそう
きょうの誕生日 → 1971年 ユースケ・サンタマリア (タレント)

きょうの新作昔話 → 子ザルのまつ
きょうの日本昔話 → 庭に現れた雪女
きょうの世界昔話 → ワタの花と妖精
きょうの日本民話 → 八人浦島物語
きょうのイソップ童話 → 馬と兵隊
きょうの江戸小話 → 越後屋

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3月11日の日本民話 草葉のかげ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話

3月11日の日本民話

草葉のかげ

草葉のかげ
広島県の民話広島県情報

 むかしむかし、あるところに、とてもなまけ者の男がいました。
 近所の大だんなの家で働いていましたが、少し働くとすぐ遊んでしまうので、いつもお金がありません。
 ですから、すぐに大だんなのところへ行って、
「かならず返しますから、お金を貸してください」
と、言って、お金を借りてくるのです。
 ですが、まだ一度も返したことがありません。
 さて、もうすぐお正月だというのに、食べるお米がなくなってしまいました。
 大だんなのところへ借りにいこうにも、お金を一度も返したことがないので、これ以上は貸してくれそうにもありません。
 だからといって、このままでは死んでしまいます。
 それに、男には大勢の子どもがいて、
「おなかすいた、おなかすいた」
と、さわぎ立てるのです。
 男はこまってしまい、頭をかかえこんでしまいました。
(なにか、うまくいく工夫はないものか?)
 男はしばらく考えていましたが、
「そうだ、うまい手がある」
と、言って、おかみさんを大だんなの家にいかせました。
「大だんなさま、うちの主人が死にました。今日食べるお米もありません。どうか、お米を一俵(いっぴょう)、貸してください」
 おかみさんは男に言われたとおり、いかにも悲しそうな顔で話しました。
「そうか、それはかわいそうに。お前の家には貸しがいっぱいあるけど、まあいい。米を一俵、・・・いや、そこにある三俵全部持っていくがよい」
 大だんなはおかみさんに同情(どうじょう)して、三俵のお米のほかに、お金まで貸してくれました。
 男は大喜びで、しばらくはそのお米とお金で暮らしていましたが、少しも働かないので、そのうちにお金もお米もなくなってしまいました。
 すぐにでも働きに行かなければなりませんが、でも、死んだ人間が大だんなの家に働きにいっては、ウソがばれてしまいます。
 どうしようかと、大だんなの家の前でウロウロしているところへ、大だんなが出てきました。
(しまった、見つかったか)
 男は大あわてで、近くの草むらの中へかくれました。
「おいおい、そこにかくれているのはわかっている。全く、死んだなんて、ウソをつくにもほどがあるぞ。さあ、でてこい」
 男が出てこないので、大だんなは草むらのそばにやってきました。
 すると男は、大だんなに手を合わせて言いました。
「いや、この間はすまんことでした。いえ、ウソなんかついていません。こうして、草葉のかげからおがんでおります」
 ちなみに草葉のかげからというのは、なくなった人のことをいうときに使う言葉です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → パンダ発見の日
きょうの誕生花 → ゆきやなぎ
きょうの誕生日 → 1938年 梅宮辰夫 (俳優)

きょうの新作昔話 → 庭はきこさじ
きょうの日本昔話 → ネコに教わった剣の道
きょうの世界昔話 → 七つの星
きょうの日本民話 → 草葉のかげ
きょうのイソップ童話 → 子ジカと母ジカ
きょうの江戸小話 → 水中の小判

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3月10日の日本民話 ドロボウを追い出したおばけ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話

3月10日の日本民話

ドロボウを追い出したおばけ

ドロボウを追い出したおばけ
新潟県の民話新潟県情報

 むかしむかし、あるところに、お金持ちのだんなさんがいました。
 お金持ちでも心のやさしい人で、家でかっている動物を自分の子どものようにかわいがっていました。
 ところが悪い人にだまされてしまい、屋敷(やしき)から田んぼに畑まで、全て売ることになってしまったのです。
「しかたがない。あきらめるとしよう」
 だんなさんが家族とそうだんしているのをネコが聞いて、ウマ小屋にとんでいきました。
「ウマどん、ウマどん、たいへんだ!」
 ネコから話を聞いたウマは、
「それはいかん。なんとかしなくては。すまんがイヌやニワトリもよんできてくれ」
 そこでネコは、この家にかわれているイヌとニワトリもよんできました。
「おらは長い間、この家でかわれてきたが、一度だってだんなさんにたたかれたことがない。いつだっておらの頭をなでてくれた」
と、イヌが言いました。
「わたしだってどんなにかわいがってもらったか。もうタマゴをうまなくなったのに、だんなさんはちゃんとエサをくれるもの」
と、ニワトリが言いました。
 ネコもウマも負けじと、だんなさんにかわいがってもらったことを話しました。
「おらたち、どうしてもだんなさんに恩返しをしなくちゃなあ。・・・なにかいい方法はないものか?」
と、ウマが言うと、イヌが言いました。
「むこうのとうげに一軒家(いっけんや)があって、ドロボウたちが住んでいるというぞ。あいつらをおどかしてお金をもらうのはどうだろう?」
「そいつはいい。よし、みんなで出かけよう」
 ウマもネコもニワトリも、すぐにさんせいしました。
 三匹と一羽は夜になるのを待って、とうげの一軒家に出かけました。
 こっそりと中をのぞいてみると、ドロボウたちはお金の山を前にして酒を飲んでいました。
 ウマはみんなを集めて、小さな声で作戦を話します。
「いいな。それじゃいくぞ」
 ウマがしょうじの前に立つと、そのせなかにイヌが乗り、イヌのせなかにネコが乗り、ネコのせなかにニワトリが乗りました。
「よし、せいの!」
 三匹と一羽は、いっせいになきました。
「ヒヒーン! ワンワン! ニャーオ! コケコッコー!」
 さあ、ビックリしたのはドロボウたちです。
 奇妙な声のする方を見たら、しょうじにバケモノのかげがうつっているのです。
「ひゃあー! バ、バケモノだあー!」
 ドロボウたちはお金をほうりだしたまま、われ先にと逃げていきました。
 そのすきに、ネコとウマとイヌとニワトリは、ドロボウのお金をのこらずふくろにつめて、大喜びで家にもどってきました。
「だんなさん、どうぞこの金を使ってください。おらたちのおんがえしです」
「おおっ、ありがとう、本当にありがとう」
 だんなさんは動物たちのおかげで、屋敷も田んぼも畑も売らなくてすむようになりました。
 そこでネコとウマとイヌとニワトリは、もとどおりのしあわせな毎日を送ったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 砂糖の日
きょうの誕生花 → ルピナス(のぼりふじ)
きょうの誕生日 → 1975年 山田花子 (タレント)

きょうの新作昔話 → ばめんの猫
きょうの日本昔話 → 八人の真ん中
きょうの世界昔話 → 動物のことば
きょうの日本民話 → ドロボウを追い出したおばけ
きょうのイソップ童話 → カメとワシ
きょうの江戸小話 → 外のほうがまし

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3月9日の日本民話 美しい山姫

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話

3月9日の日本民話

美しい山姫

美しい山姫
岡山県の民話岡山県情報

 むかしむかし、備前の国(びぜんのくに→岡山県)に一人の猟師がいました。
 ある日の事、けものを追うのに夢中で、あちこち走りまわっているうちに、どんどん山奥へ入り込んでしまい、道に迷ってしまいました。
「さて、これはこまった事になったぞ。この山は夜になると化け物が出ると聞くからな」
 猟師が草木をわけて進んでいくと、ふいにうしろで人の気配がしました。
 ふり返ってみると、なんと一人の娘が立っていて、ニッコリとほほえんでいるではありませんか。
 年は二十才ほど、まるで絵からぬけ出たような美人で、顔はすきとおるように白く、肩までたらした黒髪はつややかで、花がらの着物もめずらしく、あふれるような色気があります。
 いくらなんでも、こんな山奥にこんな娘がいるはずありません。
(もしかして、人に姿を変えた化け物では?)
 男はすばやく鉄砲を持ちなおすと、娘の胸をめがけて玉をうち込みました。
 ズドーン!
 ところが娘は、その玉をひょいと右手で受けとめると、牡丹(ぼたん)の花のような口びるにくわえて、ニッコリほほえむのです。
(まぎれもなく、こいつは化け物だ)
 男はあわてて鉄砲に玉を込めて、二発目を打ち込みました。
 ズドーン!
 それでも娘は顔色一つ変えず、今度は左手でその玉を受けとめると、いかにも楽しそうに笑うのです。
 さすがの男もこわくなり、その場に鉄砲を投げすててかけ出しました。
 やっとの事で山から出ることができましたが、思い出すだけでも、体がブルブルとふるえます。
 その夜、物知りで有名な近所の老人のところへ行って、今日の出来事を話しました。
「キツネやタヌキなら、もっと悪さをするはずだし、山姥(やまんば)が化けたにしては、あまりにもきれいすぎる」
 すると老人は、男に言いました。
「それは山姫(やまひめ)というものじゃ。めったなことではあえぬ妖怪(ようかい)だが、それはそれは美しい姿だというぞ。べつに悪さをするわけではなく、おとなしくしていれば宝物をくれるという話じゃ」
「なんと。そうとわかっていれば、鉄砲などうつのではなかった。まことに残念なことをした」
 男はひどくくやしがり、それから何度も同じ山へ出かけて見ましたが、ついに山姫にあうことは出来ませんでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → レコード針の日
きょうの誕生花 → あせび
きょうの誕生日 → 1959年 バービー (人形)

きょうの新作昔話 → 永平寺(えいへいじ)の五百羅漢(ごひゃくらかん)
きょうの日本昔話 → 空き家でおどるネコ
きょうの世界昔話 → 旅にでた神さま
きょうの日本民話 → 美しい山姫
きょうのイソップ童話 → 牛追いとヘラクレス
きょうの江戸小話 → 走る名人

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3月8日の日本民話 テングの鼻いれ穴

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話

3月8日の日本民話

テングの鼻いれ穴

テングの鼻いれ穴
栃木県の民話栃木県情報

 むかしむかし、日光(にっこう)には、たくさんのテングがすんでいました。
 ある年のこと、新しく日光をおさめる座主(ざす→一番位の高いお坊さん)が決まって、はるばる京の都からやってくるという知らせが日光にとどきました。
 修行者や土地の人たちも、新しい座主がやってくることを喜んで、むかえる準備にとりかかりました。
 そして日光の山にすむテングたちも、新しい座主を歓迎(かんげい)することにしました。
 そして位の高いテングたちが一列に参道(さんどう)にすわって、新しい座主をむかえることにしたのです。
 ところが、こまったことがおこりました。
 テングたちの高い鼻が地面にぶつかってしまい、すわって頭を下げることができないのです。
 まさか鼻を切り落とすこともできませんし、どうしたらよいかとテングたちはいろいろ相談をしました。
 そして、ある名案がうまれました。
 テングたちは参道のはしに深さが三十センチばかりの穴をいくつもほり、その穴の前にならんですわり、頭をふかくさげたときに穴の中に鼻が入るようにしたのです。
 こうしてテングたちは参道のはしに一列にならんですわり、うやうやしく頭をさげて新しい座主をむかえたのでした。
 今でも日光には、この穴のあとが残っているという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ミツバチの日
きょうの誕生花 → ニゲラ(くろたねそう)
きょうの誕生日 → 1939年 高木ブー (タレント)

きょうの新作昔話 → チョウチョウの姉妹の雨宿り
きょうの日本昔話 → エビの腰はなぜまがったか
きょうの世界昔話 → 三人兄弟
きょうの日本民話 → テングの鼻いれ穴
きょうのイソップ童話 → ヒツジ飼いと海
きょうの江戸小話 → つらの皮

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3月7日の日本民話 ネコとちゃんちゃんこ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話

3月7日の日本民話

ネコとちゃんちゃんこ

ネコとちゃんちゃんこ
鳥取県の民話鳥取県情報

 むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
 仲良しの二人ですが、二人だけの暮らしではさびしいので、町へいって子ネコを買ってきました。
「なんちゅう、かわいいネコだ」
「ほんにのう、お人形さんみたいじゃ」
 おじいさんもおばあさんも、まるで自分の子どものようにネコをかわいがりました。
 ある日の事、おじいさんが町へいくと、とってもかわいいちゃんちゃんこと、腹がけが売っていました。
「そうだ、これをうちのネコに着せてやったら、喜ぶかもしれないぞ」
 そこでおじいさんは、かわいいちゃんちゃんこと腹がけを買って帰りました。
 でもそれを見て、おばあさんが言いました。
「おじいさん、いくらかわいいネコでも、ちゃんちゃんこや腹がけなんかしてはおかしいですよ」
「いいや、そんな事はない」
「いいえ、おかしいですよ」
 すると、さっきから二人の顔を見くらべていたネコが、おばあさんのひざの上に乗っかると、
「ニャーウ」(似合う)
と、ないたのです。
「そうかい、そうかい。お前がそう言うのなら、着せてやるよ」
 おばあさんはネコに腹がけをさせ、ちゃんちゃんこを着せてやりました。
 すると、ほんとによくにあって、前よりもうんとかわいいネコになりました。
 まあ、ペット好き人は、誰でもこんな感じです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 消防記念日
きょうの誕生花 → カンパニュラ(ふうりんそう)
きょうの誕生日 → 1957年 オール阪神 (漫才師)

きょうの新作昔話 → お姫さまと松の木
きょうの日本昔話 → ばか坊主
きょうの世界昔話 → 命のランプ
きょうの日本民話 → ネコとちゃんちゃんこ
きょうのイソップ童話 → 自分のかげにとくいになったオオカミとライオン
きょうの江戸小話 → 字のよめぬ犬

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3月6日の日本民話 髪の長い娘とナマズ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話

3月6日の日本民話

髪の長い娘とナマズ

髪の長い娘とナマズ
群馬県の民話群馬県情報

 むかしむかし、ある村に、平次郎(へいじろう)というお百姓(ひゃくしょう)がすんでいました。
 平次郎には二十二歳になる娘がいましたが、なかなか嫁のもらい手がなくてこまっています。
 それというのも、この娘は子どものころから髪をのばしつづけ、その長さといえば、地面にずるずるとひきずるほどだったからです。
 ある年のこと、娘は病気になって死んでしまいました。
 娘は自分が死んでも、けっして髪を切らないでほしいといっていたので、平次郎は長い髪をそのままにして、お墓(はか)にうめました。
 それからしばらくして、家族や親戚(しんせき)たちが娘のお墓の前に集まりました。
 みんなが墓まいりをしていると、とつぜんお墓がグラグラと動きはじめたのです。
 みんながビックリしてその場からはなれると、お墓がズブズブと土の中に沈んでいき、深さが十メートル、周囲が三十メートルほどもある大きな穴ができたのです。
 やがてこの穴の底から水がわきだして、池になりました。
 何年かすると、この池から長いひげのあるナマズがたくさんとれるようになりました。
 このナマズは、髪の長い娘の生まれ変わりだと言われています。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → スポーツ新聞の日
きょうの誕生花 → 木立性ベゴニア
きょうの誕生日 → 1984年 ベッキー (タレント)

きょうの新作昔話 → 釣り舟清次のお札
きょうの日本昔話 → うんのいいてっぽううち
きょうの世界昔話 → イーダちゃんの花
きょうの日本民話 → 髪の長い娘とナマズ
きょうのイソップ童話 → しっぽを切られたキツネ
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3月5日の日本民話 観音さまと殿さま

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話

3月5日の日本民話

観音さまと殿さま

観音さまと殿さま
静岡県の民話静岡県情報

 むかしむかし、浜名湖(はまなこ)の近くの海で、不思議な事がおこりました。
 それは夜になると、まっ暗な沖の海の中で、何かが明るく光るのです。
「あれは、なんじゃろうな?」
「気味がわるいのう。何かよくない事でもおこるのかのう?」
 漁師たちは毎晩浜辺へでて、心配そうに沖をみつめていました。
 何度も船をだして調べてみましたが、どうして光るのかわかりません。
 ためしに、大きなアミを海の底までおろしてみましたが、アミにかかってくるものは何もありませんでした。
 それでもあきらめずに、沖でアミをひいていると、三日目にアミがズッシリと重くなりました。
 力をあわせてアミをひきあげると、なんと木ぼりの古い観音(かんのん)さまがあがってきたのです。
 不思議な光を放っていたのは、この観音さまだったのです。
 村の人たちはお寺の和尚(おしょう)さんと相談をして、見はらしのいい、近くの汐見坂(しおみざか)にお堂をつくってまつりました。
 さて、ある年の春です。
 江戸(えど)から東海道(とうかいどう)を下って広島に帰る殿さまが、汐見坂の近くに宿をとりました。
 すると夢の中に、観音さまが現れて、
「いますぐ、この地をはなれよ。大きな災(わざわ)いがせまっている」
と、いうのでした。
 おどろいて目をさました殿さまは、すぐに旅のしたくを命じました。
「殿、この夜中に出発とは、どうなさいました?」
 お供の者たちがビックリしてたずねると、殿さまは夢の話をして、
「いそげ! 何をしておる!」
「しかし、たかが夢の事で、こんな夜中に」
「信じない者は残るがよい!」
 そういうと、わずかなお供をつれて旅立ちました。
 そしてそれから何時間もしないうちに、はるか沖合いから、大津波(おおつなみ)がおしよせてきたのです。
 殿さまの一行から話をきいた村の人たちも、たくさん逃げだしましたが、殿さまにしたがわなかった多くの人たちは、大津波にのみこまれてしまったのです。
 この事があってから、汐見坂の観音さまは、多くの人たちからあがめられるようになりました。
 夢のお告げで命をすくわれた広島の殿さまは、感謝のしるしとして観音さまに、狛犬(こまいぬ)と灯籠(とうろう)をおくりましたが、それを届ける者たちが何をまちがえたのか、ほかのお寺へ持っていってしまいました。
 広島の殿さまがおくった狛犬と灯籠は、今もまちがえたお寺にあるという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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きょうの誕生花 → くんしらん
きょうの誕生日 → 1957年 北条司 (漫画家)

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3月4日の日本民話 嫁さんになったイチョウの木の精

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3月4日の日本民話

嫁さんになったイチョウの木の精

嫁さんになったイチョウの木の精
宮城県の民話宮城県情報

 むかしむかし、ある村に、若い木こりがお母さんと一緒に住んでいました。
 ある日の事、今まで行ったことのない山へ行き、道にまよってしまいました。
 どうしようと思いながら歩いていると、遠くのほうに家のあかりが見えました。
 木こりが大喜びしてあかりのほうへ近づいて行くと、山の中とは思えないほどりっぱな家がたっていて、中から美しい娘さんが出てきました。
「帰り道がわからなくてこまっています。今夜一晩とめてください」
 木こりがたのむと、娘さんは、
「なんのおかまいもできませんが、どうぞえんりょなくとまっていってください」
と、言いました。
 娘さんはおやじさんと二人で住んでいて、二人とも木こりをしんせつにもてなしてくれました。
 見れば見るほどきれいな娘さんで、木こりはこの娘さんがすっかり気に入ってしまいました。
 そこで思いきって、おやじさんにたのんでみました。
「どうか娘さんを、おらの嫁にください」
 するとおやじさんも、木こりが気に入り、
「大事にしてくれるなら、娘をあげよう」
と、言ってくれたのです。
 木こりはとびあがって喜び、次の日、娘さんをつれて家に帰っていきました。
 嫁になった娘さんは、気だてがよくて、大変な働き者でした。
 木こりもお母さんもうれしくて、毎日が夢のようにすぎていきました。
 でもどういうわけか、娘さんの体はいつもつめたくて、まるで木にふれているみたいです。
 ある年の事、碁(ご)の好きな殿さまが、碁盤(ごばん)をつくることになり、
《見事なイチョウの碁盤をつくったものには、ほうびをつかわす》
と、いうおふれを出しました。
 それを聞いた木こりたちは、いっしようけんめいイチョウの木をさがしました。
 でも碁盤にできそうな木は、なかなか見つかりません。
 ところがこの若い木こりは、娘さんの住んでいた山の中で大きなイチョウの木を見つけました。
 木こりはよろこんで、そのことを嫁さんに話しました。
 すると嫁さんは、青くなり、
「あのイチョウの木を切るなんてとんでもない! ほうびはほしくないから、やめてください!」
と、言いました。
 それでも木こりはほうびがほしくて、その夜、嫁さんの止めるのも聞かずに飛び出して行きました。
「よしよし、これほど見事な木なら、すごい碁盤ができるぞ」
 木こりはさっそく、木を切りはじめました。
 一晩かかって、やっと切り倒すと、その木を運びだすため家に戻ってきました。
 ところがどうしたのか、嫁さんの姿がありません。
 目をまっ赤になきはらしたお母さんが、ふとんの前でボンヤリとすわっています。
「どうした? おっかさん」
 するとお母さんは、なみだを流して言いました。
「お前が出かけてから、嫁がひどく苦しみだしてな。ふとんに寝かせてせなかをさすってやったが、みるみる細くなって、とうとう消えてしまったんじゃ」
「・・・もしや」
 木こりも、ないてくやしがりました。
 嫁さんは、イチョウの木の精だったのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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きょうの誕生日 → 1961年 浅野温子 (俳優)

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きょうの日本民話 → 嫁さんになったイチョウの木の精
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3月3日の日本民話 カエルの恩返し

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3月3日の日本民話

カエルの恩がえし

カエルの恩返し
香川県の民話香川県情報

♪ 朗読再生

 むかしむかし、ある村に、おばあさんと美しい娘が二人でくらしていました。
 ある年の田植えの季節に、おばあさんは町へ買いものにでかけました。
 帰りに田んぼのあぜ道を歩いていると、ヘビがカエルを追いつめて、今にも飲み込もうとしています。
「これこれ、何をする。許しておやり。ほしいものがあれば、わしがやるから」
 カエルをかわいそうに思っておばあさんが言うと、ヘビはおばあさんの顔を見あげながら言いました。
「それなら、娘をわしの嫁にくれるか?」
 おばあさんは、ヘビの言う事などとあまり気にもとめずに、
「よしよし。わかったから、カエルを逃がしてやるんだよ」
と、返事をしてしまったのです。
 すると、その年の秋もふかまったころ、若い(さむらい)が毎晩、娘の部屋へやってきて、夜がふけるまで娘と楽しそうに話していくようになったのです。
 そんなある日の事、一人の易者(えきしゃ)が家の前を通りました。
 おばあさんは易者を呼びとめると、娘には内緒で、毎晩のようにやってくる若い侍の事を占ってもらいました。
 すると易者は、こんな事を言いました。
「ほほう。その若い侍の正体はヘビじゃ。ほうっておくと、娘の命はなくなる。娘を救いたいのなら、裏山の松の木にワシが卵をうんでおるから、その卵を侍に取ってもらって、娘に食べさせるんじゃな」
 おばあさんはビックリして、この話を娘にしました。
 娘もおどろいて、その晩やってきた若い侍に言いました。
「実は最近、とても体がだるいのです。元気をつけるために、裏山の松の木に巣をつくっているワシの卵を取ってきて食べさせてくださいな」
「よしよし、そんな事はたやすい事よ」
 次の日、若い侍は裏山へいって、ワシの巣がある高い木にのぼっていきましたが、そのときいつの間にか若い侍はヘビの姿になっていたのです。
 そして木をよじのぼって、巣の中にある卵を口にくわえたとたん、親ワシがもどってきました。
 親ワシはするどいくちばしで、大事な卵をくわえたヘビを何度もつつきました。
 そしてヘビは頭を食いちぎられ、血だらけになって木から落ちていきました。
 そのころ、あの易者がまたおばあさんの前に現われると、おばあさんに頭を下げて言いました。
「実はわたしは、いつぞや田んぼのあぜ道で命をすくわれたカエルなのです。娘さんの体には、まだヘビの毒が残っております。これからは毎年、三月三日の節句(せっく)にお酒の中に桃の花びらを浮かべてお飲みください。そうすればヘビの毒ばかりではなく、体にたまったどんな毒もみんな消えて、きれいになりますから」
 そういうと目の前の易者の姿はたちまち消えてしまい、一匹のカエルが庭先の草むらの中へ、ピョンピョンと飛んでいったのです。
 桃の節句で、お酒の中に桃の花びらを浮かべて飲むようになったのは、この時からだという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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3月2日の日本民話 龍神さまの掛軸

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3月2日の日本民話

龍神さまの掛軸

龍神さまの掛軸
茨城県の民話茨城県情報

 むかしむかし、ある村の平吉(へいきち)という男が、一本の掛軸(かけじく)を手に入れました。
 この掛軸にえがかれているのは、雷のイナズマの中を天にのぼる墨絵(すみえ)の(りゅう)でした。
「この龍はのぼり龍といって、天にかけのぼる勢いがあるので、とても縁起(えんぎ)の良い絵なんだ。持っていると、きっと良いことがあるにちげえねえ」
と、平吉は一人でよろこんでいました。
 そしてこの掛軸を床の間にかけて、野菜や米と、毎朝くみたて水をさかずきに入れて、おまいりしているのでした。
 ある朝のこと、いつものようにさかずきの水を取りかえようとすると、水がすっかりなくなっているのに気がつきました。
 はじめはだれかがこぼしたのだろうと、あまり気にしませんでしたが、次の日も、その次の日もなくなっているのです。
「まさか、この龍神(りゅうじん)さまは水を飲まねえだろう。なにしろこの体だ、もし飲むとすれば少なすぎる。・・・でも、もしそうなら、少し大きい茶わんにかえてやるとするか」
と、冗談(じょうだん)のつもりで、一回り大きな茶わんに水を入れることにしたのです。
 ところが次の朝、茶わんを見ると、水はたしかになくなっていたのです。
 おどろいて家の者たちに聞いても、だれも知らないといいます。
「龍神さまが飲んだとすれば、この龍は生きていることになる。・・・まさかな。きっと、ネズミかネコが飲んだにちがいない。・・・でも、もしもと言うことがあるな」
 その日の夜、平吉は寝ないで見張っていたのですが、次の朝、いつのまにか水がなくなっていたのです。
「しまった、いつの間に! ・・・よし、見ていろ!」
 そんなことが毎日続いたのですから、平吉の目は血走り、ほおはくぼみ、まるで病人のような顔つきになりました。
 さて、ある夜のことです。
 平吉が今日もがんばっていると、うす暗いあんどんの光りを受けて、龍神さまが長い舌で水をなめている姿がボンヤリと見えたのです。
 平吉はビックリして、その日から寝込んでしまいました。
 それで心配した家の人は、平吉にないしょで、この掛軸を別の人にゆずってしまったのです。
 この掛軸をゆずり受けたのは、利平次(りへいじ)という男です。
 利平次は平吉の事は何も知りませんから、この掛軸を神だなのわきに下げると、うれしそうに毎日ながめていました。
 そのころ村は、日照りつづきでこまっていました。
 利平次は龍神さまは雨ごいの神であると聞いていたので、ある日、だれにも見られないようにして、
「どうぞ、雨を降らせてください。せめて、おらの田畑だけでも」
と、自分勝手な願いごとを言って、お神酒(おみき→神前にささげるお酒)をあげていのりました。
 するとその日の夕方、空はにわかに暗くなり、激しい雨とカミナリがおこったのです。
 昼寝から目をさました利平次は、滝のようなすさまじい雨とカミナリのあまりのすごさのに、その場で気を失ってしまい、そのまま寝込んでしまったのです。
 この話は、村中にひろがり、
「あの掛軸を一人で持つと、とんでもねえことになるだ」
と、村人が集まって、この掛軸を村の神社におさめることにしました。
 そしてその掛軸を龍神さまとして、うやまうことにしたのです。
 すると寝込んでいた二人の病人も、日に日に良くなっていったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 遠山の金さんの日
きょうの誕生花 → アイスランド・ポピー
きょうの誕生日 → 1956年 原順子 (歌手)

きょうの新作昔話 → 安国寺の桜
きょうの日本昔話 → 岩になった鬼
きょうの世界昔話 → 四人の子ども
きょうの日本民話 → 龍神さまの掛軸
きょうのイソップ童話 → (うれしいこと)と(いやなこと)たち
きょうの江戸小話 → トンビとカラスの話

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3月1日の日本民話 目玉だらけ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話

3月1日の日本民話

目玉だらけ

目玉だらけ
東京都の民話東京都情報

 むかしむかし、江戸のある町に多吉(たきち)という、若いたたみ職人がいました。
 多吉は大変な働き者で、朝早く家を出て夜おそくまで、親方のところでいっしょうけんめいたたみをつくっていました。
 ある日の事、夜ふけ近くまで働いた多吉は、親方のところでお酒をふるまわれて、ほろよいきげんで長屋(ながや→今で言う、アパート)へかえっていきました。
♪春じゃ、春
♪月もおぼろの
♪なんとやら
 多吉はいい気分でうたいながら、町はずれの橋のところまで歩いてきました。
 すると橋のたもとのやなぎの木の下に、子どもをだいた女の人がジッと川を見つめて立っていました。
(おおっ、こいつはいい女じゃ。しかしいまごろ、こんなところでなにをしているんだ? ・・・おい、まさか、身なげしようというんではあるまいな)
 足をとめてのぞきこむと、女の人はふりむいて多吉に声をかけてきました。
「すみません。ちょっと、お手をかしていただけませんか。子どものたびがぬげそうなので、なおしていただきたいのです」
 顔も美しければ、声も美しい、ほれぼれとするような若い女の人です。
「それぐらい、おやすいご用です。ほほう、かわいいお子さんだ」
 子どもの顔はお酒をのんだようにまっ赤で、目もつりあがり、みけんに三本のたてじわがあります。
 正直に言うと、ちっともかわいくないのですが、多吉はおせじをいって子どものたびをなおそうとしました。
 そしてきもののすそをまくりあげると、なんと子どもの足は毛むくじゃらで、毛のなかにはカエルのタマゴみたいな小さな目玉が、うじゃうじゃとあったのです。
 そしてその目玉が、一度に多吉の事をにらみました。
「うぎゃー! でたぁー!」
 多吉はビックリしてのけぞると、わき目もふらずに逃げ出しました。
 橋をわたってダンゴ屋のかどをまがり、地蔵さんの前を走りぬけて、やっとお寺の前まできて、
「ふうーっ」
と、大きなため息をつきました。
 ちょうどお寺の前に知りあいの和尚(おしょう)さんがたっていたので、多吉は今見たバケモノの話しをしました。
「ああっ、和尚さんがいて助かりました。実はいま、あそこの橋のたもとのやなぎの木の下で、目玉ばかりのバケモノにであったのです」
 多吉の話しをきいていた和尚さんは、カラカラと笑いながら、
「それは大変じゃったな。して、そのバケモノはこんなバケモノじゃ、なかったですかな?」
 そういっていきなり、ころものすそをまくりあげました。
 和尚さんの毛むくじゃらの足とおしりは、小さな目玉だらけだったのです。
 その目玉が多吉の顔をみて、ニヤリと笑い出しました。
「うーん!」
 あまりの事に、多吉はうなり声をあげると、そのまま後ろにひっくりかえって気絶してしまったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 豚の日
きょうの誕生花 → エリカ
きょうの誕生日 → 1952年 峰竜太 (俳優)

きょうの新作昔話 → 泡原(あわら)の長者
きょうの日本昔話 → ツルのおんがえし
きょうの世界昔話 → 青い鳥
きょうの日本民話 → 目玉だらけ
きょうのイソップ童話 → 馬とロバ
きょうの江戸小話 → 目をさます

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