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2009年1月

1月31日の日本民話 幽霊のたのみ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 1月の日本民話

1月31日の日本民話

幽霊のたのみ

幽霊のたのみ
大阪府の民話大阪府情報

 むかしむかし、大阪の上本町(うえほんまち)に、夜になると若い女のゆうれいが現れて、道行く人々を追いかけてくるという、うわさがたちました。
 ですから、町の人たちは日がくれると早やばやと戸じまりをすませて、家から外へ出ないようにしていました。
 ある夜ふけの事です。
 用事で出かけていた十作(じゅっさく)という男が、五平(ごへい)というお供の者をつれてかえってくると、
「お待ちください、お待ちください」
と、後ろからよびとめる者がありました。
 若い女の声ですが、十作がふり向いてみても、だれの姿も見えません。
「はて。おかしいな? だれもおらぬぞ。お前にはきこえなかったか?」
 十作が後ろにいる五平にたずねると、五平はブルブルとふるえながら、
「はい、きこえました。たしかにきこえました。うらめしそうな女の声です。町の者たちがうわさをしている幽霊(ゆうれい)かもしれません」
「うむ。声はすれども、姿は見えぬか。わしのような無骨(ぶこつ→れいぎをしらないもの)な者には、幽霊も姿を見せぬのだろう」
 十作はそんな冗談をいいながら、夜道を歩き出しましたが、
「お待ちください、お待ちください」
 また、よぶ声がきこえたのです。
 ふりかえると、道のまん中に、年のころは二十歳ばかりの女の人がたっていました。
 顔は青ざめて髪をみだし、腰から下は暗くてよく見えません。
 十作はあまりおどろきませんでしたが、五平は、
「わっー!」
と、声をあげて、十作の後ろにかくれました。
「おぬし、何の用があってよびとめるのじゃ。動くな! それより近くによれば、きりすてるぞ!」
 十作は、腰のに手をかけながらいいました。
「お待ちください。わたしはこの近くの者です。あるお店のだんなさまと好きあうようになりましたが、その方の奥方(おくがた→奥さん)にうらまれて殺されたのです。夜ごとこのあたりを歩いては、人をよぶのですが、みな、わたしの姿におどろいて逃げてしまいます。でも、あなたさまは足をとめてくださり、うれしゅうございます。どうか、わたしの力になってください」
 若い女のゆうれいは、青白いなみだを流しながら言いました。
「話はわかったが、力になってくれとはどういうことじゃ? まさかわしに、その奥方に仕返しをしてくれと言うのではなかろうな。そんな事は、わしには何の関係もない事。ごめんこうむる」
「・・・・・・」
「もう、だれもうらまないほうがよい。ここであったのも何かの縁。わしがそなたをねんごろにとむらってやるから、こんなところに出て来るなよ」
 十作がいうと、女のゆうれいはうれしそうに、
「それは、ありがたいことです。けれどもその前に、お頼みしたいことがあるのです。実はわたしのおなかに子がやどっています。わたしは死んでいるのに、おなかの子は元気にそだっているので、だんだん苦しくなってきます。どうかその刀で、わたしのおなかをやぶって子どもを出して、わたしを楽にさせてください」
「なんと・・・」
 さすがの十作も、これにはおどろきました。
 そして、ゆうれいのおなかに目をやりました。
 腰から下は暗くてよくはわかりませんが、そう言われれば、なんとなくおなかのあたりがふくらんでいるようにも思えます。
「しかし、そんな事は頼まれても、わしにはできぬ」
 十作はことわると、そのまま歩きさろうとしました。
 すると若い女のゆうれいは、それこそうらめしそうなほそい声で、
「この事、かなえてくださらなければ、これからはいつまでも、あなたさまをうらみますよ」
と、いうのです。
 たまたま出会った幽霊の身の上をきいてやったばかりに、うらまれて、これからもずっとつきまとわれるなんて、そんなバカげた話しはありません。
 これこそ、さかうらみというものです。
 十作ははらがたちましたが、でも考えてみれば、気の毒な気もします。
「よかろう。その願いかなえてやろう」
 十作は決心をすると、わきざしをぬいて、幽霊のそばへよっていきました。
 そして、半分見えないおなかのあたりにわきざしのきっさきをつきいれて、ぐいと横にひきました。
 空気をきるようで、なんの手ごたえもありません。
 あいては幽霊ですから、血もでません。
(きっている気がせんが、これでよいのか?)
 ところが若い女の幽霊は、ほっとした顔をしながら、
「ああ、ありがとうございました。これですっかり楽になりました」
と、いうと、かき消すようにやみの中へきえていきました。
「うむ、じょうぶつせいよ」
 十作は刀をしまうと、お供の五平をつれて家へと帰っていきました。
 その日以来、十作はこの道を通ることはありませんでしたが、その後このあたりでは、元気のいい赤んぼうのなき声と、その子をあやす若い女の声がきこえてくるという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → シューベルト誕生日
きょうの誕生花 → しろたえぎ
きょうの誕生日 → 1977年 香取慎吾(歌手)

きょうの新作昔話 → あぐりこキツネ
きょうの日本昔話 → 泣きべそしゃれこうべ
きょうの世界昔話 → 赤ずきんちゃん
きょうの日本民話 → 幽霊のたのみ
きょうのイソップ童話 → キツネとツル
きょうの江戸小話 → あんどん

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1月30日の日本民話 待ちきれずに

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1月30日の日本民話

待ちきれずに

待ちきれずに
京都府の民話京都府情報

 むかしむかし、京の都の五条堀川(ごじょうほりかわ)に、八郎兵衛(はちろべえ)という米屋がいました。
 八郎兵衛には宗一郎(そういちろう)という十六才になる息子をはじめ、十人の子どもがいましたが、おくさんは十人目の子どもが生まれてまもなく、病気でなくなってしまいました。
 ある時、八郎兵衛は子どもたちにるすをたのみ、二日がかりで大津(おおつ→滋賀県)まで、でかけることになりました。
「しっかりたのんだぞ。びんぼう米屋で、とられるものなどなにもないが、夜は戸じまりをきちんとな」
 八郎兵衛は一番上の宗一郎によくいいきかせて、大津へでかけていきました。
 るすをあずかる宗一郎は、夜になると近所の子どもたちを家によんで、みんなで百物語をはじめました。
 ですが宗一郎の家には、百本ものろうそくなどありません。
 あつまった子どもたちは、ろうそくのかわりにあんどんの灯で百物語をはじめました。
 話しが四十、五十とかたられていくうちに、こわくなった子どもたちは、一人さり、二人さりして、八十話がすぎるころには、近所の子どもばかりではなく、宗一郎の弟たちもほかの部屋へいって、ふとんをかぶってねてしまいました。
 のこっているのは、宗一郎だけでした。
 もう十数話かたれば、百になるのです。
 百の話しをしたあとに、どんな事がおこるか楽しみにしていた宗一郎はがっかりです。
(だれもいなくなっては、しかたがない。それならあとは、自分一人でかたってみよう、何が出るか楽しみだ)
 宗一郎はその前に手あらいにいっておこうと、うら口から出て外の便所(べんじょ)へいきました。
 そしてどんな話しをしようかと考えながら、家の中へもどろうとしました。
 すると、うしろから白くてほそい手がのびてきて、いきなり宗一郎の足首をつかんだのです。
 宗一郎はビックリ。
「な、なっ、なにものだ!」
 するときゅうに生あたたかい風がまきおこって、目の前に赤ちゃんをだいた若い女が現れました。
「百物語がおわるのを待っていましたが、どうやら百までかたられそうもないので出てきました。わたしはこの近くへ嫁にきたもので、あなたの家でお米を買ったこともあります。実は五年前、この子をうもうとしましたが、どうしたことかお産のとちゅうで、この子と一緒に死ぬ事になってしまったのです。けれども、だれもわたしたちをとむらってくれません。いまだにこうしてこの子をだいたまま、やみの中をさまよっているのです。どうか、わたしたちが成仏できるように、千部(せんぶ)のお経をよんでください」
 話しをきいて宗一郎は気の毒だとおもいましたが、けれども千部のお経をよめとは大変な事です。
「話しはわかりましたが、そんな事はとてもできません。わたしの家はまずしい米屋で、まだ小さなものがたくさんいます。そのめんどうをみたり、家や店のしごともあります。千部のお経をよむひまなど、とてもありません。ですが毎日、母に念仏をとなえていますので、それと一緒ではだめでしょうか?」
 宗一郎の言葉に、赤ちゃんをだいた女のゆうれいは首を横にふりました。
「いいえ、千部のお経でなければだめなのです。・・・あの、それではそこにあるカキの木の根もとをほりかえして下さい。わたしが少しずつたくわえたお金があります。それをさしあげますから、どうか千部のお経をよんでください。お願いです」
 そういうと、赤子をだいた女のゆうれいは姿を消してしまいました。
 次の日、父親の八郎兵衛がもどってくると、宗一郎はすぐに昨日の話しをしました。
 そして父親と二人でカキの木の根もとをほってみると、本当にお金が出てきました。
と、いっても、お金はとてもわずかなもので、くらしのたしなどにはなりませんが、八郎兵衛親子はそのお金をありがたくいただくと、ふしあわせだった若い親子のために、お店を休んで千部のお経をよんでやりました。
 この事があってからか、八郎兵衛の米屋はとてもはんじょうして、この辺りでは一番大きな米屋になったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 3分間電話の日
きょうの誕生花 → ペペロミア
きょうの誕生日 → 1958年 石川さゆり(歌手)

きょうの新作昔話 → 塩買い大黒
きょうの日本昔話 → 大いびき善六
きょうの世界昔話 → ワニの贈り物
きょうの日本民話 → 待ちきれずに
きょうのイソップ童話 → どちらが子どもをよけいうむかで、ケンカするブタとイヌ
きょうの江戸小話 → 金箱のかぎ

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1月29日の日本民話 キツネの倉

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1月29日の日本民話

キツネの倉

キツネの倉
鹿児島県の民話鹿児島県情報

 むかしむかし、あるところに、一人の男がいました。
 男が荒地(あれち)を畑にしようと、ほり起こしていたら、
「ガチン!」
と、クワが思いっきり石をたたいたのです。
「しまった!」
 クワがわれてしまったので、男はクワをなおしてもらうために鍛冶屋(かじや)へ行きました。
 その途中、手に棒を持った子どもたちが、捕まえたキツネを叩いていじめていたのです。
「こら、お前たち、やめねえか。キツネがかわいそうだろう」
「おらたちが捕まえたキツネだ、おらたちの勝手だろう」
 子どもたちは、キツネをいじめるのをやめません。
 そこで男は、
「なら、そのキツネをおらに売ってくれんか?」
 男はクワを鍛冶屋でなおしてもらうためのお金を子どもたちにやって、キツネを買いとりました。
 そしてキツネを子どもたちのいない所へ行って逃がしてやろうと思ったところで、ふと我にかえりました。
「おらは、何をやっているんじゃ。新しい畑を作るにはクワがいる、そのクワをなおしてもらうには、鍛冶屋にはらうお金がいる。でも、そのお金がなくなってしもうた。キツネがクワをなおしてくれるのならともかく。・・・こりゃ大変だ。キツネよ、悪いがそういう事だ」
 男はまた子どもたちのところへ行って、キツネを渡してお金を返してもらいました。
 すると子どもたちは、前よりもキツネをいじめるのです。
 それを見かねて、男はまた子どもたちのところへ行くと、
「やめてくれ、今度は本当に買うから」
と、またお金を渡して、キツネを買い戻しました。
 そしてキツネを山へ連れて行き、
「もう、二度と捕まるなよ」
と、言って、逃してやりました。
 数日後、男の家にあのときのキツネがやって来ました。
「この間はあぶないところを助けていただいて、ありがとうございました。お礼に何か差し上げたいと思います。私の家にはキツネの倉(くら)といって、何でも無い物は無いという倉があります。あなたの望みのものを好きなだけお持ち下さい」
と、いうので、男はキツネと一緒にキツネの倉へ行きました。
「これがキツネの倉です。どうぞ、中へ入って好きなものをとって下さい」
 喜んだ男が倉の中へ入っていくと、キツネが倉の戸をバタンと閉めました。
 そして大きな声で、
ドロボウだ! 倉にドロボウが入ったぞ!」
と、さけんだのです。
 そして、あちこちからたくさんの人が集まってきて、
「ドロボウは殺せー! ドロボウを殺すんだー!」
と、言うのです。
 倉に閉じこめられた男はビックリ。
「ちがう、ちがう、おらはドロボウでねえ」
と、いいましたが、外の人たちは聞いてくれません。
「ドロボウは殺せー! ドロボウを殺すんだー!」
 男はこわくなって、倉のすみっこでブルブルとふるえていました。
「だっ、だまされた。キツネにだまされたんだ」
 しばらくすると外の騒ぎがおさまって、倉の戸がガラガラと開きました。
 そしてさっきのキツネが、
「ビックリさせてすみません。さあ、クワでも着物でもお金でも、好きなものを持てるだけ持って、出てきてください」
と、言いました。
 男はわけがわからず、言われたまま、持てるだけの物を持って倉から出てきました。
「どうでした? さっき閉じこめられた感想は」
「恐ろしかった。生きた心地もしなかった」
 男がそう言ったので、キツネは満足そうにうなずくと、
「そうでしょう。実は私も先日、同じ思いをしました。あなたに助けてもらったときは、心の底から喜びましたが、その後でまた子どもたちに返されたときには、もう生きた心地はしませんでしたよ。そして再び助け出されたわけですが、あの時のことを考えると、今でも体がふるえます」
と、言ったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 南極「昭和基地」設営記念日
きょうの誕生花 → きんかん
きょうの誕生日 → 1977年 宝生舞(俳優)

きょうの新作昔話 → かぶと島
きょうの日本昔話 → 聴き耳ずきん
きょうの世界昔話 → 魔法のビール
きょうの日本民話 → キツネの倉
きょうのイソップ童話 → オオカミと馬
きょうの江戸小話 → けち自慢

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1月28日の日本民話 白竜湖の琴の音

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1月28日の日本民話

白竜湖の琴の音

白竜湖の琴の音
山形県の民話山形県情報

 むかしむかし、置賜平野(おきたまへいや→山形県)の村々は、日照りが続いてこまっていました。
 村人たちは山の神や水の神に火をたいて、何日も何日も雨ごいをしましたが、一てきの雨も降らずに、太陽が照りつけるばかりでした。
 こまりはてた庄屋(しょうや)さんが、巫女(みこ)のところへ出かけていって、水神(すいじん)さまに雨が降るようにお願いしてもらうことを頼みました。
 巫女が湖の岸辺の水神のほこらの前でお祈りをしたところ、しばらくして巫女の口を通じて、
「わしは湖に住む竜神(りゅうじん)じゃが、わしもそろそろ嫁が欲しい。村の中から嫁を選び、三日のうちに嫁入りをすれば雨を降らせよう」
と、お告げがあったのです。
 村人全員が庄屋さんのところへ集まり、どこの娘がよいかと話しあいましたが、自分の娘を嫁に出そうという者がおらず、いつまでたっても決まりませんでした。
 その時、こまりはてた村人たちの前へ庄屋さんの娘が進み出て、
「村の為なら、喜んで竜神の嫁になりましょう」
と、申し出たのです。
 急な事なので嫁入り道具が何もありませんが、娘の大切にしていた琴(こと)を持たせて、白い晴れ着姿の娘を村人たちは湖の岸辺まで見送り、泣き泣き村へひきかえした時、雷鳴(らいめい)がとどろいてザワザワと風がふくと、湖のまんなかにすさまじい水ばしらが立って、二匹の竜が天にかけ登って行ったのです。
 二匹のうち一匹の竜は、白い晴れ着姿の娘と同じく、まっ白な竜でした。
 まもなく、二匹の竜が登った空から大つぶの雨が降って、村は救われたのです。
 それから湖は白竜湖(はくりゅうこ)と呼ばれ、霧雨(きりさめ)の降る日には、湖の中から美しい琴の音がきこえてくるという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ダンスパーティーの日
きょうの誕生花 → レプトスペルマム
きょうの誕生日 → 1981年 乙葉(タレント)

きょうの新作昔話 → 浦島子(うらしまこ)
きょうの日本昔話 → 若返りの水
きょうの世界昔話 → ライオンのメガネ
きょうの日本民話 → 白竜湖の琴の音
きょうのイソップ童話 → ライオンとキツネとシカ
きょうの江戸小話 → とおれ

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1月27日の日本民話 カッパと殿さま

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1月27日の日本民話

カッパと殿さま

カッパと殿さま
熊本県の民話熊本県情報

 むかしむかし、カッパは遠い中国大陸の奥から、日本にやってきたといわれています。
 日本へやってきたカッパの大将は、九千坊(くぜんぼう)というカッパで、九千匹の子分(こぶん)をひきつれて海をわたり、九州の球磨川(くまがわ→熊本県南部の川で、長さ115キロメートル。富士川・最上川と共に日本三急流の一つ)にたどりついたのです。
 ある時、殿さまがかわいがっていたお付きの者が、カッパに川の中へひきずりこまれて死んでしまいました。
 殿さまは、はげしく怒って、
「カッパを一匹残らずつかまえて、みな殺しにしてやれ! 焼き殺そうが、煮てカッパ汁にしようが、さおにつるして干物にしようがかまわん!」
 殿さまの言葉をきいたカッパたちは、ふるえあがりました。
 殿さまはカッパがほかの地へ逃げないように、お坊さんにカッパ封じのお経を読ませて、川に毒の草を流させ、さらにカッパがきらいだというサルを集めて、逃げまどうカッパをつかまえさせるという、カッパ退治を計画したのです。
 これを知ったカッパの親分は、近くのお寺へとんでいって、和尚(おしょう)さんにとりすがりました。
「これからは、ぜったいに人には悪さをしませんから許してほしいと、殿さまにいってください」
 カッパの親分は、和尚さんに何度も何度も頭を下げました。
 これには和尚さんも心をうたれて、この事を殿さまにつたえました。
 すると殿さまも、
「・・・そうか。それでは、今度だけはゆるそう」
と、カッパ退治は中止になったのです。
 その後も、この地ではカッパのイタズラが何度かありましたが、
 カッパの親分は、
「イタズラをしたのは、きっとよその地から来たカッパでしょう。この地に住むカッパは、あれから一度もイタズラはしていません」
と、いったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 求婚の日
きょうの誕生花 → ヘリオトロープ
きょうの誕生日 → 1756年 モーツァルト (作曲家)

きょうの新作昔話 → 小判を運ぶネズミ
きょうの日本昔話 → たからばけもの
きょうの世界昔話 → お母さんがあんでくださったボウシ
きょうの日本民話 → カッパと殿さま
きょうのイソップ童話 → 矢にあたったワシ
きょうの江戸小話 → 千手観音

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1月26日の日本民話 送りオオカミ

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1月26日の日本民話

送りオオカミ

送りオオカミ
三重県の民話三重県情報

 むかしむかし、あるところに、伝次(でんじ)という名のおじいさんが住んでいました。
 おじいさんは山奥の谷間に、小さな畑をつくってたがやしていました。
 ところがせっかくできた作物も、イノシシが出て来て食い荒らすので、こまったおじいさんはイノシシの落ちる大きな落し穴を作ったのです。
 ある日の事、おじいさんが畑に行くと、落し穴に何か落ちています。
 見てみるとそれはイノシシではなく、大きなオオカミでした。
 おじいさんは穴の中へ下り、オオカミを助けだしてやりました。
 オオカミはおじいさんにお礼をいうと、それからはおじいさんが畑から帰るたびに、送ってくれるようになりました。
 またある日の事、今度はタヌキが落し穴に落ちて、助けを呼んでいます。
 おじいさんはタヌキを助けだしましたが、タヌキは助けてくれたおじいさんにかみついてきました。
 おじいさんはたいへん怒って、タヌキを殺してしまいました。
 それを見たオオカミがいいました。
「タヌ公はバカな奴だ、せっかく助けてもらったのにかみつく奴があるか、どうせかみつくなら、オオカミのおれにかみつけばいいものを、そうすればタヌ公はお山の大将になれたのに」
 これを聞いたイノシシは、
「おれのためにつくった落し穴に、オオカミやタヌ公が落っこちやがった」
と、いって、笑いがとまりませんでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 文化財防火デー
きょうの誕生花 → カロライナジャスミン
きょうの誕生日 → 1955年 所ジョージ(タレント)

きょうの新作昔話 → 親子地蔵
きょうの日本昔話 → アズキとぎ
きょうの世界昔話 → 花とお日さま
きょうの日本民話 → 送りオオカミ
きょうのイソップ童話 → デマデスの演説
きょうの江戸小話 → どろぼうのおあいそ

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1月25日の日本民話 もちのなる木

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1月25日の日本民話

もちのなる木

もちのなる木
長崎県の民話長崎県情報

 むかしむかし、あるところに、お金持ちの兄さんと貧乏な弟がいました。
 弟は朝から晩までいっしょうけんめい働きましたが、それでも貧乏なのです。
 そこで、兄さんのところへ行って、
「兄さん、お金を貸してください」
と、たのみました。
 でも、けちんぼうな兄さんは、
「お前なんぞに貸す金はない!」
と、弟を追いかえしてしまいました。
 弟は、くやしくてたまりません。
(なんとか、兄さんをやっつける手はないものか)
 あれこれ考えているうちに、いいことを思いつきました。
 弟は山へ行って形のいい木を見つけると、根からほりおこして家に持って帰りました。
 そのまま庭に植えると、家に残っている全ての米をむして、もちをつきました。
 お腹が空いていたので、思わず食べそうになりましたが、そこはがまんして、そのもちを山から持ってきた木の枝にくっつけました。
 そして、兄さんに聞こえるように、わざと大きな声で言ったのです。
「すごいすごい。木にもちがなったぞ!」
 弟のさわぐ声を聞いて、兄さんがやってきました。
 兄さんが見てみると、なんと木にたくさんのもちがなっています。
 兄さんは、もちのなる木がほしくなりました。
 そこで弟にたくさんのお金をわたして、もちのなる木をうばうように持って帰りました。
 さっそく木になっているもちをとってみると、まちがいなく、本物のもちです。
 兄さんはよろこんで、もちを焼いて食べました。
 そのうちに、もちはすっかりなくなりました。
「まあいい、そのうちもちがなるだろう」
 と、何日も何日も、木にもちが出来るのを待っていたのですが、もちはいっこうに出来ません。
 兄さんはとうとう腹を立てて、弟のところへどなりこんできました。
「このうそつきめ! あれっきりで後は、ただの一つもならないじゃないか!」
 すると弟は、すました顔で言いました。
「兄さんは、あの木になっていたもちをみんな食べたのかい? 一番てっぺんになっていた、一番大きなもちも」
「あたりまえだ」
「ああ、それじゃだめだ。その一番大きいもちは、親もちだよ。その親もちさえ食わなかったら、どんどん子どもをうんで、たくさんのもちがなったのに」
「・・・そう、そうだったのか」
 兄さんはガッカリして、とぼとぼと家に帰っていきました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 中華まんの日
きょうの誕生花 → プリムラ
きょうの誕生日 → 1938年 松本零士(漫画家)

きょうの新作昔話 → 切戸(きりど)の文珠(もんじゅ)と北野(きたの)の文珠(もんじゅ)
きょうの日本昔話 → 乙姫様のくれたネコ
きょうの世界昔話 → ホタルとオナガザル
きょうの日本民話 → もちのなる木
きょうのイソップ童話 → アシとオリーブの木
きょうの江戸小話 → たたかれても安心

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1月24日の日本民話 源治のタヌキ石

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1月24日の日本民話

源治のタヌキ石

源治のタヌキ石
三重県の民話三重県情報

 むかしむかし、百姓(ひゃくしょう)の源治(げんじ)の庭に、大きな石がありました。
 この石は大変重たいので、二、三人で力を合わせないとビクともしませんが、時には一人でも軽々と運べるという、不思議な石です。
 ある日の事、源治がこの石の上に腰をかけてひと休みしていると、その石がしゃべったのです。
「源(げん)さん、源さん、わしをこの庭にいつまでも置いておくれよ」
 それを聞いた源治は、気味がわるくなって
(こんなうす気味わるい石は河原(かわら)にでもほおってやるか、それともどこかの石と交換(こうかん)してもらおうか)
と、考えました。
 源治はとなり村の石屋(いしや)の岩八(いわはち)のところへ行って、
「岩八さん、わしの家の庭に大きな石があるが、引きとってくれんかね?」
と、いいました。
 岩八はすぐに、源治の家に行きその石を見に来ました。
「おや、一人で来たのかい? この石はとても一人や二人で持てませんよ」
と、源治がいいますと、岩八は
「どれどれ」
と、ためしに押してみると、石は簡単に動きました。
「見かけによらず軽い石だな。こんな石なら、わし一人でも大丈夫だ」
と、いって持ち上げようとすると、今度はビクともしません。
 それで三人の石屋を連れて来て、運んで行くことにしました。
「今度はもっと美しい石をかわりに持って来るから、楽しみにな」
と、いって岩八は帰って行こうとすると、その石が、
「源治の庭へ帰してくれ!」
と、大声でさけんだのです。
「ウヒャー! 石がしゃべった!」
 岩八はおどろいて、石をもとのところへ運び返したという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ゴールドラッシュの日
きょうの誕生花 → おもと
きょうの誕生日 → 1936年 市原悦子(俳優)

きょうの新作昔話 → 宝のしゃもじ
きょうの日本昔話 → 貧乏神と福の神
きょうの世界昔話 → 人間に飼われるようになったけもの
きょうの日本民話 → 源治のタヌキ石
きょうのイソップ童話 → ヘルメスと大地の神
きょうの江戸小話 → おそれながら、バーッ

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1月23日の日本民話 酔っぱらいタヌキ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 1月の日本民話

1月23日の日本民話

酔っぱらいタヌキ

酔っぱらいタヌキ
北海道の民話北海道情報

 むかしむかし、北海道の函館(はこだて)に、大きな料理屋がありました。
 このお店へ、一人の小太りの男が入ってきました。
 足元がフラフラしているところを見ると、もう、お酒を飲んでいるのでしょう。
 男ははきものをぬぐと、二階の座敷(ざしき)へ行こうと階段をあがっていきました。
 はきものをかたづけていた店の老人が、男の後ろ姿を下から見あげていました。
「だいぶ酔っておるな。だいじょうぶかのう。足元が・・・うん? あれはなんじゃ?」
 老人は、ビックリ。
 階段をのぼっていく男の足は、まるでけだもののような細い足で、ビッシリと灰色の毛がはえているのです。
 とても、人間の足には見えません。
「あっ、あれは、タ、タ、タヌキだー!」
 老人は、思わずさけびました。
 その声におどろいた男は階段から足をふみはずして、ゴロゴロと下まで落ちてくると、タヌキの正体をあらわしてしまいました。
 タヌキはあわてふためいて、そのまま外へ飛び出して行ったのです。
「あのタヌキは、酒のにおいをプンプンさせておったな。よっぽど酒が好きなんだろう」
 酔っぱらいタヌキのくさった渋柿(しぶがき)のようなにおいは、三日も四日も消えなかったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 電子メールの日
きょうの誕生花 → まんりょう
きょうの誕生日 → 1939年 千葉真一(俳優)

きょうの新作昔話 → テングの腕比べ
きょうの日本昔話 → カニのすもう
きょうの世界昔話 → キツネとネコ
きょうの日本民話 → 酔っぱらいタヌキ
きょうのイソップ童話 → ハチとヘビ
きょうの江戸小話 → カッパをつろう

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1月22日の日本民話 キツネのお礼

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 1月の日本民話

1月22日の日本民話

キツネのお礼

キツネのお礼
静岡県の民話静岡県情報

 むかしむかし、あるお寺の裏山に、何匹かのキツネがすんでいて、お寺から食べ物の残りをもらっていました。
 ある日の朝、一匹のキツネがお寺で飼っているニワトリをくわえて逃げるところを、庭のそうじをしていた小僧(こぞう)さんが見つけました。
「こらっ、なにをするんだ!」
 小僧さんがほうきをふりあげながら追いかけていくと、キツネはくわえていたニワトリを本堂(ほんどう)の前に置いて、逃げていきました。
 そこへ、和尚(おしょう)さんがやってきました。
 和尚さんは話をきくと、キツネが逃げていった裏山にむかって、大声でキツネをしかりつけました。
「おい、キツネども。よくわたしのいうことをきいておけ。お前たちは毎日のように寺から食べ物をもらっているからには、寺で飼っておるイヌやニワトリとは、寺のもの同士ではないか。仲間(なかま)をとって食おうとするとは、どういうつもりじゃ。こういうことをするなら、もうこの山にはおかぬ。近いうちに山狩りをして、お前たちを一匹残らず追いはらうから、そのつもりでおれ!」
 和尚さんはそういってから、本堂に入ってお経(きょう)を読みはじめました。
 それから、二日後のことです。
 小僧さんが墓地(ぼち)で、一匹のキツネが死んでいるのをみつけました。
 よく見てみると、ニワトリをとろうとしたあのキツネでした。
 寿命(じゅみょう)がつきたのか、やすらかな顔をしていました。
 それを聞いた和尚さんは、そのキツネを手あつくほうむってやりました。
 すると、その夜のことです。
 何匹ものキツネたちが、和尚さんの部屋の前にきちんと横にならんですわると、これまで耳にしたことのない声をあげて、一匹ずつさっていきました。
 それは、わるいことをした仲間でも手あつくほうむってくれた和尚さんのやさしさに、お礼をいったのではないかという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 飛行船の日
きょうの誕生花 → アンスリューム
きょうの誕生日 → 1960年 岡部まり(タレント)

きょうの新作昔話 → 黄金のつぼ
きょうの日本昔話 → 雪女
きょうの世界昔話 → メスウシのブッコラ
きょうの日本民話 → キツネのお礼
きょうのイソップ童話 → わるぐちをいいあうブタとイヌ
きょうの江戸小話 → 貧乏神

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1月21日の日本民話 二つのおむすび

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 1月の日本民話

1月21日の日本民話

二つのおむすび

二つのおむすび
福岡県の民話福岡県情報

♪ おはなしを再生

 むかしむかし、あるところに、大きなネコと小さなネコが住んでいました。
 ある日の事、二匹のネコはおむすびをひろいました。
 大きなネコがひろったおむすびは小さく、小さなネコがひろったおむすびは、大きなおむすびでした。
 そこで大きなネコが、小さなネコに言いました。
「お前は体が小さくて、おいらは体が大きいから、そのおむすびと、とりかえてくれ」
「いいや、お前はもう体が大きいから、小さいおむすびでよい。おいらはもっと大きくならないといけないから、大きなおむすびを食べるよ」
 そう言って、小さいネコは、大きなおむすびをはなしません。
「そんなことはない。むかしから大きなものはたくさん食べ、小さいものは少なく食べるにきまっている」
 どっちのネコも、負けていません。
 そしてとうとう、けんかになってしまいました。
「よし、それなら、どっちの言うことが正しいか、だれかに聞いてみようじゃないか」
「いいとも」
 そこで二匹のネコは、サルのところへ相談にいきました。
「なるほど、どっちの言うことも、もっともだな」
 サルは、しばらく腕を組んで考えていましたが、
「こうしてはどうだ。二つのおむすびを、同じ大きさにして食べたら」
と、言いました。
「いいとも、さんせい」
 大きなネコが言いました。
「ぼくもいいとも、さんせいするよ」
 小さなネコも言いました。
「では、おむすびの大きさをくらべるから、ここへ出してくれ」
 サルははかりを持ってきて、両手に二つのおむすびをのせました。
「うむ、こっちの方が、だいぶ重たいぞ」
 サルは、大きな方のおむすびを一口食べました。
 でも、まだ同じ重さになりません。
「こっちがまだ重たい」
と、言いながら、大きいほうのおむすびをパクパクと食べて、はかりにのせました。
 そのうちに、小さなネコのおむすびが軽くなってしまいました。
「こりゃいかん。今度はこっちが重そうだ」
 今度は、大きいネコのおむすびを一口食べました。
「あっちが重い、こっちが重い」
 そうこう言っているうちに、サルはとうとう、おむすびを二つとも食べてしまいました。
 二匹のネコはガッカリして、泣きながら帰って行ったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 料理番組の日
きょうの誕生花 → ろうばい
きょうの誕生日 → 1947年 高田純次(タレント)

きょうの新作昔話 → 天人女房(てんにんにょうぼう)
きょうの日本昔話 → 無用の位
きょうの世界昔話 → 身代わりにされたクマ
きょうの日本民話 → 二つのおむすび
きょうのイソップ童話 → イヌと主人
きょうの江戸小話 → しりちがい

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1月20日の日本民話 おなかにわすれられたかさ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 1月の日本民話

1月20日の日本民話

おなかにわすれられたかさ

おなかにわすれられたかさ
長野県の民話長野県情報

 むかしむかし、あるところに、たいへんなお酒のみがいました。
 町でお酒をのんでの帰り道、きゅうにのどがかわいて水がのみたくなりました。
「のどがかわいたな。どっかに水はないかな?」
と、さがしていたら、一軒の家の前に水の入ったおけがおいてありました。
 とてもきたない水でボウフラがわいていましたが、それでもがまんできずに、お酒のみはおけの中に首をつっこんで、そのきたない水をガブガブとのんだのです。
 ところがおなかの中のボウフラがウヨウヨと動くので、気持ちが悪くなって、家に帰っても寝ることができません。
 おなかのウヨウヨは、朝になってもひどくなるばかりです。
「弱ったなあ」
 お酒のみが青い顔で寝ていると、友だちがやって来ました。
「どうした? そんなに気持ちの悪そうな顔をして」
 お酒のみがわけを話すと、友だちが言いました。
「それなら、金魚をのめばよい。ボウフラは金魚のエサだから、みんな食べてくれるさ」
「そうか、その手があったか」
 お酒のみはさっそく、金魚を一匹のみこみました。
 ところが、おなかに入った金魚がボウフラを追いまわすので、よけいに気持ち悪くなりました。
「ちえっ、つまらんことを教えやがって」
 お酒のみが気持ち悪そうにねていると、ほかの友だちがやってきていいました。
「そんなら、鳥をのめばいい。鳥なら、ボウフラも金魚も食べてくれるさ」
「そうか、その手があったか」
 お酒のみは、さっそく鳥をのみこみました。
 鳥はボウフラも金魚もあっというまに食べてくれましたが、食後の運動におなかの中でバタバタとあばれるので、お酒のみはおなかがいたくてたまりません。
「ちえっ、つまらんことを教えやがって」
 お酒のみは青い顔で、鳥があばれないようにおなかを押さえていました。
 するとそこへ、またべつの友だちがやってきていいました。
「それなら、おれのおじさんをよんでこよう。おれのおじさんは鳥をつかまえる名人だ」
「そうか、その手があったか」
 それで、お酒のみは鳥をつかまえる名人のおじさんに、おなかの中へ入ってもらうことにしました。
 おじさんはいつものようにかさをかぶり、鳥をつかまえるさおを持って、お酒のみのおなかの中へ入っていきました。
 さすがは名人です。
 あっというまに鳥をつかまえると、外へ出てきたのでした。
 ところがうっかりかさをわすれてしまったので、お酒のみのおなかはガサガサして、ますます気持ちがわるくなったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 玉の輿の日
きょうの誕生花 → デンファレ
きょうの誕生日 → 1983年 矢口真里(歌手)

きょうの新作昔話 → 鼻かぎ権次(ごんじ)
きょうの日本昔話 → まさかの話
きょうの世界昔話 → 頭のいいコヨーテ
きょうの日本民話 → おなかにわすれられたかさ
きょうのイソップ童話 → 鳥刺しとコウノトリ
きょうの江戸小話 → たな

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1月19日の日本民話 おらびの妖怪

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 1月の日本民話

1月19日の日本民話

おらびの妖怪

おらびの妖怪
高知県の民話高知県情報

 むかしむかし、土佐の国(とさのくに→高知県)の大きな山に、おらびという呼ばれる妖怪(ようかい)が住んでいました。
 おらびというのは土地の言葉で大声を出すという意味ですが、このおらびの妖怪は山道を通りかかる人を見つけては、
「おらと、おらび比べをしろ!」
と、言うのです。
 ことわっては何をされるかわからないので、多くの人はしかたなく、おらびとおらび比べをするのです。
 ところが、おらびの妖怪の声はとても大きく、ひとたびほえれば、山の木々が地震みたいにゆれるのです。
 とても、人間の勝てる相手ではありません。
 それとこまったことに、おらび比べに負けた人間は、必ずおらびに食べられてしまうのです。
 だから、この山に近づく者はめったにおらず、うわさを聞いた旅人は、わざわざ遠まわりをしてほかの山道を歩いていくのです。
 さて、この山の近くに、とても気の強い猟師が住んでいました。
 おらびの妖怪のおかげで仲間が山にも行けず、旅人もこまっていると聞いて、
「よし。おらが、おらびの妖怪を退治(たいじ)してやる!」
と、いって、たった一人で出かけていったのです。
 山道をどんどん進んでいきますが、どうしたことか、おらびの妖怪は出てきません。
(そんなら、こっちから呼びかけてやる)
 猟師は山道の途中で立ちどまると、近くの森にむかってどなりました。
「やい、おらび! おらとおらび比べをしないか!」
 すると、森の奥から、
「する、する、するぞーっ! おらび比べをする」
と、いって、おらびの妖怪が出てきたのです。
 牛よりも大きなウシガエルの妖怪で、のそり、のそりと近づきながら、大きな口をパクパクと開けるのです。
(これが、おらびの妖怪か)
 猟師はビックリしましたが、鉄砲をかまえると、おらびの妖怪に言いました。
「おらが先にいうか? それともお前が先にいうか?」
 すると、おらびの妖怪が、
「おらが先にいうぞ」
と、いって、大きな口をいっぱいに開けて、
「うおーっ!!!」
と、さけびました。
 とたんに、まわりの木がガタガタとゆれだし、猟師はもう少しで気絶(きぜつ)するところでした。
(よし、いまのうちだ!)
 猟師はその大きな口をめがけて、
 ズドーン!
と、鉄砲の玉を打ち込みました。
 どうやら、口の中が急所だったらしく、おらびの妖怪はそのまま死んでしまいました。
 猟師はさっそく村へもどって、おらびの正体が大きなウシガエルであったことと、それを退治したことを話しました。
 この猟師のおかげで、もう二度とおらびの妖怪は現れなかったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → のど自慢の日
きょうの誕生花 → バンダ
きょうの誕生日 → 1983年 宇多田ヒカル(歌手)

きょうの新作昔話 → 凍ってしまった声
きょうの日本昔話 → 一休のくそとなれ
きょうの世界昔話 → ウシ飼いと裁判官
きょうの日本民話 → おらびの妖怪
きょうのイソップ童話 → サルとラクダ
きょうの江戸小話 → いいそうな顔

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1月18日の日本民話 鬼のうで

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 1月の日本民話

1月18日の日本民話

鬼のうで

鬼のうで
東京都の民話東京都情報

 明治になってまもないころ、浅草(あさくさ)に、田宮義和(たみやよしかず)という男がすんでいました。
 この男はもともと(さむらい)だったそうで、どこで手に入れたのか、『のうで』という、不思議な物を持っていました。
 そのうでは田宮の言う事を何でもきき、家のそうじやせんたく、台所の仕事から身のまわりの世話まで、田宮は全て、この鬼のうでにやらせていたのです。
 銭湯へいくときなどは、このうでをつれていって背中を流させたり、手足をあらわせたりしながら、ほかの入浴客とのんきに話しをしていたそうです。
 町の人が田宮の家へいくと、田宮は鬼のうでに、肩やこしをもませているのです。
「このうでは女房みたいなものだ。いや、人間の女房以上によく働くぞ。それにめしも食わせんでよいし、着物をねだられる心配もない」
 ところが、冬のある日の事。
 富山(とやま)の薬売りが、毎年薬を買ってくれる田宮の家へやってきました。
「こんにちは、いつもの薬売りです」
 薬売りがいくらよんでも、返事がありません。
 そこで薬売りは家へあがって、部屋の障子(しょうじ)をそうっと開けてみたところ、
「ギャーーッ!」
 薬売りはビックリ。
 なんと部屋の中では田宮が目をむいて、あおむけに倒れていたのです。
 そして田宮ののどのところに、鬼のうでが立っていました。
 知らせを聞いた役人が、田宮を調べていいました。
「うむ。田宮は鬼のうでに、首をしめられて殺されたものにちがいない」
 役人たちは鬼のうでを首からはなそうとしましたが、指がしっかり首に食いこんでいて、どうしてもはなす事が出来ません。
「しかたがない。そのままつれていけ」
 田宮は首にうでをくっつけたままで、土葬(どそう→死体を火葬せずに、土に埋めること)されました。
 埋葬(まいそう)がすっかりおわったあと、役人の一人が線香(せんこう)をあげながら言いました。
「どうも、このうでは女の鬼のものらしい」
 すると、べつの役人が不思議そうにたずねました。
「どうして、そんな事がわかるのですか?」
「うむ、あの手は鬼のうでにしては、細くてやさしい指をしておった。だが、ずいぶんと田宮にこきつかわれたとみえて、ひどい赤ぎれじゃ。かわいそうな事よ」
 役人は線香をもう一本とると、今度は鬼のうでのために手をあわせました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 都バス記念日
きょうの誕生花 → パフィオペディルム
きょうの誕生日 → 1947年 ビートたけし(タレント)

きょうの新作昔話 → 米ぶきと粟ぶき
きょうの日本昔話 → とっつくひっつく
きょうの世界昔話 → かしこいチビの仕立屋さん
きょうの日本民話 → 鬼のうで
きょうのイソップ童話 → 泉のほとりのシカとライオン
きょうの江戸小話 → 金のとりい

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1月17日の日本民話 与作のうらない

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 1月の日本民話

1月17日の日本民話

与作のうらない

与作のうらない
香川県の民話香川県情報

 むかしむかし、あるところに、与作(よさく)というお百姓さんがいました。
 とても働き者で、毎日朝早くから夜おそくまで畑仕事をしていました。
 ところが与作さんのおかみさんときたら、ひどいなまけ者で、しかも大めし食いです。
 そのくせ、与作さんの前では少ししかごはんを食べません。
(しかし、あんまりごはんを食べないのに、どうしてふとっているのかな?)
 不思議に思った与作は、ある日、畑へ行くふりをして天井にかくれました。
 すると、どうでしょう。
 おかみさんはごはんをたいて、にぎりめしをいくつもつくりました。
(なんて数だ。あんなににぎりめしをつくって、どうするつもりだ?)
と、見ていると、つくったばかりのにぎりめしをパクパク食べて、残りをカゴに入れて、かまどの後ろへかくしたのです。
(なるほど、ああやってひまさえあれば、にぎりめしを食べているんだな)
 そこで与作は天井からおりて、なにくわぬ顔で表から家に入りました。
「えっ、まあまあ、今日はどうしたの? ばかに帰りが早いじゃないの」
 おかみさんが、おどろいて言いました。
「おら、今日はうらないをならってきた」
「へえ、うらないをね。そんなら、なにかうらなっておくれよ」
 すると与作は両手を組んで、目をつぶって言いました。
「うむ。にぎりめしが見える。・・・ふむふむ、かまどの後ろだ。かまどの後ろににぎりめしがかくしてあるぞ」
「まあ、すごい!」
 おかみさんは自分のことを言われているのに、すっかり感心してしまいました。
 そしてすぐに家を飛び出して、この事を村のみんなにいいふらしたのです。
 さて、与作の近所に、おばあさんとお嫁さんのなかの悪い家がありました。
 ある日の事、お嫁さんはおばあさんがにくくて、おばあさんの大切なカガミを古井戸のつるべの中にかくしてしまいました。
 そして、与作のうわさを聞いたおばあさんがやって来ました。
「与作さん、わしのカガミがなくなったんよ。どこにあるのかうらなっておくれ」
 そんな事を言われたって、与作にわかるはずがありません。
 そこでしかたなく、
「今日はもうおそい。明日になったら、うらなってあげよう」
と、言って、おばあさんを帰しました。
 すると間もなく、お嫁さんがやって来ました。
「与作さんはうらないの名人なので、もう知っていると思いますが、じつはわたしが、古井戸のつるべの中にかくしました。その事がわかれば、おばあさんに追い出されてしまいます。どうか、おばあさんにはわたしがかくしたと言わないでください」
「おおっ、そうかい、そうかい。それを聞いて助かった。・・・いや、よくぞ言ってくれた。もしお前さんが白状(はくじょう)しなければ、わしはおばあさんに全てを話していたところだ。約束しよう、この事は決して話しはしないから」
「あっ、ありがとうございます」
 次の日、与作はおばあさんに言いました。
「実はな、カガミは古井戸のつるべの中にある。子どもが、イタズラをしてかくしたのだ」
 おばあさんが古井戸のつるべをあげてみると、本当にカガミがありました。
「あれまあ。なんてよくあたるうらないだろう」
 おばあさんは、この事を村中にふれて歩きました。
 与作さんのうわさはたちまち広がり、ついに殿さまの耳にまで聞こえました。
 ちょうど大切なが見つからなくなり、こまっていた殿さまは、すぐに与作のところへ使いをやり、
「刀のゆくえをうらないに来い」
と、言ったのです。
「こいつは弱った。いまさら、うらないは出来ないとは言えないし・・・」
 それでもかくごを決めて、殿さまの屋敷へ出かけていきました。
 すると途中の森で、二匹のキツネがけんかをしていました。
「あの刀は、おれがぬすんだものだぞ」
「だが、ぬすんだのはお前でも、屋敷の庭にかくしたのはおれだ」
 与作さんはそれを聞くと、飛び上がって喜びました。
 そこで殿さまの前に行くと、与作は両手を組んで、目をつむって言いました。
「むむっ、むむむっ。・・・はい、わかった。刀は、屋敷の庭にあります」
 殿さまがけらいに調べさせると、庭石の間から、なくなった刀が出て来たのです。
「これは見事。お前は日本一のうらない名人だ」
 殿さまは大喜びで、与作にたくさんのほうびをあげたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 防災とボランティアの日
きょうの誕生花 → こちょうらん
きょうの誕生日 → 1952年 坂本龍一(ミュージシャン)

きょうの新作昔話 → スズメの身がわり
きょうの日本昔話 → あきやのゆうれい
きょうの世界昔話 → トラのはじまり
きょうの日本民話 → 与作のうらない
きょうのイソップ童話 → ザクロの木とリンゴの木とオリーブの木とイバラ
きょうの江戸小話 → おじいさんとおばあさん

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1月16日の日本民話 死ぬのはこわい

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 1月の日本民話

1月16日の日本民話

死ぬのはこわい

死ぬのはこわい
青森県の民話青森県情報

 むかしむかし、陸奥の国(むつのくに→青森県)のある村に、万次郎(まんじろう)という、とても気のよわい男がいました。
 村のだれかがなくなると、今度は自分かもしれないと、いつもビクビクしているのです。
 ある日万次郎は、死んだおじいさんから聞いた話を思い出しました。
「一月十六日のま夜中に、人に見つからないように家の屋根にのぼれば、その年に死ぬ人の運命がわかる」
と、いう話しです。
(もしかして、自分の運命がわかるかもしれない)
 死ぬのがこわくてたまらない万次郎は、つぎの年の一月十六日、家のみんなが寝るのを待って、こっそり屋根へのぼりました。
「おおっ、さむい」
 万次郎はガタガタふるえながら、あちこちを見回しました。
 どの家も明りがきえていて、物音一つ聞こえません。
と、そのとき、村の一本道をゆっくりとこっちへ近づいてくるものがあります。
 白い着物を着て、ひたいに三角の白い紙をつけた死人です。
(ゆ、ゆうれい!)
 万次郎はビックリしましたが、でもよく見ると、それは近くの家にすむ老婆(ろうば)でした。
 若者と一緒に畑仕事をしたり、まごの世話をしたりと、元気な働き者として知られていました。
 この前もあったばかりで、死んだなんて話しは聞いたことがありません。
 万次郎は不思議そうに、屋根の上から老婆を見ていました。
 老婆はまるでたましいのぬけたような顔で、トボトボと歩いていきます。
(いったい、どこへいくのだろう?)
 万次郎の家の前をとおりすぎた老婆は、やがて村はずれの墓場(はかば)の前へいき、そのままけむりのようにきえてしまいました。
(さてはあのおばあさん、今年死ぬのだろうか?)
 万次郎が首をひねっていると、こんどは近くの家から、おなじように死人の衣装(いしょう)をつけた娘が出てきました。
(あっ、あの娘は!)
 万次郎は、もう少しで声を出すところでした。
 村でも評判の美しい娘でしたが、病気になってからは寝たきりといううわさです。
 娘も村はずれの墓場の前で、けむりのようにきえてしまいました。
(はたして、あの二人は今年中に死ぬのだろうか?)
 そう思うと、おそろしくて人に話すこともできません。
 でも万次郎の思った通り、まもなく老婆も娘も死んでしまいました。
 万次郎は、いよいよ死ぬのがこわくなりました。
 それでも毎年、一月十六日がくると屋根にのぼって、今年はだれが死ぬかをたしかめるのでした。
 さて、ある年のことです。
 今年も一月十六日の夜に屋根にのぼって下を見ていたら、なんと、そこにあらわれたのは死人の衣装をつけた自分でした。
(そっ、そんな、バカな!)
 万次郎はビックリして、息が止まりそうになりました。
 もう一人の万次郎は屋根の上の万次郎には目もくれず、ゆっくりゆっくりと墓場のある方へ歩いていきます。
 やがて墓場の前にくると、けむりのようにきえてしまいました。
 万次郎は屋根からかけおりると、家の者をたたきおこしていいました。
「ああ、おらは死ぬ!」
 家の者はビックリして、
「何をバカな事を。なにか悪い夢でもみたのだろう」
「いいや、夢じゃねえ! 実はな・・・」
と、今までの事をみんなにうちあけましたが、
「はん。そんな事、だれが信じるものか」
と、いって、だれもとりあってくれません。
 それから万次郎は今まで以上にビクビクして暮らし、その年の秋、突然死んでしまったのです。
 万次郎の事は村のうわさになりましたが、だれもがこわがって、一月十六日の夜がきても屋根にのぼる人はいなかったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 禁酒の日
きょうの誕生花 → デンドロビューム
きょうの誕生日 → 1930年 東松照明(写真家)

きょうの新作昔話 → お坊さんになりたかったキツネ
きょうの日本昔話 → うたよみゆうれい
きょうの世界昔話 → 裸の王さま
きょうの日本民話 → 死ぬのはこわい
きょうのイソップ童話 → 造船所のイソップ
きょうの江戸小話 → とんちんかん

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1月15日の日本民話 龍王からおしえられた踊り

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 1月の日本民話

1月15日の日本民話

龍王からおしえられた踊り

龍王からおしえられた踊り
山口県の民話山口県情報

 むかしむかし、中村というところに、赤ちゃんの取り上げの上手なおばあさんがいました。
 どんなに難産(なんざん)でも、このおばあさんの手にかかればすぐにうまれるので、『中村の取り上げばあさま』といって、知らない者はいませんでした。
 ある日の真夜中、おばあさんの家の玄関(げんかん)をたたく者がいます。
 こんな時間に来るのは、急産の取り上げにちがいないと思い、おばあさんはすぐに支度(したく)をすると、外へ飛び出しました。
 外には、使いの男がいて、
「こんなにおそくにすまんが、一緒にきてください」
と、いいました。
「それはいいが、どこの家かいの?」
と、おばあさんがたずねると、
「ずっと遠くです。案内しますから、足元に気をつけてください」
と、男は先に立ってどんどん歩いていきます。
 真暗闇(まっくらやみ)ですが、なぜか足元だけは明るいので、おばあさんはなんとか転ばずに歩けました。
 そのうち波の音が聞こえてきたので、海が近いなあと思ったとたん、おばあさんは気を失ってしまいました。
 おばあさんが気をとりもどすと、そこは金銀(きんぎん)まばゆい龍宮城(りゅうぐうじょう)だったのです。
 おばあさんは、龍宮城の主の龍王(りゅうおう)の前に出されました。
「夜中に、遠いところごくろうであった。そちに、姫の出産のかいぞえをたのみたい」
 おばあさんはビックリしましたが、お産と聞いてはジッとしていられません。
 さっそく姫の部屋へいくと、ひどい難産(なんざん)で、姫の顔には血の気がありません。
「よしよし、すぐに楽にしてやるからな」
 さっそくおばあさんはしたくに取りかかり、すぐに玉のような男の子が生まれました。
 龍王は大喜びで、おばあさんの前にほうびとして、金銀サンゴを山のようにつみました。
 けれど、おばあさんはそれを受取ろうとしません。
「お産の礼をしたいが、そちはいったい、何がほしいのじゃ? なんなりと取らせるゆえ、もうしてみるがよい」
と、いうと、おばあさんはおそるおそる答えました。
「わたくしの村にあまり雨が降らず、田んぼのイネがかれようとしています。どうか龍王さまのお力で、雨を降らせてもらいたい」
 この村人を思う気持ちに感心して、龍王はその願いを聞き入れました。
「たやすいこと。今後はわしをまつって、豊年(ほうねん)おどりをおどるがよい。さすれば大雨を降らせよう」
 おばあさんが龍宮城を去って村に帰りつくと、いなくなったおばあさんをさがして、村中大さわぎでした。
 おばあさんがわけを話して龍王との約束をつげると、村人は大喜びです。
 そして村人たちはこのおばあさんを「龍王ばあさま」と呼ぶようになりました。
 その踊りが山口県に今に伝えられる、楽踊り(がくおどり)の始まりだという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → アダルトの日
きょうの誕生花 → オンシジューム
きょうの誕生日 → 1962年 石原良純(俳優)

きょうの新作昔話 → ふたつのネズミ船
きょうの日本昔話 → わらしべ長者
きょうの世界昔話 → 魔法のあみ棒
きょうの日本民話 → 龍王からおしえられた踊り
きょうのイソップ童話 → ウサギとカエル
きょうの江戸小話 → かんびょう

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1月14日の日本民話 お金入りの米だわら

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 1月の日本民話

1月14日の日本民話

お金入りの米だわら

お金入りの米だわら
石川県の民話石川県情報

 むかしむかし、ある村のお寺に、とても力持ちの和尚(おしょう)さんがいました。
 もう、すっかり年をとっているのに、重い米だわらをヒョイと持ちあげてしまうのです。
 そればかりか、力の弱い若者たちを見ては、
「若い者が米だわら一つ持ちあげられないでどうする。そんなこっちゃ、一人前のお百姓(ひゃくしょう)さんになれないぞ!」
と、しかりつけるのです。
 だから村の若者たちは、おもしろくありません。
「年よりの和尚さんからバカにされるなんて、くやしいなあ」
「そうだ。なんとかして、和尚さんをやっつける方法を考えよう」
 若者たちが集まって、相談しました。
 すると、一人の若者が言いました。
「いくら和尚さんだって、お金入りの米だわらはかつげまい」
「お金入りの米だわらだって?」
 みんな、首をかしげました。
「そうさ、米だわらの中に、米と一緒にお金をどっさりと入れておくのさ。すると米だわらは何倍も重たくなる。そいつを和尚さんにかつがせるんだ」
「なるほど」
「わかったら、できるだけ重いお金を集めてこい」
 若者たちは手分けして、重い銅のお金をたくさん集めてきました。
「でも、このお金をとられてしまったらどうする?」
「大丈夫さ。いくら和尚さんでも、こんな物を持てるはずがない」
「なるほど、これはたしかに重い。とても持ちあげられそうもないや」
 そこでみんなは、お金の入った米だわらをお寺へ持っていきました。
 すると、和尚さんが出てきて、
「なんだ。いい若い者が、たった一ぴょうの米だわらをみんなでかつぐとは。まったくなさけない」
と、言いました。
 若者の一人が、くやしいのをがまんして言いました。
「とんでもない。この米だわらは特別で、いくら力持ちの和尚さんでも一人ではかつげません。もし一人でかつげたら、わしらどんなことでもしましょう。でも、かつげなかったら二度と、わしらをしかったりしないでくださいよ」
「よしよし、わかった、約束しよう。何が入っているか知らんが、この米だわらを一人でかつぐことができたら、この米だわらをもらってもよいかな?」
「いいですとも。かつげるものならね」
(いくらなんでも、こんなに重たい物をかつげるはずはない。この勝負はおれたちの勝ちだ)
 みんなは、そう思いました。
「それじゃあ、かつくぞ。ペッペッ」
 和尚さんは両手にすべり止めのつばをつけると、米だわらをグイッとつかみました。
「おおっ! なるほど、こいつは重いわい」
 それを見て、若者たちは顔を見合わせました。
(見ろ。やっぱり、持ちあがらないぞ)
(いまに手をはなすぞ。手をはなしたら、みんなで大わらいしてやろう)
 ところが和尚さんは、重い米だわらをヒョイと持ち上げると、肩にのせました。
「あはははは、多少は重たいが、この程度ならあと三つはかつげるぞ。さて、やくそくどおりこいつはもらったよ」
と、言って、そのままお寺に帰っていきました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → タロ、ジロの日
きょうの誕生花 → シンビジューム
きょうの誕生日 → 1955年 石田純一(俳優)

きょうの新作昔話 → モグラ退治
きょうの日本昔話 → おくびょうな男とゆうがおおばけ
きょうの世界昔話 → チーズの行方
きょうの日本民話 → お金入りの米だわら
きょうのイソップ童話 → 逃げたカラス
きょうの江戸小話 → 貧乏神

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1月13日の日本民話 ろくろっ首

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 1月の日本民話

1月13日の日本民話

ろくろっ首

ろくろっ首
東京都の民話東京都情報

 むかしむかし、江戸(えど→東京都)の堺町(さかいまち)には、いくつもの芝居小屋(しばいごや)がならんでいて、たいそうなにぎわいでした。
 ある日のこと、きれいな娘が一人で、チリン、チリンと、ゲタの鈴(すず)をならして芝居小屋の前の人ごみを歩いていました。
 よほど芝居好きなのか、一枚、一枚、どの小屋の絵看板(えかんばん)も、くいいるように見ながら歩いていきます。
 そして気にいった役者の絵があると、その前にピタリと止まり、首がスルスルとのびていったのです。
 娘はむちゅうのあまり、自分の首がのびている事には気がつきません。
 ところが、通りがかりの人はビックリ。
 みんな足をとめて、首ののびた娘を見ています。
 娘は次々と絵看板を見ていって、中村座(なかむらざ)の前までくるとピタリと足をとめました。
 だしものは、忠臣蔵(ちゅうしんぐら)です。
「力弥(りきや)もきれいじゃが、勘平(かんべい)のいいこと。それに、こっちの五段目の定九郎(さだくろう)も、ほれぼれとする男ぶり」
 娘の首が絵の中の中村仲蔵(なかむらなかぞう)の定九郎(さだくろう)のところまで、すいよせられるようにのびていきました。
「おい、見ろ! またのびたぞ!」
「娘のろくろっ首だ!」
 まわりは大騒ぎですが、娘はまったく気がつきません。
 そして娘は何事もなかったかのように、チリン、チリンとゲタの鈴をならして、日本橋のほうへ歩いていったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → たばこの日
きょうの誕生花 → カトレア
きょうの誕生日 → 1968年 長山洋子(歌手)

きょうの新作昔話 → 照島神社(てるじまじんじゃ)
きょうの日本昔話 → 二人の甚五郎
きょうの世界昔話 → おりこうハンス
きょうの日本民話 → ろくろっ首
きょうのイソップ童話 → 人間とゼウス
きょうの江戸小話 → かぜものぼれまい

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1月12日の日本民話 サルのうめたつぼ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 1月の日本民話

1月12日の日本民話

・サルのうめたつぼ

サルのうめたつぼ
富山県の民話富山県情報

 むかしむかし、ある村の山中に一匹のサルがいて、糸をつむいでいる女の人にイタズラばかりしていました。
 ある夜の事、このサルがいつものようにイタズラをしようと一軒の家に入り、障子(しょうじ)の穴から家の中をのぞいたところ、気づいた女の人がぬい針でサルの目をつきました。
「ウキィィィィー!」
 悲鳴をあげて谷にもどったサルは、医者に通ってなんとか目を治しましたが、それからは心を入れかえて村の人に薬を売ったり魚を売ったりして喜ばれました。
 こうしてもうけた大金を、そっくり茶色の大つぼに入れると、
《山に金を入れたつぼをうめた。つぼを見つけた者に、お金をやる。サルより》
と、立て札を立てたので村は大さわぎです。
 われもわれもと山に入り、草をかりとってつぼをさがしました。
 そのおかげで干し草が山積みにされ、田畑が増えて、村は栄えたということです。
 そしてそのつぼは、まだうまったままだとつたえられているのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → スキーの日
きょうの誕生花 → ラケナリア
きょうの誕生日 → 1952年 楠田枝里子(タレント)

きょうの新作昔話 → 水かけ地蔵
きょうの日本昔話 → おばあさんのおおてがら
きょうの世界昔話 → お月さま狩り
きょうの日本民話 → サルのうめたつぼ
きょうのイソップ童話 → ハエたち
きょうの江戸小話 → 焼き氷

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1月11日の日本民話 とうふとおみそのけんか

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 1月の日本民話

1月11日の日本民話

とうふとおみそのけんか

とうふとおみそのけんか
広島県の民話広島県情報

 むかしむかし、とうふとおみそは、けんかばかりしていました。
 ある時、とうふがおみそに言いました。
「あなたはいつも黒い色をしていて、しかも変なにおい。おかげで、わたしの白い体までよごれて、くさくなるではありませんか」
 すると、おみそが怒って言いました。
「なんだと! 何がくさいものか。人間はこのにおいが好きで、毎日みそしるにして飲むじゃないか! だいたい、いくら色が白くても、お前には味がないじゃないか!」
「味がないですって! とんでもない。わたしは一緒に煮る物によって、いくらでもおいしい味になれるのですよ。それに比べて、あなたいつだってくさいし、おまけにからいじゃありませんか」
「何だと。えらそうなことを言っても、お前は包丁(ほうちょう)で切られたり、おはしでくずされたら、おしまいじゃないか」
「ふん! わたしは体がくずれたって、おみそみたいに溶けはしませんからね。どんなに小さくなっても、とうふはとうふですよ」
「もう、かんべんできない!」
 おみそはくやしくなって、とうふに飛びかかろうとしました。
「ちょっと、待った!」
 そこへ、コンニャクが飛び込んできました。
「二人とも、つまらんことでけんかをするんじゃない。このわしを見てみろ。色は黒いし、体は切られるし、おまけに味もない。それでもジッと、がまんしているんだぞ」
「・・・なるほど」
「・・・たしかに、そのとおりね」
 とうふとおみそは、つくづくと、こんにゃくの体を見ました。
「それによく考えてみろ。お前たちは元々、大豆(だいず)から出来ていて、いわば親戚(しんせき)同士じゃないか。親戚同士でけんかをするなんて、とんでもない。わしなんか、誰も親戚がいなくて、いつも一人ぼっちだ」
 そう言ってコンニャクは、プルプルと体をふるわせました。
 すると、おみそがとうふに言いました。
「そうだ。こんにゃくのいうとおりだ。親戚同士は、仲良くしなくちゃいかん」
 とうふも言いました。
「ほんとうに。変なことを言ってごめんなさいね。これからは、コンニャクさんも一緒に、みんな仲良くしましょう」
 そこで、とうふとおみそとこんにゃくは一緒になって、おみそ汁という、おいしい料理になったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 鏡開き
きょうの誕生花 → シェフレラ(カポック)
きょうの誕生日 → 1973年 深津絵里(俳優)

きょうの新作昔話 → 橋立小女郎(はしだてこじょろう)
きょうの日本昔話 → ふたりゆうれい
きょうの世界昔話 → コウノトリになった王さま
きょうの日本民話 → とうふとおみそのけんか
きょうのイソップ童話 → イヌとライオンの皮
きょうの江戸小話 → 小便

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1月10日の日本民話 ネコのおけさ節

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 1月の日本民話

1月10日の日本民話

ネコのおけさ節

ネコのおけさ節
新潟県の民話新潟県情報

 むかしむかし、佐渡島(さどがしま)の海辺に、ネコ好きのおばあさんがいました。
 若いときから一人暮らしですが、いつも十数匹のネコを飼っています。
 ところが年をとるにつれて貯金もなくなり、その日の食べるものにさえも不自由するようになりました。
 そのため、たくさんいたネコもつぎつぎと逃げだし、ついには、古くからいた三毛ネコ一匹しか残りませんでした。
 おばあさんはこの三毛ネコをいままで以上にかわいがり、自分が食べない日はあっても、ネコの食べ物だけは毎日用意しました。
  しかし、いつしかその食べ物にも困るようになったので、ある日おばあさんはネコに言いました。
「ごらんのとおりの貧乏暮らしで、お前にエサをやれんようになってしまった。だからといって家出をしたり、よその家に行って食べ物を欲しがったりしないでおくれ。お前は、わたしのたった一つの生きがいなのだから」
 ところが次の日、そのネコも姿を消してしまいました。
(ああ、なんてことだろう。あれほど可愛がっていたネコに見捨てられるなんて。貧乏すると人ばかりか、ネコにまできらわれてしまうのか)
 おばあさんは、思わず涙をこぼしました。
 だれもいない家の中でボンヤリと座っていたら、突然、美しい娘が訪ねてきて、
「おばあさん、わたしはおばあさんにかわいがってもらった三毛ネコです。今まで、何のお役にも立ちませんでしたが、どうぞ恩返しをさせてください」
と、言うではありませんか。
 おばあさんはビックリして娘を見ましたが、どこから見ても人間の姿で、とてもネコが化けているとは思えません。
「お前、そんな姿になって何をしようというのかい? わたしの事なら心配しなくても大丈夫だからね」
「いいえ、このままではおばあさんがかわいそうです。なんでも、江戸(えど)の方から芸者(げいしゃ)になる娘をさがしにきているといううわさを聞きました。どうか、江戸の男にわたしを見せてください」
 娘に化けたネコが、あまりにも熱心に言うので、
「そこまで、わたしのことを心配してくれるとは・・・」
と、おばあさんはネコの申し出を受けることにしました。
 やがて、おばあさんの村へ江戸の男がやってきて、娘を見るなり、
「なんてきれいな娘だ。こりゃまちがいなく、江戸でも指折りの芸者になれるぞ」
と、言って、おばあさんにたくさんの金を渡して、娘を江戸へつれていきました。
 それから何ヶ月かあと、江戸の深川(ふかがわ)の料理屋に、おけさと名のる芸者が現れました。
 そのあでやかな美しさは、まるで名人がかいた絵からぬけ出たようです。
 しかも、おけさの歌う歌は江戸ではめずらしいもので、人々からは「おけさ節」と呼ばれて、たちまち町中の評判(ひょうばん)になりました。
 そんなおけさをひと目見たいという客がふえて、おけさのいる料理屋は毎晩大変なにぎわいです。
 ある晩、その料理屋へ船乗りたちをひきつれた船頭(せんどう)がやってきて、
「金ならいくらでも出すから、おけさをよんでくれ」
と、言うのです。
 おけさが部屋に行くと、たちまち花が咲いたようにはなやかになり、とてもにぎやかな酒盛りが始まりました。
 やがて三味線(しゃみせん)が鳴り、おけさのうたう「おけさ節」が流れます。
「よよっ、いいぞ、いいぞ」
 おけさ節に合わせて船乗りたちが踊り、踊っているうちに酒の酔いがまわって、一人、また一人と酔いつぶれ、酒盛りが終わった時には、みんな大の字になっていました。
 飲み過ぎた船頭は、はうようにしてとなりの部屋へ行き、床の中へもぐり込みました。
 さて、夜中にふと目を覚ました船頭の耳に、酒盛りをした部屋から、何かをかみくだくような音が聞こえてきました。
(はて、何の音だろう?)
 不思議に思った船頭が、しょうじのすきまからそっと中をのぞいてみると、芸者姿の大きなネコがキバをむき、食べ残した魚の頭をかじっているではありませんか。
 その着物はどう見ても、おけさの着ていたものです。
 ビックリした船頭は、あわてて床の中へもぐり込みました。
 すると、それに気づいたおけさがそばへ来て、
「いま見た事をだれにも言わないでください。もし人にしゃべったら、ただではおきませんからね」
と、言ったのです。
「わ、わかった。だれにも言わない」
 船頭は、ブルブルとふるえながら答えました。
 さて次の朝、船頭と船乗りたちは料理屋を出て浜に向かいました。
 海は静かで空には雲一つなく、船旅には絶好(ぜっこう)の日よりです。
「それっ!」
 船頭のかけ声とともに、船はゆっくりと動きはじめました。
 やがて船乗りたちが、一か所に集まってゆうべの話を始めます。
「いやあ、楽しかった。それにしても芸者のおけさのきれいなこと」
「そうよ。さすがは江戸だ。おら、あんなにきれいで歌のうまい芸者は見たことがない」
 そこへ船頭もやってきて、つい口をすべらせたのです。
「お前たち、あの芸者の正体を知っているのか?」
「正体だって?」
「じつはな、あの芸者はネコが化けたものだ」
と、ゆうべの出来事をくわしく話してきかせました。
「まさかそんな。とても信じられない」
 船乗りたちが首をかしげていると、今まで晴れていた空にとつぜん黒雲がわき、見る見るうちに船へと近づいてきます。
「たいへんだ、嵐が来るぞ!」
 船乗りたちがそれぞれの持ち場へ行こうとした時、黒雲の上から大きなネコが現れて、いきなり船頭を引きずりあげると、そのまま雲の中へ消えてしまったのです。
 同時に海ははげしい嵐となり、船は木の葉のようにゆれて、船乗りたちは生きた心地がしません。
「どうか、どうかお助けを。今のことは、けっしてしゃべりませんから!」
 船乗りたちが船にしがみつきながら必死で叫ぶと、やがて嵐がおさまりました。
 しかし船頭は空へ引きずりあげられたまま、二度ともどってこなかったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 明太子の日
きょうの誕生花 → アナナス
きょうの誕生日 → 1935年 浜村淳(司会者)

きょうの新作昔話 → 鴻(こう)の湯の由来
きょうの日本昔話 → 若様はひとり
きょうの世界昔話 → ゆうれいをせおう娘
きょうの日本民話 → ネコのおけさ節
きょうのイソップ童話 → ライオンとロバ
きょうの江戸小話 → なぞなぞ

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1月9日の日本民話 イヌになった男

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 1月の日本民話

1月9日の日本民話

イヌになった男

イヌになった男
島根県の民話島根県情報

 出雲大社(いずもたいしゃ)の大神(おおがみ)さまは、毎年八月十四日の晩に、町の中を歩くといわれています。
 町の人たちはこの夜を「みねんげさんの夜」と呼んで、どこの家でも夕方になると早めに戸をしめて、ねむることにしていました。
 早く戸じまりをするのは、もしも神さまの姿を見たりすると、とんでもないバチがあたるといわれているからです。
 さて、むかしむかしのある年の八月十四日に、ほかの町からやってきた男が、友だちの家でこの「みねんげさんの夜」の話をききました。
「ちょうどいい。おれは一度でいいから、神さまというのはどんな顔をしておるのか、見てみたいと思っておったんだ」
 そういって、友だちが止めるのもきかずに、夜になると家から出て行ったのです。
 そして道ばたの木のかげにかくれて、神さまの行列が通るのを息をひそめてまっていました。
 やがて、ゆっくりと行列がやってきました。
 神官たちにかつがれた輿(こし)の中にいる神さまは、ふと、闇(やみ)の中から自分にむけられている目がある事に気がつきました。
「あそこの木のかげからのぞいておるのは、だれじゃ?」
 おつきの者はあたりを見回しましたが、暗すぎて、人間の目には何も見えません。
「はて。わたしには何も見えませぬが、きっと、のらイヌでござりましょう」
と、こたえると、神さまは、
「そうか。イヌか」
と、いったとたん、木のかげにかがみこんで神さまを見ようとしていた男は、たちまちイヌになってしまったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 風邪の日
きょうの誕生花 → かんのんち
きょうの誕生日 → 1974年 岡本真夜(シンガー)

きょうの新作昔話 → 雑炊橋(ぞうすいばし)
きょうの日本昔話 → へっついゆうれい
きょうの世界昔話 → ハリネズミのハンスぼうや
きょうの日本民話 → イヌになった男
きょうのイソップ童話 → ノミとウシ
きょうの江戸小話 → 大声のしらみ、小声のわたくず

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1月8日の日本民話 おまけだけの買いもの

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 1月の日本民話

1月8日の日本民話

おまけだけの買いもの

おまけだけの買いもの
千葉県の民話千葉県情報

 むかしむかし、あるところに、ともてりこうな男の人がいました。
 なんでも売っている大きな店に行き、あちこちにならんでいる品物を手にとってはながめるのですが、買うようすがありません。
 それを見ていた店の主人が、がまんできずに言いました。
「何か気に入ったものがありますか? たくさん買ってくれたら、うんとおまけしますよ」
「それはありがたい。では、このわらぞうりを十足買ったら一足まけてくれるかね」
「いいですとも。十足も買っていただけるのでしたら、一足ぐらいおまけしましょう」
「うそじゃないな?」
「もちろん。うそなんか言いません」
 男の人はわらぞうりを一足つかむと、今度はざるのおいてあるところへ行きました。
「このざるを十個買ったら、一個まけてくれるかね」
「はい。十個も買ってくださるなら、一つはおまけしましょう」
 男の人はざるを一つつかむと、その中へわらぞうりを入れました。
 それから今度は、茶わんのならんでいるところへ行きました。
「この茶わん十個買えば、一つまけてくれるかね」
「ええ、十個も買ってくださるなら、一つはおまけしましよう」
 男の人は茶わんを一つ、ざるの中へ入れました。
 それからおわんにしゃもじと、何でも手あたりしだいに一つずつざるの中へ入れます。
 店の主人は、不思議に思ってたずねました。
「どうして、一つずつ入れるのですか?」
「なに、おまけのものから先に入れているのだ」
「でも、今まで買ってもらったのはその十倍です。とても一人では持って帰れませんよ。なんでしたら、店の者に家までとどけさせましょうか?」
 すると、男の人は、
「いや、そんな事をしてもらってはもうしわけない」
と、言うなり、品物のいっぱいつまったざるをかついで店を出ました。
「あの、もしもし、お客さん、まだお金をもらっていませんが」
 店の主人があわててよびとめると、男の人はすました顔で言いました。
「今日は急ぐから、おまけしてもらったものだけもらうことにする。おまけのものばかりだから、金ははらわなくてもいいだろう」
「へっ? それは、その・・・」
 店の主人が首をひねっている間に、男の人はどこかへ行ってしまいました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 勝負事の日
きょうの誕生花 → ははこぐさ(おぎょう)
きょうの誕生日 → 1971年 田村亮(芸人)

きょうの新作昔話 → カエルと娘
きょうの日本昔話 → こぶとりじいさん
きょうの世界昔話 → おいしいおかゆ
きょうの日本民話 → おまけだけの買いもの
きょうのイソップ童話 → アリ
きょうの江戸小話 → おとしもの

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1月7日の日本民話 ものぐさ桃太郎

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 1月の日本民話

1月7日の日本民話

ものぐさ桃太郎

ものぐさ桃太郎
鳥取県の民話鳥取県情報

 むかしむかし、おじいさんとおばあさんと、そして桃太郎がくらしていました。
 天気のいい日には、おじいさんが山へしばかりに、おばあさんは川へせんたくにいきますが、桃太郎は毎日遊んでばかりいるのです。
 そこである日、おじいさんが言いました。
「桃太郎や、お前も大きくなったんだから、小さい子どもみたいに遊んでばかりおらんと、少しは人の助けになることをしないといかんぞ」
「ああ、わかった。じゃあ、出かけてくる」
 桃太郎はそういうと、そのままどこかへ出かけていきました。
 夕方になり、おじいさんとおばあさんとが仕事から戻ってきても、桃太郎はまだ帰ってきません。
 実は桃太郎、何か仕事をしようと、めずらしく山へ出かけていったのですが、いままで一度も木を切ったことはないし、たきぎをひろうことも知りません。
 それで一日中、木の根っこをまくらにして寝ていたのです。
 目が覚めると、もう夕方でした。
 そして、その木の根っこにジャージャーとおしっこをして、根っこの土をやわらかくすると、その木をズボッと根っこごと引き抜いたのです。
 そしてその引き抜いた木をかつぐと、桃太郎は家へと帰っていきました。
「じいさん、ばあさん、いま、かえったよ。おら、今日は仕事をしたんだぞ」
と、いいながら桃太郎は、かついできた木を家の屋根にたてかけました。
 そして家に入ろうとしたとたん、たてかけた木の重みで、家がミシミシつぶれてしまったのです。
 かわいそうに、おじいさんもおばあさんも、つぶれた家の下じきになって死んでしまいました。
 桃太郎は、しばらくぼうぜんとしていましたが、やがて気を取り直すと、
「まあ、すんでしまった事は仕方ねえ。それより仕事をして疲れたから、もう寝るとするか」
と、そのままつぶれた家をまくらに、高いびきをかきながら寝てしまったそうです。
 なんなんでしょうね、このお話しは。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 七草がゆ
きょうの誕生花 → せり
きょうの誕生日 → 1948年 水木一郎(アニメ歌手)

きょうの新作昔話 → クジラとモグラ
きょうの日本昔話 → かべのなかから
きょうの世界昔話 → 青い山からきたタバコ
きょうの日本民話 → ものぐさ桃太郎
きょうのイソップ童話 → ウサギとカメ
きょうの江戸小話 → キツネつき

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1月6日の日本民話 男は重々しく

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 1月の日本民話

1月6日の日本民話

男は重々しく

男は重々しく
群馬県の民話群馬県情報

 むかしむかし、上州(じょうしゅう→群馬県)に、いんごうそうべえという、かわった男がいました。
 ある時、そうべえのところに奥さんの実家(じっか)から、奥さんのお父さんがやってきて、
「そうべえよ。お前さんは日ごろからかるはずみなことをして、落ち着きがない。男はもっとズシッと構え、重々しくなくてはいかんぞ」
と、おせっきょうしました。
「ふーん。そうか。よし、わかった」
 そうべえはいく日かすると、重たい石うすになわをつけて、ゴロゴロと引きずりながら奥さんの実家にやってきました。
「おや? 石うすなんぞ引いて来て、いったい何のまねだ?」
 奥さんのお父さんが聞くと、
「へい。こうすれば、重々しくなれますから。それにしても、重々しくなるのは大変だ」
「・・・・・・」
 奥さんのお父さんは、あきれてものも言えませんでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 東京消防出初め式の日
きょうの誕生花 → ゆずりは
きょうの誕生日 → 1958年 チャゲ(歌手)

きょうの新作昔話 → 不思議なびわ
きょうの日本昔話 → おわかれにきたむすめ
きょうの世界昔話 → 雪の女王
きょうの日本民話 → 男は重々しく
きょうのイソップ童話 → キツネとイヌ
きょうの江戸小話 → 平林

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1月5日の日本民話 あの世でことづけられた話

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1月5日の日本民話

あの世でことづけられた話

あの世でことづけられた話
奈良県の民話奈良県情報

 むかしむかし、ある山奥のお寺で、一人の若いお坊さんが修行(しゅぎょう)をしていました。
 お坊さんは何日も食事をせずに、だまって心の中でお経をとなえつづけていました。
 そんなある日の事、お坊さんの体がとつぜん動かなくなって、息が止まってしまいました。
 お坊さんのたましいは体からはなれて、フワフワと空中にただよいはじめたのです。
 ひろいお寺の境内(けいだい)をただよって、木の枝で休んだり、風にふかれて林の中に入ったりしていると、むこうから年をとったお坊さんのたましいがやってきました。
 年をとったお坊さんのたましいは、ニコニコした顔で、
「どうじゃ。わしについてこぬか。あの世を案内してやるぞ」
と、いって、若いお坊さんのたましいを、あの世見物につれていってくれたのです。
 あの世の広場を見ていると、重い石を運ばされたり、ウシにされたり、オニに追いかけられてムチでたたかれている人たちがたくさんいました。
 そこへ、こわそうな身なりをした人や、白い衣を着たやさしい顔の人など、いろいろな姿の人たちが通りかかりました。
「おっほほ。めずらしいものに出会ったな。あの一行はな、こっちの世へきて、新しく神さまになった人たちじゃ。いくさの神もおるし。学問の神もおる。うらみの神、たたりの神、しあわせの神、病の神、いろいろな神がおる」
 年をとったお坊さんのたましいが、ていねいに教えてくれました。
 しばらくすると、おじいさんたちの一行が通りかかりました。
 すると、その人たちが近よってきて、
「わしは谷川村(たにかわむら)の善兵衛(ぜんべえ)です。元気でいるから心配するなと、ぜひ、つたえてくだされ」
「わしは大沼村(おおぬまむら)の平助(へいすけ)です。秋になったら大好物のカキをそなえてくれと、つたえてくだされ。たのみますよ」
 などと、たくさんのことづけをたのまれました。
 若いお坊さんのたましいは、それをきいてうなずいていました。
「ずいぶんとたのまれたな。このまま連れて行こうかと思ったが、たのまれた以上、ちゃんとつたえてやらなければならんな」
 年をとったお坊さんのたましいは、不思議な事をいいました。
 そして、
「わしは用事があるから、先に帰りなさい。そこが近道じゃ。どこまでもどこまでも、まっすぐいけばよい」
と、帰りの道を教えてくれました。
 まっ暗な岩穴の中を、たましいがフワフワ飛んでいくと、いつのまにか若いお坊さんのからだにすいこまれていました。
 若いお坊さんは息をふきかえして、ふたたびこの世に生きかえったのです。
 息が止まってから、なんと十三日がたっていました。
 息をふきかえした若いお坊さんは、それからしばらくすると、あの世でたのまれたことづけをつたえるために、あちこちの村々をたずね歩いたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → イチゴの日
きょうの誕生花 → うらじろ
きょうの誕生日 → 1941年 宮崎駿(アニメ作家)

きょうの新作昔話 → 松屋のびんつけ
きょうの日本昔話 → じっと見つめていました
きょうの世界昔話 → 不思議なリンゴの木
きょうの日本民話 → あの世でことづけられた話
きょうのイソップ童話 → お百姓と息子たち
きょうの江戸小話 → たこあげ

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1月4日の日本民話 人食いザメとお坊さん医者

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1月4日の日本民話

人食いザメとお坊さん医者

人食いザメとお坊さん医者
岩手県の民話岩手県情報

 むかしむかし、あるところに、お坊さんがいました。
 このお坊さんは、もともとはお医者さんだったので、みんなからお坊さん医者とよばれています。
 ある日の事、お坊さん医者が、わたし船に乗りました。
 ところが船が海のなかほどまできた時、きゅうに動かなくなりました。
「おい、船頭(せんどう→船長)どうした? こんなところでとめられちゃ、どうにもならんではないか」
 お客さんがさわぎはじめると、船頭さんはこまった顔で言いました。
「実は、このあたりにはおそろしい人食いザメがいて、気に入った人を見つけるとこうして船を止めるのじゃ。きっとお客さんたちのなかに、気に入った人がいるのじゃろう」
 それを聞いて、お客さんたちは青くなりました。
「すまんが、お客さんたちの持っている手ぬぐいを海へ投げてくれ。サメは気に入った人の手ぬぐいだけをしずめるから」
 お客さんたちはしかたなく、手ぬぐいを海に投げました。
 すると、お坊さん医者の手ぬぐいだけが、しずんでしまいました。
 それを見て、お坊さん医者が、
「みなさん安心してください。わたしは僧で医者、どちらも人をたすけるのが仕事です。ここは喜んでみなさんをお助けしましょう」
と、言うなり、海へ飛込んだのです。
 人食いザメは待ってましたとばかりに、持っていた薬箱ごと、お坊さん医者を飲み込みました。
 さて、人食いザメに飲み込まれたお坊さん医者は、人食いザメのおなかの中でジッとすわったまま考えました。
(ここから出るのはかんたんじゃが、この人食いザメをこらしめなければ、いつまた人を食べたいと言いだすかわからない)
 そこでお坊さん医者は薬箱を開けて、とびきりにがい薬をあたりかまわずぬりつけました。
 おどろいたのは、人食いザメです。
 おいしそうな人間を飲み込んだと喜んでいたのに、そのにがいこと。
 とうとうがまんできずに、お坊さん医者をはき出してしまいました。
 それを見た船頭さんはあわてて船をこぎよせ、みんなでお坊さん医者を船に引きあげました。
「よかった。よかった」
「それにしてもサメのやつ、よくはきだしたものだ」
 そこでお坊さん医者は、人食いザメのおなかににがい薬をぬりつけたことをくわしく話してやりました。
「なるほど、これでもう二度と人を飲もうなんて思わんだろう」
「よし、お祝いだ」
 浜辺にもどった船頭さんが、さっそく酒もりの用意をしました。
 みんなはお坊さん医者をまん中にして、おどりながらうたいました。
♪くやしかったら、のんでみろ
♪サメもかなわぬ、お坊さん医者
♪ああ、こりゃこりゃ
 すると、海の中からさっきの人食いザメが顔を出して、
♪お前みたいな、にがいやつ
♪二度とはのむまい
♪ああ、こりゃこりゃ
と、うたったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 石の日
きょうの誕生花 → すいせん
きょうの誕生日 → 1944年 子門真人(歌手)

きょうの新作昔話 → 桂川(かつらがわ)の餅屋の娘
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1月3日の日本民話 どっちが本物?

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 1月の日本民話

1月3日の日本民話

どっちが本物?

どっちが本物?
兵庫県の民話兵庫県情報

 むかしむかし、山おくの一けん家に、木こりとおかみさんと、生まれたばかりの赤ちゃんがいました。
 ある日の事、木こりが仕事からもどってくると、いろりのそばに二人のおかみさんがすわっているのです。
「なんだ、これは?」
 顔も着ている着物もそっくりで、どっちが本当のおかみさんか見分けがつきません。
 おまけに二人とも赤ちゃんをだいていて、赤ちゃんの顔と着物もそっくりです。
(ははん。さては、タヌキのしわざだな)
 木こりはわざと平気な顔でおかみさんたちのよこにすわると、いろりの中に火ばし(ひばし→炭火などをつかむ金属製のはし)を入れました。
 いろりの火で、火ばしはまっ赤になりました。
 それをつかんで、木こりが言いました。
「はて、どっちが本物かな。わしの嫁なら耳を動かすはずだが」
 そのとたん、一人のおかみさんの耳がピクピクと動きました。
「お前がにせものだ!」
 木こりはいきなり、その動いた耳に火ばしをつきさしました。
「フギャーーー!」
 火ばしを耳にさされたおかみさんは、たちまちタヌキの姿に戻って、ころぶようににげていきました。
「しようのないタヌキだ」
 木こりはホッとして、おかみさんと赤ちゃんをだきしめました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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きょうの誕生日 → 1956年 小堺一機(タレント)

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1月2日の日本民話 天福地福

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 1月の日本民話

1月2日の日本民話

天福地福

天福地福
新潟県の民話新潟県情報

 むかしむかし、あるところに、正直なおじいさんと欲張りなおじいさんとが、隣同士で住んでいました。
 ある年の暮れ、二人が町で出会ったときに、
「正月の二日の夜にゃ、おたがいに、よい夢を見たいものだね」
「うん、福のさずかるよい夢をな」
と、話し合いました。
 そしておたがいに見た夢がどんな夢だったか、教え合うことにしました。
 正月の三日の朝、二人は庭のかきねの所で顔を合わせました。
 正月のあいさつもそこそこに、
「どうだったね、よい夢を見たかね?」
 欲張りなおじいさんが聞きました。
「見た見た、おらの夢は、天から福をさずかった夢じゃよ」
 正直なおじいさんが教えると、
「そうか、おらの夢は、地から福をさずかった夢じゃった」
 欲張りなおじいさんも教えました。
「どちらも、よい夢だったな」
「そうだ、今年は楽しみだ」
と、言い合って、二人ともごきげんでした。
 正月が過ぎて、いく日かたったある日の事。
「今日はずいぶんとよい天気じゃ。マメでもまいてみよう」
 正直なおじいさんが、裏の畑に出てたがやしていると、くわの先がガチンと石にぶつかりました。
「はて? こんな所に、石などあるはずがないのだが」
 そう思いながらもその石を取りのけると、下に大きなかめが埋まっていました。
 正直なおじいさんがかめのふたを取って見ると、中には大判小判がぎっしり入っていて、まぶしいくらいに光っています。
「これはたまげた。この宝は、となりのじいさまが夢に見た地福にちがいない。なんといっても、地からさずかった宝だからな。早く行って、知らせてやらにゃあ」
 正直なおじいさんは、さっそく畑仕事をやめて、となりのおじいさんに知らせに行きました。
「ほれ、お前さんの夢に見た地福が、おらの畑から出たぞ。石の下からかめが出てな、大判小判がたっぷり入っておった。早く行って取ってくりゃいい」
 正直なじいさまは、かめが出た所を教えてやりました。
 そして家に帰ると、その事をおばあさんに話してやりました。
「ばあさま、おらの畑から地福が出てな、となりのじいさまに知らせてやったら、えらく喜んでおったぞ。すぐに大判小判の入ったかめを取って来るじゃろう」
 すると、おばあさんは、
「そら、よい事をなさった。さあ、火にでも当たらっしゃい」
と、気持ちよく答えて、欲のないおじいさんをほめてあげました。
 さて、となりの欲張りなおじいさんは、大いそぎでかめの出た畑へ飛んで行きました。
 かめは、教えられた所にちゃんとありました。
「今年はなんてよい年なんじゃ! そうれ、♪大判小判がザックザク」
 欲張りなおじいさんは鼻歌を歌いながら、かめのふたを取ってビックリ。
 かめの中には大判小判どころか、気味の悪いヘビが何匹も入っていて、ニョロニョロとはい回っているではありませんか。
「あの、くそったれじじいめが、よくもおらをだましやがったな! これが大判小判たっぷりだと! くそっ!」
 欲張りなおじいさんは、顔をまっ赤にして怒りました。
 そして、
「今度はおらのほうが、あのじじいめをおどかしてやらにゃあ」
と、言って、ふたをしっかりすると、かめを背負って帰りました。
 家に着くと、欲張りなおじいさんは長いはしごを持ち出して、となりの家の屋根にのぼりました。
 屋根の上につき出ている、けむ出しの窓から中をのぞいてみると、おじいさんとおばあさんはいろりに火を赤あかと燃やして、なにやら楽しそうに話し合っていました。
「人をだましておいて、いい気なもんだ」
 欲張りなおじいさんは、ますます腹を立てました。
「さあ、これでもくらえ!」
 欲張りなおじいさんは、持って来たかめのふたを取ると、ガバッと中のものをおじいさんたちの頭めがけて落としました。
 ところが不思議な事に、かめの中から出たものはヘビなんかではなく、本当の大判小判だったのです。
「ありゃあ、大判小判が天井から降って来たぞ。おかしなこともあるもんだて。いや、これこそおらが夢に見た天福だ。ばあさま、天福がさずかったんだ!」
「ほんとになあ」
 二人は大喜びです。
 正月二日の夜に見た夢が本当になり、正直なおじいさんとおばあさんは大変なお金持ちになって、いつまでも楽しくくらしたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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きょうの誕生花 → たけ
きょうの誕生日 → 1974年 さとう珠緒(俳優)

きょうの新作昔話 → いも正月
きょうの日本昔話 → 酒呑童子
きょうの世界昔話 → オー・ツール王とガチョウ
きょうの日本民話 → 天福地福
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元旦の日本民話 死の国へはこぶ火の車

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 1月の日本民話

元旦の日本民話

死の国へはこぶ火の車

死の国へはこぶ火の車
東京都の民話東京都情報

 むかしむかし、あるところに、又吉(またきち)というならずものがいました。
 若いころからのならずもので、けんかや賭け事はもちろんのこと、ひどいときには借金取りの用心俸(ようじんぼう)になって、ねている病人のふとんまではぎとったといいます。
 その又吉もすっかり年をとり、一人娘の家で病気の体をいやしていました。
 又吉の娘は近所でも評判のとてもやさしい娘で、おむこさんと一緒に又吉のめんどうをいっしょうけんめいみていました。
 ところが、又吉は日に日によわっていくばかりです。
 医者から、
「いよいよ、今夜あたりがとうげだ」
と、いわれた日の夜、家のすぐ近くにひとだまが現れました。
 それを見た人たちは、
「なにか不吉な事が、おきなければいいが」
と、ビクビクしていました。
 ま夜中ごろになって、又吉の具合が急に悪くなりました。
 おどろいた娘はおむこさんにたのんで、すぐに医者をつれてきてもらいました。
 医者はむずかしい顔をして、又吉の手をとりました。
「心臓がひどく弱っている。でも、今夜がんばれば、まだ少しは持つだろう」
 ところがそのとき、まわりが急に明るくなったかとおもうと、火の車を引く赤鬼が現れました。
 おどろいて逃げようとする又吉を、赤鬼はいきなりだきあげて、火の車にのせました。
「いやだ! まだ死にたくない!」
 どこにそんな力があったのかと思うくらい、又吉は大声をはりあげてもがきました。
 娘とおむこさんも、なきながら手をあわせてたのみました。
「おねがいです! どうか、つれていかないでください」
 あまりの出来事に、医者はうろうろするばかりです。
 なきさけぶ家の者をあとにして、やがて赤鬼の引く火の車は部屋を出て、又吉をのせたままはるか東の空にのぼっていったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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きょうの誕生花 → まつ
きょうの誕生日 → 0574年 聖徳太子

きょうの新作昔話 → 助けたツルの恩返し
きょうの日本昔話 → ネコがネズミをおいかけるわけ
きょうの世界昔話 → ミツバチマーヤの大ぼうけん
きょうの日本民話 → 死の国へはこぶ火の車
きょうのイソップ童話 → よくばりなイヌ
きょうの江戸小話 → ぞうきんとお年玉

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