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2008年11月

11月30日の日本民話 キツネとタヌキのばけくらべ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 11月の日本民話

11月30日の日本民話

キツネとタヌキのばけくらべキツネとタヌキのばけくらべ

キツネとタヌキのばけくらべ
京都府の民話京都府情報

 むかしむかし、ある村のお宮さんに、化けるのが上手なキツネが住んでいました。
 それから村のお寺にも、化けるのが上手なタヌキが住んでいました。
 ある日の事、キツネとタヌキが村の中で、バッタリと顔を合わせました。
「キツネどん、お前さんは化けるのが、とてもうまいらしいね」
と、タヌキが言いました。
「いやいや、タヌキどん、お前さんこそうまく化けるそうじゃないか」
と、キツネが言いました。
 でも、二匹でほめ合っているうちに、
「そんなら、どっちの化け方がうまいか、くらべてみようじゃないか」
と、いうことになったのです。
「では、あしたの朝、お宮さんにきてくれ。そこで化け比べをしよう」
と、キツネが言いました。
「いいとも。もしキツネどんが勝てば、おらが村を出ていく。そのかわりおらが勝ったら、キツネどんが村を出ていく。それでいいいな」
と、タヌキが言いました。
「ようし、わかった」
 キツネは大急ぎで、お宮さんにもどっていきました。
 タヌキも大急ぎで、お寺へもどっていきました。
 さて次の日の朝、タヌキがお宮さんへいってみるとキツネの姿がありません。
(おかしいな。まさか逃げたんじゃあるまいな)
 まわりをキョロキョロ見ていたら、社(やしろ)の前に大好きなあずきご飯がそなえてありました。
(しめしめ、キツネが現れる前に腹ごしらえだ)
 タヌキがあずきご飯に口をつけようとしたとたん、あずきご飯がパッとキツネに変わりました。
「わあっ! なんだ、キツネどんか」
 タヌキがビックリすると、キツネがいばって言いました。
「どんなもんだい。今日はおらの勝ちだ」
「しかたがない。今日はおらの負けだ。そのかわり明日の朝は、お寺へきてくれ」
 タヌキが、くやしそうに言いました。
 次の日の朝、キツネはお寺へ出かけていきました。
 でも、タヌキの姿がありません。
(もしかして、おらに勝てないと思って、逃げてしまったのかな?)
 まわりをキョロキョロ見ていたら、お堂の前にあぶらあげがそなえてありました。
(なんてうまそうなあぶらあげだ。タヌキが出てくる前にいただこう)
 キツネがあぶらあげにかぶりつこうとしたとたん、あぶらあげがパッと消えて、タヌキが現れました。
「どんなもんだい。まんまとだまされたな」
 今度は、タヌキがいばって言いました。
「まいった、まいった。おら、本物のあぶらあげかと思った」
 キツネが、頭をかきました。
 これで勝負は引き分けです。
 キツネとタヌキの二匹はそれからもこの村にいて、ますます化け方のうでをみがき、どっちも村の人たちから化け名人と言われたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → カメラの日
きょうの誕生花 → あし(よし)
きょうの誕生日 → 1967年 田中章 (芸人)

きょうの新作昔話 → 酒つぼのヘビ
きょうの日本昔話 → もうはんぶん
きょうの世界昔話 → 魔法のツボ
きょうの日本民話 → キツネとタヌキのばけくらべ
きょうのイソップ童話 → イヌの家
きょうの江戸小話 → てんぐのさいなん

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11月29日の日本民話 不思議な火鉢

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11月29日の日本民話

不思議な火鉢

不思議な火鉢
沖縄県の民話沖縄県情報

 むかしむかし、沖縄には、とかしきぺークーという、とんちの名人がいました。
 ある冬の事です。
 冬でもあたたかい沖縄ですが、この冬は特別に寒くて、だれもがこまっていました。
 でも、ぺークーは火ばちを持っていたので、どんなに寒くても平気です。
 すると、村の金持ちのだんながやってきて、
「火ばちとは、めずらしいものをお持ちですね」
と、しきりにうらやましがりました。
「よければ、あなたにさしあげましょうか?」
「えっ、本当ですか?」
「ええ、あげますとも。この火ばちは不思議な火ばちで、だれにあげても、じきにもどってくるのですよ」
 ペークーは、おおまじめにいいました。
「では、さっそくいただきましょう」
 金持ちのだんなが火ばちをかかえてかえろうとすると、ぺークーがいいました。
「大事な火ばちをあげたのですから、わたしが遊びにいったときには、ごちそうしてくださいよ」
「ごちそうしますとも。いつでもおでかけください」
 金持ちのだんなは、喜んでかえっていきました。
 ぺークーはその日のうちから、金持ちのだんなのお屋敷へ出かけました。
 だんなは約束通り、ペークーを酒や料理でもてなしました。
 それからというもの、ペークーはくる日もくる日もだんなのお屋敷へ出かけて、朝から晩まで飲んだり食べたりするのです。
 さすがのだんなも、これにはこまってしまい。
「このままでは、屋敷がつぶされてしまう。もったいないが、火ばちはぺークーにかえそう」
 だんながぺークーの家に、火ばちをかえしにいくと、
「本当に、よくかえってくる火ばちだ。なぜかえってくるのか、どうもよくわからん」
と、ぺークーは、首をひねったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → いい服の日
きょうの誕生花 → ちゃ
きょうの誕生日 → 1956年 定岡正二 (タレント)

きょうの新作昔話 → 佐渡二郎(さどじろう)と安寿姫(あんじゅひめ)の母
きょうの日本昔話 → おスマばあさん
きょうの世界昔話 → 北風のくれたテーブルかけ
きょうの日本民話 → 不思議な火鉢
きょうのイソップ童話 → けがをしたオオカミ
きょうの江戸小話 → タコのだしがら

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11月28日の日本民話 クジラになったお坊さん

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11月28日の日本民話

クジラになったお坊さん

クジラになったお坊さん
茨城県の民話茨城県情報

 むかしむかし、ある海辺(うみべ)の村に、宝蔵寺(ほうぞうじ)というお寺がありました。
 このお寺では、お寺のお金はお坊さんが村の漁師(りょうし)たちと相談をしてつかうきまりになっていたのですが、ある時、ほかのお寺から新しくやってきたお坊さんが、
「なあに、あとで話せばよい。ちょっとかりておこう」
と、村の漁師たちにないしょで、お寺のお金をつかってしまったのです。
 それを知った、村の漁師たちは怒って、
「あの坊さんは、とんでもないことをする。お寺をまかせておくことはできん。こらしめてやる」
と、みんなでどうするかを、話し合いました。
「しかし相手はお坊さんだから、手あらなことはやめよう」
と、いう人もいましたが、気のあらい他の漁師たちは、
「なにをいう。ここは一度、きつくこらしめてやらなくては」
と、ある夜、お坊さんをお酒にさそいだして、よっぱらったお坊さんをお寺の古池(ふるいけ)へ投げこんでしまったのです。
 泳げないお坊さんは、そのままおぼれ死んでしまいました。
 それから何年かたった、ある年の正月の朝のことです。
 浜の漁師たちは、沖(おき)でしおをふきあげるクジラを見つけました。
 よろこんだ漁師たちはすぐに村から舟をだして、沖へむかいました。
 そして手分けをして逃げるクジラをとりかこんでいきましたが、モリをかまえた漁師たちがクジラをしとめようとしたとき、あばれだしたクジラが大きな尾びれを、とりかこんだ舟にたたきつけてきたのです。
 何せきもの舟が木切れのようにこわされ、たくさんの漁師たちが死んでしまいました。
 村では犠牲者(ぎせいしゃ)たちの霊(れい)をなぐさめようと、供養塔(くようとう)をたてましたが、犠牲者のほとんどが宝蔵寺のお坊さんの事件にかかわっていた人たちでした。
 そんなことから、
「あのクジラは、お坊さんの生まれかわりではないのか? 池に投げこまれた坊さんのたましいが、クジラになってしかえしをしたにちがいない」
と、いいつたえられるようになったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 太平洋記念日
きょうの誕生花 → サンダーソニア
きょうの誕生日 → 1967年 原田知世 (俳優,歌手)

きょうの新作昔話 → 生き返ったカジカ
きょうの日本昔話 → 三枚のお札
きょうの世界昔話 → イワンと子ウマ
きょうの日本民話 → クジラになったお坊さん
きょうのイソップ童話 → いっしょに旅をするロバとイヌ
きょうの江戸小話 → くじらの絵

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11月27日の日本民話 カッパ岩

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11月27日の日本民話

カッパ岩

カッパ岩
宮崎県の民話宮崎県情報

 むかしむかし、ある川の中に、一匹のカッパがすんでいました。
 ある日の事、子どもたちが大勢集まって、川の中に白い小石を投げ込んではひろってくるという遊びをしていました。
 するとそこへ、川から顔を出したカッパが言いました。
「楽しそうだな。おれも仲間に入れてくれ」
 子どもたちは、カッパが子どもの尻子玉(しりこだま)を取って食べる怖ろしいやつだと聞いていたので、みんな逃げだそうとしていました。
 するとカッパは、
「おれと勝負をして、勝った者にはこの魚をやるぞ」
と、くしにさした魚を見せたのです。
「よし、それなら勝負しよう」
 こうしてカッパと子どもたちは勝負を始めましたが、何度やってもカッパには勝てません。
 たまりかねた、一番大きな子どもが、
「よし、今度はおらが相手になってやる」
と、小石を深いところへ投げ込んで、カッパと一緒に川へ飛び込んだのです。
 子どもたちは、どっちが早く石をひろって来るかを見まもっていました。
 でも、いくら待っても、どちらもあがっては来ません。
 この話しを子どもたちから聞いた村人たちは、夜になってもかがり火をたいて探しましたが、とうとう子どもは見つかりませんでした。
 さて次の日、村人たちが子どもをさがしていると、昨日のカッパが姿をあらわしたのです。
 村人たちはカッパつかまえると、子どもをどこへやったと問いただしました。
 するとカッパは、
「子どもの尻があまりにもうまそうだったので、尻子玉を抜いて食っちまった。そしたら子どもはそのまま水に流されて、どこかへ行ってしまった」
と、言うのでした。
「なんだと! このカッパめ、たたき殺してやる!」
 村人たちが、カッパを殴りつけると、
「許してください。おれが悪かった」
と、カッパは涙を流しながらあやまりました。
 それを見た村人たちは、
「じゃあ、二度と子どもの尻子玉は抜かないと約束するなら許してやる。川の中にある、あの大きな岩が腐(くさ)るまでは、決して悪さをしてはならんぞ」
と、言って、カッパを放してやったのでした。
 それからというもの、カッパはこの約束を守って悪さをしなくなりました。
 それでも時々は、この岩に登って来ては、
「この岩、まだ腐らんのじゃろか」
と、いいながら、岩を水かきのある手でなで回すという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ノーベル賞制定の日
きょうの誕生花 → りゅうのひげ
きょうの誕生日 → 1970年 セイン・カミュ (タレント)

きょうの新作昔話 → 寝覚の床の主
きょうの日本昔話 → すもうとりとびんぼうがみ
きょうの世界昔話 → ヘビの足
きょうの日本民話 → カッパ岩
きょうのイソップ童話 → ゼウスにお願いするロバたち
きょうの江戸小話 → 遠めがね

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11月26日の日本民話 鳥になったおばあさん

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11月26日の日本民話

鳥になったおばあさん

鳥になったおばあさん
沖縄県の民話沖縄県情報

 むかしむかし、鉄砲うちのおじいさんがいて、毎日山へ行っては、鳥やけものをとっていました。
 ある日の事、いつものように山へ出かけると、今まで見たこともない美しい金色の鳥が飛んできました。
(なんて美しい鳥だ。もしかして、神さまの鳥かもしれないぞ)
 おじいさんは、鉄砲をうつのをやめて見とれていました。
 すると金色の鳥が、おじいさんのそばにきて言いました。
「どうしてわたしをうたないのですか? 鳥をうたなくてはくらしていけないのでしょう」
「いいや、わしはばあさんと二人ぐらし。お前一羽をうたなくても、なんとかくらしていける。お前みたいな美しい鳥をうつなんて、わしにはできないよ」
 おじいさんが、そう言うと。
「そうですか。では二人が楽にくらしていけるようにしてあげますから、これからは鳥やけものをとるのはやめてくださいね」
 そう言ったかと思うと、金色の鳥はまっすぐおじいさんの家の方へ飛んでいきました。
(やっぱり、神さまの鳥かもしれないぞ)
 おじいさんが不思議に思いながら、家に帰ってみるとどうでしょう。
 今まで住んでいたボロ小屋が、りっぱなお屋敷にかわっていたのです。
「こりゃ、たまげた!」
 おじいさんがビックリしていると、中からおばあさんが出て来て言いました。
「りっぱな身なりの人がやってきて、あっというまに屋敷をたて、米をどっさり運んでくれたのです。もう、何が何やら」
 そこでおじいさんは、山で会った金色の鳥のことを話してあげました。
「そうですか。するとこれは山の神さまのおめぐみかもしれませんね。これからはもう、鳥やけものをうつのはやめてくださいね」
「ああ、もう鉄砲うちはやめだ。これからは二人でのんびりくらそう」
 おじいさんはその時から鉄砲うちをやめて、おばあさんと二人でしずかにくらしました。
 仕事をしなくても、お金も食べ物もたくさんあるので、少しもこまりません。
 ところがそのうちに、このくらしにあきてきたおばあさんが言いました。
「ああ、たいくつで死にそう。鳥みたいに空を飛ぶことができたら、どんなに楽しいでしょうね。おじいさん、一度でいいから空を飛べるように、金色の鳥にたのんできてくれませんか」
 おばあさんがそう言うので、おじいさんは山へ出かけていって、金色の鳥に言いました。
「すまないが、おばあさんの願いをかなえてあげておくれ」
「わかりました。すぐ飛べるようにしてあげましょう」
 おじいさんが家にもどると、どうでしょう。
 おばあさんは一羽の烏になって、屋根の上に止まっているではありませんか。
 鳥になったおばあさんは、おじいさんに言いました。
「空を飛びたいと言っても、まさか鳥になるなんて。早く人間にもどしてください」
 おじいさんはあわてて山へもどると、金色の鳥を探しましたが、金色の鳥は二度と姿を現しませんでした。
 おじいさんは鳥になったおばあさんをかわいがりながら、一人でくらすようになったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ペンの日
きょうの誕生花 → シャコバサボテン
きょうの誕生日 → 1942年 カルーセル麻紀 (タレント)

きょうの新作昔話 → 山の三太郎
きょうの日本昔話 → 空飛ぶ米俵
きょうの世界昔話 → キツネのさいばん
きょうの日本民話 → 鳥になったおばあさん
きょうのイソップ童話 → お百姓と運命の女神
きょうの江戸小話 → 助太刀

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11月25日の日本民話 右源太とばけネコ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 11月の日本民話

11月25日の日本民話

右源太とばけネコ

右源太とばけネコ
熊本県の民話熊本県情報

 むかしむかし、根子岳(ねこだけ→熊本県の阿蘇市)のふもとの村に、右源太(うげんた)という鉄砲(てっぽう)の上手な男がいました。
 右源太はこれまで九百九十九頭のイノシシをいとめていて、今度いとめれば千頭です。
 ある年の冬の寒い夜、村はずれの野でたき火をしながら獲物(えもの)をまっていると、やみの中から目も口も鼻もない、のっぺらぼうのバケモノがやってきて、たき火にあたりはじめました。
(こいつは、へんなものがやってきよったな)
 右源太が目を合わさないように下をむいていると、のっぺらぼうが右源太を下からのぞき込み、
「右源太よ、おめえは声がでかいときくが、今日はおめえと、さけびくらべをしたいと思ってな」
 のっぺらぼうですから、どこに口があるのかわかりませんが、つるつるの顔をしわくちゃにしながら言ったのです。
 逆らうと、何をされるかわかりません。
 右源太は、しぶしぶ承知(しょうち)しました。
 まずバケモノが、根子岳のほうをむいてさけびました。
「ウォオオオオオオオーー!!」
 その声の大きさに、山のてっぺんの岩がガラガラとくずれおちたほどです。
「ほれ。今度はおめえの番じゃ。やってみろ」
 このままでは、負けは決まっています。
 右源太は、ちょっと考えてから、
「おれは、このつつからさけぶからな」
と、いうと、玉がこめてある鉄砲をバケモノにむけました。
「なんじゃ、これは?」
 バケモノが鉄砲の先に顔を近づけたとき、右源太は鉄砲の引き金をひきました。
 ズドーン!
 ものすごい音がして、ビックリしたバケモノはどこかへすっとんでしまいました。
 夜が明けてから、バケモノはどこへいったのだろうとさがしにいくと、根子岳の岩の下で手ぬぐいをかぶったおばあさんが、横になっているおじいさんと話しをしていました。
「おばあよ、洗濯ばあさんに化けて、あいつをかみ殺してくれ。おらはもう命はねえ」
 横になっているおじいさんがいうと、おばあさんは、
「わかった、わかった。約束する。きっとかたきはとってやる」
と、こたえていました。
 それを聞いた右源太は、二人に見つからないように、そっと家へ帰ってきました。
 さてしばらくすると、一人のおばあさんが右源太の家にやってきました。
 そして、
「洗濯物があったら、おらに洗わしてくれろ」
と、いうのです。
(ははん。さっそくきやがったな)
 おばあさんの正体に気づいた右源太は、
「ああ、それは助かる。たくさんあるから洗ってくれろ。だがな、うちはむかしから、三べん戸口をいったりきたりしなけりゃ、家の中に人を入れんことにしておるんじゃ」
 それを聞いたおばあさんは、戸口の前を行ったり来たりしました。
 そのあいだに右源太はおばあさんにねらいをさだめて、鉄砲の引き金をひきました。
 ズドーン!
 するととたんにあたりがまっ暗になり、おばあさんの姿はどこかへ消えてしまいました。
 右源太が根子岳の岩の下へいってみると、岩穴の中で大きなネコが二匹、頭をならべて死んでいたのです。
 この二匹はむかしから根子岳にすんでいた化けネコで、今までに何人もの人が殺されていたのです。
 根子岳はこのときから、猫岳になったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ハイビジョンの日
きょうの誕生花 → パンパスグラス
きょうの誕生日 → 1962年 寺門ジモン (芸人)

きょうの新作昔話 → 日田(ひた)どん
きょうの日本昔話 → ネコ岳のばけネコ
きょうの世界昔話 → オンドリと風
きょうの日本民話 → 右源太とばけネコ
きょうのイソップ童話 → ワシとキツネ
きょうの江戸小話 → よく見るがいい

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11月24日の日本民話 蛇の天上のぼり

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11月24日の日本民話

蛇の天上のぼり

蛇の天上のぼり
三重県の民話三重県情報

 むかしむかし、あるところに、それはそれは大きなカキの木がありました。
 そのカキの木には、カキの実がすずなりになっています。
 村人たちは、ここを通るたびに見あげては
「たくさんのカキの実がなっているなあ」
と、いっていました。
 ある日の事、急にあらしになって空が暗くなり、バラバラと大つぶの雨が降って来ました。
 ところが鈴なりになっているカキが、一つとして落ちません。
 村人たちが不思議に思っていると、急にザァーザァーと、草の上をはうような音が聞えてきました。
 しばらくすると天から大蛇(だいじゃ)が下りて来て、すずなりになっていた柿の実を一つ、また一つと食べて、とうとうみんな食べてしまったのです。
 そこで村人たちは、
「大蛇が、柿の実をみんな食ってしもうた」
と、口ぐちにいっていました。
 しかし、さすがの大蛇もあまりにも食いすぎたのか、おなかをゴロゴロならしながら天へとのぼっていきました。
 やがて、ふたたび大つぶの雨が降って来ると、村人たちは、
「くんくん。おや、この雨は、どうも柿くさいぞ」
と、いって逃げだしました。
 大蛇が天にのぼって行くときに、おしっこをしていったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → オペラの日
きょうの誕生花 → がまずみ
きょうの誕生日 → 1974年 山本太郎 (俳優)

きょうの新作昔話 → 千亀女(せんかめじょ)
きょうの日本昔話 → 打たぬのに、鳴るたいこ
きょうの世界昔話 → 逃げ出したパンケーキ
きょうの日本民話 → 蛇の天上のぼり
きょうのイソップ童話 → 気がくるったライオンとシカ
きょうの江戸小話 → よいお手本

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11月23日の日本民話 もんじゃの吉

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11月23日の日本民話

もんじゃの吉

もんじゃの吉
岩手県の民話岩手県情報

 むかしむかし、南部の国(なんぶのくに→岩手県)のあるいなかに、「もんじゃの吉(きち)」と、いう、とんちのきく男がいました。
 ある日の事、吉が山を歩いていると、キツネたちがあつまって化け比べをしながら話しをしていました。
長者(ちょうじゃ)のせがれが嫁を探しておるそうだが、なかなか見つからんらしい」
 それをきいた吉は、いいことを思いついてキツネたちにいいました。
「やあやあ、キツネどん。うまく化けるもんだなあ。実は長者のせがれが嫁をさがしとるんじゃが、お前たち、花嫁と嫁入りの行列(ぎょうれつ)に化けてくれないか。長者にはあぶらあげでもあずきのごはんでも、たくさん用意させるから」
 それを聞いたキツネは大喜びで、吉の話しに賛成しました。
 それから吉は、長者の屋敷へ飛んでいって、
「いい嫁さんが見つかったから、おれが世話をします。あぶらあげやあずきごはんを用意しておいてくれ。今夜にも、さっそく嫁入りさせるでな」
 喜んだ長者は、さっそく準備にとりかかりました。
 さてその夜、吉は仲人(なこうど→結婚の仲介をする人)になって、嫁入り行列の先頭にたちました。
 花嫁道具を運ぶ男たちや花嫁の親戚(しんせき)の人たちが、ちょうちんを手に長者の家にむかいました。
「大した花嫁行列だ。ごくろうだった。さあさあ、あがってくれ」
 長者の家の座敷には、ごちそうやお酒も用意しており、大変にぎやかな結婚式になりました。
 吉はさんざんごちそうになって、おみやげもたくさんもらってかえることにしました。
 行列の人たちも、ひきあげました。
 次の朝、長者の屋敷は大さわぎになりました。
 家中がキツネの足あとだらけで、花嫁も見あたりません。
「さては、キツネにだまされたか。もんじゃの吉め、キツネをそそのかして、よくもこのわしにはじをかかせたな!」
 長者は、吉の家へ飛んでいって、
「やい、インチキ仲人! ごちそうと酒のお金をかえせ!」
と、カンカンに怒りました。
 ところが吉は、すました顔で、
「へっ? 何の事か、身におぼえがありません。おそらくキツネのやつが、わしにばけてイタズラしたんでしょう。近ごろのキツネは、悪知恵がはたらきますからね」
「ぐぐぐっ・・・」
 吉は見事、長者をおいかえしてしまいました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 勤労感謝の日
きょうの誕生花 → みかん
きょうの誕生日 → 1976年 三瓶 (芸人)

きょうの新作昔話 → 四郎と猫
きょうの日本昔話 → 上と下
きょうの世界昔話 → 悪魔のすすだらけきょうだい
きょうの日本民話 → もんじゃの吉
きょうのイソップ童話 → モミの木とイバラ
きょうの江戸小話 → 風穴

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11月22日の日本民話 だんだらぼっち

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11月22日の日本民話

だんだらぼっち

だんだらぼっち
三重県の民話三重県情報

 むかしむかし、志摩半島(しまはんとう)おきの大王島(だいおうじま)には、だんだらぼっちという一つ目の大男がすんでいました。
 その大男はものすごい力持ちで、漁師たちのとった魚を船ごと持っていってしまうほどです。
 だから、だんだらぼっちが来ると村は大変なさわぎになります。
「だんだらぼっちだー! はやく逃げろ!」
 だんだらぽっちはお腹がすくと村へやってきては、逃げ回る村人たちや家をふみつぶしながら食べ物を探して村中をあらしまわします。
 こまった村人たちは、村の代表の網元(あみもと)の家に集まって相談しました。
「いったいどうしたら、だんだらぼっちが村に来なくなるだろう? このままでは、村はほろんでしまうぞ!」
 網元(あみもと)が言うと、集まった村人の一人が言いました。
「そうじゃ、大きな落とし穴をつくったらどうじゃ?」
「うーん、だんだらぼっちが落ちる穴となると、そうとう大きな穴をほらなくてはならんぞ。それに、どうやってその穴に落とすんだ?」
「それはだな、・・・まだ考えとらん」
 また、みんなはこまってしまいました。
「そうだ。ええ方法があるぞ! 酒をたらふく飲ますんじゃ」
「おおっ、それでどうするんじゃ?」
「わしらが穴の方へ逃げるんじゃ。すると、だんだらぼっちが追っかけてきて、穴の中にストーンと」
「で、その後はどうするんじゃ?」
「えーと、・・・そうじゃ、魚のアミをぐるぐるまきにかぶせりゃええ」
と、いうわけで、村人たちはその夜のうちに大きなあなをほりました。
 そして、酒だるを五つも用意して、夜の明けるのを待ちました。
 夜が明けると、だんだらぼっちが酒のにおいにつられてやってきました。
「おーい、だんだらぼっちがくるぞ」
 木の上の見はりが酒だるの番に言ったときには、だんだらぼっちは、もう酒だるの近くまで来ていました。
「くんくん。いいにおいじゃ。おい、これは酒でねえか?」
 だいだらぼっちにたずねられて、網元がいいました。
「へい、今日はめでてえ日なんで、だんだらぼっちさまに、これを飲んでもらおうと」
「で、きょうはなんの日だ?」
「へえ、それがその、じつは、あっしの生まれた日なんで」
「ふーん」
 だんだらぼっちは、すぐに酒に手をのばしました。
「まあとにかく、それはめでてえな。うーん、これはうめえ、うめえ酒だ」
 だんだらぼっちは、あっというまにたるを空っぽにすると、
「うーい、もっと飲ませろーい」
 よっぱらっただいだらぼっちは、もっともっとと酒をさいそくします。
「へいへい、ただいま。さあ、酒はこっちで。どうぞ、どうぞ」
 案内する村人たちに、だいだらぼっちがついていきました。
「酒はどこじゃー!」
「あっちです」
 網元が指さした方向ヘ、だんだらぼっちが足を出したとたん、
 ドデーン!
「やったーっ!」
 だんだらぼっちが穴に落っこちたので、村人たちは大喜び。
 ところが、
「ういーっ、酒はどこじゃあー」
と、だいだらぼっちは穴から立ちあがったのです。
「だめじゃ、穴が小さすぎた。逃げろ!」
 その日だんだらぼっちは、さんざんあばれまわって帰っていきました。
 村人たちはその夜、また網元のところへ集まって相談しました。
「落とし穴くれえじゃ、とてもだめじゃ。ほかに何かええ方法はねえか?」
 そこへ網元の子どもが顔を出して、こんな事を言いました。
「お父ちゃん、おらにいい考えがあるよ」
「なんじゃ。子どもが口をはさむ事ではないが。まあ、とにかく言ってみろ」
 子どもは網元の耳に口をよせて、小声でひそひそといいました。
「どう?」
「うーん、子どもの考えとしては、まあまあじゃな」
と、いうわけで、村人たちはさっそく準備をはじめました。
 それから何日かたって、また、だんだらぼっちがやってきました。
「はらへったぞーっ、なにかうめえものないかー」
 そういいながらやってきただんだらぼっちは、大きなかごを見つけて村人にたずねました。
「おい、こりゃあ、なんだ?」
「はい、これは考えるだけでもおそろしい、千人力の男が使うタバコ入れでごぜえます。二、三日前からこの村にやってきました。その大男はあなたなど、そばへもよれないほどの強いやつでございます」
 それを聞いて、だんだらぼっちはビックリです。
「そんなやつが、この村にいるのか?」
 だんだらぼっちがおそるおそる歩いていくと、こませぶくろという、太さが一かかえ半もある、大きな魚のえさぶくろがほしてありました。
「これは、なんじゃ?」
「へい、千人力の男がはく、ももひきでごぜえます。その男のでっけえことといったら、あなたさまなんぞ、まるで子どもみてえなもんでごぜえます」
「このおれが、子どもみたえだと・・・」
 だんだらぼっちは、だんだんこわくなってきました。
 そして今度は、大きなアミがほしてあるのが目に入りました。
「こ、これは、なんじゃあ?」
「これは、千人力の男がきる着物です。ですが、これでも短くて、足が半分ほど出てしまうのです」
「そ、そんなにでっけえのかっ!」
「でけえのなんのって。なんにしろあなたさまが、子どもみてえなものですから。それから千人力の男は、こんなこと言っていました。『おめえたちは小さすぎてたよりない。もっと大きいやつがいたら、マリのようにほうりなげて遊んでやる』と」
 だんだらぼっちは、ブルブルとふるえ出しました。
「お、おれ、もう帰るわ」
と、言って、ふと足もとを見ました。
「こ、これは、なんだ?」
 大きなむしろのようなものの上に、だんだらぼっちと村人たちは立っていたのです。
 網元がこたえました。
「ごらんのとおり、わらじでごぜえます」
「わわ、わ、ら、じ?」
「千人力の男がはくわらじでごぜえます。もうすぐ、ここへはきかえにくるとおもいますよ」
「ここへ、くるじゃと!」
 こんな大きなわらじをはく男につかまったらたいへんと、だんだらぼっちはあわてて逃げて行きました。
 そして、二度と村へはやってこなかったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ボタンの日
きょうの誕生花 → さんしょう
きょうの誕生日 → 1975年 aiko (歌手)

きょうの新作昔話 → 別所温泉
きょうの日本昔話 → キツネとクマ
きょうの世界昔話 → 三匹の子ブタ
きょうの日本民話 → だんだらぼっち
きょうのイソップ童話 → 女とメンドリ
きょうの江戸小話 → 貧乏神の好物

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11月21日の日本民話 どじょうのなべ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 11月の日本民話

11月21日の日本民話

どじょうのなべ

どじょうのなべ
長崎県の民話長崎県情報

 むかしむかし、あるところに、やりくりやりべえという人がいました。
 ある日、お母さんがとうふを食べたいというので、やりべえはとうふやにいって、とうふを一丁かいました。
 その帰り道、若者たちがナベをかこんで、これからドジョウ汁を作ろうとしているところに出会いました。
 ナベには、うまそうなドジョウがたくさん泳いでいます。
 名案を思いついたやりべえは、若者たちにたのみました。
「すまんが、おっかあに食わせるとうふを、ついでに煮てもいいかな」
「ああ、勝手に使うがいい」
「それは、すまんことで」
 おしゃべりに夢中な若者たちは、やりべえの悪だくみに気づきません。
 ナベのお湯があたたまってくると、ドジョウはあつくてたまらず、冷たいとうふに次々ともぐりこみました。
 やりべえは、ドジョウが一匹のこらず、とうふにもぐりこむのを見届けると、
「おおっ、そうじゃ、急ぎの用を思い出したので失礼する」
と、言って、とうふをひきあげると、急いで家に帰っていきました。
 やがて、若者たちはおしゃべりを終えて、
「さあ、もう食べ頃になったはずじゃ」
 ナベのふたをとったところが、ドジョウの姿はありません。
「ああっ、やりべえに、してやられた」
 やりべえの悪だくみに気づいた時には、もう後の祭りでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → フライドチキンの日
きょうの誕生花 → かりん
きょうの誕生日 → 1967年 古賀稔彦 (柔道)

きょうの新作昔話 → カエルの袈裟衣
きょうの日本昔話 → 石のいも
きょうの世界昔話 → ほらふき男爵 クマと火うち石
きょうの日本民話 → どじょうのなべ
きょうのイソップ童話 → キツネと大きなヘビ
きょうの江戸小話 → おカメの嫁入り

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11月20日の日本民話 水グモの糸

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 11月の日本民話

11月20日の日本民話

水グモの糸

水グモの糸
静岡県の民話静岡県情報

 むかしむかし、ある山里に、つりの名人がいました。
 この男の手にかかると、つるのがむずかしいといわれるイワナでもヤマメでも、なんなくつれてしまいます。
 ある日の事、男が山奥の川につり糸をながしていると、一匹の小さなクモが川からあがってきました。
 そして男のはいているわらじに糸をかけると、ふたたび川にもどっていきました。
 そのクモがまた水からあがってきたかとおもうと、男のわらじに糸をかけます。
 こんな事が何十回もくりかえされるうちに、ほそかった糸もしだいにふとくなって、小さなろうそくのしんくらいになってきました。
 男は、
「おかしなことをするクモもいるもんだ」
と、思っていましたが、糸がふとくなるにつれて、なんだかうすきみわるくなってきました。
 そこでクモが水にもどったすきに、クモのかけた糸をわらじからはずして、すぐわきの大きな木の根にかけておきました。
 すると、どうでしょう。
 やがて川の中の何かが、その糸をグイグイひっぱりはじめたのです。
「たかがクモの糸ではないか。すぐに、プツンときれてしまうにちがいない」
 ところが木の根からミシミシッと音がしたかと思うと、ズッ、ズズズッーと、動き出していくではありませんか。
 とても、あの小さなクモの力とは思えません。
 しかし糸はますます強くひかれて、最後には大木を根こそぎ倒してしまうと、とうとう川にひきこんでしまったのです。
「・・・・・・」
 男は恐ろしくて、声も出ません。
 たかがクモの糸とバカにして、わらじにかけられた糸をそのままにしていたら、いまごろは自分が川にひきこまれていたでしょう。
 そう思った男が川をのぞこうとすると、さきほどまでの小さなクモが、人間よりも大きな姿で川から現われました。
「ヒェー! 化け物だー!」
 恐ろしい化け物グモは、男にシューッと白い糸をふきかけてきました。
 男はあやうくからだをかわして白い糸からのがれると、あとはいちもくさんに村へ逃げ帰ったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ピザの日
きょうの誕生花 → つわぶき
きょうの誕生日 → 1970年 原久美子(俳優)

きょうの新作昔話 → 真夜中のキツネの嫁入り
きょうの日本昔話 → 逃げた黒牛
きょうの世界昔話 → 逃げクーナンと赤い子ウマ
きょうの日本民話 → 水グモの糸
きょうのイソップ童話 → ネコとニワトリ
きょうの江戸小話 → 魚の心中

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11月19日の日本民話 友だちにあげたリンゴ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 11月の日本民話

11月19日の日本民話

友だちにあげたリンゴ

友だちにあげたリンゴ
福岡県の民話福岡県情報

 むかしむかし、あるところに、四人の男の子を持つお百姓(ひゃくしょう)さんがいました。
 一番上の子どもの名前は太郎、二番目は次郎、三番目は三郎、四番目は四郎といいました。
 ある時、お百姓さんが町へ行くと、とても大きなリンゴが売っていました。
 とてもめずらしかったので、子どもたちのおみやげに七つ買って帰りました。
 太郎と次郎と三郎は、二つずつもらいました。
 四郎はまだ小さいので、一つだけです。
 さて次の晩、お百姓さんは子どもたちを集めて、リンゴのことを聞くことにしました。
 まず、四郎にたずねました。
「四郎や、リンゴはどうした?」
 すると四郎は、ニッコリ笑い、
「みんな食べちゃった。おいしかったよ」
と、言いました。
 その言い方がとてもかわいかったので、みんなはどっと笑いました。
「では、太郎はどうした?」
「リンゴのタネをとって、リンゴの木をつくるよ」
「なるほど、お前はわしのあとをついで、りっぱなお百姓になれるぞ」
 お父さんはよろこんで、太郎をほめました。
「次郎は、どうした?」
「友だちに見せて、売ってやったよ。すごくもうかった」
「売ってしまっただと。お前はなんてよくばりだ」
 お百姓さんは、ガッカリです。
「ところで、三郎はどうした?」
「・・・・・・」
 おとなしくて気の弱い三郎は、何も言いません。
 それでも、お百姓さんが何度もたずねるので、
「みんな、あげちゃった」
と、言いました。
「なに、あげてしまっただと? せっかくおみやげに買ってきてやったのに。いったい、だれにあげたんだ?」
 お百姓さんが大きな声を出したので、三郎はいよいよなきそうな顔で言いました。
「友だちが病気でねていたので、持っていってあげたんだよ。でも、もったいないと食べてくれないので、まくらもとへおいてきた」
「よくやった! えらいぞ、三郎」
 お百姓さんは思わず三郎をだきよせて、頭をなでました。
 それから、兄弟たちに向かって言いました。
「太郎もりっぱだが、みんな、三郎のようなやさしい心をわすれてはいけないよ」

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 緑のおばさんの日
きょうの誕生花 → われもこう
きょうの誕生日 → 1949年 松崎しげる(シンガー)

きょうの新作昔話 → おいつぼの滝
きょうの日本昔話 → くわん、くわん
きょうの世界昔話 → 水車小屋で大もうけ
きょうの日本民話 → 友だちにあげたリンゴ
きょうのイソップ童話 → ヤギとブドウの木
きょうの江戸小話 → おこる男

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11月18日の日本民話 ダルマの神さま

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11月18日の日本民話

ダルマの神さま

ダルマの神さま
山形県の民話山形県情報

 むかしむかし、達磨寺(だるまじ)という村があり、古くて大きい彼岸桜(ひがんざくら)の大木がある寺のお堂に木で作られた、色のはげ落ちたダルマさんがまつられていました。
 毎年夏になると、子どもたちがやって来て、
「ダルマさん、おらたちと遊んでくれろ」
と、ダルマさんをかついで行って川に投げ入れると、水に浮いたダルマさんを相手に、子どもたちは暗くなるまで遊ぶのでした。
 そしてある日の事、子どもたちは寺へダルマさんを返すのを忘れてしまったのです。
 ダルマさんは一人ぼっちで川に浮いていましたが、そのうちに流れにのって流れ始めました。
 川に流れてから三日目には、酒田(さかた)という浜辺へ流れつきました。
 色のはげ落ちたダルマさんに浜辺の人たちはだれも気付きませんでしたが、通りかかった村の庄屋(しょうや)さんが、
「おおっ、これはかわいそうに。ダルマさま、どうか私の家でお休み下さい」
と、床の間にまつっておいたのです。
 さて、ある夜の事です。
 庄屋さんの夢の中に、あのダルマさんが現われて、
「川をのぼっていったところにある、大きな彼岸桜の寺がわしの家じゃが、はやり病が出て村人がこまっておる。早く戻って病をおさめなければならぬので、すまんがわしを背負って行ってくれ。むろん、お前さまの恩は決して忘れぬ。はやり病が出た時は、必す戻って来よう」
 目を覚ました庄屋さんは、
「ダルマさまのおっしゃる事だ、聞いてあげねば」
と、さっそく旅じたくをしてダルマさまを背負い、大きい彼岸桜のある村をさがして、無事にお寺のお堂にダルマさんをおさめたのです。
「おおーっ、ダルマさまが戻ったぞー!」
と、村人たちは大喜びで、そっそくダルマさんをおがむと、はやり病はたちまちなおってしまったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 土木の日
きょうの誕生花 → こなら
きょうの誕生日 → 1970年 渡辺満里奈 (俳優)

きょうの新作昔話 → キツネと油あげ
きょうの日本昔話 → 夢買い長者
きょうの世界昔話 → ウサギとハリネズミ
きょうの日本民話 → ダルマの神さま
きょうのイソップ童話 → アルキュオン
きょうの江戸小話 → 黒があぶない

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11月17日の日本民話 奥方に化けたキツネ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 11月の日本民話

11月17日の日本民話

奥方に化けたキツネ治

奥方に化けたキツネ
愛媛県の民話愛媛県情報

 むかしむかし、今の道後温泉(どうごおんせん)のそばに、湯月城(ゆづきじょう)というお城があって、そこに河野伊予守道直(こうのいよのかみみちなお)という殿さまがいました。
 ある日の事、殿さまが狩(か)りに出て帰ってみると、奥方(おくがた→奥さん)が二人いるのです。
 顔も同じなら声も同じで、姿やしぐさもそっくりです。
「わたしが本物よ」
「わたしが本物よ」
「にせ者はあっちよ」
「にせ者はあっちよ」
 殿さんはどっちが本物か、ぜんぜん見分けがつきません。
 それで、医者をよんで二人の奥方を診(み)せると
「これは離魂(りこん)ともうしまして、魂(たましい)が二つに分かれる不思議な病でございます」
と、わかるような、わからないような事を言うのです。
 こまった殿さまは、二人の奥方を座敷(ざしき)にとじこめて、ようすを見ることにしました。
 二人のお腹が空いたところをみはからって、ごちそうを出すと、一人の奥方が耳をビクビクと動かして、ガツガツと食べるのです。
「あれがにせものじゃ!」
 殿さまのひと言で、家来(けらい)たちがその奥方をとらえると、庭のスギの木にくくりつけて松葉の煙でいぶしました。
 するとコンコンとせきをして、古ギツネが正体をあらわしたのです。
「おのれ、キツネのぶんざいで、よくもこのわしをだましおったな。こともあろうに奥の姿に化けるとはかんべんならぬ。火あぶりにしてくれる」
 殿さまの命令に、家来たちが火あぶりの用意をしていると、何百匹ものキツネがどこからともなく現れて、頭を地面にこすりつけてたのみました。
「どうか許してください。このキツネは四国にすむキツネの中で、一番とうといキツネです。もし殺したらご領内(りょうない)にきっと悪いたたりがあります」
 あまり口ぐちにたのむので、殿さまはキツネを許(ゆる)してやりました。
 奥方に化けたとうといキツネは、殿さまに深々と頭を下げると、
「申し訳ございません。もうこれからは四国には住みません」
と、わび証文(しょうもん)を残して、みんなを連れて立ち去って行ったそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 将棋の日
きょうの誕生花 → つた
きょうの誕生日 → 1969年 置鮎龍太郎 (声優)

きょうの新作昔話 → ものぐさ太郎
きょうの日本昔話 → こわれたせともの
きょうの世界昔話 → 小ギツネのライオン退治
きょうの日本民話 → 奥方に化けたキツネ
きょうのイソップ童話 → のどのかわいたハト
きょうの江戸小話 → 大八車

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11月16日の日本民話 ぐつとおかま

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11月16日の日本民話

ぐつとおかま

ぐつとおかま
長野県の民話長野県情報

 むかしむかし、ある村に、ぐつという名の男の子がいました。
 ぐつの村では、あんまりお米がとれないので、いつもヒエめしや、アワめしを食べています。
 ある日、おばあさんがめずらしくお米をとぎ、かまどに火をたきつけると、ぐつにいいました。
「ばあちゃん、ちょっくら用たしにいってくるで、ぐつは、かまどのばんをしてろな」
「うん、いいよ」
「すこしするとな、おかまがにえたって、ぐつぐつというだ。そしたらぐつ、お前がよばれたと思って、ふたをずらしとくれ」
「うん、いいよ」
 ぐつがばんをしてると、おばあさんがいうように、おかまがぐつぐつとよびました。
「はーい、おかまどん」
 ぐつはいわれたとおり、台の上へのぼって、おかまのふたをすこしずらしました。
 ところがおかまはまだにえたって、ぐつぐつというのです。
「はーい、はーい」
 何度返事をしても、まだ、ぐつぐつ、ぐつぐつというのです。
 とうとう、ぐつはおこってしまって、
「このおかま、おらがへんじしてるのが聞こえねえのか!」
と、いうと、ふたをけとばして、たきぎや石ころをなげこみました。
 やっとぐつぐついわなくなったので、ぐつが安心していたら、おばあさんがもどってきて、
「なんて事をしてくれたんだ。これでは、ごはんが食べられねえでねえか」
と、おこられてしまったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 幼稚園記念日
きょうの誕生花 → ふゆさんご
きょうの誕生日 → 1951年 オール巨人(漫才師)

きょうの新作昔話 → うどどん
きょうの日本昔話 → 海坊主にあった船のり
きょうの世界昔話 → 一まいのはね
きょうの日本民話 → ぐつとおかま
きょうのイソップ童話 → 人とキツネ
きょうの江戸小話 → 大事なお手本

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11月15日の日本民話 首のないウマ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 11月の日本民話

11月15日の日本民話

首のないウマ

首のないウマ
香川県の民話香川県情報

 むかしむかし、讃岐の国(さぬきのくに→香川県)の津田(つだ)というところに、古い屋敷がありました。
 もう長い間、人が住んでいないために屋敷はボロボロで、まるでお化け屋敷です。
 さて、この屋敷を取り囲んでいる土塀(どべい)の中ほどから大きな松の木が枝を広げていて、たくさんの小鳥たちが巣をつくっていました。
 ある日の昼すぎ、一人の(さむらい)がこの屋敷の前を通りかかると、突然、屋敷の中から黒いかたまりが飛び出してきました。
「な、何者!」
 侍はビックリして、に手をかけました。
 黒いかたまりは、侍の近くをフワフワととびまわります。
「おのれ、こしゃくな!」
 侍は刀をぬくと、黒いかたまりに切りつけました。
 ところが黒いかたまりはフワリと刀をかわし、今度は侍の首のまわりをグルグルと動きまわります。
 侍は何度も刀をふりまわしましたが、少しもあたりません。
 ついに侍は、フラフラとなり、
「もうだめだ、だれか、たすけてくれえ!」
と、さけんでその場に倒れると、そのまま気を失ってしまいました。
 すると黒いかたまりは、侍をつつみこむようにして空へまいあがり、侍を松の木の上にはこんでいきました。
 なん日かして旅の商人がこの侍を見つけて、大さわぎになりました。
 やっと下へおろしたときには、侍はもう死んでいました。
 どうして松の木の上で死んでいたのか、だれにもわかりません。
 そんなうわさが広まると、いよいよこの屋敷の前を通る者がいなくなり、昼間でも近づくものはありませんでした。
 さて、この侍には、仲のよい友だちがいました。
 お化けか幽霊(ゆうれい)のしわざと言われていますが、このままにしておいては、死んだ友だちがかわいそうです。
 そこで、
「よし、お化けか幽霊か知らないが、わしがかたきをとってやる」
と、一人で屋敷に出かけました。
(さて、どこから調べてみるか)
 屋敷の前にたちどまって中の様子をうかがっていると、ふいにパカパカパカパカという、ウマのかけてくる音がしました。
 どうやらその音は、屋敷の中から聞こえてくるようです。
 友だちの侍は刀を抜くと、くぐり戸を開けて屋敷の庭へとびこみました。
「やや、なにやつ」
 なんとそこには、首のないウマが走りまわっていて、ウマの上には髪の毛をふりみだした女の人が乗っています。
 女は侍をみて、
「ケケケケッ」
と、笑い出しました。
 さすがの侍もこわくなり、あわててしげみの中にかくれました。
 するとウマに乗った女がそばへかけてきて、
「ケケケケッ」
と、再び笑いかけたのです。
 その顔はどこまでも青白く、大きくさけた口からは、ヘビの様に長い舌がチョロチョロと動いています。
「ウギャーーーッ!」
 侍は悲鳴(ひめい)をあげて、そのまま気を失ってしまいました。
 ちょうどそこへ通りかかった商人がこの悲鳴をききつけて屋敷に飛び込むと、黒いかたまりがフワフワと飛んでいたということです。
 商人は侍を外へつれだしましたが、もしこの商人が通りかからなかったら、この侍も松の木の上で死んでいたでしょう。
 それから数年後、この屋敷は自然にこわれ、松の木もかれてしまったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 七五三
きょうの誕生花 → からたちばな
きょうの誕生日 → 1934年 内田康夫(推理小説家)

きょうの新作昔話 → 伐株山(きりかぶやま)
きょうの日本昔話 → 仁王とどっこい
きょうの世界昔話 → マウイの仕事
きょうの日本民話 → 首のないウマ
きょうのイソップ童話 → ワシとコガネ厶シ
きょうの江戸小話 → お念仏とお題目

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11月14日の日本民話 三九郎じいさん

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 11月の日本民話

11月14日の日本民話

三九郎じいさん

三九郎じいさん
三重県の民話三重県情報

 むかしむかし、あるところに大きな屋敷があり、そこに三九郎(さんくろう)じいさんが住んでいました。
 この三九郎じいさんはずいぶんとのんきな人で、裏山へ行っては、毎日まきばかりを取って来ていました。
 そして冬になると、ウマの背にまきをつんでは町へ売りに行くのでした。
 ある日のタ方、村の坂まで来ると、いつのまにかキツネがウマの背にとび乗って、歌を歌いはじめました。
 次の日も、また次の日もキツネは現れて、ゆうゆうとウマの背で歌を歌うのです。
 三九郎じいさんは、とうとう腹をたてて、
「今日こそは、しばりつけてやるぞ!」
と、どなりつけると、キツネは姿をけしてしまいました。
 三九郎じいさんがやれやれと思っていると、今度はウマの前に立って大笑いするのです。
 三九郎じいさんがキツネをしばろうとすると、またウマの背にとび乗りました。
 ウマはまきの重さとキツネの重さとで、とうとう坂道の途中でへたばってしまいました。
 三九郎じいさんはウマに、
「キツネをしばりつけるから、そっとしておくれ」
と、いいましたが、キツネは三九郎じいさんをうまくだまして、ウマのまわりをとんだりはねたり。
 そのうちにあたりはとうとう、暗くなってしまいました。
 三九郎じいさんは、暗くなって目の見えなくなったキツネをしばろうとすると、今度はウマが三九郎じいさんにむかっていいました。
「キツネが今、背中に乗っています。早くしばって下さい」
「よし」
 三九郎じいさんはすばやくキツネにとびかかり、やっとのおもいでキツネをしばりあげました。
 夜中ごろ、三九郎じいさんは家に着きましたが、家の者はすでに寝ていて、いくら戸をたたいても声がありません。
 やっと三九郎じいさんが家の戸をあけてウマを入れようと思い、ふと見ると、しばっていたはずのキツネの姿が見えず、キツネは家の中にちゃんと座っているではありませんか。
 三九郎じいさんが、家の者たちに
「おーい、今帰ったぞ! 今帰ったぞ!」
と、何度呼んでも返事がなく、返事があったと思えば、キツネが家の者の声で返事をしているのです。
 おこった三九郎じいさんはキツネを追いかけると、キツネは仏壇(ぶつだん)の中ヘピョンと姿をかくしました。
 キツネは仏さまに化けたので、どちらが本物の仏さまかわからなくなってしまいました。
 三九郎じいさんは、しばらくうでをくんで考えていましたが、やがて
「そうそう、うちの仏さまはご飯をあげると、鼻をひくひく動かして食べなさるんじゃ、ありがたいな」
と、いいながら、仏さまにご飯をさしあげました。
 すると、仏さまに化けたキツネが鼻をひくひく動かしたので、三九郎じいさんはここぞとばかり、持っていた手オノでキツネの鼻をたたきのばしたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → パチンコの日
きょうの誕生花 → のじぎく
きょうの誕生日 → 1973年 大沢さやか(俳優)

きょうの新作昔話 → 西坂地蔵堂(にしざかじぞうどう)
きょうの日本昔話 → ウマかたのゆだん
きょうの世界昔話 → よくばり牧師と一人の若者
きょうの日本民話 → 三九郎じいさん
きょうのイソップ童話 → コウモリとイタチ
きょうの江戸小話 → 大仏さまとおまんじゅう

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11月13日の日本民話 空飛ぶ人間

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11月13日の日本民話

空飛ぶ人間

空飛ぶ人間
北海道の民話北海道情報

 むかしむかし、北海道の函館(はこだて)にある山のふもとに、大きな草原がひろがっていました。
 春になって雪がなくなると、この草原にはたくさんの女の人や子どもたちがやってきて、草をつみながら持ってきた料理を食べて、一日を楽しくすごしていくのです。
 ある年の日のこと、大きな屋敷にやとわれている男が、同じ屋敷につとめている女中(じょちゅう)や子どもたちを七、八人をつれて、草原にある藤巻石(ぶじまさいし)という大岩のところへ草つみにでかけました。
 お昼ごはんを食べて薬になる野草があるところへいこうとすると、むこうの岩の上に、一人の男が立っているのが見えました。
 大男で、背たけは二メートルほどもあります。
 子どもたちが見つめていると、男は岩の上からとびあがって、空中へうきあがったのです。
 それから両手を鳥の羽のようにゆっくり上下に動かしながら、山をこえて飛んでいきました。
「・・・・・・」
 みんなはあっけにとられて、しばらく口もきけません。
 そして急におそろしくなって、そのまま屋敷へ逃げ帰りました。
 その後、子どもたちばかりか大人まで、空を飛ぶ男を見た全員が高熱を出して、二日ほど寝こんでしまったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → うるしの日
きょうの誕生花 → さるとりいばら
きょうの誕生日 → 1972年 木村拓哉(歌手)

きょうの新作昔話 → 天日槍(あめのひぼこ)
きょうの日本昔話 → たいこもちと三つ目の大入道
きょうの世界昔話 → 千色皮
きょうの日本民話 → 空飛ぶ人間
きょうのイソップ童話 → カシの木とゼウス
きょうの江戸小話 → 絵ときのくすりぶくろ

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11月12日の日本民話 こぼれる、こぼれる

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 11月の日本民話

11月12日の日本民話

こぼれる、こぼれる

こぼれる、こぼれる
石川県の民話石川県情報

 むかしむかし、能登(のと→石川県)には、さんえもんという、とんちのきく人がいて、みんなからは「さんにょも」とよばれていました。
 村の男たちがあつまって酒もりをしていると、さんにょもが手ぶらでやってきて、
「わしも、なかまに入れてくれ」
と、えんりょなしに、酒をのみはじめました。
 ごちそうだって、えんりょなしです。
 そして、さんざん飲み食いすると、
「はい、ごちそうさん」
と、言って、さっさとかえってしまいました。
 その場にいた男たちは、カンカンです。
「なんだあいつ。手ぶらできたくせに、さんざん飲み食いしやがって」
「今度手ぶらできたら、入れないことにしよう」
「そうだ。酒を一升(いっしょう→1.8リットル)買ってこなけりゃ、仲間にしないといってやろう」
 それを聞いたさんにょもは、次の晩、男たちが酒もりをしている所へ手ぶらででかけていきました。
 でも、戸はピタリと閉められています。
「開けてくれ、さんえもんだ」
 すると、中にいる男たちは、
「酒を買ってくるまで、入れてやらん」
と、戸を開けてくれません。
 すると、さんにょもが、
「はやく開けてくれんと、こぼれそうじゃ、こぼれそうじゃ」
と、言ったのです。
「なんじゃ、それをはやく言え」
 男たちはてっきり、さんにょもが酒を買ってきたものと思って、いそいで戸をあけました。
 ところがさんにょもは、いつものとおりの手ぶらで入ってきたのです。
「なんだ、『こぼれそうじゃ』というから開けてやったのに、手ぶらでねえか。うそをついたな!」
「うそなもんか。わしはな、さむくてさむくて、鼻水が『こぼれそうじゃ』と、いうたまでよ」
 さんにょもはわざと鼻水をすすり上げると、またしても、ごちそうになったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 洋服記念日
きょうの誕生花 → だいもんじそう
きょうの誕生日 → 1958年 岩崎宏美(歌手)

きょうの新作昔話 → 竜と琵琶法師
きょうの日本昔話 → とっつく、くっつく
きょうの世界昔話 → しょうじきディエロ
きょうの日本民話 → こぼれる、こぼれる
きょうのイソップ童話 → よわむしの猟師と木こり
きょうの江戸小話 → 予約ずみ

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11月11日の日本民話 水無川

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 11月の日本民話

11月11日の日本民話

水無川

水無川
山口県の民話山口県情報

 むかしむかし、吉敷川(よしきかわ)の川ぞいに、一人のおばあさんが住んでいました。
 ある日、貧しい身なりをしたお坊さんが通りかかり、
「どうか、水を一杯飲ませてくだされ」
と、いいましたが、
「だめだめ、あっちにいきな」
「一杯だけで、いいのです」
「うるさい坊さんだね。はやくあっちへ行かないと、しょうちしないよ」
 おばあさんは冷たくあしらって、水をごちそうしてあげませんでした。
 それ以来、おばあさんの家の近くでは、不思議な事に川の水が川底に吸い込まれるように消えてなくなったのです。
 このお坊さんこそ、旅の途中の弘法大師(こうぼうだいし)だったのです。
 里の人たちは今でも、この川を水無川(みずなしがわ)と呼んでいるという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 電池の日
きょうの誕生花 → からすうり
きょうの誕生日 → 1952年 吉幾三(歌手)

きょうの新作昔話 → 泉小太郎(いずみこたろう)
きょうの日本昔話 → ふしぎな宝ゲタ
きょうの世界昔話 → カンチールと巨人
きょうの日本民話 → 水無川
きょうのイソップ童話 → キツネとハリネズミ
きょうの江戸小話 → 手足のけんか

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11月10日の日本民話 もちの白鳥

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 11月の日本民話

11月10日の日本民話

もちの白鳥

もちの白鳥
富山県の民話富山県情報

 むかしむかし、ある村に、たいへんな大金持ちの長者(ちょうじゃ)が住んでいました。
 なにしろ、丘の上には米蔵(こめぐら)が七つに、酒蔵が七つ、そして金銀財宝がびっしりとつまった宝の蔵が七つもあって、その真ん中にお城のような屋敷があるのです。
 でも、この長者は大変ひどい人で、毎日ウマに乗って召し使いたちの仕事ぶりを見て回るのですが、仕事の遅い者がいると、女であろうが年寄りであろうがムチでピシピシと打ちのめすのでした。
 そんな長者でも、一人娘は大変にかわいがっています。
 さて、娘が年ごろになり、よろず山の長者の家に嫁入りすることになりました。
 喜んだ長者は、目もくらむばかりの婚礼(こんれい)の品じなをととのえました。
 今日は、いよいよ嫁入りの日です。
 婚礼衣装を七つの車に、お祝いの酒は八つの車に、ごちそうを九つの車にと、それぞれ山盛りにつんで運ばせました。
 たいへんなぜいたくを一人娘にさせたのですが、そのうちに、
「娘に、土をふませるのはかわいそうだ」
と、百の臼(うす)でもちをつかせると鏡(かがみ)もちをつくり、むこ殿の家までの道すじにぎっしり並べさせたのです。
「よし、これで大丈夫。娘にはもちの上を歩かせよう。そうすれば、娘は土をふまなくてすむからな」
 やがて準備の出来た娘が、まっ白なもちをふみながらむこ殿の家に向かいましたが、不思議な事に、娘が歩いたあとから鏡餅が白い鳥になって、パタパタと舞い上がっていくのです。
 十羽、百羽、干羽と、すさまじい羽音を立てて白鳥は空のかなたに舞い立っていきました。
 それからのち、長者は大変な貧乏になったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → トイレの日
きょうの誕生花 → もみじ
きょうの誕生日 → 1960年 川島なお美(俳優)

きょうの新作昔話 → 白鳥の関
きょうの日本昔話 → ほうびの米俵
きょうの世界昔話 → タイコじいさん
きょうの日本民話 → もちの白鳥
きょうのイソップ童話 → サルの子どもたち
きょうの江戸小話 → ねこのこわいろ

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11月9日の日本民話 三人なき

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 11月の日本民話

11月9日の日本民話

三人なき

三人なき
岡山県の民話岡山県情報

 むかしむかし、あるところに、おばあさんが一人で住んでいました。
 ある日の事、遠くへはたらきに行っている息子から手紙が来ました。
 でも、おばあさんは字を知らないので、手紙が読めません。
 すると向こうから一人の(さむらい)がやって来たので、おばあさんはたのみました。
「もしもし、お侍さん、息子から手紙をもらったのですが、わたしは字がわかりません。どうか、この手紙を読んでください」
 侍は手紙をうけとり、しばらくジッと見ていましたが、突然ポロポロと涙をこぼしました。
 おばあさんは、ビックリです。
「お侍さん、何か悪い知らせでも書いてあるのですか? どんなことでもおどろきません。教えてください」
 ところが侍は涙を流すばかりで、何も言いません。
(ああ、これはきっと、とても悪い知らせにちがいない)
 そう思うと、おばあさんはきゅうに悲しくなって、涙をポロポロこぼしました。
 そこへ、土で出来たおなべを売る、ほうろく売りがやって来ました。
「もしもし、どうしたのですか?」
 ほうろく売りがたずねても、侍とおばあさんは泣くばかりです。
 するとほうろく売りも、荷物をそこへおいて手紙を見るなり、泣き出しました。
 通りかかった人は、いったい何ごとが起きたのかと、三人のまわりに集まってきました。
「さあ、泣いてばかりいないで、わけを話しなさい」
「こまったことがあるなら、力をかしてやりましょう」
 すると、ほうろく売りが言いました。
「じつは去年の今ごろ、ほうろくを売りに行ったら、とちゅうで転んでみんな割ってしまいました。くやしくて泣きたいほどでしたが、いそがしいので泣くのをのばしました。ちょうどここを通りかかると二人が泣いているので、その時の事を思い出して、今、ないているのです」
「なんと。まったくあきれた人だ。それじゃおばあさんは、どうしてないているのですか?」
 一人が、たずねました。
「はい、実は息子から手紙が来たので、このお侍さんに読んでもらおうとしたら、お侍さんが何も言わずに泣き出したんです。これは、きっと悪い知らせにちがいない。そう思うと悲しくて悲しくて・・・」
 おばあさんは、涙でグチャグチャになった顔をふきました。
「そうか。それはお気の毒に。さあ、お侍さん、ないてばかりいないで、早く息子さんのようすを教えてあげたらどうです?」
 すると侍は顔をあげて、なさけない声で言いました。
「手紙を読めるくらいなら、泣きはせん。わしは小さいとき、少しも本を読まなかったので字がわからない。それがくやしくてないているのだ。ああ、こんなことなら、ちゃんと本を読んでいればよかった」
「なんだ、そんなことか」
 みんなはあきれて、ものも言えません。
 ちなみに、息子さんの手紙には、
《元気ではたらいているから、心配しないでください。近いうちに、お土産を持って帰ります》
と、書いてあったそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 119番の日
きょうの誕生花 → じゅずだま
きょうの誕生日 → 1984年 えなりかずき(俳優)

きょうの新作昔話 → 大力の坊さん
きょうの日本昔話 → はな垂れこぞう
きょうの世界昔話 → クジャクのはなび
きょうの日本民話 → 三人なき
きょうのイソップ童話 → 片目のシカ
きょうの江戸小話 → 将棋がたき

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11月8日の日本民話 お稲荷さんにかりたノコギリ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 11月の日本民話

11月8日の日本民話

お稲荷さんにかりたノコギリ

お稲荷さんにかりたノコギリ
神奈川県の民話神奈川県情報

 むかしむかし、総理大臣(そうりだいじん)をつとめた松方正義(まつかたまさよし)は、政治家をやめてから鎌倉(かまくら)に別荘(べっそう)をたてました。
 となりの林の中には、古いお稲荷(いなり)さんの社(やしろ)がありました。
 別荘をたてた当時はたくさんならんでいたお稲荷さんの赤い鳥居(とりい)も、今ではくさったり、なくなったりして、社もあれはててボロボロです。
 となりに引っ越してきた正義(まさよし)は、神仏をうやまう気持ちや神社に対する礼儀(れいぎ)から、その社を修復(しゅうふく)してお供(そな)えもしていました。
 一九二三年(大正十二年)九月一日の正午、東京を中心とした関東地方に、とつぜん大地震がおそいました。
 有名な、関東大震災です。
 鎌倉の正義の別荘もくずれてしまい、正義は逃げるまもなく頭の上から落ちてきた太い柱の下じきになって足をはさまれ、身動きがとれなくなってしまいました。
 若い書生(しょせい)さんたちが力をあわせて、正義を助けだそうとしましたが、柱はビクともしません。
 助けるには柱を切るしか方法がないのですが、あいにくとノコギリがありません。
 書生さんの一人がノコギリをさがしに、外へとびだしていきました。
 でも、どこへいったらいいのかわからず、書生さんが家の前でウロウロしていると、となりの林のかげから白いあごひげをたらした背の高い老人が出てきました。
 その老人はなんと、大きなノコギリを背負っているではありませんか。
 書生さんは大喜びで、老人にそのノコギリをかしてほしいとたのむと、老人はだまって背中の大きなノコギリをわたしてくれました。
 お礼を言った書生さんは、それをかついですぐにくずれた別荘に入り、柱を切って正義を助けだしたのです。
 そして、借りたノコギリをかえそうと家から出ると、老人の姿はもうどこにもありませんでした。
 この話を、病院へ運ばれる途中に聞かされた正義は、
「これはきっと、おとなりの稲荷の加護(かご)にちがいない。ありがたいことじゃ」
と、身を半分起こし、林の中の社にむかってふかく頭をさげました。
 その後、借りた大きなノコギリは、社の中へきちんとかえしたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → レントゲンの日
きょうの誕生花 → うめもどき
きょうの誕生日 → 1975年 坂口憲二(俳優)

きょうの新作昔話 → ぼたんの花と若者
きょうの日本昔話 → しょうじょ寺のタヌキばやし
きょうの世界昔話 → お墓にはいったかわいそうな少年
きょうの日本民話 → お稲荷さんにかりたノコギリ
きょうのイソップ童話 → 人間がはじめて見たラクダ
きょうの江戸小話 → おしゃべり

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11月7日の日本民話 大蛇と結婚した娘

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 11月の日本民話

11月7日の日本民話

大蛇と結婚した娘の話

大蛇と結婚した娘
島根県の民話島根県情報

 むかしむかし、ある大金持ちの家に、とても美しい娘がいました。
 娘は小さいころから、谷田池(たにだいけ)の名前を口にして、その池に行きたいといっていました。
 谷田池は、ここから歩いて何日もかかる所にある大きな池ですが、娘を一度もつれていったことなどないので、家の者たちは不思議に思っていました。
 さて、娘が十六才になった年の春の事です。
 娘は何度も父親にたのんで、やっと池へいくことをゆるしてもらいました。
 ですが、途中でなにかあったらたいへんと、父親は娘に何人ものお供をつけました。
 そして何日もかかって、やっと谷田池につきました。
 何年も心まちにしていたところです。
 娘は池のほとりにある小きな社(やしろ)の前で、しずかに手を合わせました。
 お祈りがすむと、娘は池の水で手を洗いたいといって、お供の者たちからはなれていきました。
 そしてそのまま、池の中へ入っていったのです。
 ビックリしたお供の者たちが、あわててひきもどそうとすると、娘はみるみるヘビの姿にかわって、水の中に消えてしまったのです。
 実は娘は、生まれてくる前の前世(ぜんせ)から、谷田池の底にすむオスのヘビに恋をしていたのです。
 それから何年かたった、ある年の五月の事です。
 谷田池の持ち主が、池を土でうめて田畑にしようとしました。
 そして、池の主の大蛇(だいじゃ)があばれて工事のじゃまをしないように、お坊さんに七日間のおいのりをお願いしました。
 すると七日目の夜、池にすむ夫婦の大蛇が、うろこを一枚、池のほとりに置いて、どこかへ姿を消していったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 立冬
きょうの誕生花 → むべ
きょうの誕生日 → 1956年 笑福亭笑瓶(タレント)

きょうの新作昔話 → 熊ん蜂(くまんばち)の山賊退治
きょうの日本昔話 → お坊さんの贈り物
きょうの世界昔話 → ご先祖さまはみんなタマゴ
きょうの日本民話 → 大蛇と結婚した娘
きょうのイソップ童話 → サルと漁師
きょうの江戸小話 → くせ

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11月6日の日本民話 暗闇の黒ウシ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 11月の日本民話

11月6日の日本民話

暗闇の黒ウシ

暗闇の黒ウシ
埼玉県の民話埼玉県情報

 むかしむかし、二人の絵かきが旅に出ました。
 ある日の事、二人は宿屋で、江戸からきたという男の人と一緒になりました。
 三人で話しているうちに、男の人が言いました。
「ところで、お前さんたちのお仕事はなんですか?」
 すると一人の絵かきが、胸を張って言いました。
「わしは絵かきじゃ。めずらしい国を旅しながら、絵をかいている」
 すると、もう一人の絵かきも、
「わしも絵かきじゃ。二人で旅をしながら、美しい景色(けしき)を絵にかいている」
 それを聞くと、男の人はくやしくなり、
「それはぐうぜん。実はわたしも絵かきでしてな。江戸では少しばかり有名ですぞ」
と、うそをつきました。
「そんなら、ひとつ三人で絵のかき比べをしよう」
と、いうことになりました。
(さて、これは弱った)
 絵のまるでかけない男の人は、こまってしまいましたが、いまさらうそだとはいえません。
 そこで時間かせぎに、
「それじゃ、そちらからかいてもらいましょう」
と、言いました。
 そこで最初の絵かきが、お母さんが小さい子どもにご飯を食べさせている絵をかきました。
 なかなかに、上手です。
 でも男の人は、わざとつまらなそうに言いました。
「お母さんが口を閉じているのはおかしい。子どもにご飯を食べさせるときは、親も一緒に口を開けるもんです。まだまだですな。それじゃ次の方」
 もう一人の絵かきは、木こりが木を切っている絵をかきました。
 これも、なかなかに上手です。
(さすがに絵かきだ。二人ともうまいもんだ)
 男の人は心の中で感心しましたが、でも、やっぱりつまらなそうに、
「これだけ木を切っているのに、木のくずがないのはおかしい。まだまだですな」
と、言いました。
 けちを付けられた二人の絵かきは、おもしろくありません。
「それじゃ、あなたの腕前を見せてもらいましょう。それだけ言うのですから、さぞかしお上手なんでしょうな」
「よろしい」
 男の人は筆(ふで)にたっぷり墨(すみ)をつけると、紙をまっ黒にぬりつぶしてしまいました。
 二人の絵かきさんは、ビックリしてたずねました。
「・・・いったい、これはなんの絵ですか?」
 すると男の人は、すました顔で、
「これは、まっ暗やみから、黒ウシが出てきたところです」
と、いったのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → お見合いの日
きょうの誕生花 → さねかずら
きょうの誕生日 → 1967年 松岡修造(タレント)

きょうの新作昔話 → かみなりの子
きょうの日本昔話 → 風小僧と子どもたち
きょうの世界昔話 → 白鳥の王子
きょうの日本民話 → 暗闇の黒ウシ
きょうのイソップ童話 → イバラを食べるロバとキツネ
きょうの江戸小話 → むごんくらべ

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11月5日の日本民話 熊野参り

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 11月の日本民話

11月5日の日本民話

熊野参り

熊野参り
和歌山県の民話和歌山県情報

 むかしむかし、サルがカエルのところへやってきました。
「カエルどん、カエルどん、一緒に熊野参り(くまのまいり)に行かないか?」
「いいとも。わしも一度いきたいと思っていたところだ」
 そこで二人は、さっそく熊野参りにでかけました。
 熊野参りというのは、熊野の権現(ごんげん)さまという神さまにお参りすることで、むかしから大勢の人が出かけたのでした。
 ところがサルとカエルでは、足の速さが違います。
 カエルが夢中で歩いても、すぐにサルにおいていかれます。
 そこである日、カエルが言いました。
「サルどん、どうだろう。交代でおんぶしながら行っては」
「なるほど、それなら一緒にいけるというわけだ。よし、お前が先にのれ」
 サルはカエルをおんぶすると、ピョンピョンと飛ぶようにかけだしました。
(ああ、らくちん、らくちん。しかし、このまま熊野まで行くいい方法はないものか?)
 カエルはサルの背中で、あれこれと考えました。
 そのとき、サルが立ちどまって言いました。
「ああ、くたびれた。カエルどん交代してくれ」
 カエルはしかたなく、サルを背中にのせました。
 でも小さなカエルでは、サルをおんぶして走るのはたいへんな事です。
「サルどん、うんととばすから上を向いてくれ。下を向くと落っこちるからね」
と、カエルが言いました。
 サルは言われたとおり、上を向きました。
 すると風が吹いてきて、空の雲がとぶように流れていきます。
(ほほう。カエルも、なかなかよう走るわい)
 サルはすっかり感心して、流れる雲を見ていました。
 でも、カエルはその場でジッとしたまま、全く動きません。
 しばらくたって、カエルが言いました。
「さあ、おりてくれ、交代だ」
 サルがおりてみると、さっきと同じ場所です。
「なんだ、ぜんぜん進んでいないぞ」
「バカな事を言うな。熊野にいくまでには、同じような場所が七ヶ所もあるんだぞ」
「なるほど。あれほど走ったのに、さっきの場所とそっくりだな」
 サルはカエルをおんぶすると、またピョンピョンとかけました。
 このようにして、カエルは交代するたびにサルをだまして、とうとう一歩も歩かずに、熊野参りをすませたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 雑誌広告の日
きょうの誕生花 → コルチカム
きょうの誕生日 → 1951年 天地真理) (タレント)

きょうの新作昔話 → てんぐの鼻が高いわけ
きょうの日本昔話 → おとりのキジ
きょうの世界昔話 → ふしぎなたいこ
きょうの日本民話 → 熊野参り
きょうのイソップ童話 → クジャクとツル
きょうの江戸小話 → しっぺがえし

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11月4日の日本民話 カッパのくれた宝物

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 11月の日本民話

11月4日の日本民話

カッパのくれた宝物

カッパのくれた宝物
秋田県の民話秋田県情報

 むかしむかし、あるところに、とてもなまけ者の兄さんがいました。
 毎日仕事もしないで遊んでばかりいるので、怒ったお父さんがお金とやせたウマをわたして、
「これをやるから、さっさと家を出ていけ!」
と、兄さんを家から追い出してしまいました。
 兄さんは仕方なくウマに乗って歩いていたら、子どもたちが一羽のトンビをつかまえて、たたいたり、けったりしていじめていました。
 それを見た兄さんは、トンビがかわいそうになり、
「わしに、トンビをゆずってくれ」
と、言って、お父さんからもらったお金を全部、子どもたちにあげました。
 兄さんはトンビをだくと、またウマに乗って歩き始めました。
 やがて大きな川に出ましたが、兄さんはウマに乗ったまま、ズンズンと川のなかへ進んでいきます。
 ところが川の中ほどまできた時、きゅうにウマがあばれだしたのです。
 兄さんはあわててウマの首にしがみつき、なんとかウマを岸にあげました。
 そしてふとウマのしっぽを見てみると、何とウマのしっぽにカッパがつかまっているのです。
 兄さんはウマからとびおりると、そのカッパをつかまえていいました。
「どうして、ウマのしっぽなんかにつかまるんだ。もう少しで川へ落ちるところだったじゃないか」
 するとカッパは、手を合わせてあやまります。
「おら、ウマのおしりが好きだから、つい。でも、もう二度としないから、かんべんしてくれ」
「いや、かんべんできない。頭のさらをたたきわってやる」
「と、とんでもない。おらの宝物を持ってくるから、たすけてくれ」
「よし、それなら、たすけてやってもよいぞ」
「すまねえ。すぐに川へもどってとってくるから、おらをはなしてくれ」
 兄さんがカッパをつかまえた手をはなしてやると、カッパは大喜びで川まで走っていきました。
 兄さんは、その後ろから言いました。
「うそついたら、しょうちしないぞ。このトンビはな、火の中だって水の中だって入っていって、お前の頭のさらをわることができるんだぞ」
 するとカッパは、ふりかえって言いました。
「カッパは約束を守る。うそなんか言わねえ。すぐにとってくる」
 兄さんがしばらく川の中を見ていたら、カッパが顔を出して、
「お待たせ。宝物はこれです」
と、古い木づちをわたしました。
「何だこりゃ?」
 兄さんはその木づちで、そばにあった石ころをたたいてみました。
 すると木づちから、マメつぶが一つころがりでました。
「マメつぶ一つしか出ない木づちなんて、わしをバカにするつもりか!」
「と、とんでもない! だまってたたけばマメつぶしか出ないが、ほしい物の名前を言ってたたけば、何だって出るんですよ」
 そう言うと、カッパは川のそこへもぐってしまいました。
「なんでも出てくるなんて、本当かな?」
 兄さんは、おなかが空いていたので、
「よし、ぼたもち出ろ」
と、言って、木づちをふりました。
 すると本当に、目の前にぼたもちが現れたのです。
「なるほど。こいつはすごいや!」
 兄さんはぼたもちを食べると、宝物の木づちをふところに入れて、ウマに乗って家へもどっていきました。
「なにしに、帰ってきた!」
と、怒るお父さんの目の前で、兄さんは木づちでお金や米を出してみせました。
 するとお父さんは、とても喜んで、
「もう、どこへも行くな」
と、言ったのです。
 カッパにもらった木づちのおかげで、お父さんと兄さんは、いつまでもなかよくくらしたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ユネスコ憲章記念日
きょうの誕生花 → サフラン
きょうの誕生日 → 1947年 西田敏行(俳優)(タレント)

きょうの新作昔話 → 忍術使いのどうぼう
きょうの日本昔話 → サケのおじいさん
きょうの世界昔話 → 虹の鳥
きょうの日本民話 → カッパのくれた宝物
きょうのイソップ童話 → サルとイルカ
きょうの江戸小話 → 与太郎

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11月3日の日本民話 皿々雪(さらさらゆき)

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11月3日の日本民話

皿々雪(さらさらゆき)

皿々雪(さらさらゆき)
石川県の民話石川県情報

 むかしむかし、あるところに、実子(じっし)と継子(ままこ)の姉妹がいました。
 実子のほうは毎日、きれいに着飾って遊んでばかりいました。
 でも継子の方は、ろくに食べさせてもらえず、きたない身なりで毎日仕事ばかりさせられていました。
 ある冬の、寒い日の事です。
 継子は川で、ダイコンを洗っていました。
 川の水は冷たく、手が赤くはれあがるほどのつらさです。
 その時、お殿さまが通りかかって、継子に声をかけました。
「おお、娘。この寒いのによくがんばっておるのう。今日、庄屋(しょうや)の家に村の者をよんで歌会(うたかい)をするが、お前もきてみてはどうじゃ?」
 継子は、歌などよんだことがありません。
 こまってしまいましたが、せっかくお殿さまが声をかけてくれたので、しかたなく庄屋の家に行きました。
 さて、いよいよ歌よみがはじまりました。
 大きな盤(ばん)の上に置いた皿の中に、たくさんの塩をもり、その中に松をうえたものを題にして、歌をよむことになりました。
 一番最初に、実子が歌をよみました。
♪盤の上に皿がある
♪皿の上に塩がある
♪塩の上に松がある
 つまらない歌なので、お殿さまは気にもとめませんでした。
 しばらくして、継子が歌をよみました。
♪ばんさらや
♪やさらの上に雪降って
♪雪を根として育つ松かや
 お殿さまはその歌が大変気に入って、継子をいい歌よみにしてやろうと、お城へ連れて帰りました。
 その後、継子は出世して、しあわせになったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → みかんの日
きょうの誕生花 → きく
きょうの誕生日 → 1975年 原口あきまさ (タレント)

きょうの新作昔話 → キジムナーの仕返し
きょうの日本昔話 → しっぽのつり
きょうの世界昔話 → 歌うガイコツ
きょうの日本民話 → 皿々雪(さらさらゆき)
きょうのイソップ童話 → ハイエナとキツネ
きょうの江戸小話 → 右大臣左大臣

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11月2日の日本民話 たましいが入った竜

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 11月の日本民話

11月2日の日本民話

たましいが入った竜

たましいが入った竜
栃木県の民話栃木県情報

 むかしむかし、宇都宮(うつのみや)に、うるし商人の武太夫(たけだゆう)という男がいました。
 今日はすすはらいの日なので、武太夫は朝から畳(たたみ)を外へ出してたたいたり、家の中をそうじしたりして、体中がほこりだらけになっていました。
「おふろがわいておりますので、どうぞ」
と、奥さんがいうと、武太夫は、
「ふん! 一番湯は体によくない。隠居(いんきょ)のおやじを先にいれろ」
と、いうのです。
 武太夫は大金持ちでしたが、それにはわけがありました。
 数年前のある日、山奥の谷川のふちの底に、大量のうるしを見つけたのです。
 うるしは、うるしの木の皮からとれる汁で、おわんなどのぬり物につかわれます。
 そのうるしが長いあいだ水に運ばれて、ふちの底にたまったのです。
 うるしは高価なもので、無断でとることを禁じられていましたが、武太夫はこの谷川の底のうるしを少しずつ売り、大金持ちになったのです。
 武太夫は秘密のうるしを、いつまでも自分だけのものにしておきたいと思いました。
 それで腕のよい細工師(さいくし)に、おそろしいの細工をつくらせて、人がこわがってよりつかないように、うるしのあるふちの底にしずめたのでした。
 しばらくすると竜の細工は、上流から流れてくるうるしや水あかなどがついて、おそろしい本物の竜のようになっていました。
 ある時、武太夫は十四歳になる一人息子の武助(たけすけ)をつれて、山奥のふちへいきました。
 そして、うるしの秘密を話すと、
「このうるしは、わしらだけのものじゃ。わざわざ木を切りつけて汁をとらなくても、いくらでもここへたまっておる。いいか、わしがするのをよく見て、うるし取りの練習をするんだぞ」
 武太夫は息子にいいきかせて、親子でふちへ入っていきました。
 すると竜の細工がとつぜん頭をあげて、息子にとびかかってきたのです。
 細工の竜は水の中にいるうちにたましいが入って、いつしか本物の竜になっていたのです。
 あわてた武太夫は息子を助けようとしましたが、竜が相手ではどうにもなりません。
 やがてふちの水の上に、二つの死体がうかびあがって下流へ流れていきました。
 二人の死体は二日目になって、村に近い川原でひきあげられました。
 取り調べの結果、武太夫はうるしの盗みどりをしていたことがわかりました。
 そして罰(ばつ)として、新しくたてたばかりの家や財産は、すべてをとりあげられてしまったのです。
 あとに残された武太夫の父親と奥さんは、とてもまずしい生活を送ったという事です。

※ 宮城県にも、同じような民話があります。 →  生きている竜

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 阪神タイガースデー
きょうの誕生花 → せいたかあわだちそう
きょうの誕生日 → 1982年 深田恭子(俳優)(タレント)

きょうの新作昔話 → 白いおうぎと黒いおうぎ
きょうの日本昔話 → えんまになった、権十おじいさん
きょうの世界昔話 → 幽霊の宝物
きょうの日本民話 → たましいが入った竜
きょうのイソップ童話 → モグラの親子
きょうの江戸小話 → けちの親子

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11月1日の日本民話 テングにさらわれた子ども

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11月1日の日本民話

テングにさらわれた子ども

テングにさらわれた子ども
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 むかしむかし、ある殿さまの家来(けらい)に、小島伝八(こじまでんぱち)という(さむらい)がいました。
 伝八には惣九郎(そうくろう)という一人息子がいて、まるで宝物のように大事にしています。
 ところが惣九郎が十一歳になった春、突然姿を消したのです。
 伝八と奥さんは、気もくるわんばかりに八方手をつくして探しまわったのですが、どこへ行ったのか、ついにわからずじまいでした。
 ひと月たっても何の手がかりもなく、とうとう伝八夫婦まで寝こんでしまいます。
 するとある日の事、近くの町に住む古着屋の主人がやってきました。
 むかし、伝八がめんどうを見てやった男です。
「うわさを聞いてもしやと思い、かけつけてきました」
「もしやとは」
 伝八がたずねると、
「はい、五日ほど前の明け方ごろ。いつもより早めに起きて店の戸を開けていたら、十歳ぐらいの男の子をつれた山伏(やまぶし→野山を歩き修業する僧)姿の男が立っていて、『子どものわらぞうりを売っている店はないか?』と、たずねました。『少し行ったところにわらじを売る店があるけど、まだ起きてはいないでしょう』と、いったら、だまってたち去っていきました。男の子のみなりが、お侍の子どもらしいので、不思議に思っていたら、小島さまのお子さんがゆくえ不明と聞いて、もしやあの時の男の子ではないかと思ったのです」
 古着屋の主人は、男の子の身なりや顔つきについても、くわしく話して聞かせると、
「まちがいない! それはわしのせがれだ!」
 伝八は思わず立ちあがり、その声を聞きつけた奥さんも起きてきました。
「しかし、山伏姿の男とは何者だろう?」
「さあ、はっきりわかりませんが、もしかしてテングかもしれません。テングは人前に現れるとき、山伏姿に身を変えるといいます」
「たしかにテングのしわざにちがいない。さもなくば、突然姿を消すわけがない。しかし、どうすればよいのだ?」
「もしかして今ごろ、山につれていかれて、ひどいめにあわされているのでは」
 涙を流す奥さんに、古着屋の主人がなぐさめるようにいいました。
「もし相手がテングでしたら、妙法寺(みょうほうじ)の上人(しょうにん→徳の高いお坊さん)さまにお願いすれば、なんとかなると思います。上人さまの法力(ほうりき)はたいしたものだと聞いています」
 そこで伝八は、さっそく妙法寺へ出かけ、
「テングから息子をとりもどしてほしい!」
と、頼みました。
 次の日、屋敷の庭にゴマだんをつくり、上人の来るのを待っていると、上人は二十人ばかりの坊さんをひきつれて、伝八の屋敷へやってきました。
 さっそくゴマがたかれ(→ゴマ木という木片をもやして、ほとけに祈ること)、上人と坊さんたちが一心に祈祷(きとう→神仏に祈ること)を始めました。
 祈祷は毎日くり返されて、ついに七日め、ゴマの火がいちだんと高く燃えあがって、雲一つない空に黒い影がポッカリと浮かんだのです。
 伝八夫婦や集まった者たちがいっせいに空を見あげると、黒い影はだんだんと大きくなり、まるでワシのように飛んできたかと思うと、さっと庭におりたちました。
「テング!」
 そこには背中につばさをつけ、ワシのくちばしみたいに鼻のとがったテングが、人間の男の子をかかえて立っていたのです。
 テングはだまって男の子を下へおろすと、そのままとびあがって空のかなたへ消えてしまいました。
「惣九郎!」
 伝八がかけより、力いっぱいわが子をだきしめた。
「ありがとうございました」
 奥さんが、上人や坊さんたちに手を合わせます。
 見物人たちも、ハッとわれにかえり、
「よかった、よかった」
と、いいながら、うなずきあいました。
 こんな事があってから、妙法寺の上人の評判はますますあがりました。
 しかしどうしたわけか、惣九郎はこの時から、まるで気ぬけしたようになり、何をたずねても首を横にふるばかりです。
 町の人たちは、そんな惣九郎を見るたびに、
「テングというものは恐ろしいものだ。人の魂までもぬきとってしまうらしい」
と、ますますテングをこわがったという事です。

おしまい

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