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2008年10月

10月31日の日本民話 幽霊の足あと

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 10月の日本民話

10月31日の日本民話

幽霊の足あと

幽霊の足あと
大阪府の民話大阪府情報

 むかしむかし、ある大きなお寺に、徳(とく)の高いお坊さんがいました。
 いつものように夕方のおつとめをしていると、一人の女性が本堂(ほんどう)に現れて、お経(きょう)がおわるのをまってから、足音をしのばせてお坊さんに近づくと、女の人はぜひ自分のためにお経をあげてほしいというのでした。
 この女性はお石(いし)という名で、江戸の町にすむ大工の奥さんでした。
 そして、
「実は、わたしは死んでいます。死んでから、まだこの世をさまよっているのです」
と、いうのです。
 お坊さんは、「江戸の女」ときいて、ビックリ。
 じつは一年ほど前に、お寺のご本尊を江戸へ運んで江戸の信者(しんじゃ)たちにお参りさせたのです。
 この女性はそのとき、お経を読んだお坊さんの姿にふかく感動したというのでした。
「あれからしばらくすると、わたしは病気になって、ずっとふせっていました。お金などありませんから、お医者にかかることもできません。夫は家をあけたまま、どこで遊んでいるのかいっこうに帰ってきません。そのうちに病気はおもくなり、だれにもみとられることなく、わたしは死んだのです。ですからわたしは、まだ成仏できません。ぜひ、お坊さまにお経を読んでいただこうと箱根山(はこねやま)をこえ、やっとの思いでここまでやってきたのです」
 お石の話しに、お坊さんは胸をうたれました。
 そしてお石の身の上をあわれに思い、ご本尊にむかうと一心にお石のために祈りました。
 お石の幽霊(ゆうれい)は、お坊さんのうしろにしずかにすわっていました。
 供養(くよう)がおわると、お石は成仏したのか、姿が消えていました。
 そして、お石が立ったときについたのか、ざぶとんの上に土によごれたはだしの足あとが、はっきりと残っていました。
 その足あとはいまも額におさめられて、そのお寺につたえられているという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ハロウィン
きょうの誕生花 → まゆみ
きょうの誕生日 → 1967年 江戸家まねき猫(声帯模写)

きょうの新作昔話 → はだかのお寺まいり
きょうの日本昔話 → まつりに参加したキツネ
きょうの世界昔話 → しあわせの王子
きょうの日本民話 → 幽霊の足あと
きょうのイソップ童話 → ライオンとワシ
きょうの江戸小話 → いたみどめ

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10月30日の日本民話 ほらふき村は子どもまで

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10月30日の日本民話

ほらふき村は子どもまで

ほらふき村は子どもまで
京都府の民話京都府情報

 むかしむかし、あるところに、ほらふきじまんのおじいさんがすんでいました。
「おれにかなうほらふきはどこにもおるまい。よし、ほらくらべにいってみよう」
と、ほらふきで有名な、ほらふき村へいったのです。
 ほらふき村につきましたが、村には大人はだれもいません。
 小さい子どもが一人だけいたので、おじいさんはたずねました。
「ぼうや、お父さんはどこいった?」
「ああ、富士山(ふじさん)が地震でかたむいたんで、竹を二、三本きって、つっかいぼうをしにいったよ」
「それでは、お母さんはどこいった?」
「琵琶湖(びわこ)の水がもれだして、空っぽになるといって、おはぎを三つもって、湖のそこをぬりにいったよ」
と、子どもなのに上手なほらをふくので、おじいさんはビックリしましたが、こんな子どもに負けてたまるかと、おじいさんもほらをふいてみました。
「わしはなあ、きのうは奈良へいって、大仏殿(だいぶつでん)でハックショーン! と大きなくしゃみしたら、大仏さんがこっちの村まで飛んでしもうたんだ。わしはそれを探しに来たんだよ」
 それを聞いた小さい子は、ケラケラ笑い出しました。
「なーんだ、その大仏さんやったら、きのう、あそこのクモのすにひっかかって、ゆーらゆーら、ゆれとったよ」
「・・・・・・」
 ほらふきじいさんは、子どもでさえこれだけのほらをふくのだから、大人ではとうていかなわないと、そそくさと逃げて帰ったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 香りの記念日
きょうの誕生花 → ペチュニア
きょうの誕生日 → 1979年 仲間由紀恵(俳優)

きょうの新作昔話 → 笑い地蔵
きょうの日本昔話 → どうもと、こうも
きょうの世界昔話 → サヤエンドウじいさん
きょうの日本民話 → ほらふき村は子どもまで
きょうのイソップ童話 → おばあさんと目医者
きょうの江戸小話 → 貧乏医者

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10月29日の日本民話 ネコ女房

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10月29日の日本民話

ネコ女房

ネコ女房
沖縄県の民話沖縄県情報

 むかしむかし、沖縄には、八キロメートル以上も松並木(まつなみき)の続く海辺があり、その海辺のほら穴に化けネコが住みついていました。
 ある時、化けネコが美しい女に化けていたら、一人の男がネコとは思わずに、
「わしの女房になってくれ」
と、言ったのです。
 男はなかなかに立派で顔立ちもよく、ネコもこの男が気に入って、さっそく一緒にくらすことになりました。
 男はとてもやさしく、ネコも負けじと男につくします。
 やがて子どもが生まれて、何年かたつうちに、二人は三人の子持ちになりました。
 ネコ女房は正体がばれないように気をつけていましたが、それでもネズミを見かけると、思わずとびつきたくなります。
 それでネコ女房は、男や子どもたちがいない時に天井裏にのぼって、ネズミをとらえて食べていました。
 ある日、ネコ女房が天井裏にのぼっていたら、ふいに子どもたちがかえってきました。
 ネコ女房はあわてて下へおりましたが、口にはまだ、ネズミをくわえたままです。
「かあちゃん、どうしたの!」
 子どもたちはビックリして、顔を見あわせます。
 ネコ女房はハッとして、ネズミをはなしました。
「ネズミなんかくわえて、ネコみたい」
 子どもたちがそう言うので、ネコ女房は、
「ネズミがあんまりうるさいので天井裏へ行ったら、いきなりかあちゃんの口にとびついてきたのよ。いい子だから今日のこと、とうちゃんに言うんじゃないよ」
 ネコ女房は何とか言いくるめましたが、子どもたちは、まだ信じられないという顔をしていました。
 夕方になり、男が仕事からもどってくると、子どもたちは母親にかくれて今日の出来事を話しました。
 それを聞いて、男はビックリ。
 だからといって、いきなり女房を問いつめるわけにもいかず、しばらくようすを見ることにしました。
 ようすを見ていると、女房にはおかしなことがあります。
 だれもいないことがわかると、ゴロゴロとのどを鳴らしたり、時にはネコのように、かまどの上にのぼったりするのです。
(もしかして、ネコにとりつかれたのかもしれないぞ)
 男は心配になって、
「かあちゃんは病気かもしれないから、気をつけてやるように」
と、子どもたちに言い聞かせた。
 ところが子どもたちは、それ以来、母親をおびえるようになりました。
 男は思いきって、女房に別れ話を持ち出すと、
「子どもにきらわれてはしかたがないので、別れることにします」
 女房はそう言って、家を出ていきました。
(いったい、どこへ行くのだろう?)
 男はこっそりと、女房の後をつけました。
 女房は後ろもふり向かずに、どんどん歩いていって、ほら穴の中に消えました。
 男がほら穴のようすをさぐっていたら、奥の方から女房の声が聞こえてきて、
「どうやら、正体を見破られてしまったらしい。せっかくうまくやっていたのに。いつかこのうらみは、はらしてやる」
と、言ったのです。
 そして、姿の見えない誰かが言いました。
「そうは言っても、お前がネコだということが、わかったわけではないだろう」
「いや、ネズミをくわえているところを、子どもたちに見られてしまった」
「そうか、それなら仕方ない」
 その話を聞いていた男はビックリ。
 まさか自分の女房が、ネコだなんて。
 ほら穴のネコの話しは、まだ続きます。
「しかしな、男の命をとるといっても、相手に呪文(じゅもん)をとなえられたらどうする? われらはあの呪文をとなえられると、手出しができなくなるぞ」
「大丈夫よ、今の若い人間が、呪文なんて知るわけがない」
「まあ、たしかに。知っているとすれば、村一番の年寄りのおばばぐらいだろう」
 男はそれを聞くと、すぐにほら穴をはなれて、村一番の年寄りのおばばの家に行き、わけを話して、
「化けネコを追いはらう呪文を教えてくれ」
と、たのみました。
「さて、うまく思い出せるかどうか」
 そう言いながらも、おばばは呪文を思い出してくれました。
♪ネコネコ鳴くな。
♪北風吹けば、南に飛ばされる。
♪南風吹けば、北に飛ばされる。
♪ネコネコ鳴くな。もう鳴くな。
 男は呪文の言葉をしっかり覚えると、家にもどって行きました。
 その晩、男が子どもたちを寝かせていたら、表から気味の悪いネコの鳴き声がひびいてきました。
「フギャー! フギャー!」
 男は鳴き声の方に向かって、教えてもらった呪文をとなえました。
♪ネコネコ鳴くな。
♪北風吹けば、南へ飛ばされる。
♪南風吹けば、北に飛ばされる。
♪ネコネコ鳴くな。もう鳴くな。
 すると、ネコの鳴き声がおさまり、
「くやしいー!」
と、言う言葉を残して、一匹のネコがたちさっていくのが見えたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ホームビデオ記念日
きょうの誕生花 → いちょう
きょうの誕生日 → 1968年 つんく♂(音楽プロデューサー)

きょうの新作昔話 → 蛸薬師(たこやくし)
きょうの日本昔話 → 右手を出した観音像
きょうの世界昔話 → わるがしこいクモ
きょうの日本民話 → ネコ女房
きょうのイソップ童話 → 鳥刺しとマムシ
きょうの江戸小話 → はやく走る

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10月28日の日本民話 ダイコンおろしストーン

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10月28日の日本民話

ダイコンおろしストーン

ダイコンおろしストーン
鳥取県の民話鳥取県情報

 むかしむかし、お百姓(ひゃくしょう)たちが年貢(ねんぐ)のお米をおさめないので、お代官(だいかん→役人)が、きつく取り立ててやろうと、山の村へやってきました。
 それを知った山の村では大さわぎで、ウマにのったお代官がやってくると、ごちそうにと、大きな皿(さら)にタイを一匹のせて出しました。
「よしよし、よい心がけじゃ。年貢の取り立ては、まずこれを食ってからにしてやろう」
と、お代官が出されたタイを食べようとしたら、なんとそのタイはくさっていて、ウジ虫がわいているのです。
「この無礼者(ぶれいもの)! なんと言う物を出すのだ!」
 お代官が顔をまっ赤にして怒ったので、村のお百姓が言いました。
「へえ、なんでも、えらいお方が来られたときは、タイをつくって(→この場合のつくるとは、本当はおさしみにすること)さしあげるもんじゃと聞きましたで、わしらはタイを畑にうめて、こやしをかけてつくりました」
 これには、お代官もあきれてしまいました。
「まあ、こんな山の中にいては、海の魚の食べ方など知らぬのも無理はない。だが、山ならダイコンぐらいあるじゃろう、ダイコンおろしにして食うから、もってまいれ」
「へえ、へえ」
 お百姓たちは、いったん帰りましたが、何をしているのか、なかなかダイコンを持ってきません。
 でもそのうちに家の天井裏で、何やらガサゴソと音がし始めました。
「あいつら、天井裏にのぼって、何をしているのじゃ?」
 お代官が天井を見上げていると、お百姓の一人が天井の板を一枚はがして言いました。
「お代官さま、今からダイコンおろしいを出します」
 そして、天井から大きなダイコンを投げ落としたのです。
「わっ、何をしておる!」
 ビックリするお代官の目の前に、お百姓はまた、ダイコンを投げ落としました。
「へい、ダイコンおろしいです」
 そしてまた、ストーンとダイコンを天井から投げ落とします。
「こら、あほうども、やめい。もうダイコンおろしはいらん!」
 お代官がいくらどなっても、お百姓たちは、天井からダイコンを投げ落としました。
「だっ、だめじゃ。話してわかるような相手じゃない。いや、こんな村にグズグズしていたら、何をされるかわからん」
 お代官は年貢の取り調べもせずに、急いで逃げ帰ったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 速記記念日
きょうの誕生花 → しそ
きょうの誕生日 → 1982年 倉木麻衣(歌手)

きょうの新作昔話 → 久米の仙人(くめのせんにん)
きょうの日本昔話 → たのきゅう
きょうの世界昔話 → 金髪姫
きょうの日本民話 → ダイコンおろしストーン
きょうのイソップ童話 → とじこめられたライオンとお百姓
きょうの江戸小話 → 還暦の祝い

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10月27日の日本民話 洪水から村をすくった若者

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10月27日の日本民話

洪水から村をすくった若者

洪水から村をすくった若者
宮崎県の民話宮崎県情報

 むかしむかし、ある村に、大きな池がありました。
 この池には、全身がまっ白な大蛇(だいじゃ)と、全身がまっ黒な大蛇がすんでいました。
 村の人たちから池の主とあがめられていた二匹の大蛇は、とてもおとなしくて、村人には何の悪さもしません。
 いつも仲よく頭をならべて池を泳いだり、池のほとりで寄りそって、畑仕事をしている村の人たちを見ているのでした。
 ところがある時、この大蛇があいついで死んでしまったのです。
 それからというもの、雨がふると池の水があふれだして、村の家や田畑をおし流すようになりました。
「大蛇たちがおったときは、いくら大雨がふっても池の水があふれることはなかったのに」
 村の人たちはみんなで力をあわせて、池のまわりにじょうぶな土手(どて)をつくりましたが、大雨がふると土手が切れて、村はたちまち水びたしになってしまいました。
 土手は何度なおしても、大雨がふるとこわれてしまい、村は水びたしです。
 そこで都からえらい占い師をまねいて、どうしたらいいかを占ってもらいました。
 すると占い師は、
「白い大蛇と黒い大蛇が、村人のためにずっとこの池を守ってきたのに、死んでからは、だれもその事に感謝しない。大蛇の霊(れい)は怒っておるぞ。明日の朝、池のほとりを通る薄緑色の着物を着た若者を一人いけにえとしてさしだせば、大蛇の霊もいかりをおさめて、池から水が出ることはなくなるだろう」
と、いうのでした。
 とは言っても、だれだって、いけにえにされたくはありません。
 村の若者たちは占い師の話をきいて、明日は家から出ないようにしようと思いました。
 ところが次の日の朝、夜明けとともに、池の土手の上に現れた若者がいたのです。
 それは長千代丸(ながちよまる)という、村の酒屋の三番目の息子でした。
 長千代丸は占い師の言っていた、薄緑色の着物を着ていました。
 そして土手の上で正座(せいざ)をすると、池のむこうからのぼってくるお日さまをみつめながら、自分のお腹に刃物をつきさして、命をたってしまったのです。
 長千代丸は村人たちのしあわせを願って、みずからいけにえになったのです。
 それからは、池の水があふれ出る事はなくなりました。
 そして田畑もよく実る、すばらしい村になったのです。
 みずからいけにえとなった長千代丸のお墓は池のほとりにたてられて、いつも美しい花がそなえられていたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → テディベアの日
きょうの誕生花 → ななかまど
きょうの誕生日 → 1966年 高嶋政伸(俳優)

きょうの新作昔話 → 天より高い桜の花も
きょうの日本昔話 → テングの羽うちわ
きょうの世界昔話 → ふしぎなブドウ
きょうの日本民話 → 洪水から村をすくった若者
きょうのイソップ童話 → ねむっているイヌとオオカミ
きょうの江戸小話 → 鬼のたまご

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10月26日の日本民話 おばばが消えた

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10月26日の日本民話

おばばが消えた

おばばが消えた
滋賀県の民話滋賀県情報

 むかしむかし、琵琶湖(びわこ)のほとりの家に、もう七十歳をこえているのに、家族も近所の人たちもおどろくほど元気なおばあさんがいました。
 ある寒い日の夕方、これまで病気一つしたことがなかったのに、このおばあさんはいろりの前にすわっていて、そのまま死んでしまったのです。
 家の人たちも、近所の人たちもビックリ。
 けれど、とにかくお葬式(そうしき)の準備を始めなければなりません。
 お葬式の準備がひとだんらくついたとき、奥の部屋に安置(あんち)してある棺(ひつぎ)が、メリメリと音をたてて畳(たたみ)の上にころがりました。
 そして死んでいるはずのおばあさんが、白い衣のまま立ちあがると、あたりをにらみまわしたのです。
「ばっ、ば、ば、ば・・・」
 家の中にいた人たちは、言葉にならない声をあげながら、おそろしさのあまりブルブルとふるえていました。
 その中に母の急死をきいて、お坊さんになっていた息子がいたのです。
 その息子もビックリしましたが、すぐに大きな声でお経をとなえはじめると、おばあさんはそのまま棺の中へたおれて、また動かなくなりました。
 さて、次の日の夕方の事です。
 おばあさんの棺をかついでお寺にむかうとちゅうで、きゅうに雨がふりだしてきました。
 雨は大雨になり、頭の上でカミナリがとどろきはじめました。
 お寺まではもうすぐなので、お葬式の行列はそのまま進んでいきました。
 幸いなことに、まもなく雨はやみましたが、棺がきゅうに軽くなったのです。
「なんだなんだ? 棺がきゅうに軽くなったぞ。おい、ちょっとのぞいてみよう」
 足を止めて棺の中をのぞいてみると、中は空っぽで、おばあさんは消えていました。
「そういえば、さっき空から黒い雲がおりてきて、おばばの棺のまわりをとりかこんで稲光がはげしく走った。おばばはあのとき、天へ持っていかれたんだ」
と、だれかがいいました。
 棺をかついでいた人たちも、たしかにそのときから軽くなったと言っていたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → サーカスの日
きょうの誕生花 → ピラカンサ
きょうの誕生日 → 1971年 千秋(タレント)

きょうの新作昔話 → 黒姫物語
きょうの日本昔話 → キツネのしかえし
きょうの世界昔話 → クマの子ハンス
きょうの日本民話 → おばばが消えた
きょうのイソップ童話 → 神さまとカメ
きょうの江戸小話 → 長者の最後

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10月25日の日本民話 からいもと盗人

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10月25日の日本民話

からいもと盗人

からいもと盗人
熊本県の民話熊本県情報

 むかしむかし、天草(あまくさ→熊本県の天草市)に、太助(たすけ)という船乗りがすんでいました。
 太助は子どもが大好きで、おなかをすかせた近所の子どもたちに、いつもごはんを食べさせています。
 ある日の事、おかみさんが太助にいいました。
「あんた、そろそろ米びつもからになりそうじゃ」
「じゃあ、米を買うてきたらいいでねえのか」
「そんなこというても、不作つづきで米も麦もありはせん」
「そうか。でも心配すんな。薩摩(さつま)から、麦でも買うてきてやるわ」
 この二年ほど、この天草のあたりは日でりつづきで、畑の麦もすっかり立ちがれてしまいました。
 太助は薩摩の国に荷物をはこぶために、船を出しました。
 帰りには子どもたちに食べさせる食べ物を、船いっぱいにつんでくるつもりです。
 やがて船は、薩摩の港に着きました。
 薩摩のお客へ荷物をとどけた太助は、その晩はお客の家にとまることになりました。
 そこで太助は、おなかをすかせた子どもたちのことを話しました。
「うむ、そりゃあ、たいへんなことで」
「はい。子どものころに食べ物で苦労しましたので、子どもたちには、ひもじい思いをさせたくはなくて」
「そうですか。太助どんの子ども思いは、立派ですな」
 このお客は、太助が近所の子どもたちにもごはんを食べさせている事を知っていたので、今までも何かと手助けしてくれていたのです。
 さてその晩、太助はお客からめずらしいものをごちそうになりました。
「うまい! だんな、これはなんて食べ物で?」
「これはな、薩摩にしかない、からいもでごわす」
「からいもですか。うーん、じつにうまい!」
「わははは、そうでごわしょう。食べてよし、酒にしてもよし、この薩摩では米以上の食べ物でごわす」
 からいもとは、サツマイモのことです。
 太助は、このおいしいからいもを天草に持ちかえり、自分の畑で育てたいと思いました。
 ですが、その事を客に話すと、
「残念じゃが、それはだめでごわす」
「どうしてですか? 天草の子どもたちは、はらをすかしているのです。子どもたちのためにも、どうかおねがいします」
「気持ちはわかるが、このからいもはご禁制品(きんせいひん)でごわす。もしもよその土地の人に渡したと知れれば、この首を切られてしまうのでごわす」
 ご禁制品とは、持ち込みや持ち出しを禁じられている品物の事です。
 次の日、薩摩から船を出すとき、ご禁制の品が持ち出されないか、役人がそれはきびしく調べました。
「よし、この船にはご禁制の品はござらん。船を出してさしつかえないぞ」
 太助どんの船は役人のゆるしをえて、いよいよ出発しようとするその時です。
 客の男が、大急ぎで走ってきました。
「太助どん、太助どーん!」
「だんな、どうなさいました?」
「子どもさんのみやげの手まりを、おわすれでごわしょう?」
「はて? ・・・手まり?」
「なにを言ってなさる。大切な子どもさんのみやげでしょ。お役人さま、わたしてもよろしいでごわすか?」
「ああ。わしが投げてやろう。それっ!」
 手まりは客から役人の手へ、そして太助どんの手へとわたりました。
「太助どん、その手まりは大事な品じゃ。子どもさんのために、立派に育ててくだされ」
 手まりにおぼえのない太助は、不思議に思って手まりを見ると、なんと中には、からいもの芽が入っていたのです。
「こっ、これは!」
 客が太助のために、こっそりとからいものなえを入れておいてくれたのです。
「太助どん、ぶじに天草までいきんしゃいよ」
「だんな、ありがとうございます」
「子どもたちに、よろしゅうなあ」
「ありがとうございます。必ず立派に育てます」
 こうしてご禁制のからいもは、薩摩から天草へ持ち出されたのです。
 天草に帰った太助は、からいものなえを畑に植えると、大切に大切に育てました。
「いいかお前たち、いまにこの木に、うめえからいもがたあんとできるからな」
「おっとう、それは本当か?」
「ああ、大きな木になる。そして、からいもが食い切れんほどみのるぞ」
「そうか、早く大きくなるといいなあ」
 あいかわらず天草は日でりつづきでしたが、からいもは元気に育っていきました。
「こりゃあ、木ではなく、つるが出てきたな。からいもはつるになるのか。それなら、そえ木にまきついて実がなるんじゃろうか?」
 太助はそえ木に竹を立ててやりましたが、まきつくどころか、つるはいつまでも地をはっています。
 畑一面につるがのびましたが、かんじんのからいもはなりません。
「春だというのに、花もさかん。これは本当にからいもか? いやいや、あのだんながうそをつくはずはないし」
 夏になって小さな花をつけましたが、やはり実はつきません。
「このからいもは、薩摩の土でしか実らんのだろうか」
 太助があきらめかけたある日、畑にあるわずかな作物をぬすむドロボウがやってきました。
「畑あらしじゃー!」
 逃げるドロボウを、太助は追いかけていきました。
「作物ができんで、みんなこまっとるのに、こんなときに畑をあらすとはゆるせん!」
 ドロボウは、太助のからいも畑へ逃げ込みました。
 するとからいものつるがドロボウの足にからまって、ドロボウはこけてしまいました。
「わははは、からいものつるにひっかかったな。役たたずのいものつるが、とんだところで役にたったわい」
と、ドロボウの足にからまったからいものつるを見た太助は、そのつるの先に付いているものを見てビックリ。
「こっ、これは、からいもでねえか! そうか、からいもは土の中になるもんじゃったんか」
 太助は夢中で、ほかのからいものつるを引っぱってみました。
 するとつるの先には、丸々としたからいもがたくさん付いています。
「おおっ、からいもじゃ。からいもじゃ。これだけあれば、子どもたちが腹をすかせる事はなくなるぞ!」
 そのとき、太助はコソコソと逃げだそうとするドロボウにからいもを投げてよこしました。
「これは礼じゃ。持っていけ。お前がいなけりゃ、わしゃ、からいもを土の中でくさらすところじゃったぞ」
「へえ? からいも?」
「ああ、このいものことじゃ。うまいぞう」
 それから天草では、どこの家でもからいもをつくるようになったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 民間航空記念日
きょうの誕生花 → ういきょう
きょうの誕生日 → 1959年 ラッキィ池田(振附師)

きょうの新作昔話 → 十三塚(じゅうさんづか)
きょうの日本昔話 → ネコがネズミをおうわけ
きょうの世界昔話 → 悪魔をだましたイワン
きょうの日本民話 → からいもと盗人
きょうのイソップ童話 → 3頭のウシとライオン
きょうの江戸小話 → おない年

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10月24日の日本民話 弘法井戸

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10月24日の日本民話

弘法井戸

弘法井戸
三重県の民話三重県情報

 むかしむかし、ある村に、惣松(そうまつ)という人がいました。
 ある日の事、惣松は二、三人の村人たちと伊勢参宮(いせさんぐう)に行った帰り道に、乗っていた舟で二見が浦(ふたみがうら)の近くの飛島(とびしま)まで来ると、空から急に白龍(はくりゅう)が舟の中へ飛びこんで来たのです。
 みんなは、ビックリしましたが、
「これは、大漁を知らせる神さまのお告げじゃ」
と、大いに喜んで、白龍を村へ持ち帰りました。
 家に白龍を持ち帰った惣松は、白龍を床の間に置きましたが、白龍は床の間からぬけ出して神棚(かみだな)の中に入ってしまったのです。
 家の人たちは、
「これは福の神だ、きっと良いことがおこるぞ」
と、大喜びして、神棚へだんごやお酒など、いろいろなものをたくさんおそなえしました。
 でも惣松は、おそなえのだんごを一口食べると、
「こんなもの、まずくて食えるか」
と、はきだしてしまいました。
 そのとたんに白龍が神棚から飛びだして、追いかける惣松を尻目(しりめ)に森の中へかくれてしまいました。
 その後、弘法大使(こうぼうたいし)が村へやって来て、
「この村には何か、なんぎなことはないか?」
と、たずねると、村人たちは、
「この村に白龍が一匹いたのですが、森の中へにげてしまいました。何とかして白龍をつれもどして下さい」
と、たのみました。
 すると弘法大使は、
「白龍は水が好きだから、井戸をほってあげよう」
と、いい、持っていた杖(つえ)で地面を突きさすと、不思議な事にそこから水がこんこんとわき出したのです。
 それからは毎日、白龍はこのおいしい水を飲みに来るようになり、村からは出ていかなくなったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 国際連合デー
きょうの誕生花 → コトネアスター(べにしたん)
きょうの誕生日 → 1973年 ゴリけん(芸人)

きょうの新作昔話 → 山下淵(やましたぶち)の大なまず
きょうの日本昔話 → タヌキとキツネ
きょうの世界昔話 → 魔術の本
きょうの日本民話 → 弘法井戸
きょうのイソップ童話 → オオカミとヤギ
きょうの江戸小話 → ネズミの嫁入り

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10月23日の日本民話 しょうじにうつる大ギツネ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 10月の日本民話

10月23日の日本民話

しょうじにうつる大ギツネ

しょうじにうつる大ギツネ
岩手県の民話岩手県情報

 むかしむかし、遠野郷(とうのごう→岩手県遠野市)の附馬牛(つくもうし)というところにある家があり、その家の娘が病気でなくなりました。
 それからというもの、毎晩娘の幽霊(ゆうれい)が出るようになったのです。
 娘の幽霊は、うすぼんやりとしょうじにうつります。
 すると眠っていた家の人が、苦しそうにうなされるのです。
「あのやさしい娘が、わしらを苦しめるはずがない。これはひょっとしたら、キツネのしわざかもしれんぞ」
 家の人たちは、村の人たちに相談してみました。
「よし、それなら、おれたちが見はりをしててやる」
 元気のいい若者が何人か、ウマの小屋などにかくれて見はり番をはじめました。
 ところが気味が悪くなったのか、みんな逃げかえってしまいました。
 この家のとなりに、なくなった娘の兄が住んでいましたが、わけを聞くと、
「もし本当の妹が幽霊になってくるのなら、いっぺんあってみよう」
と、言って、実家へといきました。
 ものかげに身をひそめていたところ、真夜中ごろ、奥座敷(おくざしき)のしょうじがボーッとあかるくなりました。
 兄はビックリしましたが、よくよく目をこらして見ると、それは妹の幽霊などではありません。
 一匹の大ギツネがしょうじにからだをくっつけて、座敷のようすをうかがっているのでした。
 兄は音をたてないように床下をはっていって、ワラうちの木づちで大ギツネをたたきつけました。
 ゴン!
 たしかに手ごたえがあったものの、大ギツネそのまま逃げてしまいました。
「まて! この悪ギツネ!」
 兄は追いかけましたが、山の中で見失ってしまいました。
 大ギツネが何をねらってきていたのかはわかりませんが、それから娘の幽霊らしいものは出なくなったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 電信電話記念日
きょうの誕生花 → あけび
きょうの誕生日 → 1973年 はしのえみ(タレント)

きょうの新作昔話 → 青の洞門(どうもん)
きょうの日本昔話 → 化け上手
きょうの世界昔話 → ロバの王子
きょうの日本民話 → しょうじにうつる大ギツネ
きょうのイソップ童話 → 同じ重さの荷物をはこぶロバとラバ
きょうの江戸小話 → ウシ

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10月22日の日本民話 愛犬が知らせた山くずれ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 10月の日本民話

10月22日の日本民話

愛犬が知らせた山くずれ

愛犬が知らせた山くずれ
愛知県の民話愛知県情報

 むかしむかし、茶臼山(ちゃうすやま→愛知県東三河)のふもとの村に、日原喜兵衛(ひのはらきへえ)という(さむらい)がすんでいました。
 喜兵衛(きへい)はある時、家の近くの川原でないていた子イヌをひろってきて、シロと名づけて家でかっていました。
 シロは子どものいない喜兵衛夫婦にかわいがられて、大きくなっていきました。
 喜兵衛が侍屋敷に何日かとまって、仕事をしていたある夜のことです。
 留守を守っている奥さんの夢に、白い衣をまとった、神々しいばかりの若者が現れていいました。
「裏の茶臼山がさけて、このあたりは泥水でうまってしまいます。早くここを立ち退きなさい。わたしはあなたがたに恩をうけている者ですから、申しあげます」
 目をさました喜兵衛の奥さんが、おかしな夢をみたものだと思っていると、あわただしく夫の喜兵衛がもどってきました。
「おい、シロはどうした? なにかあったか?」
 あらい息をはきながら、いきなりイヌのシロのことを口にしました。
「シロが、どうかしましたか?」
 たずねかえす奥さんに、喜兵衛はこんなことをいいだしたのです。
「昨日の夜の事じゃ。お屋敷の外でイヌがしきりにほえるので、どこのイヌがほえておるのかと思って外へ出てみると、これがなんとシロではないか。シロをお屋敷へつれていったことなど一度もない。よくわかったものだと思っておると、わしの服のすそをくわえて、家の方へひっぱるんじゃ。さては家で何かあったなと、いそいでもどってきたんだが」
 喜兵衛の話をきいていた奥さんは、おどろいて、
「そういえば、さっきわたしも」
と、夢の話をしました。
 白いイヌは神さまのつかいと言いますが、喜兵衛は、まさか自分の家で飼っているシロが神のつかいなどとは思えません。
 でも次の日、喜兵衛夫婦はとなり近所をはじめ、村の家々をまわって夢のお告げをつたえました。
 ですが、ただの一軒も話をまともにうけとってはくれません。
 となり村へのがれていったのは、喜兵衛夫婦だけでした。
 喜兵衛夫婦が村をはなれたちょうど一日後、とつぜん茶臼山がくずれたのです。
 川は土砂であふれて、あふれた土砂は喜兵衛の家やとなり近所の家など、八十五軒もの家々をおしつぶして、四十人もの人たちが亡くなってしまったのです。
 そしてイヌのシロは、喜兵衛夫婦に山くずれを知らせた夜から、どこかに姿を消したまま二度と現れなかったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → パラシュートの日
きょうの誕生花 → みせばや
きょうの誕生日 → 1973年 イチロー(野球)

きょうの新作昔話 → 気のいい山姥
きょうの日本昔話 → ものいうかめ
きょうの世界昔話 → トム・ティット・トット
きょうの日本民話 → 愛犬が知らせた山くずれ
きょうのイソップ童話 → 恋するライオンとお百姓
きょうの江戸小話 → 春の空気

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10月21日の日本民話 三人のほら吹き

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 10月の日本民話

10月21日の日本民話

三人のほら吹き

三人のほら吹き
佐賀県の民話佐賀県情報

 むかしむかし、九州には、三人のほら吹きの名人がいました。
 その三人とは、肥後(ひご→熊本県)の彦兵衛(ひこべえ)と、肥前(ひぜん→佐賀県)の安兵衛(やすべえ)と、唐津(からつ→佐賀県)の勘右衛門(かんえもん)です。
 ある日、三人は酒をのみながら話しをしていると、だんだん話しが大きくなり、ついに自分の住んでいる土地の自慢大会になったのです。
 最初に安兵衛が言いました。
「肥前にはな、大むかしに大きなクスノキがあったのだ。その影は肥前中をおおいかくし、雨がふってもカサがいらんのじゃ。こんなに大きなクスノキは、日本中探してもなかろう」
と、言ったのです。
 すると、彦兵衛が言いました。
「肥後の阿蘇(あそ)には、大きな赤ウシがいるんだぞ。そのウシときたら同じ所におりながら、向きをちょっと変えるだけで、肥後の野原の草を食べつくすことができるそうだ。こんな大きなウシは、他にはいないだろう」
と、言いました。
 これを聞いていた勘右衛門は、
「それは大きな話だな。だが唐津には、もっともっと大きな話があるんだ」
と、もったいぶって言いました。
 すると安兵衛は、文句を言いました。
「またまた、お前はわしたちをはぐらかす話をするつもりだろう? 本当に、わしの話より大きな話があるというのか?」
 すると勘右衛門は、
「まあ、文句はわしの話を聞いてから言え。唐津にはな、とても大きな大きな太鼓(たいこ)があるんだ。太鼓の胴は、肥前のクスノキをくりぬいて作ってあるんだ。その太鼓の皮はな、彦兵衛どんの言った阿蘇の赤ウシの皮を張ってあるんだよ」
と、言ったのです。
 それを聞いた二人は、
(しまった。このままでは、またまた勘右衛門にやりこめられる)
と、思ったのか、あわてて言いました。
「それは大きな話だな。だが、そんなに大きな太鼓の音は聞いたことがない。どんな音がするのか聞かせてもらおう」
すると勘右衛門は、平気な顔で、
「それがなあ。この大きな太鼓を打つと九州ばかりでなく、唐の国にまで音がひびいて耳は聞こえなくなるし、海には津波(つなみ)が起こるんだ。それで殿さまが、『あれは絶対に、打ってはいかん』と言われてのう。打つことができないんだよ」
と、言ったのです。
 話しも上手なら、逃げ方も上手な勘右衛門に、二人は頭をかきながら言いました。
「こいつは、またまたおらたちの負けだな。まったく、勘右衛門にはかなわん」
 その後三人は大笑いをして、仲良く酒をのんだという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → あかりの日
きょうの誕生花 → むらさきしきぶ
きょうの誕生日 → 1959年 渡辺謙(俳優)

きょうの新作昔話 → 白い竜
きょうの日本昔話 → ムカデの医者むかえ
きょうの世界昔話 → ほらふき男爵 かりの名人
きょうの日本民話 → 三人のほら吹き
きょうのイソップ童話 → キツネと木こり
きょうの江戸小話 → 頭痛のもと

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10月20日の日本民話 死人を運ぶネコ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 10月の日本民話

10月20日の日本民話

死人を運ぶネコ

死人を運ぶネコ
静岡県の民話静岡県情報

 むかしむかし、駿河の国(すがるのくに→静岡県)に、小さな寺がありました。
 寺には和尚(おしょう)さんと小僧(こぞう)さんのほかに、年老いた一匹のネコがいます。
 お参りにくる人はめったにいないため、和尚さんも小僧さんも、ひまさえあればネコをかわいがっています。
 ある時、信州(しんしゅう→長野県)の知りあいから、法事(ほうじ)の手伝いに来てくれと言われたので、和尚さんは小僧さんをつれて出かけることにしました。
「ネコよ、しっかり留守番(るすばん)を頼んだぞ」
 和尚さんはネコが食べ物に困らないよう、たくさんのエサを用意してやりました。
「おみやげを、持ってきてやるからな」
 小僧さんも、ネコの頭をなでながら言いました。
 さて信州に出かけた二人が、峠(とうげ)の茶屋でひと休みしていると、下の方からスルスルと火車(かしゃ→死んだ人を、じごくへ運ぶ乗り物)が登ってくるのが見えました。
 和尚さんも小僧さんもビックリして中をのぞくと、火車には、やせたおじいさんが乗っていました。
(あの年寄りが何をしたかは知らんが、地獄送りとはあんまりじゃ)
 気の毒に思った和尚さんが、思わず手を合わせてお経をつぶやいたら、火車が空の途中で止まったではありませんか。
(まさか、自分のお経がこんなにきくとはな)
 和尚さんは、茶屋の主人にたずねました。
「今日、この村で葬式(そうしき)のある家はないか?」
「はい、じつはこの峠の下の屋敷で、おじいさんの葬式があります。よくごぞんじで」
 和尚さんは、だまって火車を指さしました。
「あ、あれは?!」
 主人は、目を丸くして空を見上げます。
「あれはな、死人を地獄へ運ぶ火車というものだ」
「なるほど、話には聞いていましたが、実際に見るのは初めてで」
 主人は、この和尚さんは、えらいお坊さんにちがいないと思いました。
「ところで、あのおじいさん、地獄に送られるようなことをしたのか?」
と、和尚さんが聞くと、
「そうですなあ、あのおじいさん、若いころはさんざん悪い事をしたそうですから。でもね、年をとってからは仏のおじいさんと言われるぐらいでして。わたしも、いろいろと世話になりました。お坊さま。なんとか極楽(ごくらく→天国)へ送ってやるわけにはいきませんかね」
と、主人が言ったのです。
「そんな事より、かんじんの死人がいなくてはお葬式もできまい。すまないが、あのおじいさんの家に案内してもらえんかな」
「あ、はい。」
 主人は和尚さんと小僧さんをつれて、峠の下のおじいさんの屋敷へ行きました。
「くれぐれも、火車の事は言わないようにな」
 主人に念を押してから、和尚さんが門の中へ入って行くと、庭のまんなかに棺おけをおいて、村のお坊さんがお経をあげていました。
 お経が終わるのを待ってから、和尚さんが言いました。
「残念ながら、その棺おけに死人はおりませんぞ」
「なにを言うか。ゆうべ、まちがいなく入れたのだ」
 お経をあげていたお坊さんが、むっとして和尚さんをふり返りました。
 家の者も、腹をたてて、
「どこのお坊さんだか知らないが、変な言いがかりをつけないでください!」
と、言います。
 ですが和尚さんは、首を軽く横に振ると、
「うたがう気持ちはわかるが、うそだと思うなら、中をたしかめてみることだ」
と、言うので、家の者が念のために棺おけのふたをとってみたら、中は空っぽでした。
「ど、どうして?」
 お坊さんも家の者も、そして集まっていた村の人たちもビックリです。
「心配せずとも、わしにまかせておきなさい」
 和尚さんがすすみ出て、ゆっくりとお経をとなえはじめました。
 すると空の上からゆっくり火車が下りてきて、おじいさんの死体を棺おけにもどすと、ふたたび空へのぼっていったのです。
 あまりの不思議さに、だれ一人声を出すものはいませんでした。
 和尚さんが、静かに言いました。
「これで大丈夫。もう、地獄へ送られる事もあるまい」
 家の者はすっかり喜んで、あとのお葬式を和尚さんにまかせました。
 そこで和尚さんと小僧さんは、おじいさんをねんごろにほうむり、知りあいの家へと旅立っていきました。
 茶屋の主人からも話を聞いた村の人たちは、いよいよ感心して、
「いったい、どこの和尚さんだろう?」
と、調べてみたら、駿河(するが)の国の善住寺(ぜんじゅうじ)の和尚さんということがわかったのです。
 さあ、それ以来、わざわざ信州(しんしゅう)からお葬式を頼みにくる人が多くなり、おかげで善住寺は栄えていきました。
 ところであの火車ですが、あれは和尚さんのかわいがっていたネコが、恩返しのために火車をあやつって死人を空へ運びだしたからだという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → リサイクルの日
きょうの誕生花 → りんどう
きょうの誕生日 → 1964年 山口智子(俳優)

きょうの新作昔話 → サルの顔はなぜ赤い
きょうの日本昔話 → カモ汁
きょうの世界昔話 → 亡霊の恩返し
きょうの日本民話 → 死人を運ぶネコ
きょうのイソップ童話 → ヒツジ小屋にオオカミを連れこむヒツジ飼いと、イヌ
きょうの江戸小話 → たんじょうび

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10月19日の日本民話 ネズミをたいじするには

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 10月の日本民話

10月19日の日本民話

ネズミをたいじするには

ネズミをたいじするには
高知県の民話高知県情報

 むかしむかし、たいさくという、とんちの名人がいました。
 ある日の事、町へ行っての帰り道で、日がくれてしまいました。
 でも、どこの家へ行ってもとめてはくれません。
 そこで、おばあさんが一人で住んでいる家をさがして、
「今夜一晩、とめてくれ」
と、たのみました。
 すると、おばあさんは、
「うちにはネズミがドッサリといて、とてもねていられないよ」
と、言いました。
「なに? ネズミだと。ネズミならわしが一匹のこらず退治してくれよう」
 たいさくは、胸をたたきながら言いました。
「そいつはありがたい。さあ、えんりょせずにとまっていっておくれ」
 喜んだおばあさんは、たいさくを家にあげると、お酒やごちそうまで出してもてなしてくれました。
 なるほど、おばあさんの言うように、ネズミが天井うらを走りまわっています。
 でもたいさくはお酒をたくさん飲んで、ぐっすりとねむりこんでしまいました。
 さて、翌朝、たいさくが急いで帰ろうとするので、おばあさんがあわてて言いました。
「お前さん、ネズミ退治はどうした?」
 するとたいさくは、すました顔で言いました。
「そんなことは簡単(かんたん)さ。ネコを五、六匹かえばいい」
「ネコをかえだと? ネコをかうことぐらい、わしだって知っている」
 おばあさんはカンカンにおこりましたが、たいさく平気な顔で、
「知っているなら聞かなくていい。はい、お世話になりました」
と、言って、さっさと帰っていったのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → バーゲンの日
きょうの誕生花 → にがうり(つるれいし)
きょうの誕生日 → 1955年 ラサール石井(タレント)

きょうの新作昔話 → 魂のある人形
きょうの日本昔話 → 長ーい文字
きょうの世界昔話 → わらった王女
きょうの日本民話 → ネズミをたいじするには
きょうのイソップ童話 → イタチとヤスリ
きょうの江戸小話 → 万の字

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10月18日の日本民話 巨大な魚のタマゴ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 10月の日本民話

10月18日の日本民話

巨大な魚のタマゴ

巨大な魚のタマゴ


神奈川県の民話神奈川県情報

 むかしむかし、あるひの事、鎌倉(かまくら)や葉山(はやま)の海辺にすんでいる人たちは、海を見てビックリしました。
 見わたすかぎりの海が、赤い色にかわっていたのです。
 あるお寺のえらいお坊さんが、うわさをきいて海辺へでかけより、赤い水を手にすくって調べてみました。
 水はネバネバとしたおかゆのようで、中に赤いアワ(→鳥のエサになる、イネ科の一年草)のような粒がびっしりありました。
「こんなことは生まれてはじめてです。なにか、大きな災(わざわ)いでもあるのですか?」
 心配した浜の人がたずねると、お坊さんはこんな話をしました。
「この海の東のかなたに、とてつもない巨大な魚がおる。一日目にその魚の頭を見たなら、尾を見るのは七日目のことだ。その大魚がタマゴをうむとき、まわり四百キロもの海の色がまっ赤になるという。おそらく、その大魚がタマゴをうんだのであろう。災いがおこるかどうかはわからぬが、用心しておくにこしたことはない」
 お坊さんはそういって、お寺へ帰っていきましたが、五、六日たつと、海はまたもとの美しい海にもどって、心配した災いもおこりませんでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → フラフープの日
きょうの誕生花 → わた
きょうの誕生日 → 1955年 郷ひろみ(歌手)

きょうの新作昔話 → へびきり峠
きょうの日本昔話 → 竹の子童子
きょうの世界昔話 → 金になったお姫さま
きょうの日本民話 → 巨大な魚のタマゴ
きょうのイソップ童話 → ネズミとイタチ
きょうの江戸小話 → よくみとどける

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10月17日の日本民話 山へ入らない日

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 10月の日本民話

10月17日の日本民話

山へ入らない日

山へ入らない日
福島県の民話福島県情報

 むかしむかし、ある深い山に入って猟(りょう)をしている、一人の猟師(りょうし)がいました。
 この猟師の猟のやり方はほかの猟師たちとはちがっていて、まず、山奥の高い木に見張りのやぐらをつくって、そこで一夜をあかします。
 そして夜明けにエサをさがしにやってくるシカを、シカ寄せの笛(ふえ)をふいておびき寄せて、やぐらの上から鉄砲でうつというものです。
 ある日の夜明け、猟師はきのうからのぼっているやぐらの上で目をさますと、さっそくシカ寄せの笛をふきながら、あたりを注意ぶかくうかがっていました。
 するとすぐ目の前のやぶの中で、大きな物音がしました。
 目の前の草木が、風もないのにガサガサとゆれています。
 猟師はかたわらに置いてある鉄砲を手にして、動く草木をジッと見つめていました。
 するとやぶの中から出てきたのは、おカマのふたほどもある大きな女の人の顔で、みだれた髪は地面までたれさがっています。
「バ、バ、バケモノじゃ!」
 ビックリした猟師は思わず、鉄砲を木の下の草むらの中へ落としてしまいました。
 女のバケモノは、ニタニタと気味悪く笑っています。
 猟師は尻もちをついたまま立ちあがることもできませんでしたが、幸いなことにバケモノはそれ以上近づかず、落とした鉄砲をうばおうともしません。
 しばらく猟師を見つめながら笑っていると、やぶの中へ姿を消してしまいました。
 猟師はやぐらの上からおりると、鉄砲の事も忘れて逃げだしました。
 走って、走って、やっと家についたとたん、安心したのかそのまま倒れて気を失ってしまいました。
 数日後、正気をとりもどした猟師は、心配して集まっていた近所の人たちに山奥で出会ったバケモノの話をしました。
 それを聞いていた、一人の老人が言いました。
「なるほどの。だがそれは、お前があまりにも殺生(せっしょう)をするからだ。命があったからよかったものの、二度とそんな目にあいたくなければ、殺生をやめる事じゃな」
 猟師はそれっきり、猟師をやめてしまいました。
 この事があってから、猟師の村では十月の十七日を山神さまの祭り日として、ぜったいに山に入らない事にしました。
 もしもこの日に山へ入ると、かならずバケモノに出会うと言われています。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → カラオケ文化の日
きょうの誕生花 → みずひき
きょうの誕生日 → 1961年 賀来千香子(俳優)

きょうの新作昔話 → 鳥追いの森
きょうの日本昔話 → 鳥のみじいさん
きょうの世界昔話 → 塩のように好き
きょうの日本民話 → 山へ入らない日
きょうのイソップ童話 → 王さまを欲しがるカエル
きょうの江戸小話 → あいさつ

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10月16日の日本民話 あさことゆうこ

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10月16日の日本民話

あさことゆうこ

あさことゆうこ
長野県の民話長野県情報

 むかしむかし、信濃(しなの)のある山の東と西のふもとに、それぞれ小さな村がありました。
 この二つの村は、ちょっとした事でけんかになり、村人たちはもう五十年も行き来していません。
 さて、東の村に、とてもかしこい女の子がいました。
 この女の子は朝早く生まれたので、あさこと名づけられました。
 あさこは村の人気者で、村の人たちはあさこを見かけると、だれでも声をかけます。
「あさこ、元気か?」
「あさこ、これ食べろや」
 ある日の事、東の村の年よりたちが集まって、思い出話に花をさかせていました。
「西の村とは長い事つきあいがねえが、どうじゃろう、ここらで一つ、ちえくらべでもやってみねえか。こっちにはあさこがいるから、負けるわけはねえぞ」
「そうだな。おらたちが勝ったら、西の村を東の村の子分(こぶん)にして、あの山に道を作らそう」
「そりゃ、ええ考えだ」
 さっそく村一番の弓の名人が、矢文(やぶみ)を西の村へ放ちました。
 西の村では、村の広場に矢が飛んできたのでビックリ。
「こりゃ、東の村から飛んできたものじゃろうか?」
 矢文についた手紙を広げてみると、こんな事が書いてありました。
《あさっての昼に、山のてっぺんでちえくらべをしよう。こっちからは娘一人を出すが、そっちは何人出してもかまわない。負けた村は勝った村の子分になって、一年以内に二つの村の間にある山に道を作ること。東の村より》
 それを読んだ村人たちは、大笑いです。
「はっはっは。東の村のやつめ、こっちには、ゆうこという、かしこい娘がいるのを知らんな。これでもう東の村は、おらたちの子分に決まったようなもんじゃ」
「よし、すぐに返事の矢文を飛ばそう」
 こうして、ついにちえくらべの日がやってきました。
 東の村からは、あさこが。
 西の村からは、ゆうこが、たった一人で出かけていったのです。
 さて、五十年ものあいだ誰も通らなかった峠(とうげ)の道は、すっかり荒れはててしまい、女の子の足でのぼるのは大変な事でした。
 おまけに頂上近くには、東の村側には大木が、西の村側には大きな岩があって、それぞれの行く手をふさいでいるのです。
 やっとの事で二人は頂上にたどり着き、そこでバッタリと出会った二人は、思わずジッと顔を見あわせました。
「あんたが、ゆうこ?」
「うん、ゆうこ。・・・あんたが、あさこ?」
「うん、あさこ。・・・なんだか、似てるねえ」
「うん。そっくりじゃ」
 あさことゆうこは、とてもよく似ていました。
 しかも似ているのは顔だけでなく、好きな食べ物に、嫌いな食べ物、好きな花に、嫌いな虫、そしてなんと、生まれた日までいっしょだったのです。
 二人はすぐに、仲良しになりました。
「でも、どうして今まで、二つの村は行き来をしなかったんだろう?」
「本当にねえ。にらみあっていたって、仕方ないのに」
「ねえ、あたしたちの力で、二つの村が仲良くできるようにしない?」
「うん。そうしよう」
 そこで二人で相談して、ある作戦を考えました。
 あさことゆうこがそれぞれの村へ帰ると、村ではみんなが首を長くして待っていました。
「おそかったな。して、どうじゃった?」
 あさこは、みんなに話しました。
「今の今までちえくらべをやりあっていたけど、ちえくらべは引き分けになった」
「なに、引き分けじゃと?」
 村の人たちは、ガッカリです。
「それでな、次の勝負は二人でこう決めた。あすの夜明けを合図に、いっせいに峠の道を作りはじめて、一日でも早く頂上まで道を作りあげたほうが勝ち」
「ふむふむ、なるほどのう」
「まあ、この村は力持ちが多いでな、こっちの勝ちと決まってら」
「そうじゃ、そうじゃ」
 東の村も、西の村も、今度こそ自分たちの村が勝つぞと、えらくはりきりました。
 こうして次の日から東の村と西の村は、道づくりに取りかかったのです。
 暑い日も、寒い日も、雨の日も、風の日も、一日も休むことなく、道づくりはすすめられました。
 あさことゆうこは、ときどきこっそりあって工事のようすを知らせあい、同時に道ができるように気をくばりました。
「西の村は、あの大岩をどければ、もう終わりよ」
「東の村は、あの大木をたおせば、もうおしまいよ」
「いよいよ明日だね」
「うん。また明日」
 さて次の日、東の村の人たちは大岩をどけると、大声でさけびながら頂上めがけて走っていきました。
 西の村の人たちも大木をどけると、大声でさけびながら頂上めがけて走っていきました。
「やったあ! 東の村の勝ちじゃ!」
「やったあ! 西の村の勝ちじゃ!」
 そして頂上で、バッタリと二つの村の人たちが出会ったのです。
「ああっ、西の村の衆が・・・」
「ああっ、東の村の衆が・・・」
「また引き分けじゃ。ええい、もう半日早ければ勝ったのに!」
「それはこっちの言葉じゃ。ほんとうにくやしいー」
 するとそこへ、東の村の長老が、西の村の長老に言いました。
「おや? お前はもしかして、泣き虫の与作(よさく)でねえのか?」
「そう言うお前は、はなたれの与平(よへい)でねえか」
「なんだお前は、泣き虫だったくせに、えらいじいさまになっちまって」
「お前こそ、あのはなたれが、こんなおいぼれになっちまって」
「はっはっはっは、まったくじゃ。ところで与作よ。こうして同時に道ができあがったのも、何かのえんじゃ。今までの事は水に流して、おたがい仲直りしてはどうだろう?」
「おう。わしの同じ事を考え取ったとこだ」
と、いうわけで、山の頂上では、二つの村が仲直りした宴会がはじまったのでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 世界食糧デー
きょうの誕生花 → にしきぎ
きょうの誕生日 → 1951年 阿川泰子(ジャズ歌手)

きょうの新作昔話 → 鬼岳(おにだけ)
きょうの日本昔話 → 腰折れスズメ
きょうの世界昔話 → とびっこ
きょうの日本民話 → あさことゆうこ
きょうのイソップ童話 → ゼウスとヘビ
きょうの江戸小話 → おいはぎの用心

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10月15日の日本民話 炭焼きじいと古ダヌキ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 10月の日本民話

10月15日の日本民話

炭焼きじいと古ダヌキ

炭焼きじいと古ダヌキ
徳島県の民話徳島県情報

 むかしむかし、ある山里(やまざと)にすむ炭焼きのおじいさんが、山の中にある炭焼き小屋で仕事をしていました。
 ある夕方の事です。
 とつぜん大蛇(だいじゃ)が現れて、炭焼きのおじいさんに食らいつくと、口にくわえたまま山奥に逃げこんでいきました。
 知らせをきいた里の人たちは、みんなで炭焼きのおじいさんの行方(ゆくえ)をさがしました。
 すると次の日、草むらの中に、おじいさんが倒れているのを見つけたのです。
 二日近くも飲まず食わずだった炭焼きのおじいさんは、死人のようにグッタリとしていました。
 大蛇はどこへいったかわかりませんが、とにかく命は助かったので、みんなはホッとしました。
 そして家まで運んで手当てをすると、炭焼きのおじいさんはやっと元気をとりもどして、こんな話しをはじめたのです。
 炭焼きのおじいさんは、大蛇にやぶの中につれこまれると、大蛇は炭焼きのおじいさんを口からはなして、目の前で美しい娘に姿をかえました。
 そして、
「こちらへ、こちらへ」
と、手まねきしたのです。
 さそわれるままに、炭焼きのおじいさんはついていきました。
 娘は見えかくれしながら、いつのまにかいなくなってしまいました。
 それから、どこをどう歩いていたのかわかりません。
 水も飲まず、なにも食べずに山の中をうろつきまわっているうちに、疲れと空腹で動くことができなくなりました。
 そしてそのまま、草むらの中で倒れてしまったというのです。
「なさけねえこった。古ダヌキに化かされて、こんなところで死ぬとは・・・」
と、気を失ったところを、里の人たちに助けられてというのです。
 徳島にすむタヌキたちは、むかしから手のこんだ化かしかたをして、人をだましてきたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → きのこの日
きょうの誕生花 → しゅうめいぎく
きょうの誕生日 → 1950年 清水國明(タレント)

きょうの新作昔話 → つかずの鐘
きょうの日本昔話 → ふるやのもり
きょうの世界昔話 → 魔法使いの弟子
きょうの日本民話 → 炭焼きじいと古ダヌキ
きょうのイソップ童話 → オオカミとおばあさん
きょうの江戸小話 → ゆいごん

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10月14日の日本民話 永平寺のマメ太鼓

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 10月の日本民話

10月14日の日本民話

永平寺のマメ太鼓

永平寺のマメ太鼓
福井県の民話福井県情報

 むかしむかし、意地の悪い姑(しゅうとめ)さんと、おとなしくて素直(すなお)な嫁さんがいました。
 ある日の事、嫁さんが畑にマメをうえようとしている事を知った姑さんは、そのマメを生いりにしておきました。
 こうすると、マメは芽を出さなくなります。
 嫁さんはそのマメを見て少し変だと思いましたが、だまってマメをうえました。
 毎日毎日、マメの世話をするのですが、マメはいっこうに芽をだしません。
「お前のうえかたが悪いから、一粒も芽がでないでないか」
と、姑さんはいじわるく嫁さんをののしりました。
 しかしある日の事、一粒だけが芽をだしたのです。
 きっとその一粒だけは、運良くいられずにすんだのでしょう。
 そのマメはみるみる成長して、みあげるばかりの大木になり、数えきれないほどたくさんのマメがなりました。
 それをみた姑さんは自分のした事を反省して、それからは嫁さんをいじめなくなりました。
 仲良しになった嫁さんと姑さんは、そのマメの木で太鼓(たいこ)をつくり、永平寺(えいへいじ→福井県吉田郡永平寺町にある曹洞宗の大本山)に寄進(きしん)したという事です。
 その太鼓は今でも、永平寺の宝物の一つになっています。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 鉄道の日
きょうの誕生花 → テランセラ
きょうの誕生日 → 1970年 永作博美(俳優)

きょうの新作昔話 → 玄蕃丞狐(げんばのじょうぎつね)
きょうの日本昔話 → ヒバリとお日様
きょうの世界昔話 → 世界一美しい物
きょうの日本民話 → 永平寺のマメ太鼓
きょうのイソップ童話 → ヘビとイタチとネズミ
きょうの江戸小話 → ちょうちん

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10月13日の日本民話 助けられた赤ウシ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 10月の日本民話

10月13日の日本民話

助けられた赤ウシ

助けられた赤ウシ
北海道の民話北海道情報

 むかしむかし、北海道の函館善光寺(はこだてぜんこうじ)というお寺ができるときのことです。
 新しいお寺が完成する半月ほど前の朝、ご本尊(ほんぞん)を安置(あんち)していたかりの本堂(ほんどう)に、大きなウシがものすごい勢いでとびこんできました。
 飛び込んできたのはメスの赤ウシで、人間に食べられるための肉にされるために、つれていかれる途中でしたが、お寺の鐘(かね)の音をきくと、いきなりたづなをふりきって走りだし、お堂の中に飛び込んだというのです。
 つれてきたウシ飼いたちがたづなをひいたり、からだをたたいたりしても、ウシはビクとも動きません。
 こまったウシ飼いたちは仲間を呼んで、ようやくお堂からウシをひきだしました。
 そのとき、お寺の和尚(おしょう)さんが、
「この赤ウシはご本尊の如来(にょらい)さまと縁(えん)があって、このお堂に逃げこんできたのだろう。殺されたらそのツノをもらいうけて供養(くよう)してやろうと思うのだが」
と、いって両手をあわせて、大きな赤ウシを見送りました。
 ところがその後、和尚さんはその赤ウシが肉にされずに、まだ生きていることを聞いたのです。
 和尚さんは、すぐに出かけていって、
「殺されずに命を長らえているのは、やはり縁があるのじゃ。お寺で飼ってやれば信者も喜ぶだろう」
と、その赤ウシをもらいうけてきました。
 やがて、お寺が完成しました。
 和尚さんは赤ウシの小屋をたてて、その前に賽銭箱(さいせんばこ)を置きました。
 そして赤ウシの話を書いた紙を、町でくばり、
「このウシは、長野の善光寺(ぜんこうじ)の如来さまの生まれかわりじゃ」
と、いって、お寺の信者をふやしていったのです。
 その後、和尚さんは信者たちと赤ウシをひいて北海道から海をわたり、長野県の善光寺参りをしました。
 赤ウシは善光寺の本堂の前までいくと、前足をたたんですわり、うやうやしく頭を下げたので、それを見ていた人たちはビックリしたということです。
 赤ウシは函館へ帰ってきてからも信者たちに愛されていましたが、やがて病気になって死んでしまいました。
 するとお寺も、だんだんとさびれていったという事です

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → サツマイモの日
きょうの誕生花 → ネリネ
きょうの誕生日 → 1973年 松嶋菜々子(俳優)

きょうの新作昔話 → 千匹オオカミ
きょうの日本昔話 → はなしずきの殿さま
きょうの世界昔話 → ヘンゼルとグレーテル
きょうの日本民話 → 助けられた赤ウシ
きょうのイソップ童話 → カニとキツネ
きょうの江戸小話 → 東西南(北ない)

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10月12日の日本民話 キジも鳴かずば、撃たれまいに

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10月12日の日本民話

キジも鳴かずば、うたれまいに

キジも鳴かずば、撃たれまいに
石川県の民話石川県情報

 むかしむかし、犀川(さいがわ)のほとりに、小さな村がありました。
 この村では毎年、秋の雨の季節になると犀川がはんらんして多くの死人が出るため、村人たちは大変困っていました。
 さてこの村には、弥平(やへい)という父親と、お千代(おちよ)という小さい娘が住んでいました。
 お千代の母親は、この前の大雨に流されて死んでしまいました。
 二人の暮らしはとても貧しかったのですが、それでも父と子は、毎日仲良く幸せに暮らしていました。
 そしてまた、今年も雨の季節がやってきました。
 そのころ、お千代は重い病気にかかっていましたが、弥平は貧乏だったので医者を呼んでやることも出来ません。
「お千代、早く元気になれよ。さあ、アワのかゆでも食って元気を出せよ」
 弥平がお千代に食べさせようとしても、お千代は首を横に振るばかりです。
「ううん、わたし、もう、かゆはいらねえ。わたし、あずきまんまが、食べたい」
 あずきまんまとは赤飯の事で、お千代の母親が生きていたころに、たった一度だけ食べた事があるごちそうです。
 ですが今の弥平には、あずきどころか米の一粒もありません。
 弥平は寝ているお千代の顔をジッと見つめていましたが、やがて決心すると立ちあがりました。
「地主(じぬし)さまの倉(くら)になら、米もあずきもあるはずだ」
 こうして弥平は、可愛いお千代のために、生まれてはじめて泥棒をしたのです。
 地主の倉から一すくいの米とあずきを盗んだ弥平は、お千代にあずきまんまを食べさせてやりました。
「さあ、お千代、あずきまんまじゃ」
「ありがとう。おとう、あずきまんまは、おいしいなあ」
「おお、そうかそうか。いっぱい食べて、元気になるんじゃぞ」
 こうして食べさせたあずきまんまのおかげか、お千代の病気はだんだんとよくなり、やがて起きられるようになりました。
 さて、地主の家では米とあずきが盗まれた事に、すぐに気がつきました。
 お金持ちの地主にとっては、犬のエサほどの量で、たいした物ではありませんでしたが、一応、役人へ届けました。
 やがて元気になったお千代は、家の外に出ていくと楽しそうに歌いながら、マリつきをはじめました。
♪トントントン
♪おらんちじゃ、おいしいまんま食べたでな
♪あずきの入った、あずきまんまを
♪トントントン
 お千代の歌を、近くの畑にいた百姓(ひゃくしょう)が聞いていました。
「変じゃなあ、弥平の家は貧乏で、あずきまんまを食べられるはずがないのだが。・・・まあ、いいか」
 そのとき百姓は、大して気にもとめませんでした。
 やがて、また大雨が降り出して、犀川の水は今にもあふれださんばかりになりました。
「このままじゃ、また村は流されてしまうぞ」
 村人たちは、村長の家に集まって相談しました。
 すると、村人の一人が言いました。
「人柱を立てたら、どうじゃろう?」
 人柱とは、災害などで苦しんでいる人々が生きた人間をそのまま土の中にうめて、神さまに無事をお願いするという、むかしの恐ろしい習慣です。
 その生きながらに土の中にうめられるのは、たいていが、何か悪い事をした人だったそうです。
「そういえば、この村にも悪人がおったな」
と、言ったのは、お千代の手マリ歌を聞いた百姓でした。
「なに? 悪人がおるじゃと? それは誰じゃ?」
「うむ。実はな」
 百姓はみんなに、自分の聞いた手マリ歌の事を話しました。
 その夜、弥平とお千代が食事をしていると、
 ドンドン! ドンドン!
 だれかが、戸をはげしくたたきます。
「弥平! 弥平はおるか!」
「へい、どなたで?」
「弥平、おぬしは先日、地主さまの倉から米とあずきを盗んだであろう。娘が歌った手マリ歌が証拠(しょうこ)じゃ」
 お千代は、ハッとして弥平の顔を見ました。
「おとう!」
 泣き出すお千代に、弥平はやさしく言いました。
「おとうは、すぐに帰ってくるから、心配せずに待っていなさい」
「おとう! おとう!」
 泣き叫ぶお千代を残して、弥平は村人につれていかれ、そしてそのまま帰っては来ませんでした。
 犀川の大水を防ぐために、人柱として生きたままうめられてしまったのです。
「しかし、たった一すくいの米とあずきを盗んだだけで、人柱とはな」
と、同情(どうじょう)する村人もいましたが、下手な事を言うと、今度は自分が人柱にされるかもしれません。
 そういう時代だったのです。
 さて、村人からお父さんが人柱にされた事を聞いたお千代は、声をかぎりに泣きました。
「おとう! おとう! おらが歌を歌ったばかりに」
 お千代は何日も何日も、泣き続けました。
 やがてある日、お千代は泣くのをやめると、それからは一言も口をきかなくなってしまいました。
 何年かたち、お千代は大きくなりましたが、やっぱり口をききません。
 村人たちはお父さんが殺されたショックで、口がきけなくなったと思いました。
 ある年の事、一人の猟師(りょうし)がキジを撃ちに山へ入りました。
 そしてキジの鳴き声を聞きつけて、鉄砲の引き金を引きました。
 ズドーン!
 見事に仕留めたキジを探しに、猟師は草むらをかきわけていって、ハッと足をとめました。
 撃たれたキジを抱いて、お千代が立っていたのです。
 お千代は死んでしまったキジに向かって、悲しそうにいいました。
「キジよ、お前も鳴かなければ、撃たれないですんだものを」
「お千代、おめえ、口がきけたのか?」
 お千代は猟師には何も答えず、冷たくなったキジを抱いたまま、どこかに行ってしまいました。
 それから、お千代の姿を見た者はいません。
「キジよ、お前も鳴かずば撃たれまいに」
 お千代の残した最後の一言が、いつまでも村人のあいだに語りつたえられ、それからその土地では、人柱という恐ろしい事は行われなくなったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → たまごデー
きょうの誕生花 → とうがらし
きょうの誕生日 → 1960年 真田広之(俳優)

きょうの新作昔話 → 大工と三毛猫
きょうの日本昔話 → タニシ長者
きょうの世界昔話 → ディエロのるすばん
きょうの日本民話 → キジも鳴かずば、うたれまいに
きょうのイソップ童話 → 大きい魚と小さい魚
きょうの江戸小話 → したからのぞいていた

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10月11日の日本民話 竜から落ちた神さま

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 10月の日本民話

10月11日の日本民話

竜から落ちた神さま

竜から落ちた神さま
山口県の民話山口県情報

 むかしむかし、竜護峰(りゅうごほう)に福王(ふくおう)という神さまが住んでいました。
 福王は村々の平和と幸福の神さまです。
 ある日の事、福王は旅がしたくなり、
「遠方(えんぽう)の国を視察(しさつ)するのも、わたしの役目だ」
と、にまたがって出かけました。
 福王がある漁村へおり立ったところ、神さまのお出ましを知った村の人々が集まってきました。
 福王はすべての人にめぐみをさずけましたが、それでもなお、帰っていかない者がいます。
 それは、若くてたくましい福王にあこがれる、若い娘たちでした。
 福王は竜の背の袋から娘たちに小さな玉をくばり、それを口にするよう伝えました。
 すると彼女たちは落ちつきをとりもどして、帰って行きました。
 しかし一人だけ、残っている娘がいます。
「そなたは、玉を食ベなかったのか?」
と、たずねる福王に
「はい。宝などほしくありません。ただ、お側においてほしいのです」
と、秋穂(あいお)と名のる娘は答えました。
「だが、それは」
「おねがいです。お側においてほしいのです」
「しかし」
「おねがいです」
「・・・・・・」」
 とうとう福王は根負けして、二人で竜にまたがり竜護峰へとむかいましたが、あと少しと言うところで、田んぼの中へ落ちてしまいました。
 この事から、福王は神さまから人間になってしまいましたが、秋穂としあわせに暮らしたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ウインクの日
きょうの誕生花 → ひめりんご
きょうの誕生日 → 1973年 金城武(俳優)

きょうの新作昔話 → 月から降った餅
きょうの日本昔話 → キンモクセイの妖怪
きょうの世界昔話 → カンチールのぼうけん
きょうの日本民話 → 竜から落ちた神さま
きょうのイソップ童話 → タカとトンビとハト
きょうの江戸小話 → のんべえ親子

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10月10日の日本民話 バケモノをたいじしたネコ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 10月の日本民話

10月10日の日本民話

バケモノをたいじしたネコ

バケモノをたいじしたネコ
富山県の民話富山県情報

 むかしむかし、あるところに、ネコの絵をかくのがとても上手な子どもがいました。
 ねむっているネコ、遊んでいるネコ、ごはんを食べているネコと、どのネコの絵も本物そっくりで、大人の絵かきもかなわないほどでした。
 ある時、子どもは何を思ったのか、
「おら、ネコの絵をかきながら旅をしてくる」
と、言って、絵の具ばこをかついで家を出ていきました。
 子どもはお金がなくなると、ネコの絵をかいて売り、それでごはんを食べたり、宿屋にとまったりしました。
 ところがある日、さびしい村はずれまできた時、宿が決まらないまま日がくれてしまいました。
(弱ったな。どっかにとまるところはないかな?)
 トボトボと歩いていると、古いお寺がありました。
 まるでおばけ屋敷みたいに荒れたお寺で、だれも住んでいません。
(しかたがない。気味が悪いけど、今夜はここでとまろう)
 子どもは床板のあちこちが落ちた、ほこりだらけのお堂にこしをおろしました。
 むかしはりっぱなお寺だったのですが、和尚(おしょう)さんがなくなった後、おそろしいバケモノが住むようになって、お寺にとまった者はだれでも食べられてしまうといううわさがたったため、このように荒れてしまったのです。
 そんな事とは知らない子どもは、お堂のかべに自分のかいたネコの絵をはると、そのままよこになってねむりこんでしまいました。
 すると真夜中ごろ、まるでイヌのように大きなネズミが出てきて、子どもにかみつこうとしたのです。
 そのとたん、お堂のかべにはられた絵の中からネコが次々ととびだしてきて、
「ニャオーーン!」
と、大きなネズミにかみついていきました。
 でも、さすがは人食いネズミ、かみついたネコを振り払うと、ネコに向かって鉄のようなキバをむきました。
 ネコたちと大ネズミのたたかいに目をさました子どもは、こわくて足が動かず、逃げることができません。
 でもそのうちに、
「ギャオォォォーーー!」
と、いう大きな鳴き声とともに、大ネズミが倒れました。
 そして子どもはビックリして、そのまま気を失ってしまいました。
 次の朝、子どもが目をさましてみると、目の前に大ネズミが血まみれになって死んでいたのです。
(おらをたすけてくれたネコは、どこへ行ったのかな?)
 子どもがあたりを見回すと、かべにはったネコの絵のネコたちがいっせいに、
「ニャーオン」
と、鳴きました。
 よく見ると、どのネコの体にもひっかききずのようなあとがついています。
「お前たち、助けてくれてありがとう」
 子どもはネコの絵をはずしてふところに入れると、絵の具ばこをかついでお寺を出ていきました。
 そんなことがあってから、この寺には二度とバケモノが出なくなったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 銭湯の日
きょうの誕生花 → まつたけ
きょうの誕生日 → 1975年 森久美子(タレント)

きょうの新作昔話 → 牛に引かれて、善光寺参り
きょうの日本昔話 → 切れない紙
きょうの世界昔話 → クマとおばあさんとシャオホン
きょうの日本民話 → バケモノをたいじしたネコ
きょうのイソップ童話 → 鳥刺しとヒバリ
きょうの江戸小話 → よっぱらいのおとしもの

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10月9日の日本民話 殿さまとタイの塩焼き

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 10月の日本民話

10月9日の日本民話

殿さまとタイの塩焼き

殿さまとタイの塩焼き
岡山県の民話岡山県情報

 むかしむかし、とてもいばっている殿さまがいました。
 そのくせ、自分では何も出来ずに、何がどうなっているのかわかりません。
 さて、この殿さまはタイの塩焼きが大好物で、ほかにたくさんのごちそうがあっても、必ずタイの塩焼きをつけないと機嫌が悪くなるのでした。
 でも、大好きといっても、ほんの二、三口はしをつけるだけで、ほとんど残してしまいます。
 ところがある日の事、殿さまはタイの表側を食べおわるとけらいに言いました。
「今日のタイはとてもおいしいぞ。すぐにかわりを持ってこい」
 さあ、おどろいたのはけらいたちです。
 突然そんなことを言われても、用意なんかしてありません。
 かといって、これから用意するとなると、とても時間がかかります。
「はあ、その、あの・・・」
 どういっていいかわからず、けらいたちがおろおろしていると、一人のけらいが、
「かしこまりました。すぐにお持ちいたします」
と、言って、タイの乗っているさらを持ってろうかへ出るなり、すばやくタイをひっくりかえしました。
 そしてそのまま、部屋にもどって殿さまのおぜんにおき、
「おかわりを持ってきました」
と、言ったのです。
「うむ。早かったな」
 何も知らない殿さまは、これを新しいタイだと思って、二口、三口はしをつけると、
「よいよい。このタイは、さっきよりもおいしいぞ」
と、言って、ニッコリ笑ったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 塾の日
きょうの誕生花 → ほととぎす
きょうの誕生日 → 1945年 水前寺清子(歌手)

きょうの新作昔話 → ゆかいなおなら
きょうの日本昔話 → 六つの「子」の字
きょうの世界昔話 → クジャクの舞
きょうの日本民話 → 殿さまとタイの塩焼き
きょうのイソップ童話 → 難船した男
きょうの江戸小話 → ものわすれのめいじんたち

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10月8日の日本民話 山女

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 10月の日本民話

10月8日の日本民話

山女

山女
群馬県の民話群馬県情報

 むかしむかし、群馬県(ぐんまけん)の草津地方(くさつちほう)では、山で仕事をする人たちは十月八日になると仕事をやめて山の小屋をしめ、ふもとの村へもどるならわしになっていました。
 さて、ある年の十月八日の事です。
 山の小屋で炭を焼いている三人の男が、まだ仕事がかたづかないので、しばらく山に残ることにしました。
「さて、今夜は村へおりていって、酒でものんでくるか」
 一人の男がいうと、二人の仲間もうなずきました。
 三人が山道をおりていくと、とちゅうにある温泉の湯滝(ゆたき)の下にある湯つぼで、人の気配がしました。
 ふと見ると、月明かりの中に長い白髪の女の人が一人で、湯につかっているのが見えました。
 すると、女の人は向こうをむいたまま、
「いまごろから山をおりて、どこへいくのじゃ?」
と、声をかけてきたのです。
「村へ戻って、酒をのみにいくんじゃ」
 いわれるままに三人の男がこたえると、女の人はふりむいて、
「では、わたしも一緒に行きましょう」
と、言ったその顔を見ると、目玉が一つしかない一つ目だったのです。
 一つ目は顔のまん中にあるミカンほどの大きさの目玉を光らせて、ニヤニヤと笑いました。
「でたあー!」
 三人の男はちょうちんを放り出して、山の小屋へと飛んで帰りました。
 温泉につかっていたのは草津の山にすむ山女(やまおんな)だと言われています。
 ほかにも、山女を見たことのある木こりの話しでは、
「年は十歳の子どもほどで、小皿のような目玉が顔のまん中に一つだけあって、なかまを二、三十人ほどつれて歩いていた」
と、いいます。
 とてもおそろしい姿の山女ですが、山女は人をおどかしても、けっして人に悪さはしないという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 木の日
きょうの誕生花 → のぼたん
きょうの誕生日 → 1978年 中山エミリ(タレント)

きょうの新作昔話 → ウサギの誕生
きょうの日本昔話 → たすけとお化け
きょうの世界昔話 → 死神のお使いたち
きょうの日本民話 → 山女
きょうのイソップ童話 → バッタをとるこどもとサソリ
きょうの江戸小話 → さけなめおや子

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10月7日の日本民話 お菊ののろい

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 10月の日本民話

10月7日の日本民話

お菊ののろい

お菊ののろい
群馬県の民話群馬県情報

 むかしむかし、上州(じょうしゅう→群馬県)に、小幡上総介(おばたかずさのすけ)という(さむらい)がいました。
 とても短気で乱暴な男でしたが、お菊(きく)という美しい女中(じょちゅう)をとても気に入っていました。
 ある朝、上総介(かざさのすけ)がお菊の運んできた朝ご飯を食べようとしたとき、ご飯の中に何やらキラリと光るものが入っていました。
 はしでつまみ出してみると、何とそれは、一本のぬい針だったのです。
 上総介は怒りでからだをふるわせると、お菊につかみかかって問いただしました。
「この恩知(おんし)らずめ! よくもわしを殺そうとしたな。どうしてこんなことをしたのじゃ!」
 まるで身に覚えのないお菊でしたが、上総介に何度も何度も殴りつけられて、いいわけをするひまもありません。
 そのようすをおもしろそうに見ていた奥さんが、言いました。
「この女は、性根の曲がった頑固者(がんこもの)です。殴ったぐらいでは白状しますまい。どうです、ヘビ責(ぜ)めになさっては」
「よし、そうしよう」
 お菊は裸にされて、お風呂の中に、たくさんのヘビと一緒(いっしょ)に投げこまれました。
 お風呂の水がだんだん熱くなると、苦しくなったヘビがお菊にかみつきます。
 地獄のような苦しみの中で、お菊は、
「このうらみ、死んでもはらしてくれようぞ!」
と、言い残して、ついに死んでしまったのです。
 それから何日かして、奥さんは体中をハリでさされる痛みにおそわれて、寝こんでしまいました。
 医者をよびましたが、まるで原因がわかりません。
 何日も何日も苦しんだすえに、
「お菊、許しておくれ、針を入れたのはこの私じゃ。上総介に可愛がられるお前がにくかったのじゃ」
と、言うと、そのまま死んでしまいました。
 上総介は本当のことを知って、死んだお菊にあやまりましたが、いまさらお菊は許してくれません。
 その夜から、上総介の屋敷にお菊の幽霊(ゆうれい)が出るようになったのです。
 家来や女中たちは怖がって逃げてしまい、一人きりになった上総介は、何度も何度もお菊にあやまりながら死んでいったのです。
 その後、小幡家の人々によって、お菊のためにお宮が建てられました。
 それからは、お菊の幽霊は現われなくなったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ミステリー記念日
きょうの誕生花 → キウイ
きょうの誕生日 → 1941年 坂田利夫(漫才師)

きょうの新作昔話 → 朝寝坊山の引っ越し
きょうの日本昔話 → ふしぎなたいこ
きょうの世界昔話 → 十二月の贈り物
きょうの日本民話 → お菊ののろい
きょうのイソップ童話 → 水遊びをするこども
きょうの江戸小話 → うまいものとまずいもの

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10月6日の日本民話 ほらふき甚兵衛

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10月6日の日本民話

ほらふき甚兵衛

ほらふき甚兵衛
埼玉県の民話埼玉県情報

 むかしむかし、あるところに、甚兵衛(じんべえ)というほらふきがいました。
 ある日の事、
「大変だ! 大変だ! この先の池で、お殿さまが死んでいるぞ!」
と、甚兵衛が大声で言うので、殿さまの家来たちが青くなってかけつけてみると、池には殿さまガエルが一匹死んでいるだけでした。
「なんと悪質なほらを! ゆるさん」
 家来たちはおこって、甚兵衛さんをお城に連れていきました。
 ところが殿さまはおこるどころか、その話しを聞いて大笑いです。
「よいよい、なかなかおもしろい男じゃ。よし、わたしの城にいる三人のうそつき名人とうそくらべをしてみろ」
 そこで甚兵衛は、殿さまの前でうそくらべをすることになりました。
 呼ばれた三人はいつもうそくらべの勉強ばかりしているので、とてもうそが上手です。
「ふん、こんな田舎者(いなかもの)に負けてたまるか」
 三人とも、こわい顔で甚兵衛をにらんでいます。
「では、まずわたしから」
 一番めの家来が、言いました。
「わたしの国には、一万年もたった大きな木があります。枝は国中に広がって、雨がふってもカサがいりません」
 すると、二番めの家来が言いました。
「わたしの国には、富士山をまたいで日本中の草を全部食べてしまう、とても大きなウシがいます。琵琶湖(びわこ)の水なんかひと飲みでなくなってしまいます」
 続いて、三番めの家来が言いました。
「わたしの国には、海で顔を洗う大男がいます。大男が海の水を手ですくうたびに洪水(こうずい)が起こり、国中の家が流されてしまいます」
 それらの話しを聞いた殿さまは、大喜びです。
「よいよい、三人ともなかなかおもしろいぞ」
 三人の家来は、自慢げに胸を張りました。
「さて、そこの男、お前の話はどうじゃ」
「はい、では」
 甚兵衛はもう一度すわりなおすと、殿さまの方を見て言いました。
「わたしは、胴のまわりが三百里(→千二百キロほど)もあって、たたけば、世界中に鳴りひびく大太鼓(おおだいこ)を作りたいと思います」
「そんなに大きな太鼓を、どうやって作る?」
 家来の一人が、甚兵衛にたずねると、
「まず胴は、一万年もたった大きな木で作り、太鼓の皮は富士山をまたぐウシの皮を張り、それから海の水で顔を洗う大男に太鼓をたたかせます」
「なるほど、これはまいった」
 三人の家来は、思わずうつむいてしまいました。
「うそつきくらべは、その男の勝ちじゃ」
 殿さまは甚兵衛に、たくさんのほうびをあげたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 国際協力の日
きょうの誕生花 → きんもくせい
きょうの誕生日 → 1961年 松田美由紀(俳優)

きょうの新作昔話 → 夕立ちをふらせたおじいさん
きょうの日本昔話 → 京のカエル大阪のカエル
きょうの世界昔話 → ナイチンゲール
きょうの日本民話 → ほらふき甚兵衛
きょうのイソップ童話 → セミとキツネ
きょうの江戸小話 → 十二味のとうがらし

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10月5日の日本民話 人にだまされたタヌキ

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10月5日の日本民話

人にだまされたタヌキ

人にだまされたタヌキ
和歌山県の民話和歌山県情報

 むかしむかし、あるところに、人をだましては喜んでいるタヌキがいました。
(たいくつだな。だれか来ないかなあ)
 タヌキは大きな木に腰をかけて、誰かが通りかかるのを待っていました。
 すると道のむこうから、お百姓(ひゃくしょう)さんがやってきました。
(しめ、しめ)
 タヌキが何に化けようかと考えていると、お百姓さんが木を見上げて言いました。
「この木もずいぶんと古くなったものじゃ。むかしは、あそこに大きな枝がのびていたのになあ」
 するとタヌキが、片足をうんとのばして、大きな枝に見せました。
「あれ? ちゃんと枝があるぞ。おかしいなあ。さっき見たときはなかったのに」
 お百姓さんは、何度も首をふりました。
(ふん。おれさまの足とも知らないで。バカなやつ)
 人をだませたので、タヌキはニッコリです。
 それを見て、お百姓さんが言いました。
「そういえば、むかしはここにも枝がのびていて、子どものころによくのぼったものだ」
 お百姓さんが左の方を見ると、タヌキはあわてて、もう一つの足をのばしました。
「あれれ。おら、頭がおかしくなったのかな? ちゃんと枝があるぞ」
 それを聞いたタヌキはますますうれしくなって、枝のようにのばした二本の足を、ゆらゆらとゆすってみせました。
 お百姓さんは、タヌキのつかまっている右手のほうを見て、
「そうそう、あそこにも枝がのびていたんだ」
 するとタヌキは、右手をずんとのばして、枝に見せました。
「それから、こっちにも枝がのびていたはずだ」
 お百姓さんは、タヌキのつかまっている左手のほうを見て言いました。
 タヌキは左手もうんとのばして、枝のように見せました。
 そのためタヌキは木の上で、大の字みたいになりました。
(もう、そろそろいいだろう)
 お百姓さんはニヤリと笑うと、ありったけの声で、
「わぁーっ!!」
と、さけびました。
 タヌキはビックリして、のびきった手と足をはなしてしまいました。
 ドッスーン!
 タヌキは地面に落っこちて、いやというほどお尻を打ちました。
 そこへお百姓さんがとびかかると、タヌキをしばりあげていいました。
「やいタヌキ、まいったか。お前なんかにだまされないぞ。だいたい、むかしからあんなところに枝なんかあるものか」
 するとタヌキは、泣きそうな声で言いました。
「もう二度と人をだましたりしませんから、どうか助けてください」
「よし、そんなら助けてやろう」
 お百姓さんがタヌキのなわをほどいてやると、タヌキは大喜びで飛び上がり、お尻をさすりながら山の方へ逃げていったということです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → レモンの日
きょうの誕生花 → くこ
きょうの誕生日 → 1960年 黒木瞳(俳優)

きょうの新作昔話 → 牛になるまんじゅう
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10月4日の日本民話 ハチとアリ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 10月の日本民話

10月4日の日本民話

ハチとアリかいわけ

ハチとアリ
秋田県の民話秋田県情報

 むかしむかし、男鹿半島(おがはんとう→秋田県)に虫たちの国があり、その国にきれいなハチが住んでいました。
 ハチの羽はきれいにすきとおっていて、まるで天女(てんにょ)の羽衣(はごろも)のようです。
「なんてきれいんだろう。日の光にすかすと、虹のように色どりきれいなしまもよう出来る。おらは、この村で一番美しいんじゃ」
と、ハチはわれながらうっとりです。
 さて、おなじ村に住むアリはというと、いつもいつもドロンコになりながら働いています。
 ハチは、働いているアリのところへ飛んできて言いました。
「毎日毎日ごくろうじゃのう。でも、働くばかりじゃなくて、たまには海でも見てゆっくり休んではどうじゃ?」
「海? 海ってなんだ?」
「おや? アリさんは海を知らんのか? まあ、何と言えばいいのか。海はな、塩からい水が青く光っていて、ザブーン、ザブーンと波打ってるだよ」
「ザブーン、ザブーンか。おもしろそうだな」
「そうとも。それからな、その海に何がいると思う?」
「さあ、知らねえ」
「さかなだよ。さかながいるんだ」
「さ・か・な?」
「なんだ、さかなも知らんのか。さかなはな、すっごくおいしい食べ物なんだ」
「へーっ、そんなにおいしいなら、食ってみたいな」
「だがな、おらはこの美しい羽なら海までひとっ飛びじゃが、アリさんにはちょっとむりじゃな」
「だいじょうぶ。ちゃんとハチさんについていくから」
「よし、じゃあ、おくれないようについてこいよ」
「わかった!」
 アリは、空を飛ぶハチを必死で追いかけました。
 やがて、一足先に海に着いたハチは、海につきだしている岩の上でひと休みです。
「ああ、海はいつ来ても気持ちがいいな。・・・おや?」
 ハチは、岩のまわりを泳いでいるニシンのむれを見つけました。
「これはニシンじゃねえか。よしよし、一番大きいのを取ってやる。・・・今だ!」
 ハチは飛びはねたニシンをつかまえると、おしりのハリでチクリとさしました。
「よし、つかまえたぞ!」
 そのころ、アリはやっと海に到着しました。
「こいつが海というものか。海って、でっかいなー」
 アリが感心していると、波にのって飛び出した大きなタイが空中へ投げ出されて、アリの目の前にドスンと落ちました。
 そこへ、ニシンを持ってハチが飛んできました。
「おーい、アリさん、やっと来たんだな。あんまり遅いんで、おらはもうニシンをつかまえたぞ。見てみろ、この大きなニシンを。・・・うん? ややっ、アリさん、これはなんともでっかいタイだな」
「これは、タイというのか?」
「そうだ。タイはさかなの王さまで、味は天下一品じゃ」
「そうか、それはありがたい。ところでハチさん。ハチさんが持っているそのさかなは?」
「これか? これはニシンじゃ。アリさんがあんまりおそいんで、もうとっくのむかしにつかまえたんだ」
「さすがハチさん。・・・じゃが、ニシンよりもタイの方がでっかいし、赤くてうまそうだ」
 そういうアリに、ハチがすりよってきていいました。
「なあ、アリさん。おらは見た目にもきれいだし、美しい羽根も持っている。そのタイはおらの方がにあうと思うだが」
「うん? とりかえっこをしてくれというのか? いやだ、ことわる」
 そういってタイをかついで帰ろうとするアリに、ハチは追いかけていいます。
「なあ、友だちのアリさん。このおらの美しさには、この赤いタイがお似合いなんだ。それに、お前さんの黒っぽい体には、ニシンの青黒い色はちょうどよくにあう。そうだと思わねえか」
「思わん! とにかくタイはやらん!」
「いいや、タイはおらで、アリさんがニシンじゃ!」
「ハチさんが、ニシンじゃ」
「なんだと!」
「なにおー!」
 こうしてハチとアリのけんががはじまり、二匹は村長のカブトムシに、どちらがタイをもらうかを決めてもらうことにしました。
 ハチとアリの話しを、ジッと聞いていた村長がいいました。
「よし、それではさばきをつける。ハチとアリよ、よーく聞くがいい」
「はい」
「へい」
「まずハチよ。おまえは九九(くく)を知っとるか?」
「はい、知ってます」
「では、二、四が?」
「八です」
「そのとおり。二、四が八。つまり、ニシンがハチじゃ」
「なるほど」
「つぎに、アリよ」
「へい」
「人からものをもらったら、なんという?」
「ありがたいです」
「そう、ありがたいじゃ。つまり、アリがタイじゃ」
「なるほど」
「これによって、アリがとったタイはアリのもの。ハチがとったニシンはハチのものということじゃ。じゃが、お前たちは友だち同士、どっちがどっちでけんかするよりも、ニシンとタイをなかよく半分ずつにしてはどうじゃな」
「なるほど、その手があったか」
 村長の話になっとくしたハチとアリは、ニシンとタイを仲良く半分こして食べたそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → イワシの日
きょうの誕生花 → えのころぐさ
きょうの誕生日 → 1936年 北島三郎(歌手)

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10月3日の日本民話 ハチとクモとアリ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 10月の日本民話

10月3日の日本民話

ハチとクモとアリ

ハチとクモとアリ
奈良県の民話奈良県情報

 むかしむかし、ハチがクモのところへやってきて、
「クモさん、二人でお伊勢(いせ)さまに、お参りしないか?」
と、言いました。
「それはいい、毎日たいくつしていたところだ。さっそく出かけよう」
 そこで二人は旅じたくをして、お伊勢参りに出かけました。
 するとその途中に、財布(さいふ)が一つ落ちていました。
「あっ、財布だ!」
 クモがあわててひろおうとすると、ハチが言いました。
「だめだよ。わしが先に見つけたんだよ」
「うそつけ、わしが先だ」
 二人は財布をはさんで、けんかをはじめました。
「やいやい、お伊勢さまにいこうと言ったのは、このわしだ、わしがさそわなかったら、この財布は見つからなかったぞ! だから財布はわしの物だ!」
 ハチが、いばって言うと、
「なにを言う。わしが下をはっていたから見つけたんだ。お前は空ばかり飛んでいたじゃないか!」
と、クモがおこって言いました。
「なにをー!」
「やるかー!」
 二人はとうとう、とっくみ合いのけんかをはじめました。
 するとそこヘ、アリがやってきました。
「やめろ、やめろ。こんなところでけんかをしてはじゃまだ」
 アリが二人の間にわって入ったので、二人はやっとはなれました。
「いったい、どうしたというのだ?」
 アリが、たずねました。
「クモさんが悪いんだ。わしの見つけた財布を先にひろおうとしたからだ」
「うそつけ、財布を見つけたのは、おれが先だ」
「なにおーっ」
「なんだとーっ」
 二人はまた、にらみ合いました。
「わかった、わかった。おれにまかせろ。おれがけんかしないように、ちゃんとわけてやる」
 アリはその財布を見て、ニヤリと笑いました。
「うむ。だいぶお金が入っているようだ。これは百文(→一文は30円ほど)はあるな。でも、人の落とした財布を自分のものにするのはよくないな。ちゃんとお役所に届けなくちゃ」
「ええっ」
「そんなーっ」
 クモとハチは、ガッカリして顔を見合わせました。
「心配するな。ひろったお金を届けたらお礼がもらえる。だから先に、わしがお礼はわけてやる」
 アリは財布からお金を出して、かぞえはじめました。
「クモさんには九文、ハチさんには八文、残りはお役所に届けよう」
 そう言って、二人に九文と八文を渡すと、アリは残りのあり金を全部持っていってしまいました。
 クモは九、ハチが八、アリは、あり金を全部という事です。

おしまい

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10月2日の日本民話 幽霊の手紙

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 10月の日本民話

10月2日の日本民話

幽霊の手紙

幽霊の手紙
千葉県の民話千葉県情報

 一八五五年(安政二年)十月二日、江戸の町は安政(あんせい)の大地震(マグニチュード6.9。死者四千人)という大地震にみまわれましたが、この一日前のお話しです。
  江戸の下町にすむ中村大作(なかむらだいさく)という人が、家の手伝いをしている十介(じゅうすけ)をつれて、用事のために千葉へ出かけていきました。
  ところが次の日の夜、江戸でその大地震がおこったと知った大作は家族の事が心配になり、十介に用事を頼むと、自分は途中で江戸へ引き返していきました。
  十介は無事に用事をすませると、自分も大急ぎで江戸に戻りました。
  江戸に入ってまもなく、へとへとになった十介はお寺のへいにもたれて座り込むと、つい、ウトウトしてしまいました。
「ややっ。すっかり、ねむってしまったな」
  ハッと気がついた十介は、目をこすりながら立ちあがろうとすると、どこからか青い灯が近づいてきて、十介の前で止まったのです。
「だれだろう?」
と、思いながら見あげると、ちょうちんの灯にてらしだされたのは、足のない若い娘の幽霊(ゆうれい)でした。
「でた! 幽霊じゃ!」
  腰を抜かした十介がブルブルとふるえていると、娘の幽霊が口を開きました。
「おそれないでください。わたしはあなたのご主人の、中村大作さまとゆかりのある者の娘です。どうか、これをご主人さまにお渡しください。よろしくお願いします」
  娘の幽霊がいうので、十介が下をむいたまま手を差し出すと、手のひらに何かがのせられました。
  十介が顔をあげると、手のひらには一通の手紙と一枚の小判がありました。
  小判はきっと、用事を頼んだ十介へのお礼でしょう。
  気をとりなおした十介は、また夜中の道を走って、やっと主人の家へたどりつきました。
  十介はひと息つくと、若い娘の幽霊と出会って手紙と小判をあずかったことを、主人の大作に話しました。
  幽霊は大作のよく知っている友だちの娘で、三千(みち)という名でした。
  三千は父親が旅に出ている留守に、地震で命を失ったのです。
  その事を父親につたえてもらいたくて、大作に手紙をことづけたのでした。
  十介があずかった手紙には、
《地震にて、むなしくあいはてそうろう。後の事、よろしくお願いもうしあげまいらせそうろう。三千より》
と、書かれていたそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 望遠鏡の日
きょうの誕生花 → コリウス
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きょうの日本昔話 → 棺の中のかま
きょうの世界昔話 → 妖精の油ツボ
きょうの日本民話 → 幽霊の手紙
きょうのイソップ童話 → 旅人とヘルメス
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10月1日の日本民話 火太郎と長太郎

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10月1日の日本民話

火太郎と長太郎

火太郎と長太郎
島根県の民話島根県情報

 むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。
 二人には子どもがいないので、二人とも子どもがほしくてたまりません。
 そこで毎日、近所の氏神(うじがみ→土地の神さま)さまにおまいりして、
「氏神さま。どんな子どもでもいいから、わしらに子どもをさずけてください」
と、おがんでいました。
 ある日の事、おばあさんがかまどで、火をもやしていると、
「おばあさん、おばあさん」
と、どこからか人のよぶ声がします。
(はて、だれがいるのかな?)
 おばあさんがあたりをキョロキョロ見回していると、なんとかまどの火の中から、男の子がとびだしてきたのです。
「うひゃー! おじいさん! おじいさん!」
 おばあさんはあわてて、おじいさんをよびました。
「なんじゃ、そんなにあわてて。・・・おおっ、子どもがおる! こりゃ、きっと神さまがさずけてくださったにちがいない」
 おじいさんも、ビックリするやらよろこぶやら。
 そしてこの子どもに、火から生まれたので火太郎(ひたろう)という名前をつけました。
 さて、おじいさんとおばあさんの子どもになった火太郎は、ごはんを一杯食べると一杯分だけ、ごはんを二杯食ベると、二杯分だけ大きくなりました。
 ある日、おじいさんが山からもどってくると、えんがわに大きな柱が立っています。
(はて? こんなところに、柱があったのかな?)
と、不思議に思っていたら、柱が動いて上の方から、
「おじいさん、おじいさん」
と、よぶ声がするのです。
 ビックリして上を見上げると、なんとそこには大きな男の子が立っていて、
「わしは長太郎(ながたろう)というもんだ。神さまの言いつけで、ここへやってきた」
と、言ったのです。
「なんともありがたい。火太郎に続いて、こんな大きな子どもまでさずけてくださるなんて」
 おじいさんもおばあさんも、またまた大喜びで、二人の子どもをいっしょうけんめいかわいがりました。
 二人とも力が強くて、大変な山仕事も、あっというまにかたづけてしまいます。
 それに悪いことがきらいで、ある日、お百姓さんをこまらせている(さむらい)がいると、すぐとんでいってやっつけました。
 ところが次の日、子どもたちのるすに、殿さまのけらいがたくさんやってきて、
「わしらの仲間がひどい目にあった。お前のところにいる二人の子どもを出せ。いやならお前をつれていく」
と、言いました。
 おじいさんがことわると、けらいたちはおじいさんをしばりあげて、お城につれていきました。
 さて、その事をおばあさんから知らされた火太郎と長太郎は、すぐにお城へ行って、
「どうか、おじいさんをかえしてください」
と、殿さまにたのみました。
 すると、殿さまは、
「よし、じじいの命はたすけてやろう。そのかわり、お前たちは死刑だ」
と、言って、長太郎をろう屋にとじ込めると、火太郎を広場につれていきました。
「こいつを、火あぶりにしろ」
 殿さまの命令で火太郎は木にしばりつけられると、足の下にまきがつみあげられました。
「それっ!」
 まきに火がついて、まっ赤な炎がメラメラと火太郎をつつみます。
 でも、火の中から生まれた火太郎は、ぜんぜん平気で、ニコニコしながら殿さまを見下ろしています。
「な、なんだ。もっと火を燃やすんだ!」
 殿さまの命令で、まきがどんどんくべられましたが、火太郎はますますニコニコしながら殿さまを見下ろしていました。
 そのとき、ろう屋から大きな音がして、長太郎がとびだしてきたのです。
 大男の長太郎には、ろう屋をこわすぐらい簡単な事です。
 それを見て、さすがの殿さまもこわくなり、
「二人ともゆるす。だから城をこわさんでくれ」
と、ないてあやまったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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きょうの誕生花 → もみじあおい
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