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2008年9月

9月30日の日本民話 乙姫さまのくれたネコ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 9月の日本民話

9月30日の日本民話

乙姫さまのくれたネコ

乙姫さまのくれたネコ
京都府の民話京都府情報

 むかしむかし、あるところに、花売りのおじいさんがいました。
 とても心のやさしいおじいさんで、花が売れのこると海辺に行き、
乙姫(おとひめ)さま、売れ残り物ですまんが、この花をもらってください」
と、言っては、花を海に投げていました。
 するとある晩の事、かわいいネコをだいた女の人がやってきて、
「わたしは乙姫さまの使いの者です。このネコは、おじいさんが花をくれたお礼です。このネコに毎日、お茶わん一ぱいのごはんをやってかわいがってください。そうすればきっと、ネコが小判をうみます」
と、言いました。
 花売りのおじいさんはよろこんで、次の日から言われたとおり、ごはんを一ぱいだけ食べさせたら、ネコはチャリンチャリンと小判をうみました。
(なんて、ありがたいネコだ)
 花売りのおじいさんは、ネコをいっしょうけんめいかわいがって、毎日お茶わん一ぱいのごはんを食べさせたので、たちまちお金持ちになりました。
  さて、その事を知った、となりのよくばりおじいさんは、
「おい、わしにもそのネコをかしてくれ」
と、言って、いやがるネコをむりやり自分の家につれていきました。
 それでも、やさしい花売りのおじいさんは、
「いいか、ごはんは一日にお茶わん一ぱいだけ。それ以上食わせたらいかんぞ」
と、教えてやりました。
 ところが、よくばりおじいさんは、
(うまいこと言うて、わしのほうがお金持ちになるのが気に入らんのじゃろ。ごはんをたくさん食わせれば、それだけたくさんの小判をうむはず。わしはすぐに大金持ちじゃ)
と、思い、どんどんごはんを食べさせました。
 するとネコは、小判を一まいもうまずに、おなかをこわして死んでしまいました。
「なんじゃ、このネコは。ごはんばかり食いおって!」
 よくばりじいさんはすっかりはらを立てて、ネコを庭にすててしまいました。
(なんて、なんてひどいことを・・・)
 花売りのおじいさんはネコをひろいあげると、自分の家の庭にうめて、その上に木を一本植えてやりました。
 すると不思議な事に、木はグングンとのびて、あっというまに金色の花をさかせたのです。
(なんてきれいな花だ)
 花売りのおじいさんは、ネコのかわりにこの花をたいせつにしました。
 ある朝、花売りのおじいさんが目をさますと、庭の方からチャリンチャリンと、小判のふれ合うような音がします。
(はて? なんの音やら?)
 花売りのおじいさんが庭へ出てみると、なんと大きな小判がえだいっぱいになっていて、チャリンチャリンと風にゆれているのです。
 花売りのおじいさんはもう大喜びで、その小判をかごいっぱいに取りました。
 この小判のおかげで、花売りのおじいさんは死ぬまでしあわせにくらしたという事です。

※ 福岡にも、同様の話しが伝わっています。「乙姫様のくれたネコ

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → クレーンの日
きょうの誕生花 → はげいとう
きょうの誕生日 → 1966年 東山紀之(俳優, 歌手)

きょうの新作昔話 → 信濃の浦島太郎
きょうの日本昔話 → あぶらあげ
きょうの世界昔話 → ふしぎな胡弓
きょうの日本民話 → 乙姫さまのくれたネコ
きょうのイソップ童話 → 波をかぞえる人
きょうの江戸小話 → ぱたぱたとふうふう

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9月29日の日本民話 キジムナーのしかえし

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9月29日の日本民話

キジムナーのしかえし

キジムナーのしかえし
沖縄県の民話沖縄県情報

 むかしむかし、沖縄本島南部の宇江城(うえぐすく→糸満市)というところに、サメ殿とよばれた漁師(りょうし)がいました。
 ある夜、海へでて漁(りょう)をしていると、すぐそばで、おなじように魚をとる人がいました。
 近くの村の人なら、たいてい見おぼえがあるはずなのに、どうも見たことがありません。
(はて、誰だろう?)
 それからは、夜おそくに漁へでるたびに、その男がやってきます。
 そしてその男が現れると、魚がよくとれるのです。
「今夜も魚がたくさんとれたよ。あんたのほうはどうかね?」
「わたしだってとれたさ、見てごらん」
 そのうちに二人は友だちになって、毎日のように一緒に漁をしました。
 ところがその友だちは、名前をいわないし、顔つきも口のききかたも、ふつうの人たちとちがいます。
(もしかしたらあの友だちは、人間ではないかもしれない)
 ある時、サメ殿はそう考えました。
 一度考えはじめると、気味が悪くなって、
(あれはきっと、ヤナムン(→沖縄の言葉で妖怪のこと)が化けているのだ。このまま長いことつきあっていたら、悪いことがおこるだろう)
と、思いました。
 サメ殿はある夜、漁が終わって友だちと別れたとき、こっそりあとをつけました。
 すると友だちは、家のあるところを通りぬけて、当山(とうやま)という、さびしい丘へのぼっていきました。
 そして大きなクワの木に、吸い込まれるように姿を消したのです。
「たいへんだ。やっぱり友だちは人間ではねえ。あのクワの木にすむ、キジムナーが化けていたんだ」
 キジムナーというのはカッパのような妖怪で、古い木にすんでいて、魚とりがうまく、キジムナー火という火をともしたりもするそうです。
 サメ殿は家にかえると、この事を妻にうちあけていいました。
「明日も漁に行くから、お前はその間にほし草だの、ワラだのを持って、クワの木に行き、それに火をつけてクワの木を燃やしてしまうんだ」
 さて次の夜、サメ殿と友だちとは、いつものように漁にでかけました。
 魚がとれはじめたとき、
「クンクン。どうもおかしい。家のこげるにおいがするよ」
と、友だちがいいだしました。
「そんなはずはないさ。ここからは何も見えないし、気のせいだろうよ」
「いや、たしかににおう。こうしてはいられない」
 友だちは大いそぎで漁をやめると、すぐに帰って行きました。
 でもすでに遅く、あの大きなクワの木はすっかり焼けてしまい、まっ黒になっていました。
 その日から、キジムナーの友だちは姿を消してしまいました。
 サメ殿は、これであの友だちと別れることが出来たと大喜びです。
 家をなくしたキジムナーは、すみかになる木をさがして、ずうっと北のほうの、国頭(くにかみ→沖縄本島北部)までいったそうです。
 さて、それから何年もの月日がたちました。
 サメ殿はある時、首里(しゅり→昔の沖縄の都)の町へ出かけて、幼なじみの友だちとあいました。
「しばらくぶりだ、酒をのんで話そう」
 二人して酒場へ入り、長い時間のんでは話すうちに、サメ殿はつい気が大きくなり、今までだれにもいわなかった、あのキジムナーの事や、クワの老木を妻に焼かせて追い出したことを、すっかりしゃべったのでした。
 それを聞いた幼なじみの友だちは、急にこわい顔になって怒り出しました。
「あんたは友だちに、そんなひどいしうちをしたか! たとえキジムナーだとしても、あんたに何をしたと言うんだ! あんたはわるい男だ!」
 見ると、そこにいるのは幼なじみの友だちではなく、あのキジムナーだったのです。
 キジムナーは持っていた小刀で、サメ殿のゆびとゆびのあいだを切りつけました。
「いたい! 何をする」
 このサメ殿は、全身がサメのようなザラザラのかたいはだをしていて、小刀くらいでは傷つかないのですが、ただ、ゆびとゆびのあいだだけがふつうのはだだったのです。
 サメ殿は血を流しながら村へかえると、苦しんだあげくに死んでしまいました。
 沖縄のキジムナーは、ガジュマルやクワの大木をすみかとして、人間にはめったに害をしなかったといいます。
 それどころか、人間に幸福をもたらしてくれるのです。
 しかし人間がうらぎったり、ひどいしうちをしたりしたときは、おそろしい仕返しをしました。
 サメ殿は『鮫殿』と書き、沖縄の言葉では、サバムイと読むそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 招き猫の日
きょうの誕生花 → チトニア(メキシコひまわり)
きょうの誕生日 → 1980年 榎本加奈子(俳優)

きょうの新作昔話 → 孝行滝(こうこうだき)
きょうの日本昔話 → ネズミのすもう
きょうの世界昔話 → 百匹のヒツジ
きょうの日本民話 → キジムナーのしかえし
きょうのイソップ童話 → ネズミをこわがるライオンとキツネ
きょうの江戸小話 → 鉄砲とさいふ

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9月28日の日本民話 アジ船と口さけばば

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9月28日の日本民話

アジ船と口さけばば

アジ船と口さけばば
徳島県の民話徳島県情報

 むかしむかし、ある漁村(ぎょそん)の漁師(りょうし)たちが、アジ船を出してアジを取りに行きました。
 その日はなかなかの大漁でしたが、日が西にかたむき、お腹も空いてきたので、
「どうじゃい、ここらで、ひと休みせんか」
と、船を浜へつけました。
 取れたてのアジを塩焼きにして、それで酒をのむのが漁師たちのなによりの楽しみです。
 アジの焼けるいいにおいがただよってきたころ、どこからともなくだれかが近づいてきて声をかけました。
「ええにおいじゃの。わしにも、そのアジをごちそうしてくれ」
 その声は、おばあさんの声でした。
 ふりむいた漁師たちは、ビックリ。
 それというもの、そのおばあさんの髪の毛は針金のように逆立っていて、ギラギラとした丸い目玉は大きくて飛び出しており、おまけに口は耳までさけているのです。
(こいつはバケモノかもしれん。みんな返事するな)
 漁師たちは目で合図(あいず)をすると、みんなジッと下を向きました。
「どうした? はやくわしにもくれんか」
 おばあさんがさいそくするので、一人の漁師が言いました。
「もう、食べてしまったので、新しいのを船からとってくる。待っていてくれ」
 そして、その猟師があわて船に乗り込むと、
「あいつ一人じゃ大変だから、おれも手伝いに行こう」
「おれもだ」
「おれも」
と、みんな船にとびのると、そのまま船を沖へむかってこぎだしたのです。
 しばらくして、みんなが逃げだしたのに気づいたおばあさんは、
「こらまてえ! わしをだまして逃げる気か! 逃げたら、さかなのかわりにお前らを食ってやる!」
 おばあさんは、ものすごいいきおいで追いかけてくると、船のとも(船のうしろのほう)に飛びついて、船のともにかみつきました。
 耳までさけた大きな口の歯は、みんなキバみたいにとがっています。
「こら、はなさんかい。頭をたたき割るぞ、はなせえ!」
 ろ(→和船をこぐための、木でできた道具)を一本ふりあげて、たたこうとするのですが、ランランと光る目玉を見ると、おそろしくてたたけません。
 かといって、ともをガジガジとかみくだかれては、船もろとも海にしずんでしまいます。
 漁師たちは、
「なむ、船霊大明神、おたすけたまえ、おたすけたまえ」
と、となえながら、むちゅうで船をこぎました。
 いいかげんこいで、ふと目をやると、うれしいことに、ともにかみついたおばあさんは消えていました。
 それでも浜にあがるまでは、こわくてみんな口がきけませんでした。
 阿波(あわ→徳島県)には、牛鬼(うしおに)といって、からだがウシで顔はのバケモノがいたといわれます。
 あのおばあさんは、この牛鬼が化けたものだと言われています。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → パソコン記念日
きょうの誕生花 → しおん
きょうの誕生日 → 1982年 吹石一恵(俳優)

きょうの新作昔話 → 娘の寿命
きょうの日本昔話 → サル地蔵
きょうの世界昔話 → コウモリのはねをつけた小オニ
きょうの日本民話 → アジ船と口さけばば
きょうのイソップ童話 → カナリアとコウモリ
きょうの江戸小話 → 名医

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9月27日の日本民話 生きている竜

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 9月の日本民話

9月27日の日本民話

生きている竜

生きている竜

宮崎県の民話

 むかしむかし、ある山里に、安ざえ門(やすざえもん)と十べえ(じゅうべえ)という、二人の兄弟が住んでいました。
 兄弟は毎日、山奥深く入り込んで、ウルシの木からウルシをとる仕事をしていました。
 ある日、兄の安ざえ門は、いつものようにカマを持って、一人でウルシをとりに行きました。
 ウルシの木をさがして山奥へ入って行くうちに、まだ来たことのない谷川のほとりに出ました。
 谷川には流れのゆるやかな深いふちがあり、暗い緑色の水がよどんでいます。
「ほう、こんな深いふちは、見たこともない」
 安ざえ門は、ふちに近づいてのぞきました。
 そのとき、うっかり手に持っていたカマをふちに落としてしまったのです。
 カマは仕事に使う、だいじな道具です。
「ああ、とんだことをしてしまった。どうしよう?」
 安ざえ門はしばらく考えこんでいましたが、ふちにもぐってみることにしました。
 底が見えないようなふちにもぐるのはこわいのですが、落ちたカマを取りもどすためには、そうするしかありません。
 安ざえ門ははだかになると、思いきって水の中へ飛びこみました。
 頭がジンジンとしびれるほど、冷たい水です。
 底の方へもぐって行くと、おどろいたことに、黒いつやのある上等のウルシが水底一面に、しきつめたようにたまっているのです。
 多すぎて、どれくらいあるか見当もつきません。
 これは近くの山にたくさん生えているウルシの木が雨に洗われて、木のはだから流れ出たうるしが谷川にこぼれ落ち、長い年月の間にこのふちの底にたまったものでした。
 安ざえ門はカマの事など忘れて、ウルシを両手ですくうと、ゆっくりとうかびあがりました。
「夢のようだ。こんなにたくさんの上等のウルシがあるなんて」
 安ざえ門はウルシの木をさがし回るのをやめて、その谷川のふちにもぐっては、底にたまっているウルシをとるのでした。
 そのウルシは質がよいので、商人たちは高い値段で買ってくれました。
 おかげで安ざえ門は、どんどん金持ちになりました。
「あの人はいったい、どこであんな上等なウルシをとって来るのだろう?」
 村の人たちは不思議に思いましたが、安ざえ門はうるしのとれる谷川のふちのことは、だれにも話しませんでした。
「兄さん、うるしはどこにあるのか、おらにだけは教えてくれよ」
と、弟の十べえが聞いても、
「ああ、そのうちにな。そのうち連れて行ってやる」
と、言うだけで、ぜんぜん連れて行ってくれません。
「これにはきっと、なにかわけがありそうだぞ」
 十べえはそうか考えて、ある日、兄の後をこっそりつけて行きました。
 そして、兄が谷川のふちからウルシをとるのを見つけたのです。
「そうか、あのウルシはここにあったのか。これでおらも金持ちになれるぞ」
 十べえもその日から、兄と同じように谷川のふちのウルシをとるようになりました。
 ふちのウルシを一人じめにしたかった兄の安ざえ門は、弟の十べえがとり出したのが、どうにもおもしろくありません。
 それでなんとかして、弟がとらなくなるような方法がないものかと考えました。
 いろいろと考えたあげく、なにか怖い物をふちの底においてみることを思いついたのです。
 ウルシをとりにもぐった十べえがそれを見て怖くなり、ウルシをとるのをあきらめるかもしれないと思ったからです。
 安ざえ門は間もなく、遠くの町に出かけて行きました。
 そしてその町に住むほりものの名人に、お金をたくさんはらって、大きな木のをほってもらうことにしました。
 できるだけ怖い感じにしてくれるように、何度も念を押してたのみました。
 しばらくして出来上がった竜は、木でつくった竜とは思えないほど、見るからに恐ろしい物でした。
(これなら怖くて、近づかなくなるだろう)
 安ざえ門はその竜をこっそり山へ運ぶと、大きな石をくくりつけて、ウルシのたまっている谷川のふちにしずめました。
 水底にしずんだ木ぼりの竜は水の動きにゆれて、まるで生きているように見えます。
 まっ赤な大きな口を開けて、キバをむき出して体をくねらせるのです。
 安ざえ門は、その恐ろしさに大満足です。
「やれやれ、これでひと安心というものだ。だれでもこの竜を見りゃ、おどろいて逃げ出すに決まってる。もう二度と来ないようになるだろう。そうなれば、うるしはまた、おら一人のものになるというわけだ」
 安ざえ門は満足して、山をおりました。
 あくる日、そんなことを少しも知らない弟の十べえは、いつものように谷川のふちに飛びこみました。
 とたんに、十べえはビックリ。
 水底に恐ろしい竜が体をくねらせて、キバをむき出しにした大きな口をあけて、十べえをのみこもうとしていたからです。
 十べえはまっ青になって、あわてて水から出ると、いちもくさんに山をおりて家に逃げ帰りました。
 安ざえ門は、弟が自分の思った通りになったのを知って大喜びです。
 安ざえ門はすっかり満足して、ふちの中にもぐりました。
 ところが水底にもぐってみると、木で作った竜が本物の竜になっていて、安ざえ門が近づくと大きな口を開けて、ひと飲みにしようとするのです。
「そんなはずはない。この竜は、おらが町のほり物師にたのんでつくってもらったものだ。生きているわけはないんだ。水の動きにゆれるもので、生きているように見えるだけだ。きっとそうだ」
 安ざえ門はそう思いなおして、何回か水底に近づきましたが、そのたびに本物になった竜が、かみつこうとするのです。
 なんとか逃げだした安ざえ門は、岸にあがるとその場にへたり込んでしまいました。
「ああ、こんなことになるのなら、初めから兄弟仲よく二人でウルシをとったものを。おれは、とんだことをしてしまった」
 安ざえ門は後悔しましたが、もう取り返しがつきません。
 とぼとぼと、家に帰っていったという事です。

※ 栃木県にも、同じような民話があります。→ たましいが入った竜

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 女性ドライバーの日
きょうの誕生花 → コスモス
きょうの誕生日 → 1970年 羽生善治(将棋棋士)

きょうの新作昔話 → 招き猫になったネコ
きょうの日本昔話 → 大仏の目玉
きょうの世界昔話 → 花のおじいさん
きょうの日本民話 → 生きている竜
きょうのイソップ童話 → ハトとカラス
きょうの江戸小話 → 最後のうそ

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9月26日の日本民話 一休さんの、サルの恩返し

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9月26日の日本民話

一休さんの、サルの恩返し

一休さんの、サルの恩返し
滋賀県の民話滋賀県情報

 むかしむかし、一休さん(いっきゅうさん)と言う、とんちで評判の小僧さんがいました。
 その一休さんが、大人になったころのお話です。
 ある年の春、一休さんが伊豆(いず)のお寺にいたとき、村の男が一匹のサルをつかまえて、家の軒下(のきした)でさんざんなぐりつけていました。
 一休さんはサルをかわいそうに思って、わずかばかりのお金でサルを買いとると、山へ逃がしてやりました。
 それから何日かしたある日の夕方、お寺の縁側(えんがわ)から夕焼けにそまる春の山々の景色(けしき)をながめていると、一匹のサルがやってきて、葉っぱにつつんだものをさしだしました。
 一休さんはそのサルの顔を見て、このあいだのサルだと思いながら、
「これをわしにくれるというのか? ありがとう」
と、サルの手から葉っぱのつつみをうけとりました。
 中にはまっ赤にうれた、野イチゴの実が入っています。
 すると一休さんは、
「これはおいしそうだ。ああ、ちょっとおまち」
 そういって、布袋にいりマメを入れてやると、サルはそれをうけとって、お寺の裏山へ消えていきました。
 次の日、サルはその布袋においしそうなクリの実を入れて、一休さんのところへかえしにきました。
「命を助けられた恩を、よく知ったサルじゃ。善悪の区別もわからぬような人間は、サルにもおとるといえる」
 一休さんはたいそう感心して、若いお坊さんたちにそう語ったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ワープロの日
きょうの誕生花 → きくいも
きょうの誕生日 → 1957年 天童よしみ(歌手)

きょうの新作昔話 → クッカルとカラス
きょうの日本昔話 → キセルおさめ
きょうの世界昔話 → ちいさなヘーベルマン
きょうの日本民話 → 一休さんの、サルの恩返し
きょうのイソップ童話 → ヘラクレスとアテネ
きょうの江戸小話 → 無筆のねがい書

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9月25日の日本民話 クジラ長者

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9月25日の日本民話

クジラ長者

クジラ長者
長崎県の民話長崎県情報

 むかしむかし、深沢儀太夫勝清(ふかざわぎだゆうかつきよ)という、クジラ捕(と)りの名人が住んでいました。
 勝清はクジラで大金持ちになり、野岳湖(のだけこ)をつくったことで知られています。
 勝清の孫の与五郎(よごろう)は、おじいさんからたいへんかわいがられて育ちました。
 与五郎はおじいさんゆずりの心の大きな人で、そろってクジラ捕りの名人でした。
 与五郎は、いつも、
「クジラがたくさん捕れる方法はないじゃろうか?」
と、考えていました。
 ある日の事、クモの巣に一匹のこがね虫がかかったの見た与五郎は、
「これじゃ、クジラをアミで捕るのじゃ」
と、さっそく大きくて丈夫なアミを作りました。
 このクジラをアミで捕る方法は大成功で、毎年、数百頭のクジラが生けどられました。
 与五郎はたちまち長者(ちょうじゃ)になり、りっぱなクジラご殿を建てました。
 それからのちのある夜、一頭の親クジラが、与五郎のまくらもとに現れて、
「与五郎どの、わたしは子持ちのクジラです。かわいい子を生むために、どうかお助けください」
と、涙ながらにたのみました。
 しかしよく日、与五郎は、子持ちのクジラを捕らないように伝えるのをうっかり忘れてしまいました。
 夕方、子持ちクジラと子クジラが浜にあげられました。
 それを見て昨夜の夢を思い出した与五郎は、大変かなしみました。
 それからというもの、プッツリとクジラが捕れなくなり、浜はすっかりさびれてしまいました。
 クジラご殿も荒れはてて、与五郎は六十歳でこの世を去り、そして子孫には、不幸がつづいたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 10円カレーの日
きょうの誕生花 → たで
きょうの誕生日 → 1981年 MEGUMI(タレント)

きょうの新作昔話 → 蟹ヶ淵(かにがふち)
きょうの日本昔話 → 人のよめになったネコ
きょうの世界昔話 → 翼をもらった月
きょうの日本民話 → クジラ長者
きょうのイソップ童話 → 鈴をつけたイヌ
きょうの江戸小話 → 方角

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9月24日の日本民話 七色の灯光

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9月24日の日本民話

七色の灯光

七色の灯光
三重県の民話三重県情報

 むかしむかし、伊勢の国(いせのくに→三重県)の小さな村に、重兵衛(じゅうべえ)さん夫婦がすんでいました。
 重兵衛さんはたいへん魚釣りが好きで、毎日川へ行ってはアユを釣っていました。
 ある日の事、重兵衛さんがいつものように朝早くから川へアユ釣りに出かけると、川をへだてた向こう岸に、昼間というのになにやら大きく光っているのが見えました。
「これは、なんじゃろう?」
と、つぶやきながら右手のほうを見ると、そこにも光が、そして左手にも何か光っています。
 赤、青、黄、紫(むらさき)、緑、橙(だいだい)、そのいくつかの光はしだいに大きくなって、とうとう重兵衛さんのまわりをすっかりつつんでしまいました。
 さすがの重兵衛さんもたまりかねて、出せる限りの大声で、
「おーい! だれかこの光を消してくれー!」
と、さけびました。
 ですが、川岸にはだれもいません。
 光はなかなか消えようとせず、重兵衛さんは困りはててしまいました。
 おびえていた重兵衛さんは、ふと思いあたり、
「今まで、この川でアユを取ったのは本当にすまなかった!」
と、いって、あやまりました。
 すると光は、まるでうそのようにしずまりました。
 これは重兵衛さんが毎日アユばかり取るので、アユたちが目玉を七色の光を発して、重兵衛さんをこらしめたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 清掃の日
きょうの誕生花 → はぎ
きょうの誕生日 → 1946年 田淵幸一 (野球)

きょうの新作昔話 → 鬼七兵衛(おにしちべえ)の大力(たいりき)
きょうの日本昔話 → ウリぬすびと
きょうの世界昔話 → にじのお城
きょうの日本民話 → 七色の灯光
きょうのイソップ童話 → 2羽のオンドリとワシ
きょうの江戸小話 → おけちみゃくのしるし

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9月23日の日本民話 山おくのふしぎな家

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9月23日の日本民話

山おくのふしぎな家

山おくのふしぎな家
岩手県の民話岩手県情報

 むかしむかし、陸中の国(りくちゅうのくに→岩手県)の金沢(かねざわ)という村に、若い男がいました。
 ある日の事、男は山菜(さんさい)をとるために山に行きましたが、よいものがなかなか見つからず、探し求めているうちに今まで入ったこともない、深い谷間に出てしまいました。
(はて? ここはどのあたりだろう?)
 まわりはたくさんの木がおいしげっていて、昼間でもやっと木もれ日がもれてくるくらいのせまい谷間です。
(これは、とんでもない所へまよいこんだものだ。山の上へ出て道をさがそう)
 男が谷川にそったやぶをのぼっていくと、きゅうにあたりがひらけてきて、谷のわきにりっぱな黒い門をかまえた家があらわれました。
 若い男はしばらく門の前にたたずんでいましたが、ひと休みさせてもらおうと、門の中へ入っていきました。
 家の前は広い庭になっていて、白い花が一面に咲いており、あまい花のかおりがただよっています。
 家の、のきさきでは、十羽ばかりのニワトリがのんびり遊んでいます。
(大きな家だな。だれもいないのかな?)
 人の声は、まるで聞こえません。
 男が家のうらへまわってみると、ウマ小屋とウシ小屋がならんでいて、つながれた五頭ずつの牛馬が、しずかにエサを食べていました。
「ごめんください」
 男は戸を少し開いて、家の中へ声をかけました。
 中をのぞくと居間(いま)にはいろりがあって、赤々と炭火がおこっています。
(物音一つしないとはおかしい。本当に、だれもいないのだろうか?)
「ごめんください!」
 若い男はもう一度大きな声を出して、家の者をよびましたが、やはり返事はありません。
 そこで土間(どま)にわらじをぬぐと、そっと家の中へあがってみました。
 若い男は居間をぬけて、おそるおそる次の部屋をのぞきました。
 その部屋には、何に使うのかわかりませんが、大きなおけがおいてあります。
 次の部屋をのぞくと、たった今、だれかがお客の食事のしたくをしたというふうに、しゅぬりのりっぱなおぜんと食器がきちんとならべられていました。
 若い男は、ますます不思議に思いました。
 気味が悪くなりましたが、さらに足音をしのばせて、奥座敷(おくざしき)ものぞいてみました。
 奥座敷には、まばゆいばかりにかがやく金のびょうぶがたててありました。
 そして火ばちがあり、まっ赤な炭火の上にかかった鉄びんの湯が、チンチンと音をたててにえたぎっていました。
(もしかしてこれは、きっと、お客がやってくるというので、主人をはじめ家の者たちみんなで、近くまで出むかえに出たのかもしれない)
 若い男は自分でうなずきながら、広い座敷の中を見まわしていました。
 しかし、どんなお客をむかえるのかは知りませんが、すっかり準備のできあがっている座敷に、だれもいないというのは変です。
 男はおそろしくなり、庭へ飛び出すとわらじもはかずに逃げだしました。
 深い山奥の谷間から、どこをどう走ってきたのかわかりませんが、走って走ってやっと、見覚えのある山道に出たのです。
 その後、若い男は、この不思議な家の事が気になって、村の者たちにも話してみましたが、だれも知っているものはいませんでした。
 それから何度も山おくへ入ってみましたが、あの家を見つける事はできなかったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → テニスの日
きょうの誕生花 → ひよどりばな
きょうの誕生日 → 1969年 鈴木杏樹(俳優)

きょうの新作昔話 → 男神山(おがみやま)と女神山(めがみやま)
きょうの日本昔話 → ネコの茶碗
きょうの世界昔話 → ものしり博士
きょうの日本民話 → 山おくのふしぎな家
きょうのイソップ童話 → 旅人とたきぎの束
きょうの江戸小話 → 大黒さまのちえ

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9月22日の日本民話 ガンの悲しみ

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 9月の日本民話

9月22日の日本民話

ガンの悲しみ

ガンの悲しみ
愛知県の民話愛知県情報

 むかしむかし、ある村に、久兵衛(きゅうべえ)というお金持ちのお百姓(ひゃくしょう)がいました。
 久兵衛は弓で矢を射ることが大好きで、裏庭にある蔵(くら)の中に的(まと)をつくって、ひまさえあれば矢を射てたのしんでいました。
 ある日の事、久兵衛が蔵の中で矢を射ていると、家の者が急用だといって呼びにきました。
 久兵衛はそこに弓を置いたまま蔵を出ていくと、そのあとに、家でやとっている平吉(へいきち)という若者が蔵へ入っていきました。
 平吉は弓を目にすると、主人の久兵衛をまねて弓に矢をつがえました。
 そして弦(げん)を力いっぱいひきしぼると、わらの的めがけて矢をはなちました。
 ところが矢ははずれて、蔵の窓から外へ飛んでいってしまったのです。
「あっ、しまった。だれかに当たったらたいへんだ!」
 平吉はすぐに外へでて、矢をさがしにいきました。
 すると矢は窓のむこうにある田んぼのあぜ道まで飛んでいって、一羽のガンにあたっていました。
「こいつはおどろいた。たいへんな獲物(えもの)だぞ」
 平吉は大喜びでガンを家に持ちかえると、主人が帰ってくるのをまって、ことわりもなく弓を使ったことをあやまりました。
 そして、自分がいとめた獲物をさしだしたのです。
 主人の久兵衛は平吉のイタズラをゆるすと、すぐに獲物を料理させて、みんなでガン鍋に舌つづみをうったのでした。
 平吉は久しぶりにたのしい思いをしましたが、次の日から、奇妙なことがおこりました。
 平吉がガンをいた田んぼのあぜ道へ、そのつがいとみえる一羽のメスのガンがきて悲しい声で鳴くのです。
 その声を耳にすると、平吉はたえられない気持ちにおそわれるのでした。
 夜になると夢にメスのガンが現れて、もっと悲しい声で鳴き、
「死んでしまったものは仕方ありません。ですが、どうか殺された夫を供養(くよう)をしてください」
と、うったえたのです。
 同じことが何日もつづくので、平吉はとうとう主人の久兵衛に病気だといってつとめをやめると、その日のうちに頭をそって、お坊さんの修行をはじめたのでした。
 平吉は浜辺の近くに小さな家をつくってすむと、自分が殺したガンの霊を供養(くよう)しながらお坊さんの修行をつづけました。
 そして、それから二十三年目にこの世を去りました。
 平吉がこの世を去る年の夏のこと、平吉は村の人たちに、
「わたしはまもなく、この世を去ります」
と、言っていたそうです。
 そして平吉がこの世を去った日は、ちょうど二十三年前、あやまってガンを殺してしまった日だったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 国際ビーチクリーンアップデー
きょうの誕生花 → せんにちこう
きょうの誕生日 → 1983年 今井絵理子(歌手)

きょうの新作昔話 → 水の中に見える妻
きょうの日本昔話 → ノミの宿
きょうの世界昔話 → ほらふき男爵 怪魚のお腹に閉じ込められた話2
きょうの日本民話 → ガンの悲しみ
きょうのイソップ童話 → 乳しぼりの女
きょうの江戸小話 → なぎなたっ屁

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9月21日の日本民話 鯛女房

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 9月の日本民話

9月21日の日本民話

鯛女房

鯛女房
佐賀県の民話佐賀県情報

 むかしむかし、あるところに、一人者の漁師(りょうし)がいました。
 ある日の事。釣りしていた漁師が強い手ごたえを感じて釣り上げてみると、うろこがピカピカ輝く大きな赤ダイがつれました。
 手カギを入れて、血抜きをしようとすると、
「殺さないで!」
と、うったえるような声を感じたので、そのまま逃がしてやったのです。
 しばらくたったある日、漁師は人のすすめで、今まで見たこともないほど赤ら顔の女の人を女房(にょうぼう)にもらいました。
 その女房は料理が大変上手で、特にみそ汁やおすましなどは天下一の味です。
 あまりにもおいしいので、
「こんなにうまい料理ははじめてだ、どうやって作るんだ?」
と、聞いたのですが、女房はそれには答えず、はずかしそうに顔を赤らめて、
「男の人が、そんな事を気にするもんでねえ」
と、笑っていいました。
「まあ、たしかに」
 男はそう言いましたが、やっぱり気になり、翌朝、早起きして台所で料理を作る女房の姿をのぞき見ました。
「ほほう。今日はすましか。あれがなかなかにうまいんだ」
 女房の作るところをジッと見ていましたが、別に変わったところはありません。
「さて、いよいよ味付けだが、いったいどうやって。・・・なっ、なんと!」
 のぞいていた漁師はビックリ、なんと女房は、すましを入れたナベの上にまたがって、味付け代わりにシャーシャーとおしっこをしていたのです。
 漁師の声に、見られた事を知った女房は、全てを話しました。
「実は私は、あなたに命を助けてもらった赤ダイなのです。恩返しをしようと、こうしてやってきたのですが、正体を見られたからには、これ以上ここにいることは出来ません」
 そして、追いかける漁師を振りきって、岬(みさき)から海に飛び込んだのです。
 するとまもなく、海面に大きな赤ダイが現れて、なごりおしそうに男の姿を振り返りながら、波の中に消えていったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → ファッションショーの日
きょうの誕生花 → くず
きょうの誕生日 → 1950年 松田優作(俳優)

きょうの新作昔話 → 犬が寒がらない理由
きょうの日本昔話 → おんぶおばけ
きょうの世界昔話 → ほらふき男爵 怪魚のお腹に閉じこめられた話
きょうの日本民話 → 鯛女房
きょうのイソップ童話 → メンデレス川の岸のキツネたち
きょうの江戸小話 → ごゆっくり

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9月20日の日本民話 アワの長者

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 9月の日本民話

9月20日の日本民話

アワの長者

白い馬(アワの長者)
静岡県の民話静岡県情報

♪音声配信

 むかしむかし、ずーっとむかしのむかし話だよ。
 ある村に、働き者じゃが、貧しい暮らしをしている男がおりました。
「ああーっ、腹へったなー。腹いっぱい飯食ってみてえなあ~」
 いつも腹をすかせている男の見る夢は、食べる夢ばっかりだった。
 ある晩のこと、男は真に不思議な夢を見た。
 荒地の果てからやってきた、白い一頭の馬。
 馬は光に包まれ、まぶしいほどの白さじゃった。
 馬は、ずっしりとよく実った金色のアワの穂を、美味しそうに食べている。
 じっと見つめていると、白い馬は急に首を振った。
 口元からポーイと飛んだアワの穂は、空中でクルクルと舞ってキラキラ金色に輝きながら、男の前に落ちてきた。
「あっ、夢か、夢! 何という夢じゃ。金のアワ。それに神々しい白い馬、神さまが現れたあの荒地は」
 夢から醒めた男は、あの白い馬が立っていた荒地は、自分が一度行ったことのある場所だと気付いた。
 朝が来るのを待ってさっそく出かけ、見覚えのある、その荒地にたどり着いた。
「ここだ、間違いない。夢の場所とおなじだ。・・・あっ!」
 驚いたことに、荒地の果てからアワの穂をくわえた夢で見た白い馬が、男に向かって歩いてきた。
 そしてくわえていた、その金のアワの穂を男に渡した。
「ああ、ありがたい。きっとこれは、この荒地を耕して、アワをうえなさいという、神さまのお告げにちがいない」
 男はそう信じて、そこの荒地を耕しはじめた。
 春を待って、種をまき。
 夏、照りつけるお日様。
 畑に這いつくばって、せっせと草を取った。
 秋になると、男の植えたアワの穂は重く実り、あたり一面金色に輝いて波打った。
 大豊作だ。
 それを売りさばいた男は、たちまち大金持ちとなって「アワの長者」と呼ばれた。
 それから何年か経ったある年。
 村はまた、ひどい飢饅にみまわれた。
 これまでにない厳しい寒波が襲って、子供たちは腹を空かして寒さにおびえ、泣きわめいた。
 村の者は集まって、相談した。
「アワの長者さまに、おねがいしてみるか」
「そうだそうだ、あそこの蔵には、山ほどアワでもなんでも仕舞い込んである。むかしはわしらと同じ貧乏だった長者さまだ。助けてくれるに違いない。」
 そう話がまとまると、皆して長者さまのお屋敷に詰め掛けた。
 散々頭下げてお願いすると、それまで黙って聞いていた長者さまは一言大声を出した。
「うるさい! 聞きとうない! アワは一粒もない! 無断で蔵を開けたら、アワが無くて泡食うぞ! わかったか! さっさと出て行け!」
 皆が帰った、その夜のこと。
「こら、人の屋敷の土壁に何ということをする!」
 村の衆は、壁から、床下から、所かまわず、隠し込んだアワをガリガリこさぎだした。
 長者は、村の衆がやることは高がしれてるとたかくくって眠り込んだ。
 カリカリカリ、カリカリカリ
 音は、蔵から聞こえてきた。
「なんじゃ、なんじゃ、村の盗人だな!」
「あわわわわああ!」
 長者は気を失って、へたり込んでしまった。
 カリカリカリ、カリカリカリ
 忙しくアワを食べていた何万匹ものネズミたちが、急に静かになったと思うと、いきなり、どっーと音を立てて、蔵も御殿のようなお屋敷も、もろとも崩れ落ちた。
 立ち上る土煙が収まると、廃墟となった広場に何万というネズミたちが、ひとかたまりに集まった。
 そうして光に包まれ、金色のアワの穂をくわえた白い馬が姿を現した。
 やがて白い馬は、前足をそろえ、蹴るように高く上げると、ゆっくりと空へ駆けのぼっていった。
「ああっ、あの白い馬、夢の中の神さまの馬だ。」
 人の苦しみをかえりみなかった長者は、全てをなくして、やっと自分の愚かさに気付いた。
「泡食った長者」は改心して、皆と残ったアワを分けあった。
 それからというもの男は、村の皆とせっせと荒地を耕し、助け合って仲良く暮らしたんだと。

 めでたし、めでたし。

おしまい

※ このお話しは福娘童話集の「アワの長者」を元に、ラジオNIKKEI様主催の「全国10都市横断 親と子のトークライブショー 第10回 常田富士男 民話の世界」で配布用CDに収録された朗読で、朗読者は「まんが日本むかしばなし」のナレーターで有名な常田富士男さんです。

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 空の日
きょうの誕生花 → ひがんばな
きょうの誕生日 → 1977年 安室奈美恵(歌手)

きょうの新作昔話 → 竹から生まれた女の子
きょうの日本昔話 → かなシイ木と、うれシイ木
きょうの世界昔話 → チワンの錦
きょうの日本民話 → アワの長者
きょうのイソップ童話 → オオカミとイヌ
きょうの江戸小話 → 罪ほろぼし

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9月19日の日本民話 ひるごはんのただ食い

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 9月の日本民話

9月19日の日本民話

ひるごはんのただ食い

ひるごはんのただ食い
高知県の民話高知県情報

 むかしむかし、たいさくという、とんちの名人がいました。
 ある日の事、たいさくは山へ仕事に出かけましたが、お昼になってお弁当を忘れてきたことに気がつきました。
「しまったなあ。なんとか、ただで昼ごはんを食べることはできないだろうか?」
と、考えていたら、ちょうど一軒のお百姓(ひゃくしょう)さんの家がありました。
 うまいぐあいにおかみさんが一人でいて、昼ごはんの用意をしているところです。
「しめしめ、あそこで、ごちそうになろとするか」
 たいさくは、いかにもこまったような顔で、家の中に入っていきました。
「すまんが、ちょっとごはんを食べさせてくれんか。さっき弁当を食べたら、魚のほねがのどにささって、いたくてかなわん。ごはんをのみこめば、なおると思うので」
「そりゃ、お気の毒に」
 おかみさんは、お茶わんにごはんを入れて持ってきました。
「いやあ、もうしわけない」
 たいさくはお茶わんのごはんを口にほおばると、ゴクリとかまずにのみこみました。
「どう? ほねはとれたかい?」
 おかみさんが言いましたが、たいさくは首を横に振って、
「いいや、まだとれない」
 そこでおかみさんは、またお茶わんにごはんを入れてきました。
 たいさくは首をかしげながら、そのごはんをのみこんだり、かんだりしました。
 何ばいもおかわりしているうちに、やっとおなかがいっぱいになりました。
 そのとたん、たいさくさんが言いました。
「とれた、とれた。いや、すまんかったのう」
 たいさくは、ニコニコしてお礼を言うと、
「いやあ、食った食った。ただのごはんはうまいなあ」
と、おなかをさすりながら山へもどって行ったのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 苗字の日
きょうの誕生花 → つりふねそう
きょうの誕生日 → 1943年 小野寺昭(俳優)

きょうの新作昔話 → たきつぼの女神
きょうの日本昔話 → 仏さまに失礼
きょうの世界昔話 → カエルのおきさき
きょうの日本民話 → ひるごはんのただ食い
きょうのイソップ童話 → ランプ
きょうの江戸小話 → ウマのクソが三つ

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9月18日の日本民話 ウシの恩返し

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9月18日の日本民話

ウシの恩返し

ウシの恩返し
山形県の民話山形県情報

 むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんときれいな娘が住んでいました。
 ある時、お城の若殿さまが狩りに行って、にわか雨に降られたので、おじいさんとおばあさんの家で雨やどりをしたのですが、その時、若殿さまは娘を見染めて(みそめ→気に入り)、
「近い内に、娘を嫁にもらいに来るぞ」
と、いって帰って行きました。
 それから二、三日後、おじいさんの家で法事(ほうじ)があり、和尚(おしょう)さんを呼んだところ、和尚さんまでが娘を気に入ってしまいました。
 でも和尚さんは仏(ほとけ)につかえる身で、女性と結婚する事ができません。
 娘はほしいが、嫁にくれというわけにも行かず、そこでおじいさんとおばあさんをだます事にしたのです。
「じいさま、ばあさま、お前さまの娘は私の見たところ、近々ウシになりそうだ。仏さまの前でお経を読んでやるから、二、三日寺によこしなさい」
 翌朝、おじいさんとおばあさんは、カゴ屋を呼んで娘をお寺へやりました。
 ところが酒好きのカゴ屋が、カゴを道に置きっぱなしで酒屋に酒を飲みに行ったのです。
 そこへお城の若殿さまが通りかかり、娘をみつけて城へ連れて行ってしまいました。
 そのあと娘の下りたカゴへ、どこから逃げて来たのか、一匹の小ウシが逃げ込みました。
 ちょうどそこへ帰って来たカゴ屋は、何も知らずに寺へ行きましたが、いつのまにか娘が小ウシになっていたので、和尚さんもカゴ屋もビックリ。
 和尚さんは、おじいさんとおばあさんに、
「娘はお経を読む前にウシになってしまった。もう、わたしのお経では人間にもどす事は出来ません」
と、おじいさんとおばあさんに、ウシを取りに来させました。
 おじいさんとおばあさんは泣く泣く小ウシを家に連れて帰り、大切に育てました。
 そのうちウシは大きくなり、おじいさんとおばあさんを乗せて田んぼに行くようになりましたが、ある日の事、突然ウシは二人を乗せて走り出して、とうとう城の中へ飛込んだのです。
 突然のあばれウシに、城の中は大騒ぎになりました。
 そこへ、娘が出て来て、
「おや? 父さんに母さん、よく来てくれましたね」
と、むかえられて、おじいさんとおばあさんと娘と、それにウシは、お城の中で幸せに暮らしたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → かいわれ大根の日
きょうの誕生花 → ほうせんか
きょうの誕生日 → 1961年 中井貴一(俳優)

きょうの新作昔話 → 桶屋の夢
きょうの日本昔話 → 黒覆面と寺男
きょうの世界昔話 → 寿命
きょうの日本民話 → ウシの恩返し
きょうのイソップ童話 → 北風と太陽
きょうの江戸小話 → 拾い屋

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9月17日の日本民話 カッパのばあさん

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 9月の日本民話

9月17日の日本民話

カッパのばあさん

カッパのばあさん
愛媛県の民話愛媛県情報

 むかしむかし、ある村にすむ庄屋(しょうや)の奥さんは、男でもかなわない力持ちとして、近くの村々にまで知られていました。
 ある年の、夏の日の事です。
 庄屋の奥さんは、用事があって町まででかけていきました。
 日暮れちかくになって、途中の川のほとりまで帰ってくると、小さな男の子が二人で水遊びをしていました。
「こんなにおそくまで遊んでおって。どこの子じゃな?」
と、たずねると、男の子はだまって奥さんが帰る村の方を指さしました。
「それじゃ、途中まで一緒に帰ろう」
 奥さんが心配していうと、男の子は、
「疲れたから、歩くのはいやじゃ」
と、いうのでした。
「しようがない子だね。それじゃ、あたしがおぶってやるから、二人とも背中につかまりな」
 そういって奥さんがかがむと、子どもたちは反対の方へ逃げだそうとしました。
 それに気づいた奥さんは、二人の腕をつかまえていいました。
「なぜ逃げる。こんなところでおそくまで遊んでおって。カッパにさらわれたらどうするんじゃ。このあいだも、ここらで女の子が悪さをされたっていうだろう」
 二人の男の子は、ギョッとした顔をしましたが、すぐに、
「実はおいらたち、人間の子じゃねえ。カッパだよ」
と、いうので、今度は奥さんがビックリです。
 カッパたちは逃げ出そうとしていますが、奥さんに腕を強くつかまれているので、逃げることができません。
「悪さをしたのは、お前たちか! それじゃ、悪さが出来んようにこらしめてやる!」
 奥さんが腕をにぎっている手に力をこめると、カッパは泣きながら言いました。
「あいててて。腕がちぎれる。もうイタズラせんから、ゆるしてくれ」
 そこで庄屋の奥さんは、カッパたちによくよくいいきかせました。
 するとカッパたちは、
「もう、けっしてイタズラはせん。子どもが川で遊んでおぼれたら、助けてやる」
と、いうので、手をはなしてやりました。
 すると、次の日の朝の事です。
 庄屋の奥さんが家の軒下(のきした)を見ると、小さな川魚が三、四匹、クギにつるしてありました。
 軒下には、大きなお皿が一枚置いてあります。
 奥さんは、カッパがお礼に持ってきたのだろうと思いました。
 それからも魚は毎朝同じように、軒下のクギにつるされています。
 ところが、もっと大きなクギにしたら、もっと大きな魚を持ってくるだろうと思って、家の人がクギをシカの角にかえたところ、カッパはそれっきり魚を持ってこなくなってしまいました。
 カッパは、シカの角が大きらいだからです。
 そして、最初の日にカッパが置いていった大皿は「カッパ皿」と名づけられて、代々庄屋の家の家宝(かほう)として大切にされました。
 庄屋の奥さんはそれから三十年も長生きをして、「力持ちのカッパばあさん」とよばれて、死ぬまで村の子どもたちにしたわれていたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → モノレール開業記念日
きょうの誕生花 → ふうせんかずら
きょうの誕生日 → 1978年 なかやまきんに君(芸人)

きょうの新作昔話 → 聞きちがい
きょうの日本昔話 → 三年寝たろう
きょうの世界昔話 → よわむしのドロボウ
きょうの日本民話 → カッパのばあさん
きょうのイソップ童話 → ライオンとウサギ
きょうの江戸小話 → 法話

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9月16日の日本民話 夜泣きのあかり

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 9月の日本民話

9月16日の日本民話

夜泣きのあかり

夜泣きのあかり
長野県の民話長野県情報

 むかしむかし、信濃の国(しなののくに→長野県)に、満願寺(まんがんじ)という小さな山寺がありました。
 このお寺には夜中のうしみつ時に、かならず山のお堂に明かりをつけにいくという、古くからつたわっているしきたりがありました。
 このお堂の明かりは高いところに灯(とも)されるので、ふもとの村からもよく見えます。
 さて、ある日の事、寺に一人の子どもがつれてこられました。
 この子の父親というのは、長いあいだの浪人(ろうにん)ぐらしで、今ではもう、その日の食べる物にさえこまるようになってしまい、
「どうか、この子をりっぱなお坊さまにしてくだされ」
と、この寺にあずけたのでした。
 和尚(おしょう)は新しい小僧がきてくれたので、とても喜びました。
と、いうのも、ちょうど今までいた小僧が、夜中の明かりをつけにいくのをこわがって逃げ出した後だったのです。
 和尚はさっそく、子どもの頭をきれいにそって寺の小僧にしました。
 次の朝、和尚は明かりをつける小さなお堂まで、小僧を案内しました。
 そのお堂というのは、お寺の裏山の奥の高いところにあって、そこまでいくには、いくつもいくつも暗い岩穴をくぐって、のぼっていかなければなりません。
 和尚でさえ、気味の悪いところです。
 今度きた小僧も、昼でさえ気味のわるいお堂まで、ま夜中に小さなちょうちん一つで行かされたのです。
 木の枝がえりにひっかかっり、岩穴をくぐりぬけるときなどは、コウモリがバタバタと飛び回ります。
 小僧はこわくてこわくて、お堂へ明かりをつけにいくたびに、ふるえて泣き出しました。
 それでも和尚は、
「なにごとも修業(しゅぎょう)じゃ。しんぼうせい」
と、言うのです。
 ところがある晩の事、小僧はあんまりこわいので、明かりを灯さずに帰ってきました。
 さあ、その事がわかると和尚はおこって、小僧を木の棒で何度も何度もぶったのです。
 ところが打ちどころが悪くて、小僧はそれっきり死んでしまいました。
 ビックリした和尚は、人に見つからないようにお堂の下に小僧の死体をうめて、
「やれやれ。また小僧が逃げ出してしもうたわ」
と、知らん顔をすることにしたのです。
 ところがその晩から、不思議なすすり泣きが、毎晩毎晩、寺の裏山から聞こえてくるようになりました。
 とても悲しそうな声で、それを聞いた寺の人間は、
「いったい、どこから聞こえてくるのじゃろう?」
「あまりにも悲しい声で、あれを聞くと寝ることができん」
と、話していました。
 ある晩、寺男(てらおとこ→雑用係の人)と坊さんたちは、そのすすり泣きを聞いているうちに、いてもたってもいられないようになって、みんなで裏山へでかけたのでした。
 手にちょうちんを持って泣き声のする方へ行くと、やがて木のあいだから、小さな明かりが見えてきました。
「あれは、たしかにお堂の明かりだぞ」
「不思議な事じゃ。小僧がおらんのに」
 みんなは思わず足をはやめて、お堂に近づいていきました。
 山のお堂には、だれもつけに来ないはずなのに、明かりがゆらゆらとゆれていたのです。
 次の朝、その話をきいた和尚は急に怖くなって、殺した小僧の供養(くよう)をしました。
 だけれど、すすり泣きは止まらず、毎晩うしみつ時(およそ、今の午前二時から二時半)になると、お堂にはちゃんと明かりがつくのでした。
 さて、あくる年の事。
 ふもとの村に、一人の(さむらい)がたずねて来ました。
 かわいいわが子を寺にあずけた、あの父親です。
 その日はもう日がくれていたので、ふもとの百姓(ひゃくしょう)の家に一晩とめてもらいました。
 夜になって、山の上にゆれる明かりを見ると、
「ああ、あの子もりっぱに、つとめをはたしておるわい」
と、喜びました。
 ところがその晩のうしみつ時、侍は不思議なすすり泣きに、ふと目がさめました。
 見るとまくらもとに、頭をきれいにそったかわいいわが子がすわっています。
 名前をよぼうとしましたが、金しばりにあって声がでません。
 声だけでなく、起き上がることも出来ないのです。
 あくる朝、父親は奇妙な話を聞きました。
「この山へいきますと、昼でも山のお堂のほうから、すすり泣きの声が聞こえてくるんですわ。それがまるで、だれかをしとうて泣いておるような、あわれな声でのう」
「もしや!」
 父親はをつかむと、大急ぎで山寺へのぼって行きましたが、二度と山をおりては来ませんでした。
 そしてその夜から、お堂の明かりはつかず、その代わりにまっ暗な満願寺の裏山には、毎晩三つの火の玉が出るようになったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → マッチの日
きょうの誕生花 → おりづるらん
きょうの誕生日 → 1957年 東国原 英夫(宮崎県知事)

きょうの新作昔話 → おキツネのお産
きょうの日本昔話 → 海の水はなぜしょっぱい?
きょうの世界昔話 → コマとマリ
きょうの日本民話 → 夜泣きのあかり
きょうのイソップ童話 → ヘルメスと彫刻家
きょうの江戸小話 → 江戸見物

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9月15日の日本民話 タヌキのお梅

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 9月の日本民話

9月15日の日本民話

タヌキのお梅

タヌキのお梅
徳島県の民話徳島県情報

 むかしむかし、ある町に、吉平(きちべい)という男がいました。
 吉平は歌が上手で、盆踊り(ぼんおどり)の音頭(おんど)とりでは、右にでる者はいません。
 ある夏の夜の事、いつものように庄屋(しょうや)の家のひろい庭で踊りがはじまりました。
 大きなぼんぼりがいくつもともされ、みんなが輪(わ)になって、手ぶりもおもしろく踊っています。
 踊りの輪のまんなかには、おもちをつく臼(うす)をさかさにして置いた音頭台(おんどだい)があります。
 その上にのって扇子(せんす)で手踊りしながら、何人かの音頭とりが、かわるがわるじまんの声をはりあげていました。
 さて、最後の音頭とりは、吉平です。
 他の者たちは吉平の出番を待っていて、帰る者はほとんどいませんでした。
 音頭台にあがった吉平は、みごとな節まわしで歌い、踊る人たちを楽しませました。
 ところが次の日の朝、吉平が家へもどらずに、行方不明(ゆくえふめい)になっていたのです。
 村の人たちは村の中だけでなく、近くの村々にまででかけてたずね歩きましたが、吉平の行方はまるでわかりません。
「これだけ探しても、見つからんのは・・・」
と、村の老人の一人が、ポツリといいました。
「むかしは、歌が上手な者は魔物にねたまれてつれていかれるといったが。まさか」
 話をきいて、だれもがすぐに、風呂(ふろ)ノ谷にすむ古ダヌキのお梅(うめ)のことを思い出しました。
 そしてみんなで、風呂ノ谷へでかけていきました。
 うす暗い谷底の道を入っていくと、むこうの岩の上に吉平の姿が見えました。
 吉平はタヌキのお梅とむかいあってすわり、仲むつまじそうに話をしています。
 そのとき、村の人に気がついたタヌキのお梅は、吉平になにか耳うちをして、岩のうしろへ姿を消しました。
 すると吉平は、きゅうに岩の上で倒れてしまったのです。
 村の人たちがかけよって、
「吉平! 吉平!」
と、よびましたが、吉平はこたえません。
 村の人たちは気を失っている吉平を背おいながら、やっと家までつれて帰りました。
 ふとんに寝かせても、吉平は青ざめた顔をして動きませんでしたが、真夜中になると、むっくり起きあがりました。
「お前さん。気がついたんだね」
 奥さんも心配して見守っていた村の人たちも喜びましたが、吉平はきょとんとした顔つきで、遠くを見つめるばかりです。
 そして、
「お梅、お梅」
と、タヌキの名前を呼びながら、フラフラと家から出ていこうとするので、村の人たちがとりおさえて柱にしばりつけました。
 タヌキのお梅はきのうの夜、若い娘に化けて歌の上手な吉平をだまして、夫婦になったつもりでいたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → スカウトの日
きょうの誕生花 → すすき
きょうの誕生日 → 1953年 竹下景子(俳優)

きょうの新作昔話 → 知らぬが仏
きょうの日本昔話 → 天の羽衣
きょうの世界昔話 → 鍛冶屋と悪魔
きょうの日本民話 → タヌキのお梅
きょうのイソップ童話 → マムシとヤスリ
きょうの江戸小話 → 十五夜の月は

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9月14日の日本民話 カッパの証文

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9月14日の日本民話

カッパの証文

カッパの証文
福井県の民話福井県情報

 むかしむかし、若狭(わかさ)に、ご先祖さまがカッパの証文(しょうもん)をもらったという家がありました。
 ある日の夕方、その家のおじいさんは、ウシに水あびをさせてやろうと海へつれていきました。
 ところが水あびが好きなはずのウシが、その日はどうしたわけか海に入ろうとしません。
 おじいさんが押しても引っぱっても、ウシは動こうとしないのです。
「どうしたことなんだ?」
と、いいながら、おじいさんは仕方なく波うちぎわでおけに水をくんで、ウシのからだをきれいに洗ってやりました。
 すると、ウシが突然、
「モー、モー」
と、泣きだし、何かをおいはらうように、うしろ足をけりはじめました。
 ウシのうしろ足をみると、五才ぐらいの子どもがウシのうしろ足をひっぱって、海につれていこうとする姿がみえました。
 おじいさんはビックリして、
「何者だ!」
と、いって、子どもをつかまえると、なわでぐるぐるまきにしてしまいました。
 子どもは、おじいさんのけんまくにおどろいて、
「すみません。私はこの海に住むカッパです。京都の祇園祭(ぎおんまつり)には、人間や動物の尻の肉をおそなえしなくてはなりません。それでこのウシの尻の肉をちょうだいしようとしたのです」
と、申し訳なさそうにいいました。
 おじいさんは、それを聞いてビックリ。
「なんというやつだ!、わしのだいじなウシの尻を」
と、いいながら、大きなげんこつをカッパに何発もくらわしました。
「ごめん、ごめん。ごめんなさい! もうしません。たすけて!」
と、カッパは悲鳴をあげました。
 それを聞いたおじいさんは、
「本当か? 本当に、人間や動物に悪さしないか?」
と、いうと、カッパはこっくりと頭を下げました。
「よし、証拠(しょうこ)に証文(しょうもん)を書いてもらおうか」
と、カッパにおじいさんはいいました。
「はい、明日の朝までに書いて、おじいさんの家までおとどけします」
 カッパが約束すると、おじいさんはカッパのなわをといてやりました。
 次の日の朝、おじいさんは目がさめると、すぐに外へでてみました。
 戸口にはカッパの証文と、取れたて魚がたくさんおいてあったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → コスモスの日
きょうの誕生花 → ふしぐろせんのう
きょうの誕生日 → 1981年 安達祐実(俳優)

きょうの新作昔話 → きかずの神さま
きょうの日本昔話 → 金の鳥居
きょうの世界昔話 → ヒョウの子とカモシカの子
きょうの日本民話 → カッパの証文
きょうのイソップ童話 → ライオンとオオカミとキツネ
きょうの江戸小話 → おじぞうさまのずきん

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9月13日の日本民話 うたう、おなか

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 9月の日本民話

9月13日の日本民話

うたう、おなか

うたう、おなか
北海道の民話北海道情報

 むかしむかし、アイヌの村に、パナンペという男の子が住んでいました。
 パナンペはとてもいい子で、お父さんやお母さんのいうことをよく聞いて、家の手伝いをしました。
 ある日のことです。
「きょうは天気がいいから、山へたきぎを取りに行こう」
 パナンペはオノを持って、山へ行きました。
 山はあたり一面まっ白につもった雪に、お日さま光でキラキラとかがやいています。
 雪をかぶった木の枝では、小鳥がさかんに鳴いています。
「ああ、なんてきれいな歌だろう。でもいったい、なんていっているんだろう?」
 パナンペは、耳をすましました。
 すると小鳥は、よけいに声をはりあげました。
♪カニチョロチョロ ピイツンツン
♪コガネチャラチャラ ピイツンツン
♪シロガネチンチン ピイツンツン
「カニチョロチョロって、なんのことだろう?」
 小鳥はくりかえしくりかえし、鳴いています。
 パナンペは口をポカンとあけて木の上を見あげ、夢中になって聞いていました。
 するとそのとき、小鳥が木の枝からパッと飛びたちました。
 そして小鳥はなんと、パナンペの大きくあけた口の中へ飛びこんでしまったのです。
 パナンペはビックリして、思わず口の中の小鳥を飲みこんでしまいました。
「あっ、小鳥をのみこんじゃったぞ! おなかがいたくなりはしないかな?」
 パナンペは心配になって、そっとおへそのあたりをおさえてみました。
 するとおなかの中から、きれいな小鳥の歌が聞こえてきたのです。
「わあ、たいへんだあ!」
 パナンペは、家へ飛んで帰っていいました。
「お父さん、お母さん、ぼくのおなかの中で小鳥が歌を歌うんだよ。ほら」
 おへそをおさえると、
♪カニチョロチョロ ピイツンツン。
と、小鳥が歌いだしたので、お父さんもお母さんもビックリ。
「こりゃ、いったいどうしたことじゃ?」
 パナンペの歌うおなかは、たちまち評判(ひょうばん)になりました。
「ちょっと、おへそをおしておくれ」
 パナンペがおへそをおすと、小鳥の歌が聞こえてきたので、みんなはとても感心しました。
 これを見ていた友だちのペナンペは、パナンペがうらやましくてたまりません。
「ふん。ぼくだって、それくらいできるさ」
と、ばかり、パナンペのまねをして、おへそをギュッと力いっぱいおしました。
 すると、おしりから、
「ブーーーーッ!」
と、大きなおならが出てきたのです。
「ペナンペのは、ずいぶんとへんな小鳥の歌だね。ハハハハハハハッ」
 みんなが大笑いするので、ペナンペははずかしくなって、こそこそと逃げだしました。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 世界の法の日
きょうの誕生花 → たますだれ(ゼフィランサス)
きょうの誕生日 → 1958年 玉置浩二(俳優)

きょうの新作昔話 → 日見(ひみ)のキツネ
きょうの日本昔話 → 一袋の米
きょうの世界昔話 → ミツバチの女王
きょうの日本民話 → うたう、おなか
きょうのイソップ童話 → ロバとセミ
きょうの江戸小話 → ろうそく

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9月12日の日本民話 海のそこでみた女

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 9月の日本民話

9月12日の日本民話

海のそこでみた女

海のそこでみた女
東京都の民話東京都情報

 伊豆七島(いずしちとう)の新島(にいじま)の北端に浅井浦(あさいうら)というところがあって、『おんねんさま』とよばれる岩がのこっているそうです。
 むかしむかし、一せきの漁船が強い風をさけるため、この入り江に入ってほをたたみ、イカリをおろしました。
 やがて風もおさまったので、イカリをあげようとしましたが、どういうわけか重くてあがらないのです。
「こりゃあ、岩に引っかかっているのかもしれない」
 そこで船にのっていた男たちが力をあわせて引っ張りましたが、やっぱりイカリはあがりません。
「おかしいな。よし、わしが見てくる」
 一人の男が海に飛込んで、底へもぐっていきました。
 すると何やら美しいものが、イカリの上でフワフワとゆれています。
(あれはいったい、何だろう?)
 男は、イカリのそばまでいきました。
 するとそこには、十二ひとえにまっ赤なはかまをつけた女がすわっていたのです。
(なんでこんなところに! それにしても、あんな女一人がすわっているぐらいでイカリがあがらないはずがないのだが。・・・もしかしてこの女は)
と、思ったとき、女がこっちに顔をむけました。
 顔色はまっ青で、口が耳までさけています。
 女は男をにらみつけていいました。
「ここは人間の来る所ではない。とっととうせろ! このイカリは、もうお前たちにもどしはしない」
 その声も、まるで地獄からひびいてくるような、おそろしい声です。
 男はまっ青になって、あわてて女のそばをはなれようとしました。
 すると追いうちをかけるように、女がいいました。
「船にもどっても、決してわらわの事を人にいうでないぞ。もし、しゃべったら、そなたの命はないとおもえ」
 男は船に戻ったとたん、気絶してしまいました。
 そして気がついたときには船の中にねかされていて、みんなが心配そうに見守っていました。
「おう、やっと気がついたか。それにしても、いったいどうしたというのだ?」
「それが、じつは・・・」
と、いいかけて、男は女の言葉を思い出しました。
 でも仲間たちに、イカリのあがらないわけを話さないわけにはいきません。
 男はかくごをきめると、海のそこで見てきた事をくわしくはなしました。
「そうか、なるほどな。それでそのバケモノは、わしらにどうしろというのだ?」
 船のりの親方が聞いたとき、男はふいにたちあがって、
「とっとと失せろ!」
と、さけんだかとおもうと、それっきりバッタリと倒れて、そのまま死んでしまいました。
「しかたがない。イカリを切ろう」
 親方はでイカリのつなをきりおとして、
「ほをあげろ!」
と、さけびました。
 船が動きだすと、みんなは手をあわせていのりました。
「どうか、この入り江からぶじに出られますように」
 船はぶじに帰ることができましたが、船乗りたちは二度と、その場所には近づかなかったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 宇宙の日
きょうの誕生花 → あい
きょうの誕生日 → 1957年 戸田恵子(声優)

きょうの新作昔話 → 竜になった娘
きょうの日本昔話 → へっこきよめさん
きょうの世界昔話 → まんぞくもののシャツ
きょうの日本民話 → 海のそこでみた女
きょうのイソップ童話 → オオカミとライオン
きょうの江戸小話 → オオカミのしっぱい

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9月11日の日本民話 キツネの仇討ち

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9月11日の日本民話

キツネの仇討ち

キツネの仇討ち
山口県の民話山口県情報

 むかしむかし、藤六(ふじろく)という百姓(ひゃくしょう)が旅から村に帰る途中、村はずれの地蔵堂(じぞうどう)のかげで一匹のキツネが昼寝をしているのを見つけました。
「よく寝ておる。しかし、キツネの尾は大きいものじゃ」
 見ているうちにイタズラしたくなり、藤六はそばにあった棒きれでキツネの尾をたたきつけました。
 キツネはビックリして、
「キャーーン!」
と、なきながら山の方へ逃げて行きました。
「尾をたたかれたんじゃ。いくらキツネでも化ける間もあるまいて。ワハハハハハ」
 藤六は大笑いしながら、自分の家へと向かいました。
 さて、その日のタ方の事です。
 その村の五作(ごさく)という百姓がのら仕事を終えて家へ帰ろうとすると、やぶのかげでキツネがしきりにしっぽをふりまわしています。
 見ていると、キツネは旅に出ているはずの藤六に化けて、すたすたと村の方へ行ってしまいました。
「ははーん、キツネめ、藤六に化けて村の衆をたぶらかそうというんじゃな。よし、化けの皮をはいでやる」
 五作がいそいで家へ帰ると、なんと藤六と五作の女房が、なにやら楽しそうに話しをしています。
「キツネめ、もうおれの家にきてやがるな」
 五作はそっと裏口にまわり、棒きれをにぎりしめると、
「キツネめ、これでもくらえ! おれはきさまが藤六に化けるのを、この目でちゃんと見たぞ!」
と、藤六をなぐりつけました。
「ちがうちがう。わしは藤六じゃ。今日旅から帰ったんで、みやげを持ってきたんじゃ」
「なにっ。では、まことの藤六か」
 やっと本物の藤六とわかった五作は、山の畑で見たキツネの話をしてあやまると、藤六もキツネにイタズラした話をして、
「はあ。わしはキツネに仇討ち(かたきうち)されたわい」
と、言って、苦笑いしたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 公衆電話の日
きょうの誕生花 → むくげ
きょうの誕生日 → 1947年 泉ピン子(俳優)

きょうの新作昔話 → 桜島大根汁
きょうの日本昔話 → 白米城
きょうの世界昔話 → 利口なシカのカンチール
きょうの日本民話 → キツネの仇討ち
きょうのイソップ童話 → ダチョウ
きょうの江戸小話 → 神田川の大水

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9月10日の日本民話 若い男に化けた鬼

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9月10日の日本民話

若い男に化けた鬼

若い男に化けた鬼
富山県の民話富山県情報

 むかしむかし、越中の国(えっちゅうのくに→富山県)に、一軒の鍛治屋(かじや)がありました。
 鍛冶屋といっても大勢の職人を使う金持ちで、長者(ちょうじゃ)のような屋敷に住んでいます。
 この鍛冶屋に一人娘がいて、そろそろむこをもらう年頃になりました。
 そこで鍛冶屋は、職人たちに、
「一夜のうちに千本の槍(やり)をつくれる者をむこにする」
と、いったのです。
 しかしいくら腕のいい職人でも、一夜に千本の槍をつくることはできません。
 鍛冶屋はしかたなく、その事を立て札にして、すごい腕の職人が現れるのを待ちました。
 さて、この立て札を見て喜んだのは、近くの山に住むです。
(グワハハハハ。千本の槍なんて、わけもない)
と、さっそく若い人間の男に化けて、屋敷にやってきました。
「本当に、千本の槍ができるのか?」
「できます。一番どりが鳴くまでには、かならずつくってみせます」
 鬼が化けた若い男は、きっぱりといいました。
「よし、それならつくってみろ」
 日がくれると同時に、若い男は仕事場に入り、槍づくりを始めました。
 だけど仕事場からは、ときおり風の吹くような音が聞こえるだけで、鉄を打つ音が聞こえてきません。
「はて。いったいなにをしているのだ?」
 不思議に思った鍛冶屋が、こっそり仕事場をのぞいてみると、なんと若い男は口から炎をはいて、まっ赤になった鉄をまるでアメのように曲げているではありませんか。
 槍はたちまちのうちにできあがり、どんどん積みあげられていきました。
 この調子では、夜明けを待たなくても千本になってしまいます。
 鍛冶屋は恐ろしくなって、なんとか仕事をやめさせる手はないものかと考えました。
(こうなったら、槍が千本できあがる前に、一番どりを鳴かせることだ)
 鍛冶屋は熱湯をつぼに入れて、ニワトリ小屋にしのびこみました。
 どのニワトリも、まだ眠ったままです。
(どうか、一匹でも鳴いてくれますように)
 鍛冶屋はいのる気持ちで、ニワトリのとまり木に熱湯を流しました。
 そのとたん、ニワトリたちは驚いて、とまり木を飛びおりた一羽のオンドリが、
「コケコッコー!」
と、鳴いたのです。
 それを聞いて、若い男に化けていた鬼はビックリです。
(さては、正体がばれたか。あと一本だったのに)
 若い男はたちまち鬼の姿にもどると、そのまま外へと逃げ出しました。
 それを見た鍛冶屋は、ホッと胸をなで下ろしました。
「やはり鬼であったか。・・うん? おおっ、これは!」
 鬼が逃げ出した後には、九百九十九本の槍が残されており、どの槍もすばらしいできばえだったのです。
 その後、その槍は鬼の槍として評判になり、鍛冶屋はますますさかえたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 屋外広告の日
きょうの誕生花 → しゅうかいどう
きょうの誕生日 → 1966年 斉藤由貴(俳優)

きょうの新作昔話 → 愛犬の神通力
きょうの日本昔話 → 彦一の生き傘
きょうの世界昔話 → ナシ売りと仙人
きょうの日本民話 → 若い男に化けた鬼
きょうのイソップ童話 → ぬすみをするこどもと母親
きょうの江戸小話 → へとおもえ

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9月9日の日本民話 とっくりに入った男

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 9月の日本民話

9月9日の日本民話

とっくりに入った男

とっくりに入った男
山梨県の民話山梨県情報

 甲斐(かい→山梨県)の殿さまである武田信玄(たけだしんげん)と、越後(えちご→新潟県)の殿さまである上杉謙信(うえすぎけんしん)は、五回も川中島(かわなかじま)で合戦(かっせん)をしたことでよく知られています。
 その四回目の合戦(1561年9月10日)の一月ほど前、信玄のお城がある甲府(こうふ)の町に、からだの大きな岸松金(きしのまつがね)という素人(しろうと)のすもうとりが、ふらりとやってきました。
 松金(まつがね)はあちこちの町へいっては、力じまんたちとすもうをとって負かしていました。
 合戦があった前の日の九月九日の夕方、松金は親しくなった町の人たちとお酒をのんでいました。
 すっかりごきげんになった松金は、町の人たちに、
「よし、みんなにおもしろい芸(げい)を見せてやろう」
と、いいだしました。
 そして松金は、空になった酒どっくりの口に足の親指を入れて、チョコチョコと動かしたのです。
 すると不思議な事に、松金の足がとっくりの中にスーッと入っていくのです。
 やがて松金の大きなからだがとっくりの中に消えて、見えなくなってしまいました。
 見ていた者たちは、ビックリして、
「おーい。松金!」
 とっくりをまわしながら声をかけたり、とっくりをさかさにして、トントンと、手のひらでたたいたりしていましたが、松金は出てきません。
「松金、どこにおるんじゃ? とっくりの中には見えんぞ。おい松金、どこにへばりついておるんじゃ?」
 とっくりの口に目をおしつけるようにしてのぞくと、とっくりの中から松金の声がきこえてきました。
 はるか山の遠くからきこえるような声です。
「ここに長居(ながい)をしたが、今日でおさらばじゃ。みなの衆、たっしゃでなー」
「おいおい、おさらばといっても、どこへいくんじゃ?」
「それに、このとっくりの中から出てこなけりゃ、どこへもいけねえぞ」
 みんながとっくりを前にして、そんなことをいっていると、一人の男が、
「わしらの目の前でとっくりの中に入ったんじゃ。とっくりをわったら、松金はイモムシのようにころがりでてくるわ」
と、いって、とっくりをカシャンとわりました。
 ところが中は空っぽで、何も出てきません。
 それから松金は、二度と町の人たちの前に姿をあらわしませんでした。
 じつはこの松金、越後の上杉謙信が信玄の城下町(じょうかまち)にはなった忍者(にんじゃ)で、町の事をいろいろさぐっていたといわれています。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 救急の日
きょうの誕生花 → リコリス
きょうの誕生日 → 1980年 酒井若菜(俳優)

きょうの新作昔話 → 金の粒を出す馬
きょうの日本昔話 → 絵すがたよめさん
きょうの世界昔話 → お百姓とエンマさま
きょうの日本民話 → とっくりに入った男
きょうのイソップ童話 → ヒツジ飼いとヒツジたち
きょうの江戸小話 → 歩いていく

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9月8日の日本民話 ウマ吸い膏薬

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 9月の日本民話

9月8日の日本民話

ウマ吸い膏薬

ウマ吸い膏薬
神奈川県の民話神奈川県情報

 むかしむかし、源頼朝(みなもとのよりとも)が、『大黒(おおぐろ)』とよばれる名馬にまたがっていたときのことです。
 何か気に入らないことがあったのか、大黒はたづなをひきちぎって走りだし、そのまま空へかけのぼりはじめました。
 頼朝(よしとも)をはじめ、お付きの者たちはビックリ。
「だれか、あのウマをつれもどせ!」
 頼朝が声をあげると、鎌倉(かまくら)からやってきていたケガや病気の治療係の一人が、
「かしこまりました。わたしが、ひきもどしてごらんにいれましょう」
と、名のりでたのです。
 この男は薬草などを練り合わせて薬を作る、膏薬練り(こうやくねり)の仕事をしていました。
 膏薬練りは、すばやく腰につけていた布袋から自分がつくった膏薬をとりだして、指の先につけました。
 そして空をかけのぼっていくウマのほうへ指をのばしながら、ウマをにらみつけました。
 すると大黒は、きゅうにもがくように足を動かしながら空からひきもどされてきて、ペタリと膏薬練りの指先にはりついたのです。
「おおっ、見事じゃ! なんともよくきく膏薬じゃ。して、その膏薬の名はなんともうす」
 頼朝は感心しながら、たずねました。
 膏薬練りは、かしこまりながら、
「はい。この膏薬はわたしが工夫をこらしてさまざまな薬草をとりまぜて、ついこのあいだつくりあげた新しい膏薬です。まだ名はありません」
 そうこたえると、頼朝は、
「それでは、『ウマ吸い膏薬』と名づけるがよい」
と、いって、自分で命名書(めいめいしょ)を書き、膏薬練りに手わたしたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 国際識字デー
きょうの誕生花 → いわひば
きょうの誕生日 → 1963年 松本人志(芸人)

きょうの新作昔話 → タコの足とクモの足
きょうの日本昔話 → さとりのばけもの
きょうの世界昔話 → かわいそうなフクロウ
きょうの日本民話 → ウマ吸い膏薬
きょうのイソップ童話 → 子ヤギと笛を吹くオオカミ
きょうの江戸小話 → ととのめ

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9月7日の日本民話 虫歯になったけちんぼう

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 9月の日本民話

9月7日の日本民話

虫歯になったけちんぼう

虫歯になったけちんぼう
島根県の民話島根県情報

 むかしむかし、あるところに、虫歯を抜く名人がいました。
 そのころは歯医者さんがいなかったので、虫歯がいたくなると名人のところへ行って、クギをぬくクギぬきでぬいてもらったのです。
 虫歯をクギぬきでぬくのはとても痛いのですが、でもこの名人にぬいてもらうと、ちっとも痛くないというので、大変な評判でした。
 さて、名人の家の近くに、自分の舌(した)を出すのももったいないというぐらいの、ひどいけちんぼうがいました。
 このけちんぼうも虫歯になりましたが、ちりょうのお金を出すのがいやなので、ずっとがまんしていました。
 でもとうとうがまんできずに、名人のところへやって来たのです。
「虫歯をぬいてほしいのじゃが、虫歯を一本、いくらでぬいてくれる?」
「はいはい。一本ぬくのは、二文(→一文は約30円ほど)です」
「何? 一本ぬくのに、二文もとるのか?」
「はいそうです。二本で四文、三本で六文」
「そりゃ、高すぎる。一本一文にまけろ」
 この名人は、とてもいい人だったので、お金がなくてこまっている人の虫歯は、ただでぬいてやるのです。
 でもこの男は、本当は大変な大金持ちなのです。
「まけることはできません。いやなら帰ってください」
「うむ、そういわれてもな・・・」
 しばらく考えていましたが、けちんぼうが言いました。
「それなら、この歯と一緒に、もう一本ぬいて二文にまけてくれ」
 二本で二文なら、一本で一文ということになります。
(やれやれ、なんてあきれたけちんぼうだ)
 名人はバカらしくなり、すぐに虫歯をぬいてやりました。
「さあ、虫歯はぬきましたよ。二文をおいて、もう帰ってください」
「まてまて、二文で二本の歯をぬく約束だ。もう一本ぬいてくれ」
「でも、もう虫歯はありませんよ」
「いいから早くしろ、もう一本ぬいてもらわないと損(そん)をする」
「・・・はいはい」
 名人はもう一本、虫歯でない丈夫な歯をぬいてやりました。
「いててて!」
 丈夫な歯をぬいたので、とても痛かったのですが、それでもけちんぼうは口をおさえながら、
(よしよし。これで一文もうけたぞ)
と、よろこんで帰って行ったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → クリーナーの日
きょうの誕生花 → なつめ
きょうの誕生日 → 1956年 長渕剛(歌手)

きょうの新作昔話 → 娘ギツネの恩返し
きょうの日本昔話 → 福の神になったびんぼう神
きょうの世界昔話 → バカなオオカミ
きょうの日本民話 → 虫歯になったけちんぼう
きょうのイソップ童話 → 牛飼いとライオン
きょうの江戸小話 → うすの付き方

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9月6日の日本民話 鬼子母神さま

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 9月の日本民話

9月6日の日本民話

鬼子母神さま

鬼子母神さま
埼玉県の民話埼玉県情報

 むかしむかし、狭山(さやま→埼玉県南部)に、ある村がありました。
 ある日の事、子どもたちが遊んでいると、とつぜん大きなつむじ風がふきおこったのです。
「子どもはどこだ! 子どもはどこだ!」
 村に子どもをさらう、鬼女(おにおんな)が現れたのです。
「鬼女だ!」
 風の中から現れた鬼女は、子どもを一人さらっていきました。
 それからは夕方になると毎日のように鬼女が山からやってきて、子どもをさらっていくのです。
「子どもはどこだ! かくれても、においでわかるぞ! くんくん。そこだなー!」
 子どもをどこにかくしても、鬼女は鼻がいいので、においで見つけられてしまいます。
 子どもたちの声でにぎわっていた村は、ひっそりとさびしい村になってしまいました。
 村の人たちは、何かいい方法はないかと相談して、お釈迦(しゃか)さまにお願いすることにしました。
 次の日、村人たちは、お釈迦さまのいるという山にのぼっていきました。
 やがて雲のあいだから姿を現したお釈迦さまに、村人たちは手をあわせてお願いしました。
「村に鬼女がやってきて、子どもをさらっていくのです。どうかお助けくださいませ」
 すると、お釈迦さまはいいました。
「わかりました。わたしが何とかしますから、どうぞ安心なさい」
 お釈迦さまがさっそく鬼女のところへいってみると、鬼女にさらわれてきた子どもたちが穴ぐらの中で泣いていました。
 このひどい鬼女ですが、この鬼女にも自分の子どもがいるのです。
 それも一人や二人ではなく、なんと一万人もです。
 その子どもたちを、鬼女は、
「おお、わたしの子はなんてかわいいんじゃろう」
と、だきしめるのです。
 それを知ったお釈迦さまは、鬼女が出かけたすきに鬼女の子どもを一人つれて帰ったのです。
 さあ、自分の子どもが一人たりないことに気がついた鬼女は、
「わたしの子どもが一人いなくなった! どこへいったの?」
と、くるったようにわが子をさがしまわります。
 そこへ、お釈迦さまが姿を現しました。
「ああ、お釈迦さま。ちょうどよいところに。実はわたしのかわいい子どもが、一人いないのです」
 するとお釈迦さまは、しずかにいいました。
「それはかわいそうに。・・・ところで鬼女よ。お前は一万人も子どもがいるが、一人でもいなくなるとそんなに悲しいのか?」
「はい、それはもちろんでございます」
「そうであろう。親とはそういうものだ。しかしそれなら、お前に子どもをさらわれた人間たちの気持ちも、わかるのではないか?」
「・・・あっ!」
「そうだ。子どもがいなくなったお前同様、人間たちも子どもがいなくなって悲しんでいるのだ。すぐに子どもたちを帰してやりなさい」
 お釈迦さまはそういうと、鬼女の子どもを返してやりました。
「お許しください! わたしがわるうございました!」
 すっかり心を入れかえた鬼女は、子どもたちを村へ帰したのです。
 それから鬼女はお釈迦さまの弟子となり、鬼子母神(きしぼじん)となって、安産と子どもを病気からまもる神さまになったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 鹿児島黒牛・黒豚の日
きょうの誕生花 → みそはぎ
きょうの誕生日 → 1977年 氷川きよし(歌手)

きょうの新作昔話 → 猫神(ねこがみ)
きょうの日本昔話 → カニの餅つき
きょうの世界昔話 → 人魚姫
きょうの日本民話 → 鬼子母神さま
きょうのイソップ童話 → クマとキツネ
きょうの江戸小話 → 日本も広い

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9月5日の日本民話 テングの面と娘さん

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 9月の日本民話

9月5日の日本民話

テングの面と娘さん

テングの面と娘さん
和歌山県の民話和歌山県情報

 むかしむかし、ある村にお母さんと娘さんが住んでいました。
 娘さんは一人前になったので、町のお金持ちの家で働くことになりました。
「お母さん、どうかたっしゃでいてください」
 親孝行(おやこうこう)な娘さんは、お母さんの似顔絵(にがおえ)とカガミを持って出かけました。
 娘さんはお母さんが恋しくなると、カガミのよこにおいてある、お母さんの似顔絵を見て話しかけます。
「お母さん、今日もいっしょうけんめい働きました。お金がたまったら、きっと帰りますからね」
 お屋敷にいる男たちは、この働き者でかわいい娘さんが気に入りました。
 でも、いくら話しかけてもお母さんの事ばかりで、自分たちの事を好きになってくれません。
「よし、それなら、おっかさんの事をわすれさせてやろう」
 ある日、男の一人がお母さんの似顔絵を取りあげて、そのかわりにテングの面をおいておきました。
 そんな事とは知らない娘さんは、テングの面を見てビックリ。
「にっ、似顔絵がテングの面にかわるなんて。もしかして、お母さんが病気になったのかもしれない!」
 そう思うと、もうジッとしていられません。
 娘さんは、お屋敷のだんなさんにたのんで休みをもらうと、テングの面を持ってお母さんのところへ帰っていきました。
 ところが帰る途中、山の中で山賊(さんぞく)たちにつかまってしまいました。
「わしらは今夜、町に仕事へ出かける。もどってくるまでに火をおこしておけ。もし逃げたりしたら、ひっつかまえて殺してやるからな」
 山賊の親分が、言いました。
 娘さんはしかたなく、山賊のいうとおりにしました。
 山賊の出かけた後、木をひろい集めて火をおこすことにしました。
 でも、山の木はしめっていて、なかなか燃えません。
 けむりばかりでけむくてたまらないので、娘さんは、テングの面をかぶって火をつけました。
 やっと火がついたので、今度は山賊たちのおいていったたいまつに火をうつしました。
「ああ、早く帰りたい。お母さんどうしているかな?」
 たいまつにあたりながら娘さんがお母さんのことを思っていると、ま夜中になって、小判や宝物をかついだ山賊たちがもどってきました。
 すると、どうでしょう。
 おそろしいテングが、たいまつのまわりをうろうろしているのです。
 明かりにてらされたテングの顔が、山賊たちをにらみつけました。
「お、おっ、親分、て、てっ、テングが・・・」
 子分に言われて、親分も青くなりました。
 いくら山賊でも、テングは怖いのです。
「にげろ!」
 山賊たちは、まるで転がるようにして山をおりていきました。
 その騒ぎにビックリした娘さんが面を取ってみると、そこには山賊たちがおいていった小判や宝物が山のようにつまれています。
「まあ、うれしい」
 娘さんはその小判や宝物をひろって、家に帰っていきました。
 そしてその小判や宝物のおかげで、娘さんとお母さんは、いつまでも幸せにくらしたという事です。

おしまい

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9月4日の日本民話 まま母と地蔵さま

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 9月の日本民話

9月4日の日本民話

まま母と地蔵さま

まま母と地蔵さま
秋田県の民話秋田県情報

 むかしむかし、秋田県の能代市(のしろし)というところに、ある夫婦が住んでいました。
 なかなか子どもがうまれないので、二人して近くのじぞうさまに毎日おまいりをして、
「どうか、子どもをさずけてくだされ」
と、たのみしました。
 そのかいがあって、あくる年、男の子がうまれました。
 夫婦はたいへんよろこんで、名を信吉(しんきち)とつけました。
 しかし、信吉が五つのときに母親が死んでしまい、こまった父親は新しい妻(つま)をむかえました。
 やがてあたらしい母は男の子をうむと、その弟の方ばかりかわいがり、信吉をいじめるようになりました。
 ある日の事、母はわずかなお金をもたせて、信吉をおつかいにだしました。
 しかし、信吉はなかなか戻ってきません。
「まったく! あの子は何をしているんだ!」
 イライラした母は信吉が帰ってくるなり、するどくとがった火ばし(→炭火などをつかむ、金属製のはし)をもって、信吉におそいかかったのです。
 信吉がビックリして逃げだすと、母は火ばしをもったまま後をおいかけて、人気のない道で火ばしを信吉の頭のうしろへつきさしたのです。
「ギャアーー!」
と、いって、信吉はバッタリとたおれました。
「ふん! 早く帰ってこないお前がわるいんだ」
 母は家へもどると知らんぷりをして、父親がかえってきても、
「まったく、どこまで遊びにいっているんだ」
と、ごまかしていました。
 夜になって三人きりで夕はんを食べようとしたとき、家の戸があきました。
 なんとそこには、信吉が立っていたのです。
 ビックリした母は、走りよって信吉の頭をマジマジと見ました。
「???」
 信吉の頭には、火ばしでさされたあとはありません。
 母は夜中になると、こっそり家を抜け出して、信吉を刺し殺した場所に行ってみました。
 するとそこには信吉ではなく、お地蔵さんが転がっていたのです。
「も、もしかして!」
 そのお地蔵さんの頭を見てみると、なんと、火ばしがささったままではありませんか。
「ああ、わたしは子どもになんて事をしたんだ。すまねえ事した。かんにんしてけれよ」
 母は家に帰ると父親と信吉に今日の事を全部話して、二人に泣いてあやまりました。
 そしてその日から、母はやさしい母親になったという事です。

おしまい

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9月3日の日本民話 石子づめになった子

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9月3日の日本民話

石子づめになった子

石子づめになった子
奈良県の民話奈良県情報

 むかしから、奈良のシカは春日大社(かすがたいしゃ)の神さまのお使いだといって、とても大切にされてきました。
 むかしむかし、この大社のすぐ西の興福寺(こうふくじ)という寺のわきに、寺子屋(てらこや)が一つありました。
 ある日の事、子どもたちが手ならいをしていたとき、シカが一頭よってきて、三作(みのさく)という子の習字(しゅうじ)の紙を取って食べてしまったのです。
「あっ! 返せ!」
 三作は、手に持っていた筆(ふで)をシカに投げました。
 ただおどろいて、かるい力で投げたのですが、でもその筆がシカの鼻に当たると、シカはドサッと庭さきに倒れてしまいました。
 それっきり、シカは動きません。
「シカが、死んでしもうた」
「三作が、筆を投げて殺したんや」
 子どもたちは、大騒ぎです。
 お師匠(ししょう)さんも、青くなって飛んできました。
 神さまのお使いであるシカを死なせたら、たとえ殺そうとしてやった事でなくても、石子(いしこ)づめの刑を受けると決まっていたのです。
 石子づめとは、石をつめて生きうめにされることです。
「えらい事や。ほんまに死んどる」
「・・・・・・」
 三作は口もきけずに、ただふるえていました。
 そのうちに役人が飛んできて、おそろしい顔で三作をひきたてていきました。
 それから数日後、興福寺境内(こうふくじけいだい)の十三鐘とよばれている前庭に、深い穴が掘られました。
 可哀想に三作は、死んだシカと抱き合わせにされたうえ、石子づめにされてしまったのです。
 それは日暮れ時で、むかしの時刻の呼び方で、七つ(→午後四時ごろ)と六つ(→午後六時ごろ)のあいだの事だったそうです。
 七つには鐘が十四、六つには十二、なりますから、その間の十三で、十三鐘とよぶようになったとも言われています。
 三作がどういう子どもだったのか、年は何才だったかは、記録に残っていません。
 でも、しばらくあとで三作の母がここへきて、可哀想な我が子の形見に、モミジの木を植えたそうです。
 『シカにモミジ』といわれて、この組み合わせは絵にもたくさん描かれていますが、それも、この事からはじまったといいます。

 また、ほかの言い伝えには、三作は興福寺のお稚児(ちご→寺院などにつかえる少年)さんだったとか、年は十三才で、シカに投げつけたのは、習字の時に使う、ぶんちんの一種で、『けさん』という物だったともあります。

 現在も奈良にはシカがたくさんいて、奈良公園のあたりには千頭以上のシカがいるそうです。

おしまい

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9月2日の日本民話 ハチの恩がえし

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9月2日の日本民話

ハチの恩がえし

ハチの恩がえし
栃木県の民話栃木県情報

 むかしむかし、那須与一(なすのよいち)という、弓の名手(めいしゅ)がいました。
 与一(よいち)は源氏(げんじ)の武士(ぶし)で、平家(へいけ)と戦った屋島の合戦(やしまのかっせん)のとき、海にのがれていた平家の小舟にたてた扇(おおぎ)の的(まと)を、たった一本の矢で射落(いお)としたのです。
 あまりの見事さに、このときは敵も味方も関係なく、大歓声(だいかんせい)がわきあがったそうです。
 このとき与一は、二十歳の若者でした。
 さて、この与一は下野の国(しもつけのくに→栃木県)にいた幼いころから、弓の腕をみがいていました。
 あるとき与一は、弓を持って那煩野(なすの)の原へ、一人で狩りにでかけました。
 すると、ススキのやぶの中にはられたクモの巣(す)に、一匹のハチがかかってもがいていたのです。
 葉っぱのかげには大きなクモがいて、獲物(えもの)が動かなくなるのをジッと待っています。
 ハチをかわいそうに思った与一は、弓の先でクモの巣をやぶってハチを逃がしてやりました。
 それから何日かたって、与一はまた弓を持って、那須野の原にでかけていきました。
 ススキをわけいっていくと、やぶの中に子どもが一人で立っています。
 子どもはにこやかな顔で、与一にふかぶかと頭を下げていいました。
「このあいだは、命をお助けくださってありがとうございました。父がお待ちしております。ぜひ、うちへお立ちよりください」
「このあいだとは?」
 なんの事かと思いましたが、与一はハチを助けたことを思いだしました。
 まさかとは思いましたが、与一は子どもに案内されるまま、ススキのやぶをわけながらついていったのです。
 すると、これまで何度も足をふみいれたことのあるやぶの奥に、美しい赤い門がたっていて、金銀をちりばめたようにかがやく宮殿(きゅうでん)があったのです。
 宮殿の中に通されると、頭にかんむりをのせて、きらびやかな衣をまとった老人が待っていました。
「来てくれてありがとう。この子はわたしの子です。あなたの助けによって命をすくわれました。恩返しのお礼をさしあげたいとぞんじます。これは、わが家につたわる宝物で、この矢で射(い)れば、あなたは天下(てんか)に名をあげることができるでしょう」
 そういって、与一に一本の矢を手わたしました。
 与一は矢をもらって黄金の宮殿をあとにし、ふと門をふりかえってみると、黄金の宮殿もりっぱな赤い門も、まぼろしのように消えていていたのです。
 与一がのちに、屋島の合戦で平家の小舟の扇の的を射たのは、このときハチにもらった矢だったという事です。

おしまい

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きょうの誕生日 → 1966年 早見優(歌手, 俳優)

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9月1日の日本民話 ゆうれい屋敷

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9月1日の日本民話

ゆうれい屋敷

ゆうれい屋敷
東京都の民話東京都情報

 むかしむかし、江戸(えど→東京都)の深川(ふかがわ)に、幽霊(ゆうれい)が出るという屋敷がありました。
 広くてりっぱな屋敷なのですが、気味が悪くて誰もすもうとはしません。
 ところが、この話を聞いた一人の若い(さむらい)は、
「そいつはありがたい。静かで、勉強にはもってこいだ」
と、よろこんで、幽霊屋敷にひっこしてきました。
 さて、その晩、侍は奥の部屋で、
「もうそろそろ、出てもよいころだが」
と、待っていると、まもなく女のすすり泣きの声が聞こえてきました。
「よし、おいでなすったな」
 侍はローソクを持って、屋敷中の部屋を調べましたが、どこの部屋にもあやしいものはなく、ただ、シクシクと泣く声が聞こえるだけです。
「なんだ、声だけのゆうれいか。つまらんな。 ・・・うん?」
 侍が、ふとかべを見ると、かべには二つのかげがローソクの光にゆれています。
 一つはたしかに自分のかげですが、もう一つはどうやら女の人のかげのようです。
 自分が歩けば女のかげも歩き、自分が止まれば女のかげも止まります。
 奥の部屋にもどると、女のかげもシクシク泣きながらついてきました。
「おい、幽霊さん。そう泣いてばかりおらんで、姿をあらわしたらどうだね」
 侍が声をかけると、スーッと、侍の前に一人の女が現れました。
 よく見てみると、その女の顔には目がありません。
「いや、よくでてくれた。せっかくだからお茶でも飲もう。すまんが、お茶でもいれてくれんか」
 女の幽霊は、だまってカガミの前にいきました。
(なるほど。幽霊でも、やっぱり女。身だしなみは、せにゃいかんな)
 幽霊は髪の毛をといて、ほんのり口紅をつけると、お茶を入れて持ってきました。
 そしてお茶を侍の前におくと、スーッとそのまま消えてしまいました。
 次の晩。
 幽霊は夜中になると、部屋の中にスーッと入ってきました。
 そして部屋のすみで、ジッと立っています。
 それに気がついた侍は、幽霊に言いました。
「幽霊とはいえ、礼儀(れいぎ)をまもりなさい。人の部屋に入るときは、ちゃんと声をかけなさい」
 すると幽霊は、はずかしそうに、
「はい」
と、いったきり、スーッと消えてしまった。
 その次の晩、侍は用があって、おそくにかえってきました。
 部屋の中に入ると、幽霊が部屋のまん中で寝ています。
「ほほう、あんまりおそくなったので、まちくたびれたとみえるな」
 侍は、すずり箱をとりだすと、筆にすみをつけて、
(どれ、毎晩きてくれるお礼に、目をかいてしんぜよう)
と、寝ている幽霊の顔に、きれいな目を二つ書いてやりました。
 そして、
「おいおい、幽霊さん、いまかえってきたよ。今日はどうも肩がはってならん。すまんが、ちょいとたたいてもらおうか」
と、声をかけると、幽霊はビックリしておきあがり、いつものようにカガミの前へ立ちました。
 そのとたん、
「キャーッ!」
と、ビックリした声をあげて、パッと消えてしまいました。
 それっきり屋敷には、幽霊は出なくなったという事です。

おしまい

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